16 / 16
16
しおりを挟む
コンコン、とリーシュは扉をノックする。
するとすぐに中から「どうぞ」と優しい声が返ってきて、リーシュは笑みをこぼした。
リーシュが中に入ると、ラファドが部屋の奥の窓の近くに立っていた。
準備はできているようだが、部屋からは出ようとしないラファド。
「書類ですか?魔道具ですか?午前中の執務に使うものでしたら、急いで確認して処理いたしますよ。」
渡すものがあると言われたリーシュは、ごく自然に執務に関するものだろうと考えていた。
任せてください!と胸を張るリーシュをラファドは嬉しそうな顔でちょいちょい、と手招く。
手招きに合わせ、ラファドの元へ駆け寄ったリーシュ。そのままの勢いで腕をひかれ、もたれかかるような姿勢で抱きしめられた。
「ラ、ラファド、様?!」
「リーシュ、いいかい?今から俺が開けていいと言うまで、目をつぶってくれ。」
「はっ、はい・・・!」
抱きしめられるとは思っていなかったリーシュは耳を真っ赤にしながら慌てて目を瞑った。
するとラファドはリーシュから少しだけ身体を離し、何か準備を始めた。
目を瞑っているリーシュは言われた通り大人しく待っている。
リーシュの左耳が熱を帯び、ピリッと小さな痛みを感じた。
ラファドは小さな声で呪文を唱え始めた。
《これは、聞いたことない呪文だな》
リーシュの研究魂が疼く。
思わず思考がそちらの分野へ向きかけた時「目を開けていいよ」と声がした。
思考をこちらに引き戻し、ぱちりと目を開ける。目の前には微笑むラファドの顔。
何も変わっていないように見えるが、先程の呪文は一体何だったのだろう。
辺りを見渡せばヒントがあるかも知れない、と顔を動かした。
すると自分の左耳の方からから聞きなれない、シャリという音がする。
「え?」
思わず声が出たリーシュ。
左耳に手を伸ばすと、そこには細く華奢な4本の金属のついた耳飾りがついていた。
金属を触ると凹凸があり、模様が彫り込まれていることがわかる。
耳朶の部分には、中心に宝石が付いており、それを囲むようにして丸い金属の輪があるようだ。
一通り形を確かめながら、目線を前に戻すと、嬉しそうに微笑むラファドと目があった。
よく見るとラファドの左耳にもおそらく同じであろうデザインのもの。
"黒い"宝石が付いた耳飾りが付いていた。
「遅くなってすまない。ようやく出来たんだ。」
「・・・・・・はい。」
「宝石に護りの魔法をかけるのに時間がかかった。王族に代々伝わる"契りの耳飾り"をつける時に使う魔法を使ったんだが・・・少し痛かったか?大丈夫か?」
左耳を触ったまま、固まっているリーシュの顔を心配そうにラファドが覗き込むと、リーシュはラファドに飛びついた。
「~~い、痛くなんかありません!う、う、嬉しいです!」
「ふ、ふふ。そうか。」
「はい!ラファド様・・・大好き、です!僕、やっとラファド様の専属魔法士ですね!」
「・・・ああ。待たせた。俺もリーシュを愛しているよ。」
ラファドは少し力を込めて、リーシュを抱きしめ返す。
そして、こう囁いた。
「左指にはめるものは、一緒にデザインしような。」
ラファドからの提案に「勿論です!」と笑って、泣いて。
リーシュは返事をしたのである。
おしまい
するとすぐに中から「どうぞ」と優しい声が返ってきて、リーシュは笑みをこぼした。
リーシュが中に入ると、ラファドが部屋の奥の窓の近くに立っていた。
準備はできているようだが、部屋からは出ようとしないラファド。
「書類ですか?魔道具ですか?午前中の執務に使うものでしたら、急いで確認して処理いたしますよ。」
渡すものがあると言われたリーシュは、ごく自然に執務に関するものだろうと考えていた。
任せてください!と胸を張るリーシュをラファドは嬉しそうな顔でちょいちょい、と手招く。
手招きに合わせ、ラファドの元へ駆け寄ったリーシュ。そのままの勢いで腕をひかれ、もたれかかるような姿勢で抱きしめられた。
「ラ、ラファド、様?!」
「リーシュ、いいかい?今から俺が開けていいと言うまで、目をつぶってくれ。」
「はっ、はい・・・!」
抱きしめられるとは思っていなかったリーシュは耳を真っ赤にしながら慌てて目を瞑った。
するとラファドはリーシュから少しだけ身体を離し、何か準備を始めた。
目を瞑っているリーシュは言われた通り大人しく待っている。
リーシュの左耳が熱を帯び、ピリッと小さな痛みを感じた。
ラファドは小さな声で呪文を唱え始めた。
《これは、聞いたことない呪文だな》
リーシュの研究魂が疼く。
思わず思考がそちらの分野へ向きかけた時「目を開けていいよ」と声がした。
思考をこちらに引き戻し、ぱちりと目を開ける。目の前には微笑むラファドの顔。
何も変わっていないように見えるが、先程の呪文は一体何だったのだろう。
辺りを見渡せばヒントがあるかも知れない、と顔を動かした。
すると自分の左耳の方からから聞きなれない、シャリという音がする。
「え?」
思わず声が出たリーシュ。
左耳に手を伸ばすと、そこには細く華奢な4本の金属のついた耳飾りがついていた。
金属を触ると凹凸があり、模様が彫り込まれていることがわかる。
耳朶の部分には、中心に宝石が付いており、それを囲むようにして丸い金属の輪があるようだ。
一通り形を確かめながら、目線を前に戻すと、嬉しそうに微笑むラファドと目があった。
よく見るとラファドの左耳にもおそらく同じであろうデザインのもの。
"黒い"宝石が付いた耳飾りが付いていた。
「遅くなってすまない。ようやく出来たんだ。」
「・・・・・・はい。」
「宝石に護りの魔法をかけるのに時間がかかった。王族に代々伝わる"契りの耳飾り"をつける時に使う魔法を使ったんだが・・・少し痛かったか?大丈夫か?」
左耳を触ったまま、固まっているリーシュの顔を心配そうにラファドが覗き込むと、リーシュはラファドに飛びついた。
「~~い、痛くなんかありません!う、う、嬉しいです!」
「ふ、ふふ。そうか。」
「はい!ラファド様・・・大好き、です!僕、やっとラファド様の専属魔法士ですね!」
「・・・ああ。待たせた。俺もリーシュを愛しているよ。」
ラファドは少し力を込めて、リーシュを抱きしめ返す。
そして、こう囁いた。
「左指にはめるものは、一緒にデザインしような。」
ラファドからの提案に「勿論です!」と笑って、泣いて。
リーシュは返事をしたのである。
おしまい
245
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
【8+2話完結】氷の貴公子の前世は平社員〜不器用な恋の行方〜
キノア9g
BL
氷の貴公子と称えられるユリウスには、人に言えない秘めた想いがある――それは幼馴染であり、忠実な近衛騎士ゼノンへの片想い。そしてその誇り高さゆえに、自分からその気持ちを打ち明けることもできない。
そんなある日、落馬をきっかけに前世の記憶を思い出したユリウスは、ゼノンへの気持ちに改めて戸惑い、自分が男に恋していた事実に動揺する。プライドから思いを隠し、ゼノンに嫌われていると思い込むユリウスは、あえて冷たい態度を取ってしまう。一方ゼノンも、急に避けられる理由がわからず戸惑いを募らせていく。
近づきたいのに近づけない。
すれ違いと誤解ばかりが積み重なり、視線だけが行き場を失っていく。
秘めた感情と誇りに縛られたまま、ユリウスはこのもどかしい距離にどんな答えを見つけるのか――。
プロローグ+全8話+エピローグ
沈黙のΩ、冷血宰相に拾われて溺愛されました
ホワイトヴァイス
BL
声を奪われ、競売にかけられたΩ《オメガ》――ノア。
落札したのは、冷血と呼ばれる宰相アルマン・ヴァルナティス。
“番契約”を偽装した取引から始まったふたりの関係は、
やがて国を揺るがす“真実”へとつながっていく。
喋れぬΩと、血を信じない宰相。
ただの契約だったはずの絆が、
互いの傷と孤独を少しずつ融かしていく。
だが、王都の夜に潜む副宰相ルシアンの影が、
彼らの「嘘」を暴こうとしていた――。
沈黙が祈りに変わるとき、
血の支配が終わりを告げ、
“番”の意味が書き換えられる。
冷血宰相×沈黙のΩ、
偽りの契約から始まる救済と革命の物語。
【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。
明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。
新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。
しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…?
冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。
【旧作】美貌の冒険者は、憧れの騎士の側にいたい
市川
BL
優美な憧れの騎士のようになりたい。けれどいつも魔法が暴走してしまう。
魔法を制御する銀のペンダントを着けてもらったけれど、それでもコントロールできない。
そんな日々の中、勇者と名乗る少年が現れて――。
不器用な美貌の冒険者と、麗しい騎士から始まるお話。
旧タイトル「銀色ペンダントを離さない」です。
第3話から急展開していきます。
オメガの僕が、最後に恋をした騎士は冷酷すぎる
虹湖🌈
BL
死にたかった僕を、生かしたのは――あなたの声だった。
滅びかけた未来。
最後のオメガとして、僕=アキは研究施設に閉じ込められていた。
「資源」「道具」――そんな呼び方しかされず、生きる意味なんてないと思っていた。
けれど。
血にまみれたアルファ騎士・レオンが、僕の名前を呼んだ瞬間――世界が変わった。
冷酷すぎる彼に守られて、逃げて、傷ついて。
それでも、彼と一緒なら「生きたい」と思える。
終末世界で芽生える、究極のバディ愛×オメガバース。
命を懸けた恋が、絶望の世界に希望を灯す。
過労死研究員が転生したら、無自覚チートな薬草師になって騎士様に溺愛される件
水凪しおん
BL
「君といる未来こそ、僕のたった一つの夢だ」
製薬会社の研究員だった月宮陽(つきみや はる)は、過労の末に命を落とし、魔法が存在する異世界で15歳の少年「ハル」として生まれ変わった。前世の知識を活かし、王立セレスティア魔法学院の薬草学科で特待生として穏やかな日々を送るはずだった。
しかし、彼には転生時に授かった、薬草の効果を飛躍的に高めるチートスキル「生命のささやき」があった――本人だけがその事実に気づかずに。
ある日、学院を襲った魔物によって負傷した騎士たちを、ハルが作った薬が救う。その奇跡的な効果を目の当たりにしたのは、名門貴族出身で騎士団副団長を務める青年、リオネス・フォン・ヴァインベルク。
「君の知識を学びたい。どうか、俺を弟子にしてくれないだろうか」
真面目で堅物、しかし誰より真っ直ぐな彼からの突然の申し出。身分の違いに戸惑いながらも、ハルは彼の指導を引き受ける。
師弟として始まった二人の関係は、共に過ごす時間の中で、やがて甘く切ない恋心へと姿を変えていく。
「君の作る薬だけでなく、君自身が、俺の心を癒やしてくれるんだ」
これは、無自覚チートな平民薬草師と、彼を一途に愛する堅物騎士が、身分の壁を乗り越えて幸せを掴む、優しさに満ちた異世界スローライフ&ラブストーリー。
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
オメガバースの世界に転生!?アルファに生まれ変わってパパになります
みたらしのだんご
BL
オメガバースの世界に転生します。村でのびのびします。
ボーイズラブ要素はゆっくり出していきますのでしばしお待ちを
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる