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兵士の呪文を無視し、屋敷に戻って父さんのいるだろう書斎にノックもなしに入れば、訝し気な表情で見られてしまった。
「今は任務の時間だろう?なにをしている」
「……父さん、戦争を起こすのは辞めてください。今なら間に合います」
ほんの一瞬驚いたように目を開いた父さんは、また訝しそうな表情に戻り、例の呪文を唱えてきた。
「アイン、その話は誰から聞いたか答えろ」
呪文はきかないんだけど、父さんはきくと思っているのか。
「……最近武器を購入しているので、その真意を確かめに来ました」
「武器のことも今の会話も忘れ、森に戻りなさい。お前は今日屋敷には来ていない」
戦争を起こすと思った元凶を忘れさせ、森からは出ていないと思わせようとするこの呪文は、父さんは戦争を止める意思がないことを決定づけた。
本当に?
そう判断するにはまだ早いんじゃないか?
「父さん、島の王に兄さんを売ったというのは本当ですか?戦争は起こさないと駄目なのですか?何故そんなことをするのです?オレや兄さん……領民よりも、大事なことなのですか?」
父さん、お願いだ。
今までのことは全部手の込んだ冗談だと言ってくれ。
そうしたら俺は、もう二度と森に行くのは嫌だなんて我儘は言わないから。
「アインそれを誰から聞いた!カインだな?あいつは今どこだ!?」
机を叩きながら勢いよく立ち上がった父さんの顔は、長く行方不明だった息子の発見を喜ぶ親の表情とは言えない、怒りに満ちたものだ。
「父さん!嘘なんですよね!?兄さんを売ったなんて……戦争を起こすだなんて嘘ですよね!?」
それでも、長く心配かけさせやがって、の怒りかも知れない。
連絡の1つもよこさないで今までどこにいたんだ。の怒りかも知れない。
「アイン、カインの居場所を教えなさい」
ここで呪文なんて望んでない!
たった一言でも良いんだ、嘘だよって。
戦争なんて嘘だよって言ってくれるだけで良いんだ。
「教える代わりに、答えて……なんでも良いから、俺の質問に……父さん……」
酷く面倒臭そうに溜息を吐く父さんは、椅子に座り直すと睨むように俺を見て答えた。
「全て本当のことだ」
なにが?
なにが本当だって?
「どうして……兄さんは剣術も魔術も高くて、自慢の後継者だって……」
「私の方が優れている。私が不老不死になって、私が治め続ければ後継者など必要ない。さぁアイン、答えなさい。カインは今どこにいる?」
説得は、無理なのか。
「……案内します。ついて来て下さい」
「今は任務の時間だろう?なにをしている」
「……父さん、戦争を起こすのは辞めてください。今なら間に合います」
ほんの一瞬驚いたように目を開いた父さんは、また訝しそうな表情に戻り、例の呪文を唱えてきた。
「アイン、その話は誰から聞いたか答えろ」
呪文はきかないんだけど、父さんはきくと思っているのか。
「……最近武器を購入しているので、その真意を確かめに来ました」
「武器のことも今の会話も忘れ、森に戻りなさい。お前は今日屋敷には来ていない」
戦争を起こすと思った元凶を忘れさせ、森からは出ていないと思わせようとするこの呪文は、父さんは戦争を止める意思がないことを決定づけた。
本当に?
そう判断するにはまだ早いんじゃないか?
「父さん、島の王に兄さんを売ったというのは本当ですか?戦争は起こさないと駄目なのですか?何故そんなことをするのです?オレや兄さん……領民よりも、大事なことなのですか?」
父さん、お願いだ。
今までのことは全部手の込んだ冗談だと言ってくれ。
そうしたら俺は、もう二度と森に行くのは嫌だなんて我儘は言わないから。
「アインそれを誰から聞いた!カインだな?あいつは今どこだ!?」
机を叩きながら勢いよく立ち上がった父さんの顔は、長く行方不明だった息子の発見を喜ぶ親の表情とは言えない、怒りに満ちたものだ。
「父さん!嘘なんですよね!?兄さんを売ったなんて……戦争を起こすだなんて嘘ですよね!?」
それでも、長く心配かけさせやがって、の怒りかも知れない。
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たった一言でも良いんだ、嘘だよって。
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「教える代わりに、答えて……なんでも良いから、俺の質問に……父さん……」
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「全て本当のことだ」
なにが?
なにが本当だって?
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「私の方が優れている。私が不老不死になって、私が治め続ければ後継者など必要ない。さぁアイン、答えなさい。カインは今どこにいる?」
説得は、無理なのか。
「……案内します。ついて来て下さい」
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