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ラファドとリーシュが共に食事をしたり、しなかったり・・・、そんな日が何日か続いている。




リーシュは"塵"について話す機会を探していたが、共に食事をするときもラファドは時間を気にしており、なかなか聞けずにいた。
先日、ラファドが言っていた"面倒なこと"以外にも近隣の森に魔物が出たり、第1王子・第2王子の補佐をしたり・・・と、忙しいようだ。
専属魔法士であるリーシュもラファドの護衛につくが、勤務中はゆっくり話す時間が取れないのである。








第1王子の補佐をする際、リーシュには自由な時間が与えられることが多い。
執務室には近衞騎士も多いし、第1王子の専属魔法士のリカルドがいる。だから「護衛は十分」なのだそうだ。
ラファドとしては、恐らく良かれと思って自由な時間をリーシュに与えたのだろう。
しかし、リーシュにとってその対応は、「お前は必要ない」と言われたような気持ちになって、胸がきゅっと、締めつけられる。






「・・・思い上がるな。馬鹿か、僕は。」



ぽつりと呟き、濃紺に銀色の刺繍の入った自分のローブの裾を強く掴み、執務室を後にするリーシュだった。





浮かない気分の時は大体決まって、マイクやゴルドの元へ行く。彼らは、良い話し相手だ。


この日は訓練直後だったらしい。
額の汗を布で拭くマイクは、とぼとぼ浮かない足取りで自分の方に向かってくるリーシュを見つけると、思わずため息を漏らす。





「あーあ。今日は捨て犬ちゃんの日かよ~。辛気臭えなぁ。」

「別に・・・捨てられてません。」

「はいはい。ほら、飴やるから元気出せよ~。」

「・・・・・・・・・飴は有り難く頂戴します。」



リーシュは眉間に皺を寄せながら、ポイッと口に飴を放り込む。
甘いものは心にゆとりをくれる。
リーシュも飴のおかげで、少し落ち着いた。




訓練着から着替えたマイクとゴルドはリーシュと共に、訓練場の端にあるベンチに座る。
3人で座るとギュウギュウなので、ゴルドは何も気にする様子なく、地面にそのまま腰を下ろした。
ごくごくごく、と音を立てて水分補給をするマイクは、リーシュを横目で確認した後、少し考えたような顔をする。




「・・・・・・なあ、リーシュ。捨て犬の日にこんなこと聞くのも悪いけどよ。」

「僕は歴とした人間です。」

「お前、何で"契りの耳飾り"してねぇんだ?他の専属魔法士はしてるだろ?ほら、左耳に、」




そう言いかけたマイクの頭をパチーーーンと、容赦なく叩いたのはゴルド。
「いってぇ・・・っ」と呻き声をあげるマイクの頭頂部にもう一発、チョップを入れた。




「マイク、お前・・・・・・本当に考えなしだな。」

「だってよお。もし違ったら・・・、いつまでもメソメソさせてんのも可哀想だろ・・・」

「万が一、リーシュを泣かせでもしてみろ。お前・・・終わりだぞ。」

「俺はまだ死にたかない。」

「・・・ほら、リーシュ。今度はこれ食え。口開けろ。」

「・・・・・・別に僕は泣きませんよ。」




苦笑いをするリーシュの口にゴルドが違う味の飴を入れてくれた。
2人とも何だかんだ最近のリーシュの様子を心配してくれているらしい。
そう考えるだけでリーシュは心が温かくなった。





「リカルド様が優秀で、僕が不要なのは承知してます。これも仕事ですから、割り切って・・・考えないとですよね。」

「・・・んー・・・俺らが言いたいのはそういうことじゃなくてだな・・・」

「・・・あ、そういえば、ち・・・?ち、ちぎり、の耳飾りでしたっけ。それは一体何ですか?」

「「・・・・・・マジか。」」

「・・・・・・・・・?」




リーシュがこてんっと首を傾げると、騎士2人は互いに顔を見合わせて、苦虫を噛んだような顔をした。



「・・・知らなかったんだな。」

「は、はい・・・そうです、ね?」

「そりゃそうか。お前、元々専属魔法士になる予定でもなかったみてぇだし、事前の教育とかすっ飛ばしてるよな。」

「そ・・・うかも?」

「・・・・・・・・・」





赤髪の頭を雑に掻くマイクは助けを求めるようにゴルドを見る。
その目線にすぐ気がついたゴルドはハァッとあからさまに嫌そうなため息をついたあと、契りの耳飾りについて説明を始めた。
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