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4.お仕事しましょう
お仕事しましょう②
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「渡真利先生は、スピード感のある方なんでね。宝条さんも、そこの先生と相談されていましたよね。あれ? 渡真利先生には会ったことない?」
「な……いです、多分」
そう翠咲が言われて、ふと思い出すのはあの冷酷な倉橋弁護士の姿だ。
これから、打ち合わせなのか……。
どんな風に思われるのかと思うと、気が重い。
「そうか。いい先生だよ」
案件は手を離れる。
もう、直接案件に関わることはない。
けれど、清々したとも思えなかった。関わらせてもらえるのは確かにありがたい。翠咲の性格なら、気になってしまって仕方ないだろうから。
「宝条さん」
「はい」
「迷惑なんて思わなくていい。君は君の出来ることを全力でやった結果なのだし、僕はそれを認めています。それでも、なんともならない案件は存在するし、そのために僕や顧問弁護士なんてものが存在する」
「そうそう」
割って入ったバスボイスに、翠咲は顔を上げた。
確かに堂々たる体躯のスーツ姿の男性。
本当に180センチはありそうだ。
しっかり鍛えてそうながっしりした身体とにっと笑う口元が大きくて、まるで太陽かひまわりのような笑顔だ。
堂々とした感じでまた襟元に光る、弁護士バッチが逆らえない雰囲気を増幅させている。
にこにことしていて、頼りがいのある感じ。
この人が、渡真利先生……。
後ろには倉橋がいた。
太陽のような渡真利と比べるとその雰囲気はまるで月のようだ。
蒼白くひんやりとしていて、そのくせ人を魅了する。
ふと、その倉橋と目が合った。
「先日は……すみませんでした」
悪口……のようなものを言ってしまったお詫びだ。
翠咲は軽く頭を下げる。
「いえ。こちらこそ」
みんなで課長が抑えていたミーティングルームに入る。
着席すると、課長が尋ねた。
「渡真利先生、訴状は?」
「ああ、見た見た! クッソくだらねーよな‼︎ 大きな声じゃ言えねーけど」
あはは!と笑っている。
えーと……むちゃくちゃ大きな声で言っているような気がするのですが。
渡真利はつい、じいっと見てしまっている翠咲を見返した。
そうしてにっと笑う。
「心配しなくていいからな。実際、倉橋で十分カタをつけられると思うからさ。こいつもこう見えて優秀な弁護士なんで」
「渡真利先生、こう見えて……は言い過ぎじゃないですか」
倉橋が、そう淡々と言い返すのを見て、だから、認めてるってー!と渡真利は笑っていた。
あ……もしかして、この前の吹いたら飛びそう、とか気にしているんだろうか?
あれはちょっと盛ったし、そこまでは今は思っていないし、こうして見たら渡真利ほどではないけれど頼り甲斐はありそうだし。
「倉橋先生」
翠咲は倉橋に向き直った。
「よろしくお願いいたします」
そう言って頭を下げる。
「はい」
「倉橋、だから愛想ないんだってお前は。こんな可愛い人が頭下げてんのに、はいしか言わないお前のメンタルどうなってんだ? えーと、宝条さん任せてくださいね」
「渡真利先生、盛り上がっているところ恐縮なんですが、担当は僕にバトンタッチですので。ご存知ですよね? この、うちの可愛い宝条はもう担当じゃないですからね」
沢村がにっこり笑って、渡真利に言う。
「沢村課長、そうなんですね。つまんないなあ。では宝条さんがなぜこの場に?」
「な……いです、多分」
そう翠咲が言われて、ふと思い出すのはあの冷酷な倉橋弁護士の姿だ。
これから、打ち合わせなのか……。
どんな風に思われるのかと思うと、気が重い。
「そうか。いい先生だよ」
案件は手を離れる。
もう、直接案件に関わることはない。
けれど、清々したとも思えなかった。関わらせてもらえるのは確かにありがたい。翠咲の性格なら、気になってしまって仕方ないだろうから。
「宝条さん」
「はい」
「迷惑なんて思わなくていい。君は君の出来ることを全力でやった結果なのだし、僕はそれを認めています。それでも、なんともならない案件は存在するし、そのために僕や顧問弁護士なんてものが存在する」
「そうそう」
割って入ったバスボイスに、翠咲は顔を上げた。
確かに堂々たる体躯のスーツ姿の男性。
本当に180センチはありそうだ。
しっかり鍛えてそうながっしりした身体とにっと笑う口元が大きくて、まるで太陽かひまわりのような笑顔だ。
堂々とした感じでまた襟元に光る、弁護士バッチが逆らえない雰囲気を増幅させている。
にこにことしていて、頼りがいのある感じ。
この人が、渡真利先生……。
後ろには倉橋がいた。
太陽のような渡真利と比べるとその雰囲気はまるで月のようだ。
蒼白くひんやりとしていて、そのくせ人を魅了する。
ふと、その倉橋と目が合った。
「先日は……すみませんでした」
悪口……のようなものを言ってしまったお詫びだ。
翠咲は軽く頭を下げる。
「いえ。こちらこそ」
みんなで課長が抑えていたミーティングルームに入る。
着席すると、課長が尋ねた。
「渡真利先生、訴状は?」
「ああ、見た見た! クッソくだらねーよな‼︎ 大きな声じゃ言えねーけど」
あはは!と笑っている。
えーと……むちゃくちゃ大きな声で言っているような気がするのですが。
渡真利はつい、じいっと見てしまっている翠咲を見返した。
そうしてにっと笑う。
「心配しなくていいからな。実際、倉橋で十分カタをつけられると思うからさ。こいつもこう見えて優秀な弁護士なんで」
「渡真利先生、こう見えて……は言い過ぎじゃないですか」
倉橋が、そう淡々と言い返すのを見て、だから、認めてるってー!と渡真利は笑っていた。
あ……もしかして、この前の吹いたら飛びそう、とか気にしているんだろうか?
あれはちょっと盛ったし、そこまでは今は思っていないし、こうして見たら渡真利ほどではないけれど頼り甲斐はありそうだし。
「倉橋先生」
翠咲は倉橋に向き直った。
「よろしくお願いいたします」
そう言って頭を下げる。
「はい」
「倉橋、だから愛想ないんだってお前は。こんな可愛い人が頭下げてんのに、はいしか言わないお前のメンタルどうなってんだ? えーと、宝条さん任せてくださいね」
「渡真利先生、盛り上がっているところ恐縮なんですが、担当は僕にバトンタッチですので。ご存知ですよね? この、うちの可愛い宝条はもう担当じゃないですからね」
沢村がにっこり笑って、渡真利に言う。
「沢村課長、そうなんですね。つまんないなあ。では宝条さんがなぜこの場に?」
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