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*四年前* 入学
24 一番大事な…
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三人で出かけた次の日。
シラユキが声をかけてきた。
「少し話をしませんか?」
「俺?」
隣にいたカノンは眉を上げたが、シラユキが構わずに続けた。
「二人だけで」
リュンクスは思わず隣を見たが、カノンは興味を失ったように視線をそらし、我関せずとばかり杖にする木材を削る作業に戻った。
これは大丈夫ってことだな。
問題なさそうだと判断して腰を上げる。
シラユキと二人で中庭に出た。
「なぜカノンと契約したか、聞きましたね」
「ああ、そういえば……」
自分のした質問をすっかり忘れていたリュンクスである。
「彼は守りたい人がいる、と言ったんです」
シラユキは、くすりと微笑んだ。
まるで雪の中に揺れる柊の実のような華やかさに目を奪われる。
「大事にしたいサーヴァントがいるから、お前を一番にすることはない、と。それを聞いて、この人は信用できる。契約を結んでも良いと判断しました」
リュンクスは、意外な言葉に瞬いた。
「一番じゃなくていいの?」
「なぜ一番を求める必要があるんですか。利害が一致すれば十分だし、学友として仲良くできれば理想的で、それ以上必要ないでしょう」
「……」
「大切な人がいるというのは、とても尊いことです。私はカノンが尊敬に値する人格だと知って安心しました」
カノンの「一番大事な人」は誰なのだろう。
塔で一番近くにいるのは自分なので、もしかして、と思わなくもない。
しかし蓋を開けてみて「実家で約束した幼馴染みがいる」なんてことを教えられたら、心理的ダメージが大きいとリュンクスは思った。
「カノンが一番大事にしているサーヴァントは誰かと思っていたのですが、先日、一緒に街に出掛けて、リュンクス、あなたかもしれないと感じましたよ」
「うーん。どうかな」
そうだったら嬉しいと思いつつも、リュンクスは苦笑して答えをぼかした。
シラユキは不思議そうにする。
「カノンと仲が良いように見えるのですが、聞いていないのですか」
「そういう話はしないから」
「ちなみに、リュンクスはカノンの事をどう思っているのです?」
核心を突いた質問に、リュンクスは迷わず答えた。
「一番大事な友達だ」
恋をしている。
熟れる前の林檎のような、切なくて甘酸っぱい恋を。
しかし、その事をリュンクスは誰にも明かすつもりは無かった。
シラユキが声をかけてきた。
「少し話をしませんか?」
「俺?」
隣にいたカノンは眉を上げたが、シラユキが構わずに続けた。
「二人だけで」
リュンクスは思わず隣を見たが、カノンは興味を失ったように視線をそらし、我関せずとばかり杖にする木材を削る作業に戻った。
これは大丈夫ってことだな。
問題なさそうだと判断して腰を上げる。
シラユキと二人で中庭に出た。
「なぜカノンと契約したか、聞きましたね」
「ああ、そういえば……」
自分のした質問をすっかり忘れていたリュンクスである。
「彼は守りたい人がいる、と言ったんです」
シラユキは、くすりと微笑んだ。
まるで雪の中に揺れる柊の実のような華やかさに目を奪われる。
「大事にしたいサーヴァントがいるから、お前を一番にすることはない、と。それを聞いて、この人は信用できる。契約を結んでも良いと判断しました」
リュンクスは、意外な言葉に瞬いた。
「一番じゃなくていいの?」
「なぜ一番を求める必要があるんですか。利害が一致すれば十分だし、学友として仲良くできれば理想的で、それ以上必要ないでしょう」
「……」
「大切な人がいるというのは、とても尊いことです。私はカノンが尊敬に値する人格だと知って安心しました」
カノンの「一番大事な人」は誰なのだろう。
塔で一番近くにいるのは自分なので、もしかして、と思わなくもない。
しかし蓋を開けてみて「実家で約束した幼馴染みがいる」なんてことを教えられたら、心理的ダメージが大きいとリュンクスは思った。
「カノンが一番大事にしているサーヴァントは誰かと思っていたのですが、先日、一緒に街に出掛けて、リュンクス、あなたかもしれないと感じましたよ」
「うーん。どうかな」
そうだったら嬉しいと思いつつも、リュンクスは苦笑して答えをぼかした。
シラユキは不思議そうにする。
「カノンと仲が良いように見えるのですが、聞いていないのですか」
「そういう話はしないから」
「ちなみに、リュンクスはカノンの事をどう思っているのです?」
核心を突いた質問に、リュンクスは迷わず答えた。
「一番大事な友達だ」
恋をしている。
熟れる前の林檎のような、切なくて甘酸っぱい恋を。
しかし、その事をリュンクスは誰にも明かすつもりは無かった。
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