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防御魔法を無効化して崖から身を投げた瞬間、脳裏にジョーの姿が浮かんで、岩肌の足場になりそうな場所に足をついて飛び、無傷で崖の下に降り立ってしまった。
それからも何度か崖の上に戻っては飛び降りることを繰り返す。
父さんをこの手にかけてしまったというのに、俺は何度も何度も無傷で崖の下に着地してしまう。
なぜ?
どうして……。
ゴロンとその場に寝転び、どうすれば良いのかとあまり回らない頭で考えていると、聞き慣れた声が俺を呼んだ。
ここにいる筈がないと思いながらも周囲を確認すると、硬い表情をしているジョーが立っていて、その視線は俺と、俺の横にある大破した馬車をとらえていて。
知られてしまった。
ジョーに、俺がしてしまったことを、知られた。
ブワッと目頭が熱くなり、慌てて目を覆うと、低くて落ち着いた声が近付いてきた。
「どうしたんだ?」
どうしたのかって?
そんなの、見たらわかるくせに、どうして説明させようとすんの?
俺が父さんを殺したくせに、身投げすらできない人間だって、俺の口から直接聞きたいの?
「俺っ……父さん、止められなかっ……」
説得に失敗して、それで殺したんだ。
「ホーンドオウル侯爵は誰が説得をした所で止まらなかった筈だ。だから泣かないでくれ」
ジョーは俺を責めることはせずに起こしてくれると、まるで俺のせいではないというように抱きしめてくれた。
ジョーが着ている鎧のせいで少し顔が痛かったけど、心地良くて少しだけ眠ってしまったようだった。
目が覚めたとき、そこは崖の下でもホーンドオウル家でもなく、兄さん達のいる洞窟でもなく……宿屋?
あれ?
俺はどうやって宿屋まで来たんだ?
いや、待て違う……ジョーが抱きしめてくれて、そこで寝オチていたんだ。だからここまで俺はジョーに担がれて移動したことになる。
「……ジョー、ゴメン……」
長距離移動をするのなら、起こしてくれたら良かったのに……泣き顔を見られて、父親殺しの現場も目撃されただけでなく、宿屋まで運ばれている間意識がなかったなんて。
ジョーは、ホーンドオウル侯爵殺害の犯人として、俺を通報しただろうか?
そうなれば俺は処刑だろう。
戦争を企てていたとは言っても、実際に戦争が始まっていたわけでもないんだ。それに父さんが死んで戦争が起きなくなったのだとしたら、兄さん達もわざわざ事を荒立てる必要もないから、戦争の証拠を全て破棄する筈だ。
そうなれば無実の父さんを俺が殺したってだけの話になって、まるっと解決する。
たった2人の命で戦争が阻止できるのだから、それはかなり良いことだな。
「アールがホーンドオウル侯爵を止めてくれたおかげで、父の戦力はかなり削れた。だから今度は俺が父の説得をするため島に戻ろうと思う。アールは洞窟には戻らずにここで待っていて欲しい。なにかあったらレッドドラゴンを使いにだすよ」
え?
「島の王を手引きする父さんがいないから、戦争は起きないんじゃ……」
もし父さんの助けがなくても戦争を始められるんだとしたら、なんのために手を組んだんだ?
「父がホーンドオウル侯爵と手を組んだのは、錬金術の実験体を手に入れることと異形となった者の追放先の提供をさせること、そしてカインを手に入れるためだ」
え……。
「じゃあ、俺はなんのために父さんを?」
意味がなかった?
意味がないのに突っ走って父さんを殺した?
「ホーンドオウル侯爵が倒れたお陰で、船でホーンドオウル領に入り、そこから王都に進軍するというシナリオが消えたんだ。それにホーンドオウル家の騎士や兵士、兵器分の戦力を削ることができた。アールの行動は意味のないことではない。大きなことだ」
そうか……俺は父さんの説得には失敗したけど、大きなことは成し遂げられたんだな……。
それからも何度か崖の上に戻っては飛び降りることを繰り返す。
父さんをこの手にかけてしまったというのに、俺は何度も何度も無傷で崖の下に着地してしまう。
なぜ?
どうして……。
ゴロンとその場に寝転び、どうすれば良いのかとあまり回らない頭で考えていると、聞き慣れた声が俺を呼んだ。
ここにいる筈がないと思いながらも周囲を確認すると、硬い表情をしているジョーが立っていて、その視線は俺と、俺の横にある大破した馬車をとらえていて。
知られてしまった。
ジョーに、俺がしてしまったことを、知られた。
ブワッと目頭が熱くなり、慌てて目を覆うと、低くて落ち着いた声が近付いてきた。
「どうしたんだ?」
どうしたのかって?
そんなの、見たらわかるくせに、どうして説明させようとすんの?
俺が父さんを殺したくせに、身投げすらできない人間だって、俺の口から直接聞きたいの?
「俺っ……父さん、止められなかっ……」
説得に失敗して、それで殺したんだ。
「ホーンドオウル侯爵は誰が説得をした所で止まらなかった筈だ。だから泣かないでくれ」
ジョーは俺を責めることはせずに起こしてくれると、まるで俺のせいではないというように抱きしめてくれた。
ジョーが着ている鎧のせいで少し顔が痛かったけど、心地良くて少しだけ眠ってしまったようだった。
目が覚めたとき、そこは崖の下でもホーンドオウル家でもなく、兄さん達のいる洞窟でもなく……宿屋?
あれ?
俺はどうやって宿屋まで来たんだ?
いや、待て違う……ジョーが抱きしめてくれて、そこで寝オチていたんだ。だからここまで俺はジョーに担がれて移動したことになる。
「……ジョー、ゴメン……」
長距離移動をするのなら、起こしてくれたら良かったのに……泣き顔を見られて、父親殺しの現場も目撃されただけでなく、宿屋まで運ばれている間意識がなかったなんて。
ジョーは、ホーンドオウル侯爵殺害の犯人として、俺を通報しただろうか?
そうなれば俺は処刑だろう。
戦争を企てていたとは言っても、実際に戦争が始まっていたわけでもないんだ。それに父さんが死んで戦争が起きなくなったのだとしたら、兄さん達もわざわざ事を荒立てる必要もないから、戦争の証拠を全て破棄する筈だ。
そうなれば無実の父さんを俺が殺したってだけの話になって、まるっと解決する。
たった2人の命で戦争が阻止できるのだから、それはかなり良いことだな。
「アールがホーンドオウル侯爵を止めてくれたおかげで、父の戦力はかなり削れた。だから今度は俺が父の説得をするため島に戻ろうと思う。アールは洞窟には戻らずにここで待っていて欲しい。なにかあったらレッドドラゴンを使いにだすよ」
え?
「島の王を手引きする父さんがいないから、戦争は起きないんじゃ……」
もし父さんの助けがなくても戦争を始められるんだとしたら、なんのために手を組んだんだ?
「父がホーンドオウル侯爵と手を組んだのは、錬金術の実験体を手に入れることと異形となった者の追放先の提供をさせること、そしてカインを手に入れるためだ」
え……。
「じゃあ、俺はなんのために父さんを?」
意味がなかった?
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そうか……俺は父さんの説得には失敗したけど、大きなことは成し遂げられたんだな……。
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