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第4話 肝試し1
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Side 山城利奈
「ねぇやっぱやめない?」
「何言ってるのよ利奈。今日隼人君もくるんだよ! チャンスじゃん!」
「私、霊感あるんだけど、あそこヤバイって」
この肝試しが決まったのは今日の放課後だった。
バスケ部の終わりに、親友の明菜からこんな提案があったのだ。
「今日の夜に、廃墟に肝試しに行かない?」
「肝試し?」
部活が終わり、更衣室で着替えている時だ。
そんな話を明菜からされた。
明菜は大のホラー好きで、お化け屋敷や肝試し。そういうものが大好物だ。
私は嫌いではないが、好きでもない。そんな感じ。
お母さんの家系的に霊感持ちが多いらしく、私も若干だが霊感がある。
だから、そういう場所に行くなって言われてるので私も行かないようにしている。
憑いてくる場合もあれば、その場所にいる霊を怒らせることだってある。
だから遊び半分で絶対に行っては行けないと何度も言われた。
「やめたほうがいいよ。遊びで行くと碌なことにならないって言うし……」
「でもさ、実は隼人君から誘われたの。利奈と一緒に肝試しに行かないかって」
渋谷隼人。
バスケ部のエースでイケメンの男子だ。
金髪に染めているため、ちょっと近寄りにくい雰囲気があるけど、そこがいいっていう子がいるがよく分からない。
彼の彼女になろうと狙っている女子は多い。ちなみに明菜もその一人だ。
私はちょっと苦手。チャラチャラした人はなんか嫌。
「隼人君ともう一人は雄太だって! ほら結構イケメンの!」
「あんまり話した事ないんだけど……」
同じ部活だが女子と男子では人数も多いので体育館も別れており、そのため偶にやる合同練習以外で話す機会がない。
まぁ、殆どの女子部員は渋谷の練習や試合を観に行っているのだが。
「いっつも雄太って利奈のことを見てるから狙ってるんじゃない? 結構イケメンだし付き合っちゃえば?」
「嫌だよ。小山っていつも私の胸見てるし、視線が何かキモイ……」
同級生の中ではそれなりに育っている方のため、男子の視線には敏感だ。
どうしてもバスケは走ったり飛んだりするから結構大きめのスポブラをしないと胸が揺れて痛い。
そして男子がそれを見ている視線を感じて、本当にいつも気持ち悪いと思っている。
それこそ、明菜が好きな渋谷からもそんな視線を感じる。
「そう? お似合いだと思うけど。お試しで付き合ってもよくない?」
「絶対嫌。もう帰っていい?」
「えぇ~!? お願い! 隼人君にはOKって言っちゃったの! ね! 私の為に付き合ってよ!」
「……もう、何で勝手にOK出してるのよ」
明菜は最近変わってしまったように思う。
前は本当に仲良しで親友だと胸を張って言えた。
でも、最近は私を見る目が何かおかしい。
やたらと私を男子とくっつけようとしているのだ。
先月はサッカー部のキャプテンから告白され、断ったら何故かキレられた。
どういう訳か知らないが私はそのサッカー部のキャプテンが好きで、でも奥手だから告白できずにいる、そんな話を聞いたらしい。
私には記憶に無い。
そもそもクラスも違うから、名前も知らないっていうのに。
この犯人は明菜だった。
告白の件を愚痴で話したら【利奈ってあの人の事好きじゃなかったの?】なんて言われた。
否定したら、【練習風景を見てるなって思ったから好きなんだと思ったよ。でもイケメンだし付き合っちゃえば?】と言われて呆然とした。
別に好きじゃなくても練習風景ぐらい見るし、話しかけられたら話しだってする。
だというのに明菜は私が少し話した男子や目線があった男子なんかを見ると、その男子とくっつけようとするのだ。
付き合ってみれば?
結構お似合いだと思うよ。
お試しで付き合ってもいいと思うけど、等々。
最近はそんな話ばかりだ。
でも、鈍感な私でも薄々気づきつつある。
明菜は私に渋谷と取られたくないのだ。
だから早く私を誰かとくっつけてしまいたいのだろう。
私と話した独身の男性教師すら進めてくる明菜だが、絶対に同じ部活の渋谷の名前は出さない。
そんな心配をしなくても絶対にそれはない。
遠まわしに渋谷は苦手だと説明しても、理解してくれない。
やはり直接言わないと駄目なのかな。
「あのね明菜」
「……どうしたの? 怖い顔して」
「はっきり言っておくけど、私誰とも付き合うつもりないの。小山も、渋谷も一緒よ。だから変に私を誰かと付き合わせようとしないで」
明菜の目を見てはっきりと言った。
私の言いたい事は伝わるだろうか。
「不安なの」
私から目線を零し、明菜は呟くように言った。
「私ね、隼人君のことが好き。付き合いたい。隼人君がしたいことは何でもしてあげたい」
低く、どこか重い声で明菜は呟く。
気付けば明菜は私の手を両手で握っている。
「でも、隼人君はまだ私を見てくれない。利奈のことばっかり見てるッ! ねぇ獲らないで! 本当に好きなの!」
「い、いたいよ」
握られた手が段々と力が強くなっている。
血が止まり白くなってきているくらいだ。
「獲らないよ! そもそも渋谷のこと好きじゃないし」
「だったら告られても付き合わない!? 絶対に!?」
「付き合わないよ! いいから手離してッ!」
必死に手を振りほどく。
部活が終わって疲れてるのに、何でまたこんなに疲れないといけないのよ。
明菜も長い髪が少しボサボサになって少し虚ろな目でこっちを見ている。
「だったら協力してよ、いいでしょ!? 私達友達なんだから!」
友達。
そう、友達だ。親友だとさえ思っていた。
でも、明菜。本当の友達なら自分の恋路のために好きでもなんでもない人と付き合わせようとはしないよ。
同じ人を好きになったのならライバル同士足の引っ張り合いはあるかもだけど、
はっきりと好きじゃないって言った相手を無理やり巻き込んで自分の都合に付き合わせのは違うと思う。
明菜の狂気を感じるような瞳を見て息を呑む。
そこまで人を好きになれるという事が羨ましくもあり、怖くもある。
「……これが最後よ。もうこれっきり。その後はもう協力しない。でも勘違いしないで、渋谷と付き合いたいって事じゃなくて、明菜と渋谷をくっつけることに協力しないって事」
「どうしてよ……」
「明菜の言う協力が私が誰かと付き合うって事だからよ。何で明菜のために好きでもない人と付き合わないといけないの?」
「言ったでしょ、隼人君。多分利奈のこと好きだと思う。諦めてもらうにはそれしかないもの」
渋谷が私を?
想像すると背筋が振るえる。
絶対無理。
「だったら学校外で彼氏いるってことにしてよ。それなら良くない?」
「無理よ。利奈バイトもしてないし、急に外に彼氏いるって言われても誰も納得しない」
「いいや、それで行きましょ。今日の肝試しの時にさり気無く言ってみるわ」
「でも……」
「でもも糸瓜もないわ。もうそれで行きましょ、で何時からどこでやるの?」
適当に彼氏像を作るとしよう。
設定はどうしようか。
背の高い人が好きだから当然高身長にするとして、
じゃあ、ナンパから助けて貰って、そのまま一目惚れとかにしようか。
こういう時バイトしてればバイト先って言えるんだけどな。
「今日の21時に北熊駅から歩いて20分くらいのラブホ。今は廃墟になってるらしくて、割れた窓から入れるらしいの」
「……はぁ」
深夜の廃墟になったラブホに若い二組の男女って……
これ絶対危ない。
幽霊からじゃなくて、人間から身を守らないとだめだ。
「ねぇ、分かってる?」
「え、何が?」
首を傾げる明菜を見てため息が出そうになるのを我慢する。
恋は盲目というが、これはあからさまだ。
「ねぇ本当に4人だけ?」
「うん、そう聞いてるよ」
「――一応備えて置くかな」
気のせいならいい。
だが、深夜誰も居ないラブホの廃墟。
色々と揃いすぎている。
恋は盲目というが、盲目どころか思考を放棄しているような気がする。
(私が助けないと駄目だよね)
「ねぇやっぱやめない?」
「何言ってるのよ利奈。今日隼人君もくるんだよ! チャンスじゃん!」
「私、霊感あるんだけど、あそこヤバイって」
この肝試しが決まったのは今日の放課後だった。
バスケ部の終わりに、親友の明菜からこんな提案があったのだ。
「今日の夜に、廃墟に肝試しに行かない?」
「肝試し?」
部活が終わり、更衣室で着替えている時だ。
そんな話を明菜からされた。
明菜は大のホラー好きで、お化け屋敷や肝試し。そういうものが大好物だ。
私は嫌いではないが、好きでもない。そんな感じ。
お母さんの家系的に霊感持ちが多いらしく、私も若干だが霊感がある。
だから、そういう場所に行くなって言われてるので私も行かないようにしている。
憑いてくる場合もあれば、その場所にいる霊を怒らせることだってある。
だから遊び半分で絶対に行っては行けないと何度も言われた。
「やめたほうがいいよ。遊びで行くと碌なことにならないって言うし……」
「でもさ、実は隼人君から誘われたの。利奈と一緒に肝試しに行かないかって」
渋谷隼人。
バスケ部のエースでイケメンの男子だ。
金髪に染めているため、ちょっと近寄りにくい雰囲気があるけど、そこがいいっていう子がいるがよく分からない。
彼の彼女になろうと狙っている女子は多い。ちなみに明菜もその一人だ。
私はちょっと苦手。チャラチャラした人はなんか嫌。
「隼人君ともう一人は雄太だって! ほら結構イケメンの!」
「あんまり話した事ないんだけど……」
同じ部活だが女子と男子では人数も多いので体育館も別れており、そのため偶にやる合同練習以外で話す機会がない。
まぁ、殆どの女子部員は渋谷の練習や試合を観に行っているのだが。
「いっつも雄太って利奈のことを見てるから狙ってるんじゃない? 結構イケメンだし付き合っちゃえば?」
「嫌だよ。小山っていつも私の胸見てるし、視線が何かキモイ……」
同級生の中ではそれなりに育っている方のため、男子の視線には敏感だ。
どうしてもバスケは走ったり飛んだりするから結構大きめのスポブラをしないと胸が揺れて痛い。
そして男子がそれを見ている視線を感じて、本当にいつも気持ち悪いと思っている。
それこそ、明菜が好きな渋谷からもそんな視線を感じる。
「そう? お似合いだと思うけど。お試しで付き合ってもよくない?」
「絶対嫌。もう帰っていい?」
「えぇ~!? お願い! 隼人君にはOKって言っちゃったの! ね! 私の為に付き合ってよ!」
「……もう、何で勝手にOK出してるのよ」
明菜は最近変わってしまったように思う。
前は本当に仲良しで親友だと胸を張って言えた。
でも、最近は私を見る目が何かおかしい。
やたらと私を男子とくっつけようとしているのだ。
先月はサッカー部のキャプテンから告白され、断ったら何故かキレられた。
どういう訳か知らないが私はそのサッカー部のキャプテンが好きで、でも奥手だから告白できずにいる、そんな話を聞いたらしい。
私には記憶に無い。
そもそもクラスも違うから、名前も知らないっていうのに。
この犯人は明菜だった。
告白の件を愚痴で話したら【利奈ってあの人の事好きじゃなかったの?】なんて言われた。
否定したら、【練習風景を見てるなって思ったから好きなんだと思ったよ。でもイケメンだし付き合っちゃえば?】と言われて呆然とした。
別に好きじゃなくても練習風景ぐらい見るし、話しかけられたら話しだってする。
だというのに明菜は私が少し話した男子や目線があった男子なんかを見ると、その男子とくっつけようとするのだ。
付き合ってみれば?
結構お似合いだと思うよ。
お試しで付き合ってもいいと思うけど、等々。
最近はそんな話ばかりだ。
でも、鈍感な私でも薄々気づきつつある。
明菜は私に渋谷と取られたくないのだ。
だから早く私を誰かとくっつけてしまいたいのだろう。
私と話した独身の男性教師すら進めてくる明菜だが、絶対に同じ部活の渋谷の名前は出さない。
そんな心配をしなくても絶対にそれはない。
遠まわしに渋谷は苦手だと説明しても、理解してくれない。
やはり直接言わないと駄目なのかな。
「あのね明菜」
「……どうしたの? 怖い顔して」
「はっきり言っておくけど、私誰とも付き合うつもりないの。小山も、渋谷も一緒よ。だから変に私を誰かと付き合わせようとしないで」
明菜の目を見てはっきりと言った。
私の言いたい事は伝わるだろうか。
「不安なの」
私から目線を零し、明菜は呟くように言った。
「私ね、隼人君のことが好き。付き合いたい。隼人君がしたいことは何でもしてあげたい」
低く、どこか重い声で明菜は呟く。
気付けば明菜は私の手を両手で握っている。
「でも、隼人君はまだ私を見てくれない。利奈のことばっかり見てるッ! ねぇ獲らないで! 本当に好きなの!」
「い、いたいよ」
握られた手が段々と力が強くなっている。
血が止まり白くなってきているくらいだ。
「獲らないよ! そもそも渋谷のこと好きじゃないし」
「だったら告られても付き合わない!? 絶対に!?」
「付き合わないよ! いいから手離してッ!」
必死に手を振りほどく。
部活が終わって疲れてるのに、何でまたこんなに疲れないといけないのよ。
明菜も長い髪が少しボサボサになって少し虚ろな目でこっちを見ている。
「だったら協力してよ、いいでしょ!? 私達友達なんだから!」
友達。
そう、友達だ。親友だとさえ思っていた。
でも、明菜。本当の友達なら自分の恋路のために好きでもなんでもない人と付き合わせようとはしないよ。
同じ人を好きになったのならライバル同士足の引っ張り合いはあるかもだけど、
はっきりと好きじゃないって言った相手を無理やり巻き込んで自分の都合に付き合わせのは違うと思う。
明菜の狂気を感じるような瞳を見て息を呑む。
そこまで人を好きになれるという事が羨ましくもあり、怖くもある。
「……これが最後よ。もうこれっきり。その後はもう協力しない。でも勘違いしないで、渋谷と付き合いたいって事じゃなくて、明菜と渋谷をくっつけることに協力しないって事」
「どうしてよ……」
「明菜の言う協力が私が誰かと付き合うって事だからよ。何で明菜のために好きでもない人と付き合わないといけないの?」
「言ったでしょ、隼人君。多分利奈のこと好きだと思う。諦めてもらうにはそれしかないもの」
渋谷が私を?
想像すると背筋が振るえる。
絶対無理。
「だったら学校外で彼氏いるってことにしてよ。それなら良くない?」
「無理よ。利奈バイトもしてないし、急に外に彼氏いるって言われても誰も納得しない」
「いいや、それで行きましょ。今日の肝試しの時にさり気無く言ってみるわ」
「でも……」
「でもも糸瓜もないわ。もうそれで行きましょ、で何時からどこでやるの?」
適当に彼氏像を作るとしよう。
設定はどうしようか。
背の高い人が好きだから当然高身長にするとして、
じゃあ、ナンパから助けて貰って、そのまま一目惚れとかにしようか。
こういう時バイトしてればバイト先って言えるんだけどな。
「今日の21時に北熊駅から歩いて20分くらいのラブホ。今は廃墟になってるらしくて、割れた窓から入れるらしいの」
「……はぁ」
深夜の廃墟になったラブホに若い二組の男女って……
これ絶対危ない。
幽霊からじゃなくて、人間から身を守らないとだめだ。
「ねぇ、分かってる?」
「え、何が?」
首を傾げる明菜を見てため息が出そうになるのを我慢する。
恋は盲目というが、これはあからさまだ。
「ねぇ本当に4人だけ?」
「うん、そう聞いてるよ」
「――一応備えて置くかな」
気のせいならいい。
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