84 / 266
*二年前* 選択
71 縛ってほしい(※)
しおりを挟む
リュンクスは小一時間くらい掛けてサナを引き剥がし、何とか領主の使いに叩き返した。
婚礼の話は、無かった事にはできない。彼女の家には金銭が支払われている。サナは領主の家に引き取られる事になるそうだ。
「べフレート山に入る必要は無くなったね」
「竜を見られるかもしれないと期待してたのに」
「遊び半分で竜種に近付くと、痛い目に合うよ」
ノクトの言い様は思いの他、真剣なものだったので、リュンクスは潔く竜と会うのは諦めた。
父親のクオンの元には、伝言紙の魔術を送る。
サナが無事だったことと、リュンクスはこのまま塔に戻る旨を知らせた。
「それにしても、サナが俺に密着しても、先輩は何とも思わねーの?」
サナを突撃させる企みは頓挫したが、女の子に抱き着かれているリュンクスを見て、ノクトは何とも思わないのか気になった。
「マスターでもない只の魔女に、何を思うと言うのかい?」
「うむむ…」
「だいたいカノン・ブリストとの交際も許可しているのに。私の嫉妬を煽りたいなら、何をしても無駄だよ」
「そうだったーっ」
リュンクスは寝台の上で枕を抱いて悔しがった。
今夜は、べフレート山の麓の街で、宿を取っている。
思惑が外れて七転八倒するリュンクスを、ノクトは「見ていて飽きない子だ」と呆れ半分に眺めている。自分の気を引くために空回りしているリュンクスは可愛かった。
愉しませてくれた後輩に、少しサービスしよう。
ノクトは枕を抱いてすねているリュンクスを、後ろから抱き締めた。
「嫉妬と言えば……いくら私でも、サナちゃんと口付けしたら許さないよ」
「口付け?」
「そう。魔術師にとって唾液は、魔術の媒介であり一種の武器だ。同時に唇は体内に魔術を注ぎ込むのに絶好の場所、つまり魔術的な急所でもある。マスター、サーヴァントに関わらず、ね。信頼できる魔術師としか、キスをしてはいけないよ」
リュンクスは、唇をなぞられてキョトンとした。
一拍遅れて、ノクトの説明を理解する。
昔、魔術師にとっての口付けはどういう意味を持つのだろう、と考えた事があった。一般人も恋人同士しかキスをしないが、魔術師にとってはそれ以上に特別な意味を持っていたらしい。
「キスは無防備に、急所をさらけ出す行為だからね」
耳元でノクトがささやく。
それはつまり、ノクトも信頼できる相手としかキスをしないと言っている訳で。
「……!!」
リュンクスは気付いて真っ赤になった。
遠回しの告白だ。しかし何故、受けた方のリュンクスが動揺しているのだろう。ノクトは冷静な顔をしているのに。
「さて、と。そろそろ君の家で遠慮した件の続きをしていいかな?」
「……オネガイシマス」
ドキドキして、つい敬語で答えたリュンクスに、今度こそノクトは声を立てて笑った。
今夜の先輩は優しい。
うなじに唇を落とし、丁寧に背筋を辿る。乳首を軽くつままれた。衣服を落としながら、片手で内股を撫でられる。
「なんか普通のセックスみたいだ」
「リュンクス、私のやり方がいつも普通じゃないと言っているかい?」
「や、そんなことは」
口ではノクトに追従しながら、リュンクスは遠い目をする。
最初は強姦で、その次は玩具を入れられたっけ。
たまに研究室で鎖に縛られて犯される事もあった。リュンクスが素直に従わない時の、お仕置きプレイだ。
しかしノクトが卒業間近になった頃には、そのような無理やりのセックスは少なくなっていた。リュンクスが慣れて上手く立ち回るようになったのと、ノクトが多忙になったのが理由だ。
「久々だから手加減しようと思ったけれど、若い君には刺激が足りなかったかな」
「足りてる、足りてるって!」
わざとらしく残念そうに言うノクト。
今までで一番穏やかな雰囲気の夜なのに、風向きが怪しい。
リュンクスは弁明しながら「なんか前にも、カノンに同じ台詞を言わなかったっけ」と思った。
「ではリクエストに応えるとしよう」
「!?」
ノクトが唄うように呪文を唱えると、どこからともなく現れた銀の鎖が、リュンクスの体に這うように巻き付いた。
「結局コレ?! 俺、大人しくしてるのにぃ」
「どこが。活きが良すぎるよ、君は」
嘆くリュンクスの耳を、ノクトが味わうように噛む。
その次の台詞で、リュンクスは抵抗をやめた。
「…明日、塔に戻れば、またしばらく会えないからね。鎖の跡を全身に残してあげようか」
ぞくりと背筋に震えが走る。
ノクトの痕跡を付けて欲しいと、思ってしまった。
リュンクスの内心は口に出さずとも通じている。
後輩が心身共に自分の所有物であることを確認し、ノクトは満足げに笑う。
「防音結界を張ったから、遠慮なく啼いていいんだよ?」
鎖が愛撫するように、体のあちこちに絡んでくる。
リュンクスは身をよじった。
「……っ」
時折、痛みを感じるほど強く鎖が締まる。
興奮している最中なので、苦痛も快楽に置換してしまう。リュンクスは最初は我慢したが、いつしかひっきりなしに嬌声を上げていた。
いつの間にか挿入され、揺さぶられている。
毒蛇に噛まれたような悦楽に侵されて、まともに考えられなかった。とくとくと体内に注がれる魔力と精液は、甘い麻痺毒に似ている。
「あん、ぁ……ふぁ!」
「もっとお尻を上げて」
卑猥な指示に従う。
先ほどノクトは一度達したが、リュンクスは達する事を許されていない。鎖で根元を縛られた上に、体内の魔力をかき乱され、絶頂手前で止められているからだ。
乱暴にされている事を不満に思うどころか、嬉しかった。
遠慮の無い関係になったのは、ごく最近のことだ。
あの卒業旅行の帰らずの森まで、ノクトと口付けをした事はなかった。過去、ノクトは無理やり襲って来たが、彼なりの一線を引いていた。
リュンクスが苦痛に思う前に、短時間で性交を切り上げたり。週に一度、食堂でランチを共にする時も、自分の事は話さずリュンクスの話を聞いていたり。
気を遣われていたのだと今なら分かる。
「せんぱい、おれで、きもちいぃ……?」
とろけた舌で喘ぎながら問うと、背中で息を飲んだ気配。
「……ああ。気持ち良いよ」
答えた先輩の声は、今まで聞いた事の無いほど優しかった。
婚礼の話は、無かった事にはできない。彼女の家には金銭が支払われている。サナは領主の家に引き取られる事になるそうだ。
「べフレート山に入る必要は無くなったね」
「竜を見られるかもしれないと期待してたのに」
「遊び半分で竜種に近付くと、痛い目に合うよ」
ノクトの言い様は思いの他、真剣なものだったので、リュンクスは潔く竜と会うのは諦めた。
父親のクオンの元には、伝言紙の魔術を送る。
サナが無事だったことと、リュンクスはこのまま塔に戻る旨を知らせた。
「それにしても、サナが俺に密着しても、先輩は何とも思わねーの?」
サナを突撃させる企みは頓挫したが、女の子に抱き着かれているリュンクスを見て、ノクトは何とも思わないのか気になった。
「マスターでもない只の魔女に、何を思うと言うのかい?」
「うむむ…」
「だいたいカノン・ブリストとの交際も許可しているのに。私の嫉妬を煽りたいなら、何をしても無駄だよ」
「そうだったーっ」
リュンクスは寝台の上で枕を抱いて悔しがった。
今夜は、べフレート山の麓の街で、宿を取っている。
思惑が外れて七転八倒するリュンクスを、ノクトは「見ていて飽きない子だ」と呆れ半分に眺めている。自分の気を引くために空回りしているリュンクスは可愛かった。
愉しませてくれた後輩に、少しサービスしよう。
ノクトは枕を抱いてすねているリュンクスを、後ろから抱き締めた。
「嫉妬と言えば……いくら私でも、サナちゃんと口付けしたら許さないよ」
「口付け?」
「そう。魔術師にとって唾液は、魔術の媒介であり一種の武器だ。同時に唇は体内に魔術を注ぎ込むのに絶好の場所、つまり魔術的な急所でもある。マスター、サーヴァントに関わらず、ね。信頼できる魔術師としか、キスをしてはいけないよ」
リュンクスは、唇をなぞられてキョトンとした。
一拍遅れて、ノクトの説明を理解する。
昔、魔術師にとっての口付けはどういう意味を持つのだろう、と考えた事があった。一般人も恋人同士しかキスをしないが、魔術師にとってはそれ以上に特別な意味を持っていたらしい。
「キスは無防備に、急所をさらけ出す行為だからね」
耳元でノクトがささやく。
それはつまり、ノクトも信頼できる相手としかキスをしないと言っている訳で。
「……!!」
リュンクスは気付いて真っ赤になった。
遠回しの告白だ。しかし何故、受けた方のリュンクスが動揺しているのだろう。ノクトは冷静な顔をしているのに。
「さて、と。そろそろ君の家で遠慮した件の続きをしていいかな?」
「……オネガイシマス」
ドキドキして、つい敬語で答えたリュンクスに、今度こそノクトは声を立てて笑った。
今夜の先輩は優しい。
うなじに唇を落とし、丁寧に背筋を辿る。乳首を軽くつままれた。衣服を落としながら、片手で内股を撫でられる。
「なんか普通のセックスみたいだ」
「リュンクス、私のやり方がいつも普通じゃないと言っているかい?」
「や、そんなことは」
口ではノクトに追従しながら、リュンクスは遠い目をする。
最初は強姦で、その次は玩具を入れられたっけ。
たまに研究室で鎖に縛られて犯される事もあった。リュンクスが素直に従わない時の、お仕置きプレイだ。
しかしノクトが卒業間近になった頃には、そのような無理やりのセックスは少なくなっていた。リュンクスが慣れて上手く立ち回るようになったのと、ノクトが多忙になったのが理由だ。
「久々だから手加減しようと思ったけれど、若い君には刺激が足りなかったかな」
「足りてる、足りてるって!」
わざとらしく残念そうに言うノクト。
今までで一番穏やかな雰囲気の夜なのに、風向きが怪しい。
リュンクスは弁明しながら「なんか前にも、カノンに同じ台詞を言わなかったっけ」と思った。
「ではリクエストに応えるとしよう」
「!?」
ノクトが唄うように呪文を唱えると、どこからともなく現れた銀の鎖が、リュンクスの体に這うように巻き付いた。
「結局コレ?! 俺、大人しくしてるのにぃ」
「どこが。活きが良すぎるよ、君は」
嘆くリュンクスの耳を、ノクトが味わうように噛む。
その次の台詞で、リュンクスは抵抗をやめた。
「…明日、塔に戻れば、またしばらく会えないからね。鎖の跡を全身に残してあげようか」
ぞくりと背筋に震えが走る。
ノクトの痕跡を付けて欲しいと、思ってしまった。
リュンクスの内心は口に出さずとも通じている。
後輩が心身共に自分の所有物であることを確認し、ノクトは満足げに笑う。
「防音結界を張ったから、遠慮なく啼いていいんだよ?」
鎖が愛撫するように、体のあちこちに絡んでくる。
リュンクスは身をよじった。
「……っ」
時折、痛みを感じるほど強く鎖が締まる。
興奮している最中なので、苦痛も快楽に置換してしまう。リュンクスは最初は我慢したが、いつしかひっきりなしに嬌声を上げていた。
いつの間にか挿入され、揺さぶられている。
毒蛇に噛まれたような悦楽に侵されて、まともに考えられなかった。とくとくと体内に注がれる魔力と精液は、甘い麻痺毒に似ている。
「あん、ぁ……ふぁ!」
「もっとお尻を上げて」
卑猥な指示に従う。
先ほどノクトは一度達したが、リュンクスは達する事を許されていない。鎖で根元を縛られた上に、体内の魔力をかき乱され、絶頂手前で止められているからだ。
乱暴にされている事を不満に思うどころか、嬉しかった。
遠慮の無い関係になったのは、ごく最近のことだ。
あの卒業旅行の帰らずの森まで、ノクトと口付けをした事はなかった。過去、ノクトは無理やり襲って来たが、彼なりの一線を引いていた。
リュンクスが苦痛に思う前に、短時間で性交を切り上げたり。週に一度、食堂でランチを共にする時も、自分の事は話さずリュンクスの話を聞いていたり。
気を遣われていたのだと今なら分かる。
「せんぱい、おれで、きもちいぃ……?」
とろけた舌で喘ぎながら問うと、背中で息を飲んだ気配。
「……ああ。気持ち良いよ」
答えた先輩の声は、今まで聞いた事の無いほど優しかった。
43
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる