嫁いできた花嫁が男なのだが?

SIN

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 2人と1匹を屋敷で保護した翌日の夕食時、手当てを受けた2人も一緒に食卓に呼ばれていた。
 侯爵家に向かっていたと言っていたから、何処かからの使者か貴族のお忍びか何かだろうと思っていたんだけど、食事に呼ぶってことは……えっと……。
 もうちょっとややこしい感じの人物だったのだろう。
 例えば、島の国からの使者とか……実は姫はこっちに向かわずに引き返したとかだったり?
 兄さんが行方不明になってるんだから、それが妥当……。
 「アイン、こちらが姫君だ」
 ブゥッ!
 口を拭きながら女性の方を見れば、高速で首を横に振っている。
 「違うって言ってるけど?」
 「もう1回言う。こちらが、姫君だ」
 父さんは手を明らかに男の方に向かって動かした。
 「……あ、レッドドラゴン?」
 と、男の頭上にいるレッドドラゴンを見る。
 「(僕は姫様じゃないよ)」
 分かってるよと少し視線を下に向けると、ジィっとこっちを見ている男が1人。
 「あっ、姫様の護衛の人?えっと、名前は?」
 「……私は王女様の護衛騎士、トリシュと申します」
 サッと立ち上がった女性は、そう自己紹介すると綺麗に礼をして見せてくれて、俺はこの女性が姫様の護衛騎士なのだと理解が出来た。
 で、肝心の姫様はどこに?
 「うむ……誰が先に名乗りなさいと言った?身分が下の者は先に声を発するものではないとは、大陸だけのマナーだったかね?」
 え……えー父さん今そういう細かいことは良いと思うんだけど?
 それに今のは俺が護衛の人に名前は?って聞いたから名乗ってくれただけでしょ?
 確かに、男の方に聞いたんだから女性の方が答えるのはちょっと変だなーとは思うけど。
 「父さん、今のは俺が聞いたから答えてくれただけ。で、そっちの護衛の人はなんて言うの?あ、俺は侯爵家の次男でアイン」
 「……私、島の王国15王子……王女のジョセフィーヌと申します、わ」
 今、王子って言いましたよね?
 「アイン、こちらが姫君だ」
 え?
 なにごと?
 「は?姫?え?男だよな?え?姫?は?」
 姫じゃなくて王子が来てるよな?
 待て、もしかして物凄く貧乳な上にちょっと男らしい顔つきで、声がハスキーヴォイスなだけとかだったり?
 だとしたら俺結構失礼じゃないか?
 自分を王子だって言ったのも、自国ではあまりにも男っぽいからそう言わて育ったとかだったら、俺の態度でかなり傷付いた筈だ。
 愛されるように努力しようって思ってたのに、初対面では馬車を剣で壊そうとして怯えられるし、初めての食事会では男呼ばわりだしで、今の段階で俺の評価ってかなり低いんじゃあ……。
 マイナスかも……。
 食事の後庭へ散歩に誘ってみよう。
 そこで、そうだプレゼントしようと思ってたぶどう酢を渡そう。
 「レディー、この後庭で散歩でも如何でしょうか?」
 こうして連れ出してみた庭は少々暗くて、だから話しやすくなった俺は思い切って尋ねてみた。
 「兄さんが見つかるまで待ってる?」
 本当は森の中で馬と御者のいない馬車の中で拘束されていたこととか、あの場所の頑丈な防御魔法はなんだったのかとか、色々聞かなきゃならないことはあるんだと思う。
 でもさ、政略結婚する姫様が、護衛騎士とたった2人きりで遠路はるばる侯爵家まで来るとは思わないじゃんか。
 それって、やっぱり兄さんと早く一緒になりたかったとか、そういった理由があったんだと思うんだ……。
 「私の婚約者は、今はカイン様ではなくアイン様です」
 まぁ、そうなんだけどさ。
 「結婚式はすぐじゃなくて良いんだ。だから、兄さんが戻ってくるまで結婚式をあげなかったら、姫様は兄さんと結婚式があげられると思う」
 無理だって父さんが言ったとしても、できるように頑張ってみるから。
 まぁ、当の兄さんは結婚したくなくて逃げたっぽいけど……。
 「私の夫は貴方です。貴方の妻は私です。ここまでハッキリ言えば通じますか?」
 お、おぉう……かなり、かなり直接的な言葉選びでいらっしゃる……。
 だけどハッキリしたのは、姫様からしてみれば兄さんでも俺でも大差がないってこと。
 だから、どっちと結婚しても特に問題ないよーって思ってるんだろう。
 「恋愛結婚がしたい」
 誰かに言われて仕方なく結婚するんじゃなくて、この人と結婚したいなって、そう思ってから結婚がしたいんだ。
 これはもう子供の頃から思い続けてきたことだから、譲るつもりはない。
 「……なら、恋人っぽいことでもしてみます?」
 そう言った姫様はその場に座り、ポンポンと自分の太腿辺りを叩いて見せてきた。
 もしかして、膝枕?
 暗いから姫様の表情はあまり見えないんだけど、それでもこっちを見上げている顔の角度とか、優しげなハスキーヴォイスが……。
 うん……姫様ってよりも兄さんって感じがする。
 いやいや、だからそうじゃないだろ!
 姫様は男っぽいってことを気にしてるかも知れないんだから、ここは本当に恋人っぽいことをして親睦を深める場面だ。
 「え……と、じゃあ、少しだけ」
 「少し硬いとは思いますが、どうぞ」
 どうぞと言われて座り込み、少し顔を覗き込んでみるが結構な無表情だったのね。
 少なくとも姫様の方に恋愛感情は今のところ全くないらしいってことが分かって、だから悔しいので平然を装って俺は姫様の太腿辺りに頭を落として膝枕をしてもらった。
 確かに恋人らしいことに違いないし、例え恋愛感情がなくても少し位は心臓が跳ねるとか、なんかそういった変化はある筈の行動だ。
 「うん……」
 俺は目を閉じ、両手で顔を覆った。
 あるなぁ……。
 この姫様、股の間に俺と同じもんがついてるなぁ……。
 「どうですか?」
 どうもこうもないわ!
 でも、なんか寝心地は良いかも?
 「硬さが、丁度良い」
 「ふふっ、そうですか」
 今、笑った?
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