エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない

如月 そら

文字の大きさ
7 / 42
2.一度目の出会い

一度目の出会い③

しおりを挟む
「驚いたわ。すごく素敵な方だったのね」
 とても驚いているようには見えなかったが大島は驚いていたらしい。素敵だという意見には莉桜も同意しかなかった。

「はい。紳士で困っている人にはためらいなく声をかけられるって素敵ですよねぇ」
「そうね。世の中には素敵な人がいるものよね」

 一瞬そんな話で盛り上がっていたら、そこへもう一人のビジネスクラスの担当者である福原が戻ってきた。
 福原は次期パーサー候補とも言われているベテランだ。
「あら、盛り上がっているのね」

 莉桜は福原にも経緯を伝える。共有することは本当に大事なのだ。一通りの話を聞いて、福原は驚いていた。
「まあ……そうだったの。倉木さん気づかなくてごめんなさいね。そう……9Dのお客様がね」
 含みがあるように感じた。

「ご存知なのですか?」
「ええ。よく当社をご利用になるし……本社でもお会いしたことがあるから」
「本社?」
 こくりと福原は頷いた。

「あの方は五十里いかり様といって、五十里重工の取締役の方よ」
「あ、今度の新型飛行機の五十里重工ですか?」
「そう。多分新型飛行機の開発にも、携わっていらっしゃる方じゃないかしら」

 五十里重工は国産航空機を国内で唯一取り扱っている会社だ。
 今度JSAに導入されることもあり、世間の注目を集めていた。
 導入されれば国内初の国産飛行機となるため、話題になっていた。

「お名前が会社と同じなんですね」
「五十里重工の御曹司って噂だもの」
「なるほど……紳士なわけですね」
 御曹司と聞けば納得だ。

「名前に負けないやり手とも有名な方らしいけれど。国産飛行機のプロジェクトは、ご自身が先頭に立って企画とかされているそうだから。とても熱心な方なんですって」
「そうなんですね」

 ではJSAは五十里にとって、自社の飛行機が導入される会社なのかもしれないのだ。
 普通の客よりも、JSAに思い入れを持ってくれている可能性がある。

 ──いい人だな……。
 莉桜は単純にそう思っていた。

 今回のフライトは、ステイと言って現地での宿泊を伴ったものだった。
 羽丘国際空港を夕刻経った便は約十二時間の飛行時間で、同日の夕刻シカゴに到着する。

 シカゴにある空港は利用者数もアメリカ国内で三本の指に入るくらいで、かつては「最も混雑する空港」としてギネス認定されていたという空港だ。
 八本もの滑走路を有している巨大空港なのである。

 今日もJSAの有名パイロットである貴堂キャプテンは安定感のある着陸を見せ、莉桜は心の中で喝采を送っていた。

 デブリーフィングという搭乗を終えた際の打ち合わせを機内で済ませた莉桜たちクルーは、今日宿泊するホテルに行くため、クルーシャトル乗り場に制服のまま向かう。

 現地でのクルーの過ごし方はいろいろだ。
 どうしても時差のある仕事なので、時差に身体を合わせる方法もそれぞれ違う。

 あくまでも日本時間で過ごす人もいれば、現地時間に合わせる人もいるが、莉桜は現地時間に合わせる派だった。

「倉木さん、夜は一緒に食べに行かない?」
しおりを挟む
感想 93

あなたにおすすめの小説

夢の続きを、あなたと

小田恒子
恋愛
梶田美月は雑貨を扱うアルファクラフトでバイヤーの仕事をしている。 新規開拓で訪れた工房こもれびで、かつての恋人、本庄雄馬と再会する。 美月も学生時代、家具職人になるため日々精進していたけれど、職人の道を諦めた。 雄馬のことが嫌いで別れたわけではない。 夢を叶えた雄馬のことが眩しくて直視ができない美月に、雄馬はもう一度、職人の道に戻ってこないかと声をかけ…… ベリーズカフェ公開日 2025/07/24 アルファポリス公開日 2025/10/10 作品の無断転載はご遠慮ください。

【完結】エレクトラの婚約者

buchi
恋愛
しっかり者だが自己評価低めのエレクトラ。婚約相手は年下の美少年。迷うわー エレクトラは、平凡な伯爵令嬢。 父の再婚で家に乗り込んできた義母と義姉たちにいいようにあしらわれ、困り果てていた。 そこへ父がエレクトラに縁談を持ち込むが、二歳年下の少年で爵位もなければ金持ちでもない。 エレクトラは悩むが、義母は借金のカタにエレクトラに別な縁談を押し付けてきた。 もう自立するわ!とエレクトラは親友の王弟殿下の娘の侍女になろうと決意を固めるが…… 11万字とちょっと長め。 謙虚過ぎる性格のエレクトラと、優しいけど訳アリの高貴な三人の女友達、実は執着強めの天才肌の婚約予定者、扱いに困る義母と義姉が出てきます。暇つぶしにどうぞ。 タグにざまぁが付いていますが、義母や義姉たちが命に別状があったり、とことんひどいことになるザマァではないです。 まあ、そうなるよね〜みたいな因果応報的なざまぁです。

現在の政略結婚

詩織
恋愛
断れない政略結婚!?なんで私なの?そういう疑問も虚しくあっという間に結婚! 愛も何もないのに、こんな結婚生活続くんだろうか?

【完結】指先が触れる距離

山田森湖
恋愛
オフィスの隣の席に座る彼女、田中美咲。 必要最低限の会話しか交わさない同僚――そのはずなのに、いつしか彼女の小さな仕草や変化に心を奪われていく。 「おはようございます」の一言、資料を受け渡すときの指先の触れ合い、ふと香るシャンプーの匂い……。 手を伸ばせば届く距離なのに、簡単には踏み込めない関係。 近いようで遠い「隣の席」から始まる、ささやかで切ないオフィスラブストーリー。

好きになったあなたは誰? 25通と25分から始まる恋

たたら
恋愛
大失恋の傷を癒したのは、見知らぬ相手からのメッセージでした……。 主人公の美咲(25歳)は明るく、元気な女性だったが、高校生の頃から付き合っていた恋人・大輔に「おまえはただの金づるだった」と大学の卒業前に手ひどくフラれてしまう。 大輔に大失恋をした日の深夜、0時25分に美咲を励ます1通のメールが届いた。 誰から届いたのかもわからない。 間違いメールかもしれない。 でも美咲はそのメールに励まされ、カフェをオープンするという夢を叶えた。 そんな美咲のカフェには毎朝8時35分〜9時ちょうどの25分間だけ現れる謎の男性客がいた。 美咲は彼を心の中で「25分の君」と呼び、興味を持つようになる。 夢に向かって頑張る美咲の背中を押してくれるメッセージは誰が送ってくれたのか。 「25分の君」は誰なのか。 ようやく前を向き、新しい恋に目を向き始めた時、高校の同窓会が開かれた。 乱暴に復縁を迫る大輔。 そこに、美咲を見守っていた彼が助けに来る。 この話は恋に臆病になった美咲が、愛する人と出会い、幸せになる物語です。 *** 25周年カップを意識して書いた恋愛小説です。 プロローグ+33話 毎日17時に、1話づつ投稿します。 完結済です。 ** 異世界が絡まず、BLでもない小説は、アルファポリスでは初投稿! 初めての現代恋愛小説ですが、内容はすべてフィクションです。 「こんな恋愛をしてみたい」という乙女の夢が詰まってます^^;

男に間違えられる私は女嫌いの冷徹若社長に溺愛される

山口三
恋愛
「俺と結婚してほしい」  出会ってまだ何時間も経っていない相手から沙耶(さや)は告白された・・・のでは無く契約結婚の提案だった。旅先で危ない所を助けられた沙耶は契約結婚を申し出られたのだ。相手は五瀬馨(いつせかおる)彼は国内でも有数の巨大企業、五瀬グループの若き社長だった。沙耶は自分の夢を追いかける資金を得る為、養女として窮屈な暮らしを強いられている今の家から脱出する為にもこの提案を受ける事にする。  冷酷で女嫌いの社長とお人好しの沙耶。二人の契約結婚の行方は?  

偽りの婚約者は、幼馴染の仮面を脱いだら甘くて執着深い

由香
恋愛
家の借金を理由に政略結婚を迫られる伯爵令嬢エリシアは、幼馴染のノアに「婚約者のふり」を頼む。 だが無邪気な年下と思っていた彼は、実は腹黒で一途な天才。 “偽装婚約”は甘さと執着に満ち、本物より本物らしくなっていく。 政敵との対立、同居生活、すれ違う想い—— そして二人はついに、嘘だったはずの婚約を本物に変えていく。

俺と結婚してくれ〜若き御曹司の真実の愛

ラヴ KAZU
恋愛
村藤潤一郎 潤一郎は村藤コーポレーションの社長を就任したばかりの二十五歳。 大学卒業後、海外に留学した。 過去の恋愛にトラウマを抱えていた。 そんな時、気になる女性社員と巡り会う。 八神あやか 村藤コーポレーション社員の四十歳。 過去の恋愛にトラウマを抱えて、男性の言葉を信じられない。 恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。 そんな時、バッグを取られ、怪我をして潤一郎のマンションでお世話になる羽目に...... 八神あやかは元恋人に騙されて借金を払う生活を送っていた。そんな矢先あやかの勤める村藤コーポレーション社長村藤潤一郎と巡り会う。ある日あやかはバッグを取られ、怪我をする。あやかを放っておけない潤一郎は自分のマンションへ誘った。あやかは優しい潤一郎に惹かれて行くが、会社が倒産の危機にあり、合併先のお嬢さんと婚約すると知る。潤一郎はあやかへの愛を貫こうとするが、あやかは潤一郎の前から姿を消すのであった。

処理中です...