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02:謝罪に来まして
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「本っ当にごめんなさい!」
何故か男子寮にあるヒロインの部屋に来て、扉が開くと同時に深く頭を下げる。いっそ土下座しようとも思ったが土下座の文化はこの西洋チックな世界観には存在しないので誠意が伝わらないと思ってやめた。わたしには、誠心誠意深々と頭を下げることしかできない。
それにしても……女子寮もだけれど、男子寮も物凄く静かだ。私の声だけが廊下に響く。心の底から謝罪している姿は証人として誰かに見てもらいたいと思うが、こういう時にはいつも誰も来ないんだよなあ……ナイトたちは一体何をしているの!いつも変なタイミングの時は来るのに!
「え、あ、いや……別にいいけど……」
ヒロインのシャーリィはびっくりした顔で私を見ながら困ったような声で返した。
少し水滴が床に垂れているのが見えて、ちょっとだけ顔を上げてみるとお風呂上がりなんだろう。頬がちょっとだけ火照っていて……。ん?なんかいつもと違うような…?
「あら…?髪が……」
いつもは腰まである髪が、とても短い。ばっさりショートヘアになっている。女性でもショートヘアの子はいる。でも、なんというか、男の子のような髪型だ。顔は中性的だからそういった髪型も似合っているけど……。
「ああ、これは……」
「あっ!す、すみません!湯上がりに失礼しましたわ!」
まじまじと見詰めてしまって、思わず顔を背ける。ゲームをプレイしていたから知っていたとはいえ、実物を見ると、同性から見てもものすごく魅力的だ。夜だからだろうか、普段聞いている声よりもちょっとだけ低いような気もして……色っぽさが増しているし、胸がドキドキする。顔が熱くなるのを感じて、思わず手で頬を隠す。
「今日はいつもより表情がコロコロ変わるんだね」
「え?」
ぐいっと腕を引かれれば、距離が近くなって。お風呂上がり特有の石鹸のいい匂いがして、体温を感じて――って、わたしったら何を考えているの!?
「そんなところも可愛いね」
耳元で、低い声で囁かれる。中性的な声じゃなくて、男の人の声そのもので……って、近い!顔が!体が!距離がなんかもう近い!!
「あああああの!?」
「ふふっ」
離れようと胸を押す。思ったよりもぺたんこで硬いその胸にびっくりしてしまった。がっしりと腕を掴まれていて、離れない。華奢な女の子の力じゃない。どっからそんな力が出ているの!?
混乱するわたしを見て、楽しそうに笑ったかと思えば手を離される。
「今のは今までの仕返しだよ」
悪戯な笑みに、体中の熱が頭に上っていく。ヒロインってこんな人だったろうか。大爆発してしまいそうで、全力で押し返して踵を返す。
「わ、わたしはもう戻りますので!失礼しますわ!」
ドキドキしすぎて上手く力が入らなかったけど、シャーリィも手を離してくれたようでようやく距離を取ることが出来た。短い時間だったのに、随分と長く近くにいた気がした。
「はっ…!あ、あの!…今までのことは本当にごめんなさい!では、失礼しますわっ」
立ち去ろうとしたところでもう一度振り返って、深く頭を下げる。ともかく、色々と意地悪なことをしてしまったのはわたしなのだから、謝罪はしっかりとしておく。
「本当に面白い女の子だな。うん、あの子なら良いかもしれないね」
頭を上げてすぐに女子寮の方へと走るわたしの背中を見て、シャーリィが呟いていたけど、そんなことを言っていたなんて、聞き取ることはわたしにはできなかった――。
何故か男子寮にあるヒロインの部屋に来て、扉が開くと同時に深く頭を下げる。いっそ土下座しようとも思ったが土下座の文化はこの西洋チックな世界観には存在しないので誠意が伝わらないと思ってやめた。わたしには、誠心誠意深々と頭を下げることしかできない。
それにしても……女子寮もだけれど、男子寮も物凄く静かだ。私の声だけが廊下に響く。心の底から謝罪している姿は証人として誰かに見てもらいたいと思うが、こういう時にはいつも誰も来ないんだよなあ……ナイトたちは一体何をしているの!いつも変なタイミングの時は来るのに!
「え、あ、いや……別にいいけど……」
ヒロインのシャーリィはびっくりした顔で私を見ながら困ったような声で返した。
少し水滴が床に垂れているのが見えて、ちょっとだけ顔を上げてみるとお風呂上がりなんだろう。頬がちょっとだけ火照っていて……。ん?なんかいつもと違うような…?
「あら…?髪が……」
いつもは腰まである髪が、とても短い。ばっさりショートヘアになっている。女性でもショートヘアの子はいる。でも、なんというか、男の子のような髪型だ。顔は中性的だからそういった髪型も似合っているけど……。
「ああ、これは……」
「あっ!す、すみません!湯上がりに失礼しましたわ!」
まじまじと見詰めてしまって、思わず顔を背ける。ゲームをプレイしていたから知っていたとはいえ、実物を見ると、同性から見てもものすごく魅力的だ。夜だからだろうか、普段聞いている声よりもちょっとだけ低いような気もして……色っぽさが増しているし、胸がドキドキする。顔が熱くなるのを感じて、思わず手で頬を隠す。
「今日はいつもより表情がコロコロ変わるんだね」
「え?」
ぐいっと腕を引かれれば、距離が近くなって。お風呂上がり特有の石鹸のいい匂いがして、体温を感じて――って、わたしったら何を考えているの!?
「そんなところも可愛いね」
耳元で、低い声で囁かれる。中性的な声じゃなくて、男の人の声そのもので……って、近い!顔が!体が!距離がなんかもう近い!!
「あああああの!?」
「ふふっ」
離れようと胸を押す。思ったよりもぺたんこで硬いその胸にびっくりしてしまった。がっしりと腕を掴まれていて、離れない。華奢な女の子の力じゃない。どっからそんな力が出ているの!?
混乱するわたしを見て、楽しそうに笑ったかと思えば手を離される。
「今のは今までの仕返しだよ」
悪戯な笑みに、体中の熱が頭に上っていく。ヒロインってこんな人だったろうか。大爆発してしまいそうで、全力で押し返して踵を返す。
「わ、わたしはもう戻りますので!失礼しますわ!」
ドキドキしすぎて上手く力が入らなかったけど、シャーリィも手を離してくれたようでようやく距離を取ることが出来た。短い時間だったのに、随分と長く近くにいた気がした。
「はっ…!あ、あの!…今までのことは本当にごめんなさい!では、失礼しますわっ」
立ち去ろうとしたところでもう一度振り返って、深く頭を下げる。ともかく、色々と意地悪なことをしてしまったのはわたしなのだから、謝罪はしっかりとしておく。
「本当に面白い女の子だな。うん、あの子なら良いかもしれないね」
頭を上げてすぐに女子寮の方へと走るわたしの背中を見て、シャーリィが呟いていたけど、そんなことを言っていたなんて、聞き取ることはわたしにはできなかった――。
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