家路

寿太郎

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第3章

演劇部復活

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1週間が経った。今日は演劇部を復活させるための大事な日となった。周りにはたくさんの夫妻や同級生、下級生がいる。3年生は受験が近づいているということもあり出し物をする人は少なかった。
出し物が始まった。演劇部の出番は最後である。1グループ、2グループ、3グループ…どんどん進んで行く。
出番が来た。3人が壇上に上がる。3人とも緊張した顔つきであった。琴音が気づいた。1番目の前に琴音の両親の姿を見つけた。次に翔太も見つけた。明夫も広菜も笑顔でこっちを見ている。翔太が横を向くと秀は顔を真っ青にしてカチカチであった。時間は止まらない。演劇の時間が始まった。

結果は。
一通り流すことは出来た。しかし、秀はあの後もカチカチで一言も台詞が出てこなかった。ほぼ琴音と翔太が話を進めた。琴音は上出来であったが翔太も最後の1番大切な台詞で噛んでしまった。翔太は演劇をしている小学生の頃から今までずっと長かろうと短かろうと噛む癖がある。1番残念なタイプだ。父親にも何度も注意された。同じことを繰り返すやつはバカだと。それを思い出した日となった。琴音は部長としてこのメンバーで成功させることが出来なかったことに対し悔しさが残った。

1ヶ月後。あの発表の日から毎日、3人は演劇の練習をしていた。悔しさをどこにもぶつけることは出来なかったが復活は諦めなかった。3回、ドアからノックされた音が聞こえた。入って来たのは生徒会長の宇宙だった。
「練習中ごめんね。この前の発表会お疲れ様。と言っても1ヶ月前の話だけどね。審議の結果が出たから言いに来たわよ。」
「どうせ不合格だろ。」
下を向きながら翔太は答えた。
「単刀直入に言うわ。結果は部活復活だよ」
3人は固まった。それを見た宇宙は
「発表自体はそんなに良いものとは言えなかった。でもね、しっかりと練習した形跡は見えたの。秀が何も言えなかったけどそこで2人でカバーできた。演劇って1人でやるものじゃないの。人間にはミスも失敗もある。それを周りがカバーしてあげることが大切なの。それをしっかり見せてもらった。それに失敗した秀はそれを反省してしっかり今も練習やっている。この人たちをなぜやめさせる必要があるの?全員一致だったわよ。復活賛成」
琴音は涙が止まらなかった。秀も「ありがとう」と呟いた。そこへ4人の女の子がやってきた。同じクラスメイトで翔太とよく話す愛、翼、しずえ、加奈だった。宇宙が紹介する。
「新入部員よ。あなた達の演劇を見て協力したいと言ってきた人たち。仲良くしなよ。」
翔太が「次の発表する機会はいつだ?」宇宙聞いた。宇宙は少し答えをためらいながら答える。
「卒業式の前日のお別れ会よ。」
翔太は意味をすぐに理解した。もう夏。皆んなはこれから受験に入る。行事も何もない。残すは卒業式。みんなも卒業する。次がラストチャンスと言うことだ。部長の琴音が声を貼りながら
「部員もみんな揃ったよ!今からしっかりみんなで練習しよ!後悔しないようにそして卒業する時にみんなで笑って泣いて想い出を作って終わろう!ファイトー!」
部員7名と生徒会長の宇宙を含めた8人で円陣を組んだ。部長の琴音が指揮を執る。
「ラスト半年!みんなで最高の想い出を!ファイト!おー!」
残り少ないが演劇部が復活した。

今日は皆解散した中で翔太と琴音は教室に残っていた。このシーンとした空気の中翔太が
「なぁ、琴音」
「はい!なんでしょう?」
「この演劇部復活になったタイミングでなんだけどさ…あの…」
緊張した空気が漂う。琴音は息をゴクンと飲み込んだ。翔太は決意を固めて殻を破った。
「これから先の人生、俺と一緒にバイクみたいに風を切っていかないか?」
それまでの緊張した空気が吹き飛んだ。琴音は失笑し外で盗聴していた部員達も全員ズッ転けた。翔太は顔真っ赤である。そして照れた表情をした琴音が満面の笑みで
「はい!よろしくお願いします!」

2人の二人三脚の人生が始まった。
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