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第一章 託宣
第一章②
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大陸は白蓮皇国がその三分の二を締めている。
彩鳳国は早くに白蓮皇国と同盟を結び、残り赫州国を納めれば国土統一が成る、というところにまで来ていた。
しかし、赫州国の抵抗は根強く、事あらば彩鳳国との国境に戦を仕掛け、彩鳳国を取り込もうとする。
そうすれば白蓮皇国と並ぶことができると頑なに信じていた。
桃園房はその三つの国の狭間にある。
今回祖母に占術を聞きに来るのも彩鳳国の宰相と聞いていた。
しばらくすると村中に鈴のような音が響き渡り、客人の訪れを知らせる。
客人が去るまでは家の中に入って、誰も外へは出ないしきたりだ。
蓮花も部屋の片付けをした後、部屋の中で大人しくしていよう。そう思ったのだが、読みかけの書物がどうしても見つからない。
おそらくは慌てて書物を懐に隠した時に、卓子の下にでも落ちたのだと思うが、あれは読みかけの本だ。蓮花は気になると確認せざるを得ない性格をしていた。
客人が来ていることは知っている。
けれども、どうしても確認したくなって、いても立ってもいられなくなったのだ。
──書物があるか、確認するだけ。確認するだけだから。
客間からはカラカラ……と祖母が占術を使っている音が聞こえた。
蓮花の祖母である慶蓉はそんな蓮花の動きには全く気づいていなかった。
他に気を取られることがたくさんあったからだ。
この房に来たのは彩鳳国の大司馬であった。
大司馬は軍事を司る庁の責任者の一人だ。
通常ならば宰相にしか与えられていないその権を得て、房を訪れたのだと言っていた。
桃園房では訪れた者全てに占いを与えることになっている。それが誰であってもだ。
「お伺いしたいのは、彩鳳国の未来です」
カラカラ……と占術台の上に動物の骨や、木の節が散らばる。慶蓉はそこから未来を読み解くのだ。
「ふ……ん」
そこには二つの未来が見えていた。しかし、それを伝えるのにこの軍人が向いているのかが慶蓉には分からない。
占術は伝え方を間違えると国をあらぬ方向に導いてしまう。伝え方には慎重を要する。
「国は続く」
その慶蓉の一言に、大司馬は安心した様子だった。
「三人の王子の……」
その言葉に彼はぴくっと反応する。
「平穏に国の平穏がかかっている。鷹が獅子を制することができれば、虎をも抑えることができるだろう。鷹が獅子と争うことがあれば国は傾く。しかし、なくなることはない」
鷹は彩鳳国国王の長子、醒雪を指す。そして、獅子は彩鳳国国王の次男煌月だ。
醒雪は穏やかで頭も良いが身体はさほどに強くない。時が時なら賢帝と敬われただろう。
しかし、弟の煌月は獅子とも呼ばれる大将軍だ。
その力量は大国白蓮皇国の皇帝にも名を知られており、赫州国の荒くれ者にもその名は轟き渡っているという。美丈夫にして、戦場では鬼のような強さや、神がかった戦術を発揮する。
まさに、彩鳳国の獅子であり軍神だった。
虎は南に位置する赫州国を指している。
「鴻璘様は……」
鴻璘は三番目の王子だ。明るく人柄もよく気安いので民にもとても好かれている人物だ。
「馬だな」
馬は社交性があり、他人と信頼関係を結ぶのがとても上手な生き物である。
「鷹を敬い、獅子を敬う。馬は諸人に愛される」
「獅子は王になれますか?」
慶蓉はぴくんと身体を揺らす。
彩鳳国は早くに白蓮皇国と同盟を結び、残り赫州国を納めれば国土統一が成る、というところにまで来ていた。
しかし、赫州国の抵抗は根強く、事あらば彩鳳国との国境に戦を仕掛け、彩鳳国を取り込もうとする。
そうすれば白蓮皇国と並ぶことができると頑なに信じていた。
桃園房はその三つの国の狭間にある。
今回祖母に占術を聞きに来るのも彩鳳国の宰相と聞いていた。
しばらくすると村中に鈴のような音が響き渡り、客人の訪れを知らせる。
客人が去るまでは家の中に入って、誰も外へは出ないしきたりだ。
蓮花も部屋の片付けをした後、部屋の中で大人しくしていよう。そう思ったのだが、読みかけの書物がどうしても見つからない。
おそらくは慌てて書物を懐に隠した時に、卓子の下にでも落ちたのだと思うが、あれは読みかけの本だ。蓮花は気になると確認せざるを得ない性格をしていた。
客人が来ていることは知っている。
けれども、どうしても確認したくなって、いても立ってもいられなくなったのだ。
──書物があるか、確認するだけ。確認するだけだから。
客間からはカラカラ……と祖母が占術を使っている音が聞こえた。
蓮花の祖母である慶蓉はそんな蓮花の動きには全く気づいていなかった。
他に気を取られることがたくさんあったからだ。
この房に来たのは彩鳳国の大司馬であった。
大司馬は軍事を司る庁の責任者の一人だ。
通常ならば宰相にしか与えられていないその権を得て、房を訪れたのだと言っていた。
桃園房では訪れた者全てに占いを与えることになっている。それが誰であってもだ。
「お伺いしたいのは、彩鳳国の未来です」
カラカラ……と占術台の上に動物の骨や、木の節が散らばる。慶蓉はそこから未来を読み解くのだ。
「ふ……ん」
そこには二つの未来が見えていた。しかし、それを伝えるのにこの軍人が向いているのかが慶蓉には分からない。
占術は伝え方を間違えると国をあらぬ方向に導いてしまう。伝え方には慎重を要する。
「国は続く」
その慶蓉の一言に、大司馬は安心した様子だった。
「三人の王子の……」
その言葉に彼はぴくっと反応する。
「平穏に国の平穏がかかっている。鷹が獅子を制することができれば、虎をも抑えることができるだろう。鷹が獅子と争うことがあれば国は傾く。しかし、なくなることはない」
鷹は彩鳳国国王の長子、醒雪を指す。そして、獅子は彩鳳国国王の次男煌月だ。
醒雪は穏やかで頭も良いが身体はさほどに強くない。時が時なら賢帝と敬われただろう。
しかし、弟の煌月は獅子とも呼ばれる大将軍だ。
その力量は大国白蓮皇国の皇帝にも名を知られており、赫州国の荒くれ者にもその名は轟き渡っているという。美丈夫にして、戦場では鬼のような強さや、神がかった戦術を発揮する。
まさに、彩鳳国の獅子であり軍神だった。
虎は南に位置する赫州国を指している。
「鴻璘様は……」
鴻璘は三番目の王子だ。明るく人柄もよく気安いので民にもとても好かれている人物だ。
「馬だな」
馬は社交性があり、他人と信頼関係を結ぶのがとても上手な生き物である。
「鷹を敬い、獅子を敬う。馬は諸人に愛される」
「獅子は王になれますか?」
慶蓉はぴくんと身体を揺らす。
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