人狼さんの封印といた

ぼたにかる

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11・ふわふわと自由

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「魔力を感じて、指先に風の状態として集められました。ささ、次の段階に進みましょうエント先生!」
「はいは~い。じゃあステップその2です。フーカは今、僕の魔力を指先に集めて風として表現しました。次はフーカの身体全身に満遍なく展開して身体を軽くしてみましょう。ぷかぷか浮かべるくらいにね。最初は難しいかも知れませんが、半端に浮んで転げ落ちそうになっても心配ご無用です! 僕がぜったい抱き留めますから!」

エント先生はまたまたえっへんと胸を張った。
エントさんの身体能力は人間達を殺しまくった時にばっちりきっちり見ちゃったからして、人間のそれを大きく凌駕しているのは理解している。私がぷかぷか浮んですぐに魔法が解けたとしても、地べたにべしゃっと落下なんて、エントさんがさせないだろう。

私は再び無防備になって瞳を閉じて、全身に満ちるエントさんに意識を巡らせた。もうすっかり私は分かる。足の先、指の先、私の細部にエントさんが深く深く染み込んでいる。私の深部に干渉できる。
彼の魔力は、私に従う。
私は軽く、軽く、もっと軽く。この身体は宙に浮くもの。
そんな風に、思い込んでみた。
私がそんな風に思い込みめば、彼の魔力が私の思い込みを現実のものにしようとするに決まっているから。

ふわ。
と、一瞬だけ、私はベッドから少し浮かび上がった。

「!! 浮いた……!」
「ええ! 僕もはっきり見ましたよ! フーカは魔法の天才です!」
「そうですか? そうだと良いなあ。でもでも私、エントさんに魔力を補充されないと駄目なタイプですから」
「魔力がすっからかんの代わりに魔法の扱いが抜群に上手いのかもしれませんね~。や、お世辞なんかじゃないですよ。本当に物凄い習得速度なんですよフーカ」

はい、もう一度。
ふわりと微笑むエントさんは立ち上がり、私へと手を差し伸べる。
ベッドに腰掛ける私、その傍らに立ち上がって手を伸ばすエントさん。エントさんの背は高い。座る私が見上げる高さで私を待っている大きな手の平。
私は上へ、上へと手を伸ばす。
私の手は届かない。
浮ばないと、届かない。
きっとあの手は私を待っているのに。
そう思うと、すい、と手が近付いてきた。
違う。
私が宙に浮んで、エントさんの手に近付いたのだ。
伸ばして、伸ばして、伸ばして……届いた。
きゅっと強く握られる私の手。
浮いた身体が腕の中にすっぽり捕まる。
ふわふわとした視界、エントさんと同じ目の高さ。

「ああ、うん……。なんか、大丈夫かも」

重力なんてないみたいに浮遊する私を、ふわふわと何処かに飛んでいってしまいそうだった私を、そうっと捕まえるエントさんの腕。
……ちょっと高く飛びすぎたかも知れない。

「有り難うエントさん、まだまだ細かい調整が難しくて」
「そんなの、フーカならすぐに感覚掴んじゃいますよ」

そう言いながらも、ぎゅーっとぷかぷか浮ぶ私を腕の中に閉じ込めたままのエントさん。けれど彼の肩越しに見える尻尾が心なしかしょぼんとしている。

「本当にすごいです、フーカ。きっと風が、フーカの事大好きなんでしょうね。すぐに何処へでも行けるようになっちゃいそうです。でも……あんまり遠くに行かないで下さいね」
「あんまり心配なら私に魔力補充するの止めるとか、そんな手段も選べるでしょうに」
「それは嫌です。僕が寂しいからって、フーカから自由を奪うなんてしちゃいけないと思うんです。そのひとの意思を無視して閉じ込めるって酷い事です。僕はそんな目に遭って嫌でした。だからフーカにそんな思いをして欲しくない」

……寂しいですけど。
と上目で見あげてくるエントさんは、年上の男性にこう言うのはどうかと思うけれど、すっごく可愛い。きゅーんってしてしまう。
思わず私もぎゅっと抱きついてしまう。

「…………っ」

するとエントさんの頬が真っ赤に染まりきってしまった。
え? え??
抱き締め返すのって初だっけ? 違ったっけ?
でもそんな、こんなに綺麗なひとなのに、私みたいなちっぽけな小娘が抱き締め返しただけでそんな、なっちゃう?
あわわわわとか言いながら、その割りに私を腕の中から放そうとはしない。

「ええと、とにかくっ、外は人間が時々僕を殺しに来るので危険なのです。フーカは自由でいるべきですけど、安全でもあるべきです。だから出来る限り僕の目の届く範囲に居て欲しいのです」
「はぁ~い」

取り敢えず私は良い子のお返事をしておく事にした。
何かもう、エントさんがいっぱいいっぱいになっている様子なので。




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