エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない

如月 そら

文字の大きさ
37 / 42
10.楽しい休暇に乾杯!

楽しい休暇に乾杯!①

しおりを挟む
 羽丘国際空港では国産最新機種の飛行機の初就航を祝うイベントが開催されていた。

 五十里重工から納入された飛行機はそのスタイリッシュな機体に太陽の光をキラキラと反射させながら、駐機場に止まっている。

 イベントは搭乗ゲート前で行われていた。JSAの社長初め、五十里重工の関係者などが参加している。

 その関係者の中には五十里武尊の姿もあった。
 端正な顔立ちとスラリとした肢体は注目を集めていたのだ。

「あれ、誰? ゲストの役者さんとかじゃないよね?」
「すっごくカッコいい……」
 一般客のそんな声を莉桜は近くで制服姿で耳にしていた。

 五十里のことだと分かって、自分が褒められているようななんだかくすぐったい気持ちだ。

 制服姿の莉桜に気づいて、五十里が軽く微笑む。莉桜の周りからはきゃーっと黄色い声が上がった。

「見た見た!? こっち見て笑ったわ!」
「笑顔、むっちゃいい! 花つけてるからゲストなんだろうけど、何者なのかしら?」

 イベントはそれぞれの社長による安全な航行や乗客、乗務員の幸せを願うスピーチののち、関係者によるテープカットが行われた。

 その後初就航のプラチナチケットを手にした人が機内に案内される。

 一足先に機内へ入って準備していた莉桜たち客室乗務員は乗客一人一人に記念品を配布した。

 わくわくと嬉しそうな顔で機内に入っていく乗客を見ていて、まさにこれからが今まで行ってきた訓練の結果を試されるのだと、莉桜も気合が入る。

 莉桜は今日プレミアムエコノミーシート担当だった。それでも乗客として入ってきて、ビジネスシートに座る五十里の姿は目に入る。

 莉桜の姿を見て五十里は軽く片手を上げた。莉桜は丁寧にお辞儀をする。

 五十里はこの初就航で乗務員として搭乗している莉桜と一緒にロスまで行って、そのままこの飛行機で帰ってくるらしい。それは五十里重工役員としての仕事だということだった。

 帰国したのち莉桜は長期休暇をとることにしていた。実は五十里も一緒に休暇を取っていて、二人で旅行へ行く予定にしているのだ。

 モルディブに行くとは聞いていたけれど、それ以外のことを五十里はすべて秘密なのだと言って、どこに宿泊するとか、どこの航空会社を使うとかも教えてくれない。

 五十里が自分で全部手配してしまったようなのだ。すべてサプライズなのだと楽しそうにされてしまっては莉桜も口を挟むことができなかった。

 帰国してからのその旅行を莉桜も楽しみにしていた。

 機内でのサービスを終え、莉桜たちクルーも食事を終えた頃合いに、ギャレーをひょいっと五十里が覗く。

「五十里様!」
 声をひそめて、クルーたちが浮足立った。

「こんにちは。キャビンのようすはどうですか?」
 キャビンのようすなどが気になってクルーへ聞き取りに来たようだ。五十里の品のある声と風情に同僚は緊張しながら機内の様子を伝えている。

「プレミアムエコノミーは以前のビジネスクラスのようだととても好評です」
「エコノミーも今までより広い座席にお客様はお喜びでした。あとモニターもきれいで画面が大きいと」

「好評なようで良かった。この機体を二機、三機と購入してもらえるよう、私も頑張らなくては。引き続きどうぞよろしくお願いいたします」

 五十里が丁寧に頭を下げるのにクルーたちは「こちらこそです!」とあわてていた。

 笑顔を残して席へ戻る時に、五十里は莉桜にだけ分かるように、軽く指先を触れて席に戻る。
 たったそれだけのことに莉桜はどきどきとしてしまった。一瞬だけ触れられた指先がまるで熱を持ったようだ。

 五十里は莉桜が今まで経験したことないようなときめきをくれる。

「倉木さん、いいなー。あんな素敵な人が彼氏なんて羨ましいです」

 莉桜と五十里の交際については隠してもいないし、オープンにしてもいなかった。
 それでも、JSAの客室乗務員の中では噂になっていたらしい。
しおりを挟む
感想 93

あなたにおすすめの小説

夢の続きを、あなたと

小田恒子
恋愛
梶田美月は雑貨を扱うアルファクラフトでバイヤーの仕事をしている。 新規開拓で訪れた工房こもれびで、かつての恋人、本庄雄馬と再会する。 美月も学生時代、家具職人になるため日々精進していたけれど、職人の道を諦めた。 雄馬のことが嫌いで別れたわけではない。 夢を叶えた雄馬のことが眩しくて直視ができない美月に、雄馬はもう一度、職人の道に戻ってこないかと声をかけ…… ベリーズカフェ公開日 2025/07/24 アルファポリス公開日 2025/10/10 作品の無断転載はご遠慮ください。

【完結】エレクトラの婚約者

buchi
恋愛
しっかり者だが自己評価低めのエレクトラ。婚約相手は年下の美少年。迷うわー エレクトラは、平凡な伯爵令嬢。 父の再婚で家に乗り込んできた義母と義姉たちにいいようにあしらわれ、困り果てていた。 そこへ父がエレクトラに縁談を持ち込むが、二歳年下の少年で爵位もなければ金持ちでもない。 エレクトラは悩むが、義母は借金のカタにエレクトラに別な縁談を押し付けてきた。 もう自立するわ!とエレクトラは親友の王弟殿下の娘の侍女になろうと決意を固めるが…… 11万字とちょっと長め。 謙虚過ぎる性格のエレクトラと、優しいけど訳アリの高貴な三人の女友達、実は執着強めの天才肌の婚約予定者、扱いに困る義母と義姉が出てきます。暇つぶしにどうぞ。 タグにざまぁが付いていますが、義母や義姉たちが命に別状があったり、とことんひどいことになるザマァではないです。 まあ、そうなるよね〜みたいな因果応報的なざまぁです。

偽りの婚約者は、幼馴染の仮面を脱いだら甘くて執着深い

由香
恋愛
家の借金を理由に政略結婚を迫られる伯爵令嬢エリシアは、幼馴染のノアに「婚約者のふり」を頼む。 だが無邪気な年下と思っていた彼は、実は腹黒で一途な天才。 “偽装婚約”は甘さと執着に満ち、本物より本物らしくなっていく。 政敵との対立、同居生活、すれ違う想い—— そして二人はついに、嘘だったはずの婚約を本物に変えていく。

現在の政略結婚

詩織
恋愛
断れない政略結婚!?なんで私なの?そういう疑問も虚しくあっという間に結婚! 愛も何もないのに、こんな結婚生活続くんだろうか?

【完結】指先が触れる距離

山田森湖
恋愛
オフィスの隣の席に座る彼女、田中美咲。 必要最低限の会話しか交わさない同僚――そのはずなのに、いつしか彼女の小さな仕草や変化に心を奪われていく。 「おはようございます」の一言、資料を受け渡すときの指先の触れ合い、ふと香るシャンプーの匂い……。 手を伸ばせば届く距離なのに、簡単には踏み込めない関係。 近いようで遠い「隣の席」から始まる、ささやかで切ないオフィスラブストーリー。

好きになったあなたは誰? 25通と25分から始まる恋

たたら
恋愛
大失恋の傷を癒したのは、見知らぬ相手からのメッセージでした……。 主人公の美咲(25歳)は明るく、元気な女性だったが、高校生の頃から付き合っていた恋人・大輔に「おまえはただの金づるだった」と大学の卒業前に手ひどくフラれてしまう。 大輔に大失恋をした日の深夜、0時25分に美咲を励ます1通のメールが届いた。 誰から届いたのかもわからない。 間違いメールかもしれない。 でも美咲はそのメールに励まされ、カフェをオープンするという夢を叶えた。 そんな美咲のカフェには毎朝8時35分〜9時ちょうどの25分間だけ現れる謎の男性客がいた。 美咲は彼を心の中で「25分の君」と呼び、興味を持つようになる。 夢に向かって頑張る美咲の背中を押してくれるメッセージは誰が送ってくれたのか。 「25分の君」は誰なのか。 ようやく前を向き、新しい恋に目を向き始めた時、高校の同窓会が開かれた。 乱暴に復縁を迫る大輔。 そこに、美咲を見守っていた彼が助けに来る。 この話は恋に臆病になった美咲が、愛する人と出会い、幸せになる物語です。 *** 25周年カップを意識して書いた恋愛小説です。 プロローグ+33話 毎日17時に、1話づつ投稿します。 完結済です。 ** 異世界が絡まず、BLでもない小説は、アルファポリスでは初投稿! 初めての現代恋愛小説ですが、内容はすべてフィクションです。 「こんな恋愛をしてみたい」という乙女の夢が詰まってます^^;

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

【完結】25年の人生に悔いがあるとしたら

緋水晶
恋愛
最長でも25歳までしか生きられないと言われた女性が20歳になって気づいたやり残したこと、それは…。 今回も猫戸針子様に表紙の文字入れのご協力をいただきました! 是非猫戸様の作品も応援よろしくお願いいたします(*ˊᗜˋ) ※イラスト部分はゲームアプリにて作成しております もう一つの参加作品「私、一目惚れされるの死ぬほど嫌いなんです」もよろしくお願いします(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)”

処理中です...