山猫に首輪は付けられない

空色蜻蛉

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*四年前* 入学

22 自覚(※)

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 サーヴァント属性の魔術師の男性は、一般人の男性と同じように女性と子を成せる。女性と性行為も可能だ。普通なら、それで気を発散することができる。
 
 だが、マスター属性の魔術師に、体内に魔力を送り込まれると、そういった通常の手順では熱を解消できなくなる。
 マスター属性の魔術師と違い、サーヴァント属性の魔術師は魔力の操作が苦手だ。自分で体内の魔力を操作できない。
 
 だから籠った熱をどうすることもできず、苦しむことになる。
 体の中を、ひたひたと湯水のように満たしていくカノンの魔力。
 苦しいのに甘くて幸福な感覚さえある。
 
「カノン、まだ……?」
「もう少し待ってくれ」
  
 リュンクスの訴えに、カノンは歩みを速くする。
 繋いだ手が熱い。
 一刻も早く熱を発散したいという思いと、逆にこのままずっとカノンに支配されていたいという欲求が、リュンクスの中で複雑に交錯した。




 カノンは、リュンクスを連れて煉瓦造りの三階建の洋館に入った。
 そこは田舎育ちのリュンクスは見たことも入った事も無い、高級な宿だった。
 
 受付の女性と一言二言、言葉を交わして鍵を受け取り、カノンは唖然とするリュンクスを連れて二階の一室に入る。
 部屋は広く、猫脚のテーブルや洒落たガラスの燭台が配置されている。壁際には、清潔な白いシーツが敷かれたベッドが鎮座していた。
 
「ここは……?」
「俺の家がよく使う宿だ」
 
 リュンクスは、そういえばカノンは代々宮廷魔術師の、名家の出身だったと思い出す。
 
「家族が使うところに、俺を連れて来ていいの?」
「問題ない。君は俺の所有物だ。文句は言わせない」
 
 きっぱり言い切るカノン。
 さりげなく所有物扱いされている。
 リュンクスは苦笑した。
 
「じゃあご主人様、そろそろ楽にしてくれない? カノンが欲しくて死にそう」
 
 灰色のローブを脱ぎ捨てて、ボタンを外す。
 
「リュンクス、君は本当に」
 
 カノンが眉ねを寄せて、嬉しいような苦しいような複雑な表情をする。
 リュンクスの腕をつかみ、引き寄せ、かぶり付くようなキスをくれた。
 
「……んっ」
 
 激しい口付けに応じながら、リュンクスはふと気付く。
 考えてみれば、ノクトとキスをしたことは一度もない。
 唇を交わしたのは、後にも先にもカノンだけだ。
 いつの間にかベッドに押し倒されていた。
 キスをしながら、カノンは指を後孔に突っ込んでくる。
 
「っ、おい!」
「取って欲しいんだろう」
 
 敏感になっている体内をまさぐられる感触に、リュンクスは震えた。
 てっきりノクトのように、玩具を入れたまま突っ込んでくるかと思ったのだ。ちなみにノクトは、事後のリュンクスが朦朧もうろうとしている時を見計らって、さっと後始末をしてくれた。
 
「あぅ、そんなところ」
「この辺だったか」
 
 カノンは容赦なくリュンクスの弱いところを責め立てる。
 
「ひど……お前そんな意地悪い性格だったか」
「悪いな。君の涙目を見ていると、つい苛めたくなる」
 
 空いた方の手の親指で、カノンはリュンクスが無意識に流した涙をぬぐった。
 カノンの黄金の瞳には、かすかな愉悦の光がある。
 真面目で優しいカノンの、加虐的な一面を知って、リュンクスは戦慄した。やばい、はやまったかも、と思ったが、困ったことに苛められて喜ぶ自分自身がいる。
 
「ふぁ!」
 
 強引に玩具を引きずり出され、その強烈な刺激に、リュンクスは軽く達してしまった。頭が真っ白になる。
 カノンが、ノクトに対抗心を燃やしているのは知っていた。そのせいだろうか。こんなに激しく抱くのは。
 
「先輩は五年生。もうすぐ卒業して塔を出ていく。これから先、ずっと側にいられるのは俺の方なのに」
 
 リュンクスの肩口に額を付けたカノンが、荒い息を吐きながら呟く。
 
「どうしてか、不安で仕方ない」
 
 それは俺の方だ。と、リュンクスは思う。
 一体いつまでカノンの一番でいられるのだろう。
 
 大勢のサーヴァントを従えたカノンが、リュンクスの優先順位を下げないとも限らない。だが以前に宣言した通り、友人という立場で置いてくれるだろう。誰よりも近くにいることが、保証されているのに。
 どうして「カノンの一番になりたい」と考えてしまうのだろう。
 
 ああ、そうか。
 シャンデリアが設置された天井を見上げ、リュンクスは不意に悟った。
 
 俺は、カノンが好きなんだ。
 友人の好きじゃなくて、恋愛的な意味で。
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