17 / 29
キスに緊張
しおりを挟む
「え! いや全然!」
「お茶、飲む?」
「飲む飲む! 喉めちゃくちゃ渇いた!」
「えっ……早く言ってくれれば良かったのに……」
実際はそこまででもなかったが大袈裟に言って空気を変えたかった。アキは挙動不審な俺の動きに少し違和感を感じている様だったが、俺が課題について質問するとすぐに切り換えて応えてくれた。
「アキは本当に頭良いよなぁー!」
「そんな事ないって」
「あ、同じ学校なのに、見かけなかったのって、もしかしてアキ特進クラス? 俺、普通科だから棟違うもんな」
「んー、まぁ、そんな感じ」
なんだが歯切れの悪さを感じて少し引っかかる。しかし、もし本人が言いたくないことなら無理強いしたくない。
「あ、そうだ! 課題手伝ってくれたお礼何がいい?」
「お礼?」
「そう、お礼。勉強会とか言いながら完全に俺の課題の手伝いさせちゃってるじゃん。だから何かお礼させて欲しいんだけど」
「いいのに」
「そう言わずにさぁー! 何かない?」
遠慮するアキに俺は調子良くなり要求を促した。現状分かってるアキの欲しいものなんて一つしか思い当たらないことくらい冷静になって考えれば分かったはずなのに。
「じゃあ、リュージが欲しい」
言葉が出てこなかった。
欲しいって…………具体的にどういう意味で?
「欲しいって言われても……」
モゴモゴと言い訳を探す俺にアキはにじり寄って来た。徐々に近付いてくるにつれて心臓が大きく跳ね始める。
「駄目?」
「駄目って言うか、なんつーか」
俯いた俺の顔をアキが優しく持ち上げる。目が合わないようにしていたのに、思い切り捕らえられて動けない。アキの顔がボヤけるくらいの近さまで距離が詰まり、アキがそっと口を開く。
「いや?」
「嫌……じゃない」
咄嗟にでた言葉に、自分が1番驚いた。
「嫌じゃないなら……」
そう言ってアキは俺の唇に触れてきた。カサカサとした感触が今までしてきたものとは違い、強烈に脳裏に焼き付いた。
「リュージ、あのさ」
眉間にシワが寄るくらいキツく目をつぶっていた俺はアキの呼び掛けに薄目を開けた。
「口、ガチガチだからもうちょっと力抜いて欲しい」
「え、」
途端、急に恥ずかしさが膨れ上がっていく。キスなんてそれなりにしてきたし、いつも自分からリードして、下手なんて言われたこと無かったのに。よりにもよってアキに指摘されてしまうなんて。
「あれ? 力入ってた?」
誤魔化そうとなるべく軽い感じで声を出す。アキとのキスに緊張してガチガチになっているなんて、絶対に知られたくない。俺のちっぽけなプライドがそう叫んでいた。
「おかしいなー、いつもはそんな感じじゃないんだけど」
「いつもって」
「ん? 元カノとした時とか──」
口が滑った、と感じたのは、アキの空気が一変したからだった。現恋人に元カノの話をするなんてデリカシーのかけらも無い。アキとは友達との延長線の付き合いの感覚でいて、つい口から出てしまった。キスまでしておいて友達の延長線というのもおかしな話だが。
「その元カノとはどんなキスしてたの?」
「は?」
「そんなの忘れさせる」
「ちょっと、アキ──」
アキが力を入れて俺の腕を掴んだ。痛い、と声に出そうとするが、アキの気迫に圧倒されて空気を吐き出すことしか出来ない。
アキのことが怖い、そう思った瞬間。
「アキくん?」
ドアの方からアキを呼ぶ女の子の声がした。
俺は声がした方に目を向けた。そこには同い年くらいの女の子が立ち尽くしていた。ふわふわの茶色い髪が可愛らしい顔立ちを更に小動物のような印象にさせていて、守ってあげたくなるような容姿をしている。一言で言ってしまえばかなり可愛い。
突如として現れた女の子は大きな目を見開き、何故か愕然としたような表情で俺たちを見つめていた。
「乃亜」
アキが彼女の名前を呼んだ。知り合いらしい。
「タイミング悪い」
「タイミング悪いって何!? ってかこの人誰!?」
乃亜と呼ばれた女の子は高めの声でアキに食ってかかった。アキは一旦俺から離れるとため息を吐いた。
「アキくんは乃亜のものでしょ!」
「…………」
アキは否定も肯定もせず、立ち尽くしている。すると、乃亜は部屋の中に入って来て、アキの腕に纏わりついた。これでもかというほど身体を密着させ、アキの名前を呼んだ。
アキは何の反応も示さないまま、しばらく時間だけが過ぎた。
俺は状況が読めずに、どうしたらいいのか分からず、迫り来る疎外感に飲み込まれた。
「お茶、飲む?」
「飲む飲む! 喉めちゃくちゃ渇いた!」
「えっ……早く言ってくれれば良かったのに……」
実際はそこまででもなかったが大袈裟に言って空気を変えたかった。アキは挙動不審な俺の動きに少し違和感を感じている様だったが、俺が課題について質問するとすぐに切り換えて応えてくれた。
「アキは本当に頭良いよなぁー!」
「そんな事ないって」
「あ、同じ学校なのに、見かけなかったのって、もしかしてアキ特進クラス? 俺、普通科だから棟違うもんな」
「んー、まぁ、そんな感じ」
なんだが歯切れの悪さを感じて少し引っかかる。しかし、もし本人が言いたくないことなら無理強いしたくない。
「あ、そうだ! 課題手伝ってくれたお礼何がいい?」
「お礼?」
「そう、お礼。勉強会とか言いながら完全に俺の課題の手伝いさせちゃってるじゃん。だから何かお礼させて欲しいんだけど」
「いいのに」
「そう言わずにさぁー! 何かない?」
遠慮するアキに俺は調子良くなり要求を促した。現状分かってるアキの欲しいものなんて一つしか思い当たらないことくらい冷静になって考えれば分かったはずなのに。
「じゃあ、リュージが欲しい」
言葉が出てこなかった。
欲しいって…………具体的にどういう意味で?
「欲しいって言われても……」
モゴモゴと言い訳を探す俺にアキはにじり寄って来た。徐々に近付いてくるにつれて心臓が大きく跳ね始める。
「駄目?」
「駄目って言うか、なんつーか」
俯いた俺の顔をアキが優しく持ち上げる。目が合わないようにしていたのに、思い切り捕らえられて動けない。アキの顔がボヤけるくらいの近さまで距離が詰まり、アキがそっと口を開く。
「いや?」
「嫌……じゃない」
咄嗟にでた言葉に、自分が1番驚いた。
「嫌じゃないなら……」
そう言ってアキは俺の唇に触れてきた。カサカサとした感触が今までしてきたものとは違い、強烈に脳裏に焼き付いた。
「リュージ、あのさ」
眉間にシワが寄るくらいキツく目をつぶっていた俺はアキの呼び掛けに薄目を開けた。
「口、ガチガチだからもうちょっと力抜いて欲しい」
「え、」
途端、急に恥ずかしさが膨れ上がっていく。キスなんてそれなりにしてきたし、いつも自分からリードして、下手なんて言われたこと無かったのに。よりにもよってアキに指摘されてしまうなんて。
「あれ? 力入ってた?」
誤魔化そうとなるべく軽い感じで声を出す。アキとのキスに緊張してガチガチになっているなんて、絶対に知られたくない。俺のちっぽけなプライドがそう叫んでいた。
「おかしいなー、いつもはそんな感じじゃないんだけど」
「いつもって」
「ん? 元カノとした時とか──」
口が滑った、と感じたのは、アキの空気が一変したからだった。現恋人に元カノの話をするなんてデリカシーのかけらも無い。アキとは友達との延長線の付き合いの感覚でいて、つい口から出てしまった。キスまでしておいて友達の延長線というのもおかしな話だが。
「その元カノとはどんなキスしてたの?」
「は?」
「そんなの忘れさせる」
「ちょっと、アキ──」
アキが力を入れて俺の腕を掴んだ。痛い、と声に出そうとするが、アキの気迫に圧倒されて空気を吐き出すことしか出来ない。
アキのことが怖い、そう思った瞬間。
「アキくん?」
ドアの方からアキを呼ぶ女の子の声がした。
俺は声がした方に目を向けた。そこには同い年くらいの女の子が立ち尽くしていた。ふわふわの茶色い髪が可愛らしい顔立ちを更に小動物のような印象にさせていて、守ってあげたくなるような容姿をしている。一言で言ってしまえばかなり可愛い。
突如として現れた女の子は大きな目を見開き、何故か愕然としたような表情で俺たちを見つめていた。
「乃亜」
アキが彼女の名前を呼んだ。知り合いらしい。
「タイミング悪い」
「タイミング悪いって何!? ってかこの人誰!?」
乃亜と呼ばれた女の子は高めの声でアキに食ってかかった。アキは一旦俺から離れるとため息を吐いた。
「アキくんは乃亜のものでしょ!」
「…………」
アキは否定も肯定もせず、立ち尽くしている。すると、乃亜は部屋の中に入って来て、アキの腕に纏わりついた。これでもかというほど身体を密着させ、アキの名前を呼んだ。
アキは何の反応も示さないまま、しばらく時間だけが過ぎた。
俺は状況が読めずに、どうしたらいいのか分からず、迫り来る疎外感に飲み込まれた。
27
あなたにおすすめの小説
笑って下さい、シンデレラ
椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。
面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。
ツンデレは振り回されるべき。
君の恋人
risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。
伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。
もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。
不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら
たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生
海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。
そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…?
※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。
※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。
キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる