嘘つきな君の世界一優しい断罪計画

空色蜻蛉

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Dance the Final Act(終幕を踊れ)

第46話 脱走

 殿下同行なんて、冗談じゃない。リトスは「陛下の許可が降りないと駄目です」と言い含めて、カナンを丁重に送り返した。

「おい、俺のベッドをいつまで占領する気だ?」

 一仕事終わったと転がってくつろいでいると、レイヴンが寝台に腰かけてきた。
 ついでに、小さな黒竜が体の上にダイブしてくる。

「知らねーよ。だいたい、あんたが言ったんだろ。俺の面倒をみるって」
「おとなしく面倒をみられるタマか、お前は」

 嘆息したレイヴンは、長椅子を使うか、などと呟いている。
 
「嵐原サバーナの遺跡だが」
「先に約束をやぶったの、あんただろ。俺はもう協力しないからな」

 レイヴンは遺跡探索にリトスを同行させようと躍起だ。
 そんなに便利か俺。便利だろうな。入口で全部の階層マッピングして、最深部の情報さらえるんだもんな。遺跡の調査をするにあたり、必要な人材だろう。

「お前の言うことは、いつも何かしら嘘があるな。今度は、何を企んでいる……?」

 星座が輝く藍紫の瞳が、リトスの横顔を見下ろしてくる。
 その視線がうざったい。
 リトスは、寝転んだまま手を伸ばして、彼の長い黒髪の先を引っ張ろうとした。彼は癖の少ない黒髪を首筋で一つにまとめ、適当に肩に流している。それなりに手入れしているのか、さらさらの艶々だ。
 指先が黒髪に触れる直前、思った通り、レイヴンは眉をしかめて体をどけてくれる。

「国王に、お前を国内にとどめるよう言ってやろうか」
「はっ! もし、そんなことをしたら、二度とあんたに協力しない」

 やれやれと、レイヴンは腰を上げて立ち去る。
 小さな黒竜はそのままにして。
 リトスは両手で黒竜をつかみ、邪魔にならない場所に移動しながら、目を閉じた。うとうと微睡まどろみながら考える。
 さて、どうやって流星を出し抜いてやろうか。



 翌朝、レイヴンは国王に呼ばれたらしく、面倒くさそうに出て行った。
 しめしめ、脱走するなら今のうちだ。
 そう思っていたことが俺にもありました。

「リトス! 許可は取ったぞ!」
「殿下?!」

 レイヴンと入れ替わりに、カナン王子がやってきた。
 なんと、国王の許可をもぎ取ったという。
 そんな馬鹿な。
 驚いているのは、リトスだけではなかった。
 
「えぇ……殿下、その二人は事情を知っているのですか?」
「何故、牢屋ではなくこんなところにいる?! いったい、どういうことか説明しろ。リトス・アルシャウカト!」

 ダレンが指さしてわめく。
 その後ろで、ライアードが刺し殺しそうな目でリトスを見ている。

「……これから、説明するところだ」

 カナン王子は、後ろめたそうに視線を逸らした。
 どうやら説明する間もなく、二人に同行を押し切られたようだ。
 学生のダレンとライアードは、先日の謁見に出席していないため、リトスが星瞳の魔術師だと知らない。彼らの認識は、リトスが捕まったあの日のまま停止しているのだ。
 だが正直、星瞳の魔術師だと彼らに明かしたくはない。
 ただでさえ国内に引き止められそうなのに、正体を知っている人が増えたら、その分引き止める人が増える。誰だって自国に星瞳の魔術師がいると知れば、国内にいて欲しいと願うだろう。
 よって、百歩ゆずっても連れて行くのはカナン王子だけにしたいところだが……無理だろうな。

「うーん。こうなったら、移動しながら話しましょう。ちょうど流星がいないし、王城を出るチャンスです。殿下、旅の準備はお済ですか?」
「いつでも出られるようにしてきた」

 その言葉通り、カナン王子は軽皮鎧の上から旅装を着ている。
 お付きの二人も剣と杖を装備しており、外出できる恰好だ。
 リトスは、カナンとお付きの二人の背を押して、人気のない庭園の方へ誘導した。
 
「殿下、こいつは我々をどこに連れていこうとしているのです?」
「それは」
「―――歌い鳥」

 中庭の人気のない場所で、説明をしようと王子が口を開きかけた時。
 二階のバルコニーから、こちらを見とがめて、レイヴンが声を掛けてきた。

「げっ」

 リトスは瞬時に判断した。
 これ以上、時間をかけたら、レイヴンに追い付かれる。

「仕方ない。転移しますよ、殿下」
「なっ?!」

 後ろでカナンが驚いているが、気にせず鳥使いの杖を呼び寄せ、転移の魔術を発動する。
 
「今度は本気だ。簡単に追い付けると思うなよ」

 最速で魔法陣を展開し、あらかじめ決めた座標に向かって、全力で転移を実行した。
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