44 / 54
第44話 伝承霊11
しおりを挟む
Side ■■■
じくじくとまるで脳に針が刺さり、そこからさらに鋭い棘が頭の中をかき回すような痛みを感じる。
だが、久しく感じなかったこの痛みさえ、今はとても愛しい。
あぁ、せっかくの舞台を台無しにしようとしたあの男の秘書を新幹線で殺そうと思い、虎の子の伝承霊を仕込んだというのにうまくいかなかった。
強さで言えば八尺様より強力に作りこんだというのに、まさかこうも容易く祓われるとは想像もしなかったね。
お陰で力が反射し、僕の方へ帰ってきてしまった。
「痛いなぁ、痛いなぁ。まぁでも適当に偽眼でも入れておけばいいかなぁ」
スキップするような気軽さで森の中を歩きながら、懐に入れていた瓶を取り出す。
そこには縦に裂けた眼球が一つ液体の中に浮いている。
それがとても美しく、思わず何度も見てしまう。
この眼球が今まで自分にこの素晴らし世界を見せてくれていたのだと思えば愛着だって沸くというものだ。
「はぁ、正直もう九条さんの所は興味なくなっちゃったんだけど、どーしようかなぁ。お金もたんまり稼いだし、また新しいの作りたいしなぁ」
九条家には八尺様ともう一つとっておきの爆弾を置いてある。
これがいつ起爆するか楽しみにしているため、それだけでも見ておきたいところだが、流石に飽きてしまった。
最初は怯えるあの家族の様子が楽しかった。ついでに金も稼げるのでホワイトな職場だと思っていたのだが、あの九条忠則がいつのまにか新しい霊能者を雇っていたのだ。
せっかくの仕事を邪魔するのかと思い、徹底的に嫌がらせしてやろうと思ったのだが、それが失敗してしまった。
あの大蓮寺とかいうおっさんでもそう簡単に祓えない伝承霊を使ったというのに、あの外人に邪魔された。
だが、それが僕とあの外人の彼と記念すべき出会いだ。
あぁ、彼は今どこにいるんだろう。九条家とかもうどうでもいいから、あの外人を何とか探し出して、同じ痛みを共有したい。
まさか、日本にあそこまで強い霊能者がいるなんて思いもしなかった。
どこ出身なんだろう、何とか特定し、彼の家族に会ってみたい。
アメリカかな。でもアメリカでは伝承霊は使えないしなぁ。
伝承霊は我ながらユニークな怪異なんだけど、日本でしか使えないのがネックなんだよねぇ。
とりあえず、さっさとこんなじめじめした場所からおさらばして、新しい玩具で遊びたい。
そう思っていた時だ。
「ん……?」
右手に痛みが走ったため、サングラス越しに痛みを感じた場所を見ると人差し指の爪が割れていた。
せっかく手入れした爪が割れたことにショックを感じながらも、その原因を考える。
そしてすぐに思い当たった。
九条家の中に設置した呪具が壊れたのだろう。
中の様子がある程度わかるように、少しだけ五感が繋がるような物を置いていたんだけど、それの一部が壊れたみたいだ。
「あの狸おやじかなぁ。――いや、一応ベテランみたいだし気づかれたかな」
いや、それでもおかしい。
さっきの気配から察するに複数の呪具がいっぺんに消えた。
一つずつ潰すならまだわかるがいっぺんに、そして同時に破壊されたという異常性を考える。
そこから考えられる答えは、僕の中でとても甘美な物であった。
「あは、あの銀髪の外人さん。もしかして九条さんが雇った霊能者なんじゃなぁい?」
もしかしたら違うかもしれないし、僕の想像があっているかもしれない。
でもどっちでもいい。このどっちなのか分からないワクワク感が大切なのだ。
口角が限界まで上がるのを感じながら森の中を進んでいった。
Side 勇実礼土
向こうの世界にいた時からそうだったのだが、俺には苦手なものがある。
そう、子供だ。
基本生意気であり、よくわからない全能感を持っており、そして、絶対自分なら大丈夫だと変な自信を持っている。
自分は他人と違う特別なのだと信じてやまないのだ。
まったくその根拠はどこからくるのかぜひ聞いてみたい。
「なぁ面白いそれ?」
「……わかんない」
まぁこの少年は違うようだ。
内向的なのか、単純に俺を怖がってるのか知らないが、全く目を合わせようとしない。
それにしても木彫りの鷹のプラモデルのような物体を一生懸命触っているこの太陽という少年。
向こうの世界だと、このぐらいの子供は剣を振ったり、魔法の練習をしていたりするものだが、どうやらこっちの世界の子供はプラモデルを触るのが好きなようだ。
あの後、大蓮寺と一緒に九条夫妻に状況を説明した。
もっとも、霊の詳細は話さず、ただ弟子ということになっている自分が子供の護衛をするという事の説明だ。
一応護衛経験はそこそこある。
個人的には苦手な依頼だ。襲ってくる魔物と盗賊なんかは敵意を感じた瞬間に殺すので、護衛という仕事自体は何も問題はない。
問題は長時間護衛対象と同じ空間にいなければならないという事だ。
それが苦痛で苦痛で仕方なかった。
一度貴族の子供の護衛もやったことがあるが、あれは地獄だったな。
やれ、魔物がみたいだの、やれ魔法がみたいだの。しまいには専属の護衛になれだと。
あのクソガキ、まともに成長しただろうか。
「なんか一生懸命動かしてるけど、何やってんの?」
「……なんか違う動物に変身するみたい」
違う動物ねぇ。
もしかしてトランスフォー〇ーとかそういうやつか?
それにしてもさっきも感じたんだが、妙な気配を感じるプラモだな。
なんだろう、ずっと見ているとこう……
気持ちが悪い。
どこか身に覚えがあるこの感覚。
この邪悪な気持ち悪さはどこで感じたものだったろうか。
だめだな。見ていても気分のいいものじゃない。
漫画を読もう、そうしよう。
スマホを取り出し電子書籍のアプリを起動する。
基本紙も好きなんだが、移動先で読む分には電子書籍は楽でいい。
ふぅ、こうして知的な文化を楽しんでいるときが一番至福を感じるな。
「……何してるの?」
少年に話しかけれてしまった。
手ではずっと鷹であったプラモが別の形に変わろうとしている。
聞いてみると元々は熊だったそうで、そこから次は鷹に変身したのだそうだ。
どうやら次は魚になる予定らしい。
何かのアニメのおもちゃなのだろうか、それにしては木製とはね。
メーカーも思い切ったことをするものだ。
正直売れるとは思えないな。
「読書してるんだよ。……何読んでるかしりたいか?」
「……いいよ、難しい本は聞いてもわからないし」
このお子様めぇ。だったら聞くな!!!
まぁ、漫画を読むにはまだ幼すぎるのは否めないからな。
やはり漫画を読むためには深い知識が必要になる。
子供に無理なのは仕方ない、いかんな、大人の俺が熱くなってどうする。
するとドアをノックする音が聞こえる。
「失礼しますね、お茶などどうかしら」
「あ、ママッ!」
母親が来た途端に随分元気なものだ。
だが、子供と二人きりという空間から解放されたのはありがたい。
「勇実さん、本当にありがとうございます。こんな歳になってからできた子供なのでもう可愛くて可愛くてね」
「……いつ生まれた子供でも、親なら可愛いと思えるものでしょう」
いかんな、この手の話題になると毒を吐きそうになってしまう。
向こうとは違う世界なんだ、この国の親は子供を捨てたりせず、しっかりと育てる人が多いのだろう。
口減らしのために10歳から冒険者登録ができるような場所とは違う。
「あ、そうそう。これ田嶋さんから聞いていたのでちゃんと用意しておいたのよ」
「は?」
なんだ、いやな予感がする。
この胸を締め付けるような違和感がなんだ。
先ほどの鷹のプラモデルと同じくらい凶悪な気配を感じるぞ。
九条少年の母親は持っていたお盆をテーブルの上に乗せる。
そこにはカップが3つある。
しかし、なぜだろう。3つとも飲み物が違っているのは気のせいだろうか。
「わーい、ココアだ!」
そういうと少年はコップの一つを奪い取っていった。
残りは緑色の液体と漆黒の闇が残る。
「どうぞ、大のコーヒー好きと聞いていたので一応準備していたんです。さぁ召し上がってください」
そういって渡されたカップの中にはすべてを吸い込む闇があった。
たじまぁぁぁああああ!!!!!
覚えてろよぉ!!!!!
じくじくとまるで脳に針が刺さり、そこからさらに鋭い棘が頭の中をかき回すような痛みを感じる。
だが、久しく感じなかったこの痛みさえ、今はとても愛しい。
あぁ、せっかくの舞台を台無しにしようとしたあの男の秘書を新幹線で殺そうと思い、虎の子の伝承霊を仕込んだというのにうまくいかなかった。
強さで言えば八尺様より強力に作りこんだというのに、まさかこうも容易く祓われるとは想像もしなかったね。
お陰で力が反射し、僕の方へ帰ってきてしまった。
「痛いなぁ、痛いなぁ。まぁでも適当に偽眼でも入れておけばいいかなぁ」
スキップするような気軽さで森の中を歩きながら、懐に入れていた瓶を取り出す。
そこには縦に裂けた眼球が一つ液体の中に浮いている。
それがとても美しく、思わず何度も見てしまう。
この眼球が今まで自分にこの素晴らし世界を見せてくれていたのだと思えば愛着だって沸くというものだ。
「はぁ、正直もう九条さんの所は興味なくなっちゃったんだけど、どーしようかなぁ。お金もたんまり稼いだし、また新しいの作りたいしなぁ」
九条家には八尺様ともう一つとっておきの爆弾を置いてある。
これがいつ起爆するか楽しみにしているため、それだけでも見ておきたいところだが、流石に飽きてしまった。
最初は怯えるあの家族の様子が楽しかった。ついでに金も稼げるのでホワイトな職場だと思っていたのだが、あの九条忠則がいつのまにか新しい霊能者を雇っていたのだ。
せっかくの仕事を邪魔するのかと思い、徹底的に嫌がらせしてやろうと思ったのだが、それが失敗してしまった。
あの大蓮寺とかいうおっさんでもそう簡単に祓えない伝承霊を使ったというのに、あの外人に邪魔された。
だが、それが僕とあの外人の彼と記念すべき出会いだ。
あぁ、彼は今どこにいるんだろう。九条家とかもうどうでもいいから、あの外人を何とか探し出して、同じ痛みを共有したい。
まさか、日本にあそこまで強い霊能者がいるなんて思いもしなかった。
どこ出身なんだろう、何とか特定し、彼の家族に会ってみたい。
アメリカかな。でもアメリカでは伝承霊は使えないしなぁ。
伝承霊は我ながらユニークな怪異なんだけど、日本でしか使えないのがネックなんだよねぇ。
とりあえず、さっさとこんなじめじめした場所からおさらばして、新しい玩具で遊びたい。
そう思っていた時だ。
「ん……?」
右手に痛みが走ったため、サングラス越しに痛みを感じた場所を見ると人差し指の爪が割れていた。
せっかく手入れした爪が割れたことにショックを感じながらも、その原因を考える。
そしてすぐに思い当たった。
九条家の中に設置した呪具が壊れたのだろう。
中の様子がある程度わかるように、少しだけ五感が繋がるような物を置いていたんだけど、それの一部が壊れたみたいだ。
「あの狸おやじかなぁ。――いや、一応ベテランみたいだし気づかれたかな」
いや、それでもおかしい。
さっきの気配から察するに複数の呪具がいっぺんに消えた。
一つずつ潰すならまだわかるがいっぺんに、そして同時に破壊されたという異常性を考える。
そこから考えられる答えは、僕の中でとても甘美な物であった。
「あは、あの銀髪の外人さん。もしかして九条さんが雇った霊能者なんじゃなぁい?」
もしかしたら違うかもしれないし、僕の想像があっているかもしれない。
でもどっちでもいい。このどっちなのか分からないワクワク感が大切なのだ。
口角が限界まで上がるのを感じながら森の中を進んでいった。
Side 勇実礼土
向こうの世界にいた時からそうだったのだが、俺には苦手なものがある。
そう、子供だ。
基本生意気であり、よくわからない全能感を持っており、そして、絶対自分なら大丈夫だと変な自信を持っている。
自分は他人と違う特別なのだと信じてやまないのだ。
まったくその根拠はどこからくるのかぜひ聞いてみたい。
「なぁ面白いそれ?」
「……わかんない」
まぁこの少年は違うようだ。
内向的なのか、単純に俺を怖がってるのか知らないが、全く目を合わせようとしない。
それにしても木彫りの鷹のプラモデルのような物体を一生懸命触っているこの太陽という少年。
向こうの世界だと、このぐらいの子供は剣を振ったり、魔法の練習をしていたりするものだが、どうやらこっちの世界の子供はプラモデルを触るのが好きなようだ。
あの後、大蓮寺と一緒に九条夫妻に状況を説明した。
もっとも、霊の詳細は話さず、ただ弟子ということになっている自分が子供の護衛をするという事の説明だ。
一応護衛経験はそこそこある。
個人的には苦手な依頼だ。襲ってくる魔物と盗賊なんかは敵意を感じた瞬間に殺すので、護衛という仕事自体は何も問題はない。
問題は長時間護衛対象と同じ空間にいなければならないという事だ。
それが苦痛で苦痛で仕方なかった。
一度貴族の子供の護衛もやったことがあるが、あれは地獄だったな。
やれ、魔物がみたいだの、やれ魔法がみたいだの。しまいには専属の護衛になれだと。
あのクソガキ、まともに成長しただろうか。
「なんか一生懸命動かしてるけど、何やってんの?」
「……なんか違う動物に変身するみたい」
違う動物ねぇ。
もしかしてトランスフォー〇ーとかそういうやつか?
それにしてもさっきも感じたんだが、妙な気配を感じるプラモだな。
なんだろう、ずっと見ているとこう……
気持ちが悪い。
どこか身に覚えがあるこの感覚。
この邪悪な気持ち悪さはどこで感じたものだったろうか。
だめだな。見ていても気分のいいものじゃない。
漫画を読もう、そうしよう。
スマホを取り出し電子書籍のアプリを起動する。
基本紙も好きなんだが、移動先で読む分には電子書籍は楽でいい。
ふぅ、こうして知的な文化を楽しんでいるときが一番至福を感じるな。
「……何してるの?」
少年に話しかけれてしまった。
手ではずっと鷹であったプラモが別の形に変わろうとしている。
聞いてみると元々は熊だったそうで、そこから次は鷹に変身したのだそうだ。
どうやら次は魚になる予定らしい。
何かのアニメのおもちゃなのだろうか、それにしては木製とはね。
メーカーも思い切ったことをするものだ。
正直売れるとは思えないな。
「読書してるんだよ。……何読んでるかしりたいか?」
「……いいよ、難しい本は聞いてもわからないし」
このお子様めぇ。だったら聞くな!!!
まぁ、漫画を読むにはまだ幼すぎるのは否めないからな。
やはり漫画を読むためには深い知識が必要になる。
子供に無理なのは仕方ない、いかんな、大人の俺が熱くなってどうする。
するとドアをノックする音が聞こえる。
「失礼しますね、お茶などどうかしら」
「あ、ママッ!」
母親が来た途端に随分元気なものだ。
だが、子供と二人きりという空間から解放されたのはありがたい。
「勇実さん、本当にありがとうございます。こんな歳になってからできた子供なのでもう可愛くて可愛くてね」
「……いつ生まれた子供でも、親なら可愛いと思えるものでしょう」
いかんな、この手の話題になると毒を吐きそうになってしまう。
向こうとは違う世界なんだ、この国の親は子供を捨てたりせず、しっかりと育てる人が多いのだろう。
口減らしのために10歳から冒険者登録ができるような場所とは違う。
「あ、そうそう。これ田嶋さんから聞いていたのでちゃんと用意しておいたのよ」
「は?」
なんだ、いやな予感がする。
この胸を締め付けるような違和感がなんだ。
先ほどの鷹のプラモデルと同じくらい凶悪な気配を感じるぞ。
九条少年の母親は持っていたお盆をテーブルの上に乗せる。
そこにはカップが3つある。
しかし、なぜだろう。3つとも飲み物が違っているのは気のせいだろうか。
「わーい、ココアだ!」
そういうと少年はコップの一つを奪い取っていった。
残りは緑色の液体と漆黒の闇が残る。
「どうぞ、大のコーヒー好きと聞いていたので一応準備していたんです。さぁ召し上がってください」
そういって渡されたカップの中にはすべてを吸い込む闇があった。
たじまぁぁぁああああ!!!!!
覚えてろよぉ!!!!!
0
あなたにおすすめの小説
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる