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Dance the Final Act(終幕を踊れ)
第47話 聖なる鳥
(※レイヴン視点)
国王に呼び出され、案内された先は小さな客間だった。
どうやら国王は、二人だけで内密に話がしたいらしい。
賢明なことだ。
「彼をこの国に留める助けをして欲しい、という依頼なら断りますよ」
レイヴンは椅子に腰かけて早々に先手を打った。
今まさに口上を述べようとしていた国王が固まる。
おそらく挨拶から始まって、世辞や追従を言ってから、そういう流れに持っていくつもりだったのだろう。
依頼内容を先に言われた国王は、わざとらしく咳払いした。
「……お見通しなのだな、レイヴン殿は」
見通すも何も、よくある事なのだ。
星瞳の魔術師の身分を隠さず旅をしているレイヴンは、立ち寄った国でたびたび引き止め大作戦に遭遇した。星瞳の魔術師を一人ゲットすれば、魔物の侵略を何十年もくい止められ、国防に割く費用をその分、治水や農業など他の事業に回せる。
どこの国も、生き残りに必死だ。
だからリトスの正体を明かすにあたり、引き止めにあうだろうと予想が付いていた。
「我ら星瞳の魔術師にも、仲間意識があるのですよ。今回は友人の死刑に悲嘆する殿下に同情し、力を貸したまで。これ以上、彼の邪魔をしたら嫌われてしまう」
心にもないことを言って、レイヴンは冷笑した。
ただ三割くらいは本気である。寝台を奪って、ふて寝されるくらいは可愛いものだ。愉しい喧嘩相手であるリトスを失いたくない。
「……レイヴン殿は、最初から、リトス・アルシャウカトが星瞳の魔術師だと知っていたのだな?」
「もちろん。あなたがたは、もう少し彼を疑う、あるいは信じるべきだった。聖鳥に守護されし国メレフが、聖鳥の魔術師を死刑にする―――こんな愉快な劇は見たことがない」
意図的に、彼の二つ名を強調する。
幸い国王は愚鈍ではないようで、すぐに気付いた。
「聖鳥……メレフの伝説にある、白き聖なる鳥だというのか」
「そうですね。高位精霊はめったに人間に関わりませんが、天の高位精霊は別です。かの聖鳥セマルグルは、慈悲深いことで有名だ」
メレフは辺境の小国だが、世界的に【聖地】として有名な国でもある。
聖光教の象徴である、光の高位精霊が守護を与えた地。大量の魔物が棲む嵐原サバーナに接していながら侵略をはねのけ、防壁となっている古国。
「リトス・アルシャウカトが聖鳥の魔術師であるならば、なおのことメレフを離れて欲しくないのだが」
「何もかも手遅れですよ、陛下。あなたがたは、歪みを放置すべきではなかった。アルシャウカト家の悪事について薄々知りながら、国益になるからと、目をつむってきたのでしょう。その集大成がこれだ」
「!!」
「聖鳥の魔術師は、契約精霊と同じで慈悲深い。あなたがたの罪も罰も、すべて見なかったことにして、ただ残された者の幸福のみを願っている。私なら、そこまで優しくなれない。調子に乗って傲慢な願いを口にする前に、あなたがたは自分たちの罪を清算すべきだ」
完全に返す言葉が見つからない国王を残し、レイヴンは悠々と退出した。
冷静を装っているが、実は内心腹立たしく感じている。
何の努力もせずに、星瞳の魔術師だからと他力本願に使い倒そうとしてくる人間が嫌いだ。そういう者に限って厚顔無恥に正義をかかげ、力ある者は弱者のためにその力を使うべきだと説教する。まったくうんざりする。
『国王との話は終わったか』
「テュポーン、乱入してくれても良かったんだぞ」
『我に人間の前に出ていけと? それよりも、お主、あの聖鳥をほうっておいて良いのか? あれは鳥だぞ』
廊下を歩いていると、小さな黒竜が舞い降りてくる。
黒竜の言葉に嫌な予感を覚えた。
足早に戻ると、案の定、出て行く直前のリトスを目撃する。
「今度は本気だ。簡単に追い付けると思うなよ」
不敵に笑んだリトスが転移の魔術を発動する。
転移先が読めないように細工された、鮮やかなまでに高速の術式展開だ。
止める間もなかった。
「……」
『逃げられたな』
レイヴンは唖然としたが、唐突に笑いがこみ上げてくる。
一本取られたことが、愉快でたまらない。
『おい、どこに行く。追っていかないのか』
「誰が追うか。面倒くさい」
黒竜の疑問を受けながら、きびすを返して自室に向かう。
「当初の予定どおり、嵐原サバーナの遺跡を目指す。出発は夜だ」
目的地は、嵐原サバーナの古代遺跡。
推測が正しければ、リトスもそこへ行っているはずだ。
知らない場所には転移できないので、嵐原サバーナへは、黒竜を巨大化させて空から行った方が早い。しかし、昼間から黒竜を巨大化させるのは魔力を食う。レイヴンは闇属性の魔術師なので、夜に魔術を使う方が魔力効率が良いのだ。
「俺は夜まで寝る」
『汝もたいがいマイペースじゃな』
黒竜は呆れて言ったが、残念ながらレイヴンは夜の遺跡攻略について考えており、契約精霊の言葉を右から左に聞き流していた。
―――俺から逃げきれると思うなよ、歌い鳥。
国王に呼び出され、案内された先は小さな客間だった。
どうやら国王は、二人だけで内密に話がしたいらしい。
賢明なことだ。
「彼をこの国に留める助けをして欲しい、という依頼なら断りますよ」
レイヴンは椅子に腰かけて早々に先手を打った。
今まさに口上を述べようとしていた国王が固まる。
おそらく挨拶から始まって、世辞や追従を言ってから、そういう流れに持っていくつもりだったのだろう。
依頼内容を先に言われた国王は、わざとらしく咳払いした。
「……お見通しなのだな、レイヴン殿は」
見通すも何も、よくある事なのだ。
星瞳の魔術師の身分を隠さず旅をしているレイヴンは、立ち寄った国でたびたび引き止め大作戦に遭遇した。星瞳の魔術師を一人ゲットすれば、魔物の侵略を何十年もくい止められ、国防に割く費用をその分、治水や農業など他の事業に回せる。
どこの国も、生き残りに必死だ。
だからリトスの正体を明かすにあたり、引き止めにあうだろうと予想が付いていた。
「我ら星瞳の魔術師にも、仲間意識があるのですよ。今回は友人の死刑に悲嘆する殿下に同情し、力を貸したまで。これ以上、彼の邪魔をしたら嫌われてしまう」
心にもないことを言って、レイヴンは冷笑した。
ただ三割くらいは本気である。寝台を奪って、ふて寝されるくらいは可愛いものだ。愉しい喧嘩相手であるリトスを失いたくない。
「……レイヴン殿は、最初から、リトス・アルシャウカトが星瞳の魔術師だと知っていたのだな?」
「もちろん。あなたがたは、もう少し彼を疑う、あるいは信じるべきだった。聖鳥に守護されし国メレフが、聖鳥の魔術師を死刑にする―――こんな愉快な劇は見たことがない」
意図的に、彼の二つ名を強調する。
幸い国王は愚鈍ではないようで、すぐに気付いた。
「聖鳥……メレフの伝説にある、白き聖なる鳥だというのか」
「そうですね。高位精霊はめったに人間に関わりませんが、天の高位精霊は別です。かの聖鳥セマルグルは、慈悲深いことで有名だ」
メレフは辺境の小国だが、世界的に【聖地】として有名な国でもある。
聖光教の象徴である、光の高位精霊が守護を与えた地。大量の魔物が棲む嵐原サバーナに接していながら侵略をはねのけ、防壁となっている古国。
「リトス・アルシャウカトが聖鳥の魔術師であるならば、なおのことメレフを離れて欲しくないのだが」
「何もかも手遅れですよ、陛下。あなたがたは、歪みを放置すべきではなかった。アルシャウカト家の悪事について薄々知りながら、国益になるからと、目をつむってきたのでしょう。その集大成がこれだ」
「!!」
「聖鳥の魔術師は、契約精霊と同じで慈悲深い。あなたがたの罪も罰も、すべて見なかったことにして、ただ残された者の幸福のみを願っている。私なら、そこまで優しくなれない。調子に乗って傲慢な願いを口にする前に、あなたがたは自分たちの罪を清算すべきだ」
完全に返す言葉が見つからない国王を残し、レイヴンは悠々と退出した。
冷静を装っているが、実は内心腹立たしく感じている。
何の努力もせずに、星瞳の魔術師だからと他力本願に使い倒そうとしてくる人間が嫌いだ。そういう者に限って厚顔無恥に正義をかかげ、力ある者は弱者のためにその力を使うべきだと説教する。まったくうんざりする。
『国王との話は終わったか』
「テュポーン、乱入してくれても良かったんだぞ」
『我に人間の前に出ていけと? それよりも、お主、あの聖鳥をほうっておいて良いのか? あれは鳥だぞ』
廊下を歩いていると、小さな黒竜が舞い降りてくる。
黒竜の言葉に嫌な予感を覚えた。
足早に戻ると、案の定、出て行く直前のリトスを目撃する。
「今度は本気だ。簡単に追い付けると思うなよ」
不敵に笑んだリトスが転移の魔術を発動する。
転移先が読めないように細工された、鮮やかなまでに高速の術式展開だ。
止める間もなかった。
「……」
『逃げられたな』
レイヴンは唖然としたが、唐突に笑いがこみ上げてくる。
一本取られたことが、愉快でたまらない。
『おい、どこに行く。追っていかないのか』
「誰が追うか。面倒くさい」
黒竜の疑問を受けながら、きびすを返して自室に向かう。
「当初の予定どおり、嵐原サバーナの遺跡を目指す。出発は夜だ」
目的地は、嵐原サバーナの古代遺跡。
推測が正しければ、リトスもそこへ行っているはずだ。
知らない場所には転移できないので、嵐原サバーナへは、黒竜を巨大化させて空から行った方が早い。しかし、昼間から黒竜を巨大化させるのは魔力を食う。レイヴンは闇属性の魔術師なので、夜に魔術を使う方が魔力効率が良いのだ。
「俺は夜まで寝る」
『汝もたいがいマイペースじゃな』
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―――俺から逃げきれると思うなよ、歌い鳥。
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