嫁いできた花嫁が男なのだが?

SIN

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20・5

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 部屋のテーブルの上には、ビオラの砂糖漬けが2つ乗った皿が数日前から置きっぱなしになっている。
 島では食べられる花として広く知られていたが、大陸ではそうではなかったようで……随分と感心してたな……。
 けど、作る時には手伝う癖に1個も食べに来ないのはどうかと思う……作る時に俺の部屋に案内しているのだから、それで気兼ねなく来れるようになったーとか、そんな感じで軽く来れるような雰囲気を出しているのに……。
 「何故来ないんだ?」
 「キュイ?」
 砂糖漬けにつられて帰ってくるようになったレッドドラゴンは、それでも皿に乗った2個には手を出そうとはしない。
 きっと、こちらの言葉を理解しているからだろう……俺は、レッドドラゴンの言葉は分からないが、アインとは喋っているような感じがする。
 だから、ほんのわずかな期待を乗せて、俺はアインに対する愚痴を声に出すのだった。
 それが当人に伝わったことなんか、1度もないのだろう。
 けど、それは俺にも言えることだ……時々、レッドドラゴンはまるでなにかを伝えるように泣き続けることがある。
 どこかしらをなんらかの方法で鍛えれば、理解できるようになるだろうか?
 考えられるのは魔力……だけど魔力の才能を持っていても森に近付かないと開花しないんだっけ。だけどアインに会うために何度か森には行っているから、才能がない?それとも、魔物が出るような奥地に行かないと効果がない?
 森の奥に行くには体力が必要だな。
 こうして、魔法使いをおびき寄せる為だとの理由も追加して始めた夜中の走り込み。
 始めは中庭を走っていたんだけど、庭師が酷い顔をして俺の足元を見ていたから、多分薬草を踏んでいたんだと思う……柵とかが設置されていない侯爵家の庭は、まるで平原のような広々とした空間であるがゆえに雑草と薬草を区別するのに専門的な知識が必要だ。
 それならばと訓練場に行ってみると、そこでは夜であるにもかかわらず訓練をしている兵達がいたから諦めた。
 こうして最終的に選んだ場所が、侯爵家の外周。
 流石に普段来ているドレスで走る訳にもいかないので、訓練場から拝借した兵士の服を着た。
 たったそれだけで誰も俺に気が付かないというのだから……まぁ、有難いのか。夜なら俺のダークブルーの髪も黒にしか見えないしな。
 「第15王女、ジョセフィーナだな?」
 外周を走っていると、時々自己紹介を求められた。
 大体は立ち止まって両手を広げ、
 「王女に見えるのか?」
 といえば帰ってくれたのだが……。
 「第15王女の容姿は男性的だとの情報があるのでな」
 どうやら今度の人はしっかりと俺の特徴を掴んできているらしい。だけど、そこまで分かっておきながらどうしてまだ間違えるんだ?
 「人違いだ」
 奇遇にもその人物と似ている部分はあるけど、別人だ。
 「惚けても無駄だ。お前が島の国第15王女のジョセフィーナであり、侯爵家子息の妻であることは知っている」
 知っているならなぜ自己紹介を求めてきたんだ?
 だけど、違うものは違う。失礼にも程があるだろ。
 「俺は違うと言った」
 次に来るとき、間違いを全て正してくることができていたら、話だけでも聞いてやる。
 「まぁ良い。一緒に来てもらおうか」
 俺を攫うことが目的だったのか……何故だ?俺を攫った所でなんにもならないというのに……島の国でも、ホーンドオウル侯爵家においても俺の立ち位置なんてあってないようなものだ。
 どうせ、俺がこの場で野党に襲われて死んだところで父は……あぁ、自分の子が殺されたのを名分にして大陸に戦争を仕掛ける位のことはしそうだな。
 けど、それこそ父とホーンドオウル侯爵が狙っていることじゃないか……まぁ、父はカインの失踪から一気にやる気を失っているが。
 アインに興味を抱かないでくれるよう、祈ることしかできない自分が嫌だ。
 しかし、この人攫いは誰の命令で動いているんだ?
 父の命令なら始めから俺の特徴は完璧に……あぁ、“カインの婚約者”の情報しかなかったのか。
 ホーンドオウル侯爵家の者なら、俺の特徴は完璧に分かるだろうが……第15王女と名乗ったのは侯爵家に着いてから。
 しかし俺はその時ジョセフィーナとは名乗らなかった。
 フィーナ、ではない。フィーヌだ。
 俺の存在を知りつつも詳しくは知らない人物……誰だ?
 1回捕まって、相手のボスを知るのも良い方法……いや、ほぼ丸腰の状態で捕まって逃げ切れる自信はない。
 もし敵にあの時の魔法使いがいたら、勝ち目なんかありはしない。
 「断る」
 人攫いの顔に向かって砂を投げ、屋敷の門に向かって走る。
 いくら人攫いとはいえ、侯爵家の敷地の中にまでは入ってこないだろう。
 「捕まえろ!」
 後ろからの声と同時、横から1人の男が突撃してきて、押し倒されてしまった。
 こういうことは想定済みか……けど、ここから屋敷の門まではそんなに離れてはいないし、すぐ横は屋敷の塀があるのだから、見回りの兵士が1人でもいるなら!
 「だっ…………!」
 え?
 「ギリ間に合ったな……」
 声が出ない?
 「10秒ほどしかもたないぞ」
 沈黙の魔法?
 そうか、ここには魔法がかなり身近なものだったんだ……もし、体を少しの間麻痺させる魔法なんかがあったとしたら……マズイ、本当にマズイ。
 後から出てきた人攫いを含めて全部で3人、その中で俺に触れているのは馬乗りになっているこの男だけ、このままジッとしていたら3人に取り囲まれて簀巻きにされ、連れ去られるだろう。
 逃げられるのは今しかない!
 馬乗りになっている男の腕を取り、腰を浮かせて相手のバランスを崩した所で足を引っかけて回転すると、簡単に逃げ出せた。
 だから後は重点的に入念なる股間パンチを繰り出し、立ち上がって再び走った。
 「ふざけやがってっ!」
 俺には沈黙かけといて、自分で叫んでちゃ意味ないだろって小馬鹿にしたい所ではあるが、1対2では分が悪い。
 それに、さっき馬乗り状態から抜け出した時に普段使わない筋肉を使ったらしく、横腹を痛めてしまったようだ。
 「っ……!」
 声はまだ出ない。
 10秒だったんじゃないのかよ!
 駄目だ、捕まる……こんなことなら屋敷の中で階段ダッシュとかしていればよかった……渡り廊下で短距離ダッシュとか、やり方は色々あったのに。
 「手こずらせやがって……」
 オイ、髪を掴むな。
 服を脱がせにかかるな。
 「えーっと、これ本当に男じゃねーか?」
 「あれ……本当に人違い?」
 どうやら人攫いのボスは俺を本当に女だと思っているようだ。
 なら、まだ勝機はある。
 「っ……から、言ったろ……人違いって」
 声が戻った。
 「ちっ!」
 舌打ちが聞こえた直後、頭部をなにかで攻撃された……気がする。
 だけど、目が覚めてみれば辺りは明るくなっていて、俺は中庭のベンチに座っている状態。
 しかも雑に脱がされて破れた兵士の服も、なんともない?
 あれ?
 夢……にしては妙にリアルだし、横腹は痛いし……見張りの騎士が見つけて助けてくれた?としたら何故中庭?
 部屋まで運ぶのが嫌とか、部屋の場所が分からないとしても、せめて屋敷内のエントランスの端っことか花瓶の前とかに置いといてくれたら……。
 助かったのだから、もうなんだって良い。
 しかし、傷めた横腹は歩き回るにも少し困難に感じる程痛むから、しばらくは安静だな……骨とか大丈夫だろうか?
 確か、骨に異常がある時は熱が出るとか患部が腫れあがるんだったな。
 鏡で横腹辺りを確認していると、夜の見張りを終えたらしいレッドドラゴンが戻ってきた。
 「キュウ、キュイ?」
 鏡の前に立つ俺が珍しいのか、レッドドラゴンは不思議そうに鳴いた……感じがする。
 本当なら、おかえりと両手を広げて迎える所ではあるが……。
 「体が傷むから、しばらくは安静にする」
 医師に見せた方が……いや、そこまで大袈裟にする程でもないか。
 こうしてベッドに横になって丸1日が過ぎ、どうなっているだろうか?と鏡の前に立って横腹を入念にチェックしていると、凄いスピードでレッドドラゴンが帰ってきた。
 ほら、こんな時だ……。
 「キュイキュイ!」
 なにかを伝えようとしている。
 分からないし、まだ少し眠いから一緒に寝てしまおうか?
 「おいで」
 ベッドの上に座り、膝をポンポンと叩けば大人しくやってきたレッドドラゴンは、それでも時々部屋のドアの方を向いて軽く鳴いている。
 なんだろう?
 外になにかあるのだろうか?
 コンコン。
 あまりにも気にするから、部屋の外を確認してみようかな?と思った所で部屋をノックする音。
 数秒待ってみたけど、押し入ってくる様子はなく、俺の返事を待っている。
 ってことは、トリシュだ。
 「入って」
 トリシュが入ってきたら、ついでに誰かいなかったか尋ねてみて、横腹が腫れているかどうかも見てもらおう。
 「お邪魔しまーす」
 ……え?
 「えっ!?」
 アインがどうしてここに!?
 「おはよ。痛くて動けないって言ったってのを聞いたんだけど、大丈夫?早朝にいきなりごめん」
 アインは、なんか一気に喋る癖があるよな。
 今はそれどころではない、これまではなんとか女性の振りをしている俺に対して無理矢理に付き合ってくれていたアインだけど、今の俺の姿は、横腹を確認しようとしていた直前……上半身が剥き出しだ。
 「おはよう……ございます。えっと、私……その……」
 流石に、この姿を見て女性だと説明するのは、無理しかない。
 アインになら、全て話しても大丈夫?
 「お腹冷えるよ?」
 気になったのがまずそこだというのだから、俺はアインを信用することにして、自分の性別が男であることを正式に伝えた。
 すると、流石に跡取りのことが気になったようで、両性具有なのかと聞かれたから返事に迷ってしまう。
 何故なら、島の国にはその技術があるからだ。
 魔法に関してはあまり馴染みない島の国だけど、大陸より劣ってるという訳ではないし、父は大陸を乗っ取ろうと兵力を高めている。
 それを可能にしているのが錬金術だ。
 金や銀を作り出して富を得て、その過程で出来る“爆発する粉”をホーンドオウル侯爵に売ってさらに富を得ている父は、そのお金を錬金術の実権と武力の強化にあてている。
 そして生み出されたのが大陸への戦闘準備と人工子宮。
 俺は技術者ではないから詳しくは分からないが、使い捨ての臓器ではなく、完全に同化するらしい。つまり、母体となる者の性別が問われず、母体と子は完全な親子になるのだそうだ。
 父がカインに目をつけていた理由は、ここにある。
 戦闘力が高く性格も良し、見目も麗しいとくれば父の新しい妃候補として十分だったのだ。
 いや、正確には玩具か……。
 「両性……俺は男としての生殖機能しか持ってない……子供が欲しいなら、少し待って欲しい」
 アインが子を欲しがっているのなら、俺はその技術をこの身をもって証明して見せよう。
 「王子は兄さんと結婚したいんだよな?島の王も俺の父さんも2人の結婚に納得したから婚約って流れになったんだろ?やっぱり兄さんが帰ってくるまでは保留にした方が良いと思うんだ」
 あぁ……まだこんなことを……。
 俺はカインに興味はないと、もっとしっかりとハッキリ伝えないと駄目なのか?
 でも、侯爵家の長男に向かって“興味がない”というのは気が引けたから遠回しに伝えてきたつもりだ。それなのに、全く人の言葉をくみ取ろうとしないのは何故なんだ?
 許されるのなら、耳元でアインの良い所を囁き続けよう。
 もう良いと照れながら離れようとする手を掴んで、正面から目を見て、結婚したいのはアインだと降参するまで何度でも……。
 コンコン。
 ……っと、危ない。
 もう少しでとんでもないことをしでかす所だった。
 服装の乱れを整えてドアの前に立つまでの時間は、多分数秒。だけどノックをしてきた主は部屋に入ってこないから、たったそれだけで外にいるのがトリシュだと分かる。
 次回からは、アインかも知れないという選択肢が増えてしまうのか……。
 トリシュだった時、俺はあからさまにがっかりしてしまうのだろうな。
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