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SIN

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チョコレート

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 テーブルの上には、四角い箱が1つ。
 「ハァ……」
 何度目かの溜息が出て、椅子の背もたれに体を預ける。
 ボンヤリと天井を見つめてから、もう1度テーブルを見ると、そこには相変わらず四角い箱が1つ。
 箱の蓋を開けてみると、中には手作りの丸いチョコレートが6粒入っていた。
 無言で蓋をして、再び天井に視線を戻す。
 数時間前、学校帰りに女子から貰ったプレゼントの中身が、手作りチョコレート。これがバレンタインなら、まだ自然だと思う。
 いや、俺が手作りチョコをもらえる事自体が可笑しいのだろうけど、現にこうしてもらってる訳だし、いやいや、でもこれは……。
 テーブルの上を見ると、相変わらず四角い箱が1つ。
 「ハァ……」
 観念するしかない。
 箱を手に持ち、揺らさないように床に置いて、その前に正座して、大きくゆっくりとした呼吸を1回、2回、3回。
 蓋を開けて横に置き、丸いチョコを1粒ずつ取り出して蓋の上に置く。
 コロコロ、コロコロ、コロロン、コロン、コロロ。
 「これだ……」
 箱に残った1粒のチョコから流れ出てくる気配は、平和な日常にふさわしくない禍々しさを感じる。
 どう見たってこのチョコには呪いがかけられている。
 普通のチョコなら、バレンタインじゃなくても365日24時間いつでも大歓迎だと言うのに!チョコじゃなくて、クッキーでも、ケーキでも、なんだって良い。
 あ、24時間は言い過ぎか。
 とにかく、呪いさえかかっていなければ大歓迎だ!
 コロコロ。
 蓋に置いた残りのチョコも食べない方が無難か?
 食べ物を粗末にするのは駄目な事ではあるが、勿体無いからと危険な物を食べて体を壊しても駄目だ。
 毒抜きをすれば食べられるだろうか?
 しかし、呪いの種類を明白にしなければ完全に浄化させる事は難しいだろう。これを作った本人に聞くか?
 いや待て、そんな事をすれば俺が呪いを見破ったと言っているも同然。こんな代物を作る相手だ、下手に動いて警戒されたらもっと巧妙な罠を仕掛けてくるに違いない。
 ならどうすれば?捨てるにしたって、このままで良いのか?
 完全に浄化は出来なくとも、呪いを弱らせた方が……。
 待てよ、中途半端に解いた場合、その念の行き先は術者に戻る。そうなると俺が解ける人間だと相手に知らせてしまう事になる。
 封印する?
 少し大袈裟な気もするが、これを作った相手がどんな人間であるかが分かるまではそれが1番……。
 「もーらい」
 ヒョイと隣に来たのは妹で、
 「あっ!」
 静止する間もなく、蓋の上に置いていたチョコを1粒、食べてしまった。
 「もう1個もーらい」
 「待て待て待てぇい!」
 再び伸びてくる手を掴んで静止し、箱に入ったままのチョコを見せる。
 「呪いがかけられている!これ以上食わせる訳にはいかない!」
 こんなにもハッキリとした念なのだから、妹にだって少し位は見える筈だ。蓋に置いているチョコは普通ではあるが、このチョコと一緒に箱の中に納められていたのだから多少なりとも影響を受けた筈だと言うのに、妹はもう一方の手で箱の上に置いていたチョコを掴むと、パクリと口の中へ。
 「心配し過ぎ」
 心配?違う、警戒しているんだ。
 呪いだぞ?こんな平和的なプレゼントに仕組んで油断させようと言う卑劣な罠だぞ!
 「これ以上は駄目だ。箱ごと封印する」
 箱に残した1粒だけじゃなく、蓋に残っている3粒も一緒に封印しよう。それと、2粒食べてしまった妹を浄化させなければならない。
 「いやいや!呪い?封印って正気!?」
 2粒食べたお前の方が正気ではないだろう。
 「どんな種類の呪いか明白になるまでは、封印する。俺は正気だ」
 断言し、残ったチョコを箱の中に戻していると、妹はまだ1粒入っている蓋を手に持ち、それを俺の目の前に差し出した。
 「良く見て!」
 と、少し大きな声で。
 目の前で見るチョコは、特に何の気配も発してはいないが、微かに念の流れを感じる。
 やはり、多少の影響はあったのか。
 妹が食べてしまったのだ、呪いの種類を特定する為に作った本人と連絡を取ろう……今後、どんな罠を仕掛けられるかは分からないが、妹をこのままにはしておけない。
 「呪いが特定出来るまで、お前も封印する」
 勝手に食べるからこんな事になるんだ、少しは反省してくれ。
 「……良ぉく聞いて。これ、おまじない!ただの、恋のおまじない!」
 おまじないを漢字で書くと「お呪い」なんだから呪いの一種で間違いはな……ん?
 えっ?こ、こ、恋!?
 妹が蓋に戻したチョコはコロコロと蓋の中を転がり、その愛らしい動きに自然と指がチュコに伸びた。
 「いただきます!」
 妹は、物凄い勢いで笑っている。
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