日常。

夏本ゆのす(香柚)

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初めての夏体験

あなたはだぁれ?

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 病院ではすぐに治療室に通されて処置を受けました。
 腕は包帯でぐるぐる巻きです。
 ついでに点滴も受けることになりましたので、病室に向かいます。ええ、いつもの部屋です。
 部屋でお着替えをしました。いつもの寝間着です。あら?何時持ってきたのでしょう。
 着替えを終えて、ベッドに横になりますと、看護婦さんが点滴の用意をしてくださってます。見ていますと…… あら、知らない方ですわ。

「宜しくお願いしますね」

 そう、その方に声をかけましたが……


 いきなり、ドアが開き見知った方が入って来られました。

「ここにいたのか……」

 はい?私は…… いえ、今の言葉はこの看護婦さんに言った言葉でしょう。

「見に来ただけです」

「見に来たって…… ただの子供だよ?」

 「だって、ここに戻る理由なのでしょう?」

「それはそうだけど、最初から言ったよね?俺は後継ぎだから何時かはこっちに帰るって」

「今じゃなくてもいいはずよ」

「早い方が良いだろう?」

 あの、何故ここで喧嘩をなさっているのでしょうか?

「若先生?」

「キミに若先生と言われると子供に戻った気がするな」

 頬に触れないで下さいっ。いきなりだとビックリします。
 若先生はこちらの院長先生の息子さんです。たしか関東の病院に勤めていらっしゃるとうかがっております……
 会話からすると、こちらに戻って来られるのでしょうか?
 で、こちらの看護婦さんは?

「蓉子ちゃん、彼女は僕のお嫁さんになる人だよ」
 
 ああ、そうなのですね。

「蓉子と申します。宜しくお願いします。いつご結婚なされますの?」

「冬?かな?」

「この?時間は大丈夫ですの?お忙しいのでは?」

「その辺は家がやるだろう?」

 で、そちらの名前をまだ伺っておりませんが。

「雫石です」

 えっと……
 若先生を見上げます……
 大丈夫ですの? 

「ごめんね。彼女はこの辺りの事をまだ良く知らないんだ」

「早目にご説明なされた方が…… 遅くなりましたらそれだけ大変になりますのよ?」

 私は忠告しましたからね。はぁ、疲れました。ちぃ兄さまはどこに行ったのでしょう。

「蓉子ちゃん、相変わらず変だよね」

 何を仰ってるのでしょう。これぐらいの社交は子供でも叩き込まれますでしょう?まあ、病室でする必要はないはずですよね?
 ぐったりです。せっかく海で楽しかったのに。気分が落ち込みます。私も社交は苦手なのです。苦手だからこそ、早目の対応が必要なのです。

「ちぃ兄さまはどこかしら?」

  知らない方は苦手です。病室で気を張っているのはすごく疲れるのです。できれば、若先生とそのご相手には部屋から出てもらいたいのです。

「ああ、あちらで今日の説明を受けていたと思うよ」

  そうですか。点滴の用意を途中でやめられたので、いつもの婦長を呼びましょう。これ以上疲れたく有りません。ナースコールを押し、待ちます。すぐに来られるでしょう。

  「はいはい、何でしょう」

  いつもの婦長が声をかけながら入ってきました。ちょっとほっとします。

「てんてき」

  そう話そうとしました。

「点滴の用意ですね。あら、腕は無理かしら」

「みたいなの。やはり足?」

「ですね」

「痛いのに……  もぉ」

「まぁまぁ。今日はすぐに終わる量ですよ」

  笑いながらいう言葉ではないと思う……  入院にならなくて良かった……
  そんな話をしていると言うのに二人は病室から出て行かない……

「院長先生は?」

「すぐに来られますよ」

  「そう。若先生?そろそろ、出ていって貰えますか。疲れましたので」

「あ、ごめんね。院長の診察を見たいんだ」

「では、そちらの方を」

「分かった」



「あの子、何あなたに命令しているの?」

「当たり前だろう。君こそいつまでここに居るんだ」

「私もお義父さまに……」

「それはここで無くても良いだろう」

「邪魔にしなくてもいいじゃないっ」


  少しずつ声が大きくなってきました。何を考えているんでしょうか?  ここは病室ですよ?

「雫石さんですか?あの、ここは病室で、私は病人です。関係ない方は出ていってもらえますか? 落ち着きません」

「ごめんね。すぐ出すから」

「若先生も出ていって。今は私の主治医ではありません」

「あ、うん。分かった。じゃあまた……」



  二人は何か言いながら出ていきましたが……
  婦長さんが言ってもいいと思う……

「すみません。もう、何度も同じ事を繰り返しているもので」

  あら、そうなの?ここ以外でもやってるの?
  そう。病院の人も大変ね……



  足首のいつものところに点滴の針を刺され、わたしはベッドに横になりました。
  はあ、疲れました。あの方たちが帰って来られるなら、しばらく通院は無しにして、往診に切り替えていただきましょう。疲れますもの。それくらいの我儘はしてもいいでしょう?




「ちぃ兄さま。点滴が終わったら帰れるのかしら?」

「大丈夫だそうだよ。何?大変だったって?」

「ええ。疲れたのです」

「ふうん。蓉子は若先生が苦手かな?」

「そうですね……  あまり得意ではないかと」

「主治医が変わるって」

「えっ。いやっ」

「うん、伝えとく」

「兄さま、今日は点滴が終わったら帰れるのでしょう?」

「そうだよ」

「せ、先生は?」

「あ、先に帰らせた。何か用があった?」

「ううん。ただ海にせっかく行ったのに少しだったから」

「彼女はちゃんと分かってる。大丈夫だよ」

「そう?  明日も来ていただけるかしら?」

「いや、次は月曜日かな?  今日は疲れただろうし」

「はい……  」 

「ん?  どうした?」

「ううん、何でもない」

「次は何ができるのかしら……」

「ゆっくり楽しめばいいよ。無理しないでゆっくり」

「はぁい」

「少し眠ったほうがいいよ。時間がきたら起こすから」

「うん。おやすみなさい」

  点滴の中に薬が入っていたのでしょうか。しばらくすると、眠気がやってきました。

  おやすみなさい。
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みんなの感想(2件)

2016.05.08 ユーザー名の登録がありません

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解除
わんこ犬
2016.05.05 わんこ犬
ネタバレ含む
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