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10.楽しい休暇に乾杯!
楽しい休暇に乾杯!①
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羽丘国際空港では国産最新機種の飛行機の初就航を祝うイベントが開催されていた。
五十里重工から納入された飛行機はそのスタイリッシュな機体に太陽の光をキラキラと反射させながら、駐機場に止まっている。
イベントは搭乗ゲート前で行われていた。JSAの社長初め、五十里重工の関係者などが参加している。
その関係者の中には五十里武尊の姿もあった。
端正な顔立ちとスラリとした肢体は注目を集めていたのだ。
「あれ、誰? ゲストの役者さんとかじゃないよね?」
「すっごくカッコいい……」
一般客のそんな声を莉桜は近くで制服姿で耳にしていた。
五十里のことだと分かって、自分が褒められているようななんだかくすぐったい気持ちだ。
制服姿の莉桜に気づいて、五十里が軽く微笑む。莉桜の周りからはきゃーっと黄色い声が上がった。
「見た見た!? こっち見て笑ったわ!」
「笑顔、むっちゃいい! 花つけてるからゲストなんだろうけど、何者なのかしら?」
イベントはそれぞれの社長による安全な航行や乗客、乗務員の幸せを願うスピーチののち、関係者によるテープカットが行われた。
その後初就航のプラチナチケットを手にした人が機内に案内される。
一足先に機内へ入って準備していた莉桜たち客室乗務員は乗客一人一人に記念品を配布した。
わくわくと嬉しそうな顔で機内に入っていく乗客を見ていて、まさにこれからが今まで行ってきた訓練の結果を試されるのだと、莉桜も気合が入る。
莉桜は今日プレミアムエコノミーシート担当だった。それでも乗客として入ってきて、ビジネスシートに座る五十里の姿は目に入る。
莉桜の姿を見て五十里は軽く片手を上げた。莉桜は丁寧にお辞儀をする。
五十里はこの初就航で乗務員として搭乗している莉桜と一緒にロスまで行って、そのままこの飛行機で帰ってくるらしい。それは五十里重工役員としての仕事だということだった。
帰国したのち莉桜は長期休暇をとることにしていた。実は五十里も一緒に休暇を取っていて、二人で旅行へ行く予定にしているのだ。
モルディブに行くとは聞いていたけれど、それ以外のことを五十里はすべて秘密なのだと言って、どこに宿泊するとか、どこの航空会社を使うとかも教えてくれない。
五十里が自分で全部手配してしまったようなのだ。すべてサプライズなのだと楽しそうにされてしまっては莉桜も口を挟むことができなかった。
帰国してからのその旅行を莉桜も楽しみにしていた。
機内でのサービスを終え、莉桜たちクルーも食事を終えた頃合いに、ギャレーをひょいっと五十里が覗く。
「五十里様!」
声をひそめて、クルーたちが浮足立った。
「こんにちは。キャビンのようすはどうですか?」
キャビンのようすなどが気になってクルーへ聞き取りに来たようだ。五十里の品のある声と風情に同僚は緊張しながら機内の様子を伝えている。
「プレミアムエコノミーは以前のビジネスクラスのようだととても好評です」
「エコノミーも今までより広い座席にお客様はお喜びでした。あとモニターもきれいで画面が大きいと」
「好評なようで良かった。この機体を二機、三機と購入してもらえるよう、私も頑張らなくては。引き続きどうぞよろしくお願いいたします」
五十里が丁寧に頭を下げるのにクルーたちは「こちらこそです!」とあわてていた。
笑顔を残して席へ戻る時に、五十里は莉桜にだけ分かるように、軽く指先を触れて席に戻る。
たったそれだけのことに莉桜はどきどきとしてしまった。一瞬だけ触れられた指先がまるで熱を持ったようだ。
五十里は莉桜が今まで経験したことないようなときめきをくれる。
「倉木さん、いいなー。あんな素敵な人が彼氏なんて羨ましいです」
莉桜と五十里の交際については隠してもいないし、オープンにしてもいなかった。
それでも、JSAの客室乗務員の中では噂になっていたらしい。
五十里重工から納入された飛行機はそのスタイリッシュな機体に太陽の光をキラキラと反射させながら、駐機場に止まっている。
イベントは搭乗ゲート前で行われていた。JSAの社長初め、五十里重工の関係者などが参加している。
その関係者の中には五十里武尊の姿もあった。
端正な顔立ちとスラリとした肢体は注目を集めていたのだ。
「あれ、誰? ゲストの役者さんとかじゃないよね?」
「すっごくカッコいい……」
一般客のそんな声を莉桜は近くで制服姿で耳にしていた。
五十里のことだと分かって、自分が褒められているようななんだかくすぐったい気持ちだ。
制服姿の莉桜に気づいて、五十里が軽く微笑む。莉桜の周りからはきゃーっと黄色い声が上がった。
「見た見た!? こっち見て笑ったわ!」
「笑顔、むっちゃいい! 花つけてるからゲストなんだろうけど、何者なのかしら?」
イベントはそれぞれの社長による安全な航行や乗客、乗務員の幸せを願うスピーチののち、関係者によるテープカットが行われた。
その後初就航のプラチナチケットを手にした人が機内に案内される。
一足先に機内へ入って準備していた莉桜たち客室乗務員は乗客一人一人に記念品を配布した。
わくわくと嬉しそうな顔で機内に入っていく乗客を見ていて、まさにこれからが今まで行ってきた訓練の結果を試されるのだと、莉桜も気合が入る。
莉桜は今日プレミアムエコノミーシート担当だった。それでも乗客として入ってきて、ビジネスシートに座る五十里の姿は目に入る。
莉桜の姿を見て五十里は軽く片手を上げた。莉桜は丁寧にお辞儀をする。
五十里はこの初就航で乗務員として搭乗している莉桜と一緒にロスまで行って、そのままこの飛行機で帰ってくるらしい。それは五十里重工役員としての仕事だということだった。
帰国したのち莉桜は長期休暇をとることにしていた。実は五十里も一緒に休暇を取っていて、二人で旅行へ行く予定にしているのだ。
モルディブに行くとは聞いていたけれど、それ以外のことを五十里はすべて秘密なのだと言って、どこに宿泊するとか、どこの航空会社を使うとかも教えてくれない。
五十里が自分で全部手配してしまったようなのだ。すべてサプライズなのだと楽しそうにされてしまっては莉桜も口を挟むことができなかった。
帰国してからのその旅行を莉桜も楽しみにしていた。
機内でのサービスを終え、莉桜たちクルーも食事を終えた頃合いに、ギャレーをひょいっと五十里が覗く。
「五十里様!」
声をひそめて、クルーたちが浮足立った。
「こんにちは。キャビンのようすはどうですか?」
キャビンのようすなどが気になってクルーへ聞き取りに来たようだ。五十里の品のある声と風情に同僚は緊張しながら機内の様子を伝えている。
「プレミアムエコノミーは以前のビジネスクラスのようだととても好評です」
「エコノミーも今までより広い座席にお客様はお喜びでした。あとモニターもきれいで画面が大きいと」
「好評なようで良かった。この機体を二機、三機と購入してもらえるよう、私も頑張らなくては。引き続きどうぞよろしくお願いいたします」
五十里が丁寧に頭を下げるのにクルーたちは「こちらこそです!」とあわてていた。
笑顔を残して席へ戻る時に、五十里は莉桜にだけ分かるように、軽く指先を触れて席に戻る。
たったそれだけのことに莉桜はどきどきとしてしまった。一瞬だけ触れられた指先がまるで熱を持ったようだ。
五十里は莉桜が今まで経験したことないようなときめきをくれる。
「倉木さん、いいなー。あんな素敵な人が彼氏なんて羨ましいです」
莉桜と五十里の交際については隠してもいないし、オープンにしてもいなかった。
それでも、JSAの客室乗務員の中では噂になっていたらしい。
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