【完結】待って、待って!僕が好きなの貴方です!

N2O

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目の前には、魔法科の学科長室。
この年季の入った扉の前まで連れてきた先生は「会議があるから」と、戸惑う僕を置いてさっさと居なくなってしまった。

詳細は何も聞いていない。
恐る恐る扉を三回ノックすると、触ってもないのに勝手に扉が開く。
逆光でよく見えない室内から「ど~ぞ~」という声がして、僕は嫌な汗を背中に感じながら足を踏み入れた。







「ってことで!準備よろしく~!」

「・・・・・・ええ・・・?!」

「じゃ、私も会議あるから。あとは二人で打ち合わせてねん⭐︎」

「ちょっ、そ、そんな、いきなり言われてもっ、」

「ばいば~い!」





魔法科の学科長、その強面の見た目に反してとびきり陽気な鷲の鳥人だった。
僕が口を挟む間もなく、わあ~~~~~っと、一方的に僕をここへ呼んだ趣旨を説明した後、たった今、本当に部屋から出て行ってしまった。

・・・え?何、あの人。本当に大人なの?



僕同様、学科長室に取り残されたもう一人の方をそろりと窺う。
話からすると、この人はクロヴィスさんと同じ三年生。
丸みを帯びた三角の黒い獣耳、僕と同じ黒髪に、黒く太さのあるしなやかな尻尾。
耳や尻尾に既視感があるのは多分、毛色が違うだけでクロヴィスさんと同じヒョウの獣人だからだと思う。
瞳は透き通るような灰色で、俯き気味に窺う僕をにこにこしながら見ていた。






「学科長はいつもあんな感じだから早く慣れた方がいいよ。」

「・・・はい。」

「俺は三年のユキ。こう見えて割と優秀だから安心してね?」

「・・・い、一年の、ラウーです。よ、よろしくお願いします・・・」

「君のことはよく知ってるよ。ただでさえこうも目を惹くのに、魔法も凄いんでしょう?」

「・・・は、はあ・・・」

「うんうん。分かってなさそうな感じもいいねぇ。楽しみだなぁ。」

「・・・・・・???」





この先輩、なんか底が知れない感じがして少し怖い。
目を惹くって、何。
僕そんなに常識はずれな事したっけ・・・?
でもしばらくはこの先輩に色々面倒見てもらうことになったわけだし、失礼なことは言わないでおこう。


・・・で、さっきの学科長の話をまとめるとこうだ。



・今年の魔法科の代表やれ
・半月後の交流会で学科紹介やれ
・私(学科長)忙しいからこの先輩に色々聞け





・・・・・・・・・・・・・・・はい?






「"三科交流会"は毎年この時期開催で、一年生が科を代表して入学からこれまでの短期間でどれだけ学んだのか授業の成果を披露することになってるんだ。」

「そ、うなんですか。」

「魔法科は勿論魔法、史科は紙面発表で、士官科は剣技や武術、馬術ってとこかな。」

「・・・大事おおごとですね。」

「あはは!そうだね!表向きは科同士の交流だけど、各科有望な一年生を出して、これからの科の命運を掛けた"裏の勝負"って感じかな!」

「・・・・・・」

「わあ、嫌そうな顔してる~~~!意外と顔に出るタイプなんだねぇ。」







そりゃ、嫌です、よ。
魔法は好きだし、プライドを持って学んでるけど、目立つのは別・・・
でもあの学科長「成績順だから貴方に拒否権はないのよぉ♡」って笑ってたし、僕が万が一どうにかこうにか断ったとして、代わりに出る人に大変な思いをさせるのも気が引ける。






「・・・ご指導よろしくお願いします。」

「物分かりもいいと来た。腕が鳴るねぇ。」

「が、んばります・・・」

「本番まで時間ないし、放課後ずっと俺と一緒に練習ね。」

「んえっ!?」

「ま、がんばろー!じゃ、早速今日から練習練習!」

「えええ・・・」






ユキ先輩はそう言うと「さ、立った立った」と僕を急かし、訓練着に着替えて、魔法科の訓練場へと強引に連行。



ユキ先輩によると交流会での魔法は通常の攻撃魔法を披露すると言うより、派手な演出要素が求められるんだとか。
そんな風に魔法を使ったことは今までないから、ちょっと面白そうだし、新鮮味がある・・・・・・・・・とか言ってましたよ、最初は。





「ラウーくん魔力底なしだ~!いいねいいね~!」

「ぜえ・・・はあ・・・、これの・・・どこが・・・底なし・・・ゲホッ」

「ラウーくんは肌が白いから、やっぱ鮮やかな花が映えていいかな~?花いっっっぱい出して、風魔法で巻き上げて、えーっと、あとは、氷魔法で、」

「・・・・・・・・・」

「あ!こら!逃げない!」

「お、鬼・・・!」

「・・・いや~、有望な一年生を鍛えるのってこんなに楽しいんだねぇ♡」

「ひぃ・・・っ」






振り返ると、恐らくこの"鬼発言"がよろしくなかった。
この後僕は魔力切れを起こすまで永遠と魔法を使うことになり、最終的にユキ先輩から豪快に担がれて寮まで戻る羽目になった。

抵抗できる体力もなく、なすがまま担がれて、あまつさえウトウトし始めた頃、ぽそっとユキさんが小さく溢した言葉。




「やっぱあいつの────・・・なだけあるなぁ。」

「・・・・・・ん・・・」

「・・・寝てていいよ。というか動けないでしょ。」

「・・・すみ、ませ・・・・・・」

「・・・はいはい。」




あいつの・・・?何ですか?


この時確かに頭ではそう言っていたのに口からは出てこず、気がついた時にはすでに寮のベッドの上で、僕は夢と現実の境界線が曖昧になまま、また目を閉じた。
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