山猫に首輪は付けられない

空色蜻蛉

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*現在* 天空の城

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 ディーガは、酒場らしき建物に入り、二階に上がった。
 空き部屋にリュンクス達を案内する。
 店主らしき年配の獣人が、飲み物を運んできた。
 
「私達について話す前に、あなた方の事を教えて下さい。地上から来られたんですよね?」
 
 ディーガは先手を切る。
 手放しでリュンクス達を信用している訳ではなさそうだ。
 リュンクスは黙ってカノンの返事を待った。
 こういう交渉は、カノンの方が心得ている。
 
「そうだ。俺達は地上から来た」
 
 カノンは、あっさりディーガの言葉を肯定した。
 
「疑念を晴らすため、先に俺達の目的を言おう。俺達の目的は、この天空城で行方不明になった仲間を探すこと、そしてこの」
 
 そして、リュンクスの方をちらりと見る。
 
「リュンクスの血縁と会う手掛かりを探すこと、の二つだけだ。お前たちの誰とも好んで争うつもりはない。用が終われば、すぐに地上に帰る」
 
 カノンの言葉に、ディーガは安堵したようだ。
 
「人間は嘘を付くというが、あなたからは嘘の匂いがしない。信じるに足る方のようだ。リュンクスさんの血縁の方には、心当たりがあります。そう、考えてみれば、あの方も地上に家族がいて当然だ」

 リュンクスはむずむずした。
 あの方、とはおそらく、母のことだ。
 カノンが話を進めてくれると分かっていても、この件だけは無視できなかった。途中で口を挟む。
 
「ディーガさん、あの方って」
「天空城サジタリウスの主である、人間の魔術師。私達の仇敵にして救世主でもある、嵐の魔女シルヴェストリス」
「!!」
「彼女は首都ヌンキにいるはずですが、ヌンキは翼人に占領され、様子が分かりません」
 
 リュンクスは心臓が大きく飛び跳ねた。
 母と会えるかもしれない。今まで考えもしなかった再会が急に現実味を帯びてきて、落ち着かない気分だった。
 一方、カノンは顎に手をやり、考えているようだった。
 
「ディーガ、地図はあるか。天空城サジタリウスの、どの都市が翼人に占領されていて、どの都市が占領されていないか知りたい」
「ここにはありませんが、簡単に説明はできます」
 
 ディーガは、飲み物に人差し指を漬け、水滴で机に地図を描いた。
 
「今、私達がいるのは、東の都市アルナスルです。北に首都ヌンキ。都市は九つあり、その内首都を含む四つが翼人に占領されました」
「残る五つは、抵抗を続けている訳か」
「はい、おそらく」
「おそらくと言うのは? 半分残っているなら、翼人を押し返せそうなものだが」
 
 首都ヌンキの近辺の四都市が占領されているというディーガに、カノンは五都市も残っていると指摘する。
 
「西南部の都市に行くには、通常はヌンキを経由するのです。我々は東西に分断されました」
「なるほど……先輩が西南部の都市にいれば厄介だな」
 
 リュンクスは母親の事が気になっていたが、今は先にノクトと合流すべきだと頭を切り替える。
 マスターはサーヴァントの居場所が分かるというが、どこまでの精度があるのだろう。
 
「先輩は、俺が来た事に気付いてるかな……?」
「分からん。俺達マスターは契約しているサーヴァントの位置を把握しているが、それは街の中で散歩してはぐれた時に合流できる程度のものだ。あまりにも離れてしまえば、さすがに正確な位置は分からない。この天空城は一国に近い大きさがある。向こう側の端にいれば気付かないだろう」
 
 天空城は、事前に想像していたより広かった。
 先輩との合流も一筋縄でいきそうにない。
 カノンは少し黙したまま考えていたが、やがて口を開いた。
 
「……移動してすれ違うのを期待するしかない。魔術が使えない状況だが、リュンクスの言う通り、あの先輩が翼人に捕まっているとは想像しづらい。占領されていない都市を順に巡って探そう」
「でしたら、お願いがあります」
 
 ディーガは「私達も、西南部の都市と連絡が取りたいのです」と言う。
 
「西南部の都市に手紙を届けて頂けないでしょうか。その代わりに、旅に必要な情報や費用など、全て私が提供します」
「引き受けよう」
 
 カノンは即答した。
 
「どの道、お前たちが翼人を追い払って首都ヌンキを取り返さない限り、俺達のもう一つの目的は果たされない」

 母の手掛かりは首都ヌンキにある。
 リュンクス達は、ディーガを手伝い、天空城サジタリウスから翼人を追い返す作戦に協力することになった。
 
 
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