10 / 66
10
しおりを挟む
フワリと温かな光を瞼に感じて目覚めれば、俺の視界には生命線の長い掌がうつった。
早朝に魔物が沸いて討伐して、ひと段落ついたところで仮眠をとって今だから、時刻は恐らく10時とかその辺りだろう。
それならもっと目に優しくない太陽光が容赦なく目を刺激しているだろうに、優しいというのだから曇っているのかな?なんて目を開けてみれば掌。
あぁ、感情線も長いな。
手相占いとかできないから、意味は分からないけど。
「代わりましょうか?」
あ、トリシュの声……なんでトリシュの声が聞こえるんだっけ?
「いや、良い」
これは姫様の声?
「……これから、どうなさるおつもりですか?」
ガサリと音がして、トリシュの声が少しだけ近くなった。
多分座ったのだろう。
「昨日、また王からの手紙が届いた……結婚の知らせが早く聞きたいらしい」
島の王はかなり焦っている感じなのか?
なにをそんなに急いでいるんだろう……婚約して、相手の領土に姫様が来ているこの状態は島の王からしてみればもう結婚したって感覚だと思うんだけど。
婚約者、ではなく正当な妻としての地位が必要だとかその辺?
まぁね、王女がいつまでも相手の領土で婚約者って立場のままだと、何かと権力的に良くないのかも知れないな。
だったらさ、もっとトリシュみたいに一目見ただけで完全に女性だって分かる王女を選んでくださいよ!
股の間にアレのある王女ってなに!?
声とか凄く良い感じにハスキーボイスだしさ!
「その男に結婚の意思はあるのですか?」
あ、俺ってトリシュにその男呼ばわりされてるのね……。
「ないだろうな。侯爵もこちらを疑っている様子だ」
父さんが姫様達を疑ってる?
いや、まぁ、そりゃ疑うでしょ……見た目は多少線が細いものの完全に男だし、声もまぁ男性的だし、自己紹介の時に自分で“王子”って名乗っちゃったし、それで疑わない方がちょっとどうかと思います。
「王は結婚式に参列するのでしょうか?」
「捨てるように嫁がせた王女のために島を出ることはないだろう」
捨てるように?
あっと、確か15王子……王女なんだっけ。
兄弟物凄く多いな。そりゃ15人目ともなれば嫁ぎ先を見つけるのも一苦労……姫様が15王子なだけで、王女が何人いるかも分からないし、姫様が末っ子って説明がなかったから、厳密にはもっと多いのか。
島の国は一夫多妻制っぽいな。
「……どう、なさるおつもりですか?」
「当初の予定通り。俺は侯爵家にいられれば、それで良い」
侯爵家にいるだけで満足ってこと?
数日かかるって言われてた到着を大幅に早めるほど急いで侯爵領に来ていたこととか、俺に結婚の意思がないと分かっていても良いってこととか、なんか全部ひっくるめたらさ、兄さんが戻ってくるかもしれない侯爵家にいられるだけで満足って感じでしょ?
この姫様、どんだけ兄さんのことが好きなんだよっ!
その侯爵家に滞在するためには、俺と結婚するしかない。
好きでもない俺に恋人みたいなことをしようとか提案してきた時、どんな気分だったんだろう?
決めた。
俺は決めたよ。
「姫様!俺、姫様の恋を応援するよ!」
ガバリと起き上がれば、一気に太陽光が目を刺激してくらみ、しばし目を押さえて目が慣れるまで待つことになった。
その間、姫様もトリシュも一言も声を出さないから、無言で帰ったんじゃないか?ってちょっと不安になったんだけど、薄く目を開けて足元を見れば、姫様の靴のつま先部分が俺の方を向いてて、何故かそれで安心できた。
「落ち着きましたか?」
パチパチと瞬きをして顔をあげれば、無表情なトリシュとこれまた無表情の姫様の顔が見えた。
「落ち着いた……って、なんで2人はここに?森の近くは危ないから屋敷でのんびりしてて」
今は朝だから安全ではあるけど、それでも昼間に活動する魔物がいない訳じゃないからな……たいていの魔物は見張りの騎士達でなんとか出来るけど。
「のんびり出来ると思いますか?」
ん?
のんびりできない?
「ソファーのサイズが合わないとか?ベッドが固い?」
「……え?」
ん?なにか変なこと言った?
本とか刺繍とか、趣味の時間を……そうか、道具がないんだな?
そうだそうだ、姫様の乗ってきた馬車の中に荷物らしい荷物ってなかったんじゃないか!つまり、服も小物も花嫁道具的なものも持ってないってことじゃん!
気付くのが遅過ぎたけど、気付けて良かった。
買い物に出かけ序に親睦を深めて、まずは良い友達関係を築こう。
早朝に魔物が沸いて討伐して、ひと段落ついたところで仮眠をとって今だから、時刻は恐らく10時とかその辺りだろう。
それならもっと目に優しくない太陽光が容赦なく目を刺激しているだろうに、優しいというのだから曇っているのかな?なんて目を開けてみれば掌。
あぁ、感情線も長いな。
手相占いとかできないから、意味は分からないけど。
「代わりましょうか?」
あ、トリシュの声……なんでトリシュの声が聞こえるんだっけ?
「いや、良い」
これは姫様の声?
「……これから、どうなさるおつもりですか?」
ガサリと音がして、トリシュの声が少しだけ近くなった。
多分座ったのだろう。
「昨日、また王からの手紙が届いた……結婚の知らせが早く聞きたいらしい」
島の王はかなり焦っている感じなのか?
なにをそんなに急いでいるんだろう……婚約して、相手の領土に姫様が来ているこの状態は島の王からしてみればもう結婚したって感覚だと思うんだけど。
婚約者、ではなく正当な妻としての地位が必要だとかその辺?
まぁね、王女がいつまでも相手の領土で婚約者って立場のままだと、何かと権力的に良くないのかも知れないな。
だったらさ、もっとトリシュみたいに一目見ただけで完全に女性だって分かる王女を選んでくださいよ!
股の間にアレのある王女ってなに!?
声とか凄く良い感じにハスキーボイスだしさ!
「その男に結婚の意思はあるのですか?」
あ、俺ってトリシュにその男呼ばわりされてるのね……。
「ないだろうな。侯爵もこちらを疑っている様子だ」
父さんが姫様達を疑ってる?
いや、まぁ、そりゃ疑うでしょ……見た目は多少線が細いものの完全に男だし、声もまぁ男性的だし、自己紹介の時に自分で“王子”って名乗っちゃったし、それで疑わない方がちょっとどうかと思います。
「王は結婚式に参列するのでしょうか?」
「捨てるように嫁がせた王女のために島を出ることはないだろう」
捨てるように?
あっと、確か15王子……王女なんだっけ。
兄弟物凄く多いな。そりゃ15人目ともなれば嫁ぎ先を見つけるのも一苦労……姫様が15王子なだけで、王女が何人いるかも分からないし、姫様が末っ子って説明がなかったから、厳密にはもっと多いのか。
島の国は一夫多妻制っぽいな。
「……どう、なさるおつもりですか?」
「当初の予定通り。俺は侯爵家にいられれば、それで良い」
侯爵家にいるだけで満足ってこと?
数日かかるって言われてた到着を大幅に早めるほど急いで侯爵領に来ていたこととか、俺に結婚の意思がないと分かっていても良いってこととか、なんか全部ひっくるめたらさ、兄さんが戻ってくるかもしれない侯爵家にいられるだけで満足って感じでしょ?
この姫様、どんだけ兄さんのことが好きなんだよっ!
その侯爵家に滞在するためには、俺と結婚するしかない。
好きでもない俺に恋人みたいなことをしようとか提案してきた時、どんな気分だったんだろう?
決めた。
俺は決めたよ。
「姫様!俺、姫様の恋を応援するよ!」
ガバリと起き上がれば、一気に太陽光が目を刺激してくらみ、しばし目を押さえて目が慣れるまで待つことになった。
その間、姫様もトリシュも一言も声を出さないから、無言で帰ったんじゃないか?ってちょっと不安になったんだけど、薄く目を開けて足元を見れば、姫様の靴のつま先部分が俺の方を向いてて、何故かそれで安心できた。
「落ち着きましたか?」
パチパチと瞬きをして顔をあげれば、無表情なトリシュとこれまた無表情の姫様の顔が見えた。
「落ち着いた……って、なんで2人はここに?森の近くは危ないから屋敷でのんびりしてて」
今は朝だから安全ではあるけど、それでも昼間に活動する魔物がいない訳じゃないからな……たいていの魔物は見張りの騎士達でなんとか出来るけど。
「のんびり出来ると思いますか?」
ん?
のんびりできない?
「ソファーのサイズが合わないとか?ベッドが固い?」
「……え?」
ん?なにか変なこと言った?
本とか刺繍とか、趣味の時間を……そうか、道具がないんだな?
そうだそうだ、姫様の乗ってきた馬車の中に荷物らしい荷物ってなかったんじゃないか!つまり、服も小物も花嫁道具的なものも持ってないってことじゃん!
気付くのが遅過ぎたけど、気付けて良かった。
買い物に出かけ序に親睦を深めて、まずは良い友達関係を築こう。
11
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
できるかぎり毎日? お話の予告と皆の裏話? のあがるインスタとYouTube
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結、恋愛ルート、トマといっしょに里帰り編、完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます
水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。
家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。
絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。
「大丈夫だ。俺がいる」
彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。
これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。
無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる