山猫に首輪は付けられない

空色蜻蛉

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*現在* 答え合わせ

240 蜜月(※)

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 二人は服を脱がせ合い、寝台の上で裸体を絡ませる。
 肌触りを確かめるように、リュンクスの脇腹を撫でながら、ノクトは「そういえば」と切り出した。

「君は後ろから押さえ付けられて、挿入されるのが好きなのかい?」
「!! そ、それはカノンが」
 
 リュンクスはぎょっとした。
 いつもカノンは、リュンクスを後ろから押し倒す。獣のように上から乗って、リュンクスのうなじを甘噛みするのが好きなようだった。やたら野性的な交接を好むのは、竜種の血なのだろうか。
 無意識にうなじを差し出すような体勢を取っていたのを指摘され、リュンクスは赤面した。

「噛み跡がある」
 
 ノクトは、つい最近カノンが付けた跡を、舌先でなぞった。

「ん……カノンは、先輩の考えが分からないって」
 
 リュンクスは、愛撫に身を任せながら、カノンの言っていたことを思い出す。
 
「自分の印を付けた相手に、別の相手から印を付けられたら、領土を侵されたようで腹が立つって」
「ああ、彼は規則で縛るのが好きなタイプだからね。私は……そうだな。他人の所有物を奪うのは、背徳的でわくわくする」

 ノクトは、ゆっくりリュンクスの中に自分自身を沈めながら、飾りが付いていない方の耳たぶを食む。
 
「私は、うなじよりも耳が好きだな。柔らかい」
 
 リュンクスは身をよじった。体の中心にノクトが居座る感覚。自分が自分でなくなるような、主導権の一切を相手に譲り渡す瞬間。
 ノクトの冷水のような魔力が体に馴染み、熱に変わる。
 
「下剋上を企んでいる君にお仕置きだ。今夜は、服従の快感をたっぷり教えてあげよう」
 
 さんざん揺さぶった後、リュンクスをひっくり返し、ノクトは獰猛な笑みを浮かべた。

「命綱は持っておいてあげるよ。だから安心して快楽に溺れるといい」
 
 マスターに全部渡してしまっては駄目だと思っていたのに、あまりの安心感と快感に耐えきれず、リュンクスは我を忘れてノクトの背中に爪を立てた。




 どこかで、ホウホウと鳴く梟の声がした。
 リュンクスは微睡みながら、その声に耳を澄ませる。
 
「先輩、さっき略奪が好きみたいなことを言ってたけど」
 
 ころんと寝返りを打ち、ノクトと向かい合う形で、彼の懐に身を寄せる。
 ノクトは眠そうだったが、薄目を開けて「ん?」と吐息のような返事をした。
 
「結局、俺を強引にカノンから引き離すつもりは無いよね」
「……」
「俺、知ってるんだぜ。マスターサーヴァント契約の破棄の仕方」
 
 五年も塔にいれば、マスターサーヴァント契約がどういうもので、どうやって契約破棄すればいいかも、耳にする機会がある。
 
「サーヴァントの合意さえあれば、マスターは他のマスターの契約を切れるんでしょ」

 ノクトの卒業旅行の時、カノンが「自分との契約を破棄しなかったのか」と言っていた。あの時なら条件が揃っていたので、ノクトはその気になれば、カノンとリュンクスの契約を切る事ができたのだ。
 だが、ノクトはそうしなかった。
 リュンクスをそそのかし、カノンから離れるよう言わなかった。
 一方、カノンの方も「あの人は危険だから離れろ」などと、先輩の陰口を叩いたりした事はない。
 二人のマスターは、互いに尊重しあい、理解し合っているようにさえ見える。
 
「不思議だよね。カノンも、先輩も、お互い機会があるのに、邪魔なマスターを追い出したりしなかった」
「……」
「今も、カノンが追い掛けて来るのを待ってるよね」
 
 カノンに両親を押し付けて、駆け落ちまがいの脱走をしたが、リュンクスに不安はない。後でカノンに怒られる覚悟は出来ていた。
 答えを待っていると、やがて根負けしたように、ノクトはつぶやいた。

「……カノンは頭は固いが誠実であろうと努力し、自分が苦しい時でも他人に手を差し伸べられる。彼のような人間は、私は好きだよ」
 
 ノクトは「寝なさい」と掛け布団を押し付けてくる。
 照れ隠しかな、とリュンクスは思った。
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