1週間の恋人契約

七海さくら/浅海咲也(同一人物)

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8日目② 《告白の行方》

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 ふ、と目が覚めた時、部屋はまだ明るかった。

「葵、気がついた?」
「あ……、オレ……」

 呟いた声は酷く掠れていた。起き上がろうとして、うしろからナニかがドロリとこぼれる感触に、ふる、と震える。ああ、そうだ。悠晴と限界までセックスをして、失神したのだった。

「ごめんね。無理させた」
「いい。オレが煽っただろ。どのくらい寝てた?」
「寝てたっていうか、気を失ったんだよ。時間はそんなに経ってない。10分くらいかな」
「そうか」

 見れば、身体もシーツも、どちらのものとも分からない精液やら体液でドロドロだった。
 さすがにこのシーツはそのままにはできないな、と。ぐい、と引っ張ってシーツを剥がすと、下半身に巻き付けた。

「悠晴」
「うん?」
「2階にもシャワールームあるから。連れて行って」

 言外に抱き上げて連れて行け、と言えば、悠晴は正しく理解して、悠晴は裸のままシーツにくるまるオレを抱き上げる。その拍子に、またうしろから、ごぽり、と悠晴の白濁がこぼれてビク、と震えた。

「ん……っ」
「ちょ、可愛い声やめて」
「誰の、せいだ……っ」

 悠晴の身体に腕を回してバランスを取りつつ、シャワールームに向かわせる。本当に、今日は誰も居なくて良かった、と心から思ったのは内緒だ。
 シャワールームとは言っても、それなりに広くて浴槽もちゃんとある。大家族なので、トイレと風呂場は大渋滞を起こすから2階にも設置したのだと聞いたことがある。そのおかげで、芋洗い状態で風呂に入るという経験はなかった。
 オレは2階のシャワールームをメインに使っているから、オレ用のソープ類は揃っている。
 裸のままの悠晴と、シーツを脱衣場で落としたオレは、2人一緒にシャワーを浴びた。もちろん、オレのナカから悠晴が吐き出した精液も掻き出さなくてはならない。
 最初は自分で掻き出していたけれど、奥の方まで指が届かなくて、結局悠晴に頼むことになったのだが。

「ん……っ、ぅあっ、あ……、まて、ゆうせ……っ」
「どうしたの」
「おまえ……っ、わざと、……あっ!」

 掻き出すついで、とばかりに、悠晴はオレの感じやすい場所をコリコリと刺激してくるのだ。
 そんなことをされたらまた欲しくなる。

「あ……、はぁ……んっ! ゆうせい、も、いい……っ!」

 もうたぶん大丈夫だ、と振り返れば。

「あ……っ!」

 正面から、抱きすくめられた。その瞬間に、腹にあたる熱いソレ。

「悠晴……、おまえ。この状況で……」
「そりゃ勃つでしょ。葵のあんな声聞いたら。俺は葵のことが好きなんだから」
「……そういうのは、反則だろ」

 悠晴の指にイタズラされてオレも半勃ちだけれど、悠晴のソレは完全に勃ち上がってその存在を主張していた。
 手か口でしてやるか。それとも……。
 そう迷っていれば、悠晴の指がオレのペニスに絡められた。

「あ……、ダメ……っ!」
「ごめんね。中途半端なのもキツいよね」

 そう言いながらゆるゆると扱かれて、ガクガクと膝が震える。

「あ、や……っ! んぁ!」

 竿をコシュコシュと扱かれて勃ち上がるけれど。鈴口にカリ、と爪を立てられて、喘ぐ。でも、どうしてもイけなかった。

「葵、指じゃ足りない? 口でしようか?」

 悠晴の言葉に、ふるふると首を振る。
 気持ちいい、のに。だけどイけない。
 理由はなんとなく分かっていた。
 うしろの、気持ちよさを知ってしまったから。物足りなくて、前だけじゃイけない。

「ゆうせい……、うしろ……っ! うしろ、さわって……っ」
「…………っ!」

 もう、オレのこの身体は悠晴によって作り替えられてしまったのだと思う。
 悠晴は、オレが懇願する通りうしろを指で探ってくれる。けれど、コレはさっきの掻き出す時と同じ質量で、抱き潰されたばかりの身体は、もっともっと、と熱さを求めてひくりとうごめく。
 本能が求めるまま、オレは悠晴のペニスに指を絡めた。びく、と反応するのがわかる

「葵……っ!」

 焦ったような、悠晴の声に耳がくすぐられる。
 オレは、熱に浮かされたような声で、言葉を紡いだ。

「ゆうせい……、これ、いれて……っ!」
「…………っ! もうっ!」

 舌打ちするみたいに悠晴は言うと、オレの身体をくるりと反転させて腕を壁につかせた。尻を悠晴に向かって突き出すような姿勢に羞恥を覚える間もなく、さっきまで悠晴の剛直を受け入れていた場所に、ずぷり、とソレを押し込まれる。

「あぁっ! ああぁぁんっ!」

 待ちかねたモノの挿入に、オレの身体が歓喜に震えた。
 くちゅ、くちゅん、という抜き挿しするたびに響く恥ずかしい水音と、背中に降り注ぐシャワーに、オレはあっという間に追い上げられる。

「あぁ……っ、ぁん、は、あぁっ、ん、くぅ……っん! んぁ、あ、あぁっ! ゆうせい……っ!」
「うん、イって……」
「は、ああぁぁぁっ!」

 ビュル、とだいぶ薄くなった白濁を撒き散らせば、悠晴は後孔からペニスを引き抜き、オレの背中にビュクビュクと熱い迸りを吐き出した。シャワーですぐに流れるソレを、少し残念に思いながら、オレははぁはぁと荒い呼吸を繰り返した。

 浴槽に湯を溜めて、後ろから悠晴に抱きかかえられながら身体を悠晴に預けて、2人でのんびりと湯に浸かった。

「ほんと……、散々ヤってくれたな……」
「俺は煽るなって言ったよ」
「そうだけど……」
「初恋こじらせた童貞ってヤバいよね。葵もこれにりたら煽るのやめてね」
「…………初恋?」
「うん、そうだけど?」
「いや……、え?」

 悠晴の初恋がオレ? いや、そんなバカな。
 そんなことをぐるぐると考えていると。

「俺はさ、こんな見た目だから周りに人が絶えないんだよね」
「……モテ自慢か」
「そういうんじゃなくて。親の権力とかさ。俺を連れて歩いていれば、それなりにうらやまれるでしょ。そういう打算の世界で生きてきたから、恋なんてしたことがなかったんだよ」
「それは……難儀なんぎだな」
「それがさ。高校へ来て葵に初めて会った時に一変したんだよね」
「オレ……?」
「言ったでしょ、図書室」
「ああ……」
「最初は、随分ずいぶんと場違いな綺麗な子が居るな、って目を奪われてさ」
「そうかよ……」

 自分のことなのに、いや、自分のことだから、なんだか居心地が悪くなる。
 『綺麗』だと言われる容姿だという自覚はあるけど、自信はない。

「取り澄ました顔で仕事して、でも沢口と話す時だけは穏やかな顔しててさ。それで、何かの拍子にふっと笑ったんだよ」
「え……」
「一瞬で落ちたよね。それからは葵一筋。でも、本当に言うつもりはなかったんだよ。だって、絶対に引かれるだろ?」
「まあ、一般的に考えれば、な……」
「そうでしょ? だから本当に、今は夢みたいな気持ち」

 そんな悠晴の告白を、オレはぼんやりと聞いていたけれど、だんだん恥ずかしくなってくる。のぼせた訳でもなく顔が赤くなるのが分かって、両手で覆った。

「悠晴、お前……。どんだけオレのこと好きなんだよ……」
「愛してるよ。一生、葵だけ。そのくらい好き」
「真面目に答えるなよ、恥ずかしい……」
「ねえ、それより」
「……ん?」
「答え。きちんと聞いてないんだけど」

 答え。何の話だ、と一瞬考えたのだけれど。

「俺と、本気で付き合ってくれる?」

 改めて言われて、また更に恥ずかしくなる。
 ああ、そうだ。しっかりと答える前にオレの方から抱いてほしいとねだったのだった。

「ん。付き合おう。……今度こそ、契約なんかじゃなくて、本当の恋人として」

 悠晴に身体を預けたまま、振り返るように顔だけ向けてそう囁いた。悠晴のこめかみに、ちゅ、とキスを送れば、後ろからギュッと抱きしめられる。

「嬉しい……。ありがとう、葵」
「ふは。悠晴、ちょっと苦しいって。お前の誕生日には、99本の薔薇の花束でも贈ってやろうか?」
「なにそれ嬉しすぎるんだけど。しかも、108本贈る権利は譲ってくれるんだ?」
「……お前、そこまで考えてるの?」

 薔薇の花自体が愛情を表現する花であると有名だが、悠晴が言ったように、本数によって花言葉がある。オレが言った99本は『ずっと一緒にいよう』で。悠晴が言った108本は『結婚してください』。よくプロポーズの時に使われるらしい。
 意味を知っているオレたちも大概だが、実際に使おうとしている所も随分とロマンチック思考だな、と呆れてしまう。

「初恋は実らないとかいうけど、俺は一生に一度しか恋するつもりはないから」
「それ、ちょっと重いぞ……」
「なんとでも言ってよ」

 そう笑って言いながら、悠晴は首を傾けてきてオレの唇を塞いだ。

「ん……」

 くちゅり、と絡め合わせてくる舌が、その本気さを物語っているようだった。



【END】
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