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ピクシス奪還編
14 水竜王ピンイン
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リーブラには勝手に入ったアサヒだが、水竜王と仲が良くないため、アントリアへは許可なく内部に入ることはためらわれる。
結局、諸々の事情により、三人の竜王は雲海の上で会合することになった。
方舟になったリーブラをアントリアの近くに停泊させて、アサヒと土竜王スタイラスは部下を連れて外に出る。
今回は竜王であることを隠す必要は無いため、ヤモリは漆黒の鱗と4枚のコウモリ型の翼を持つ竜の姿に変身している。
土竜王のカエルさんも今回は竜の姿だ。
濃い緑にオレンジや金の縁取りが入った鱗で、胴体は丸々と太っていて手足が短い。コウモリ型の一対の翼は小さくて、どう見ても物理的に胴体を浮かせるのは不可能だ。
とんでもない巨体でなければ、丸っこくてユーモラスな縫いぐるみのような姿には愛嬌があるのだが……。
ちなみに見た目通りに動きが鈍重である。
風船のようにプカプカ浮かぶ土竜王と一緒に、アサヒは空中で水竜王を待った。
水の島アントリアは、噴水のような機能を持つ島だ。
遠目にアントリアは白い球体に見える。
それというのもリンゴの芯のような形をした島の天辺から、常に水がカーテンのように降り注いで、島全体を包んでいるからだ。
『我は水の島に入りたくない……』
「シャワー被るみたいに、ずぶ濡れになるもんな」
ヤモリはアントリアに近付きたくない様子だ。
火竜にとって水の島アントリアは鬼門らしい。
「お、来た」
水のカーテンを抜けて、黒っぽい竜がこちらに飛んで来る。
竜の背には複数の人間の姿があった。
その中で一際目立つ、ピンク色の長い髪に空色の瞳をした美女がアサヒをにらむと仁王立ちする。裾の長い衣服を着た美女の肩の上には、なぜかフヨフヨと真っ赤な金魚が空中を泳いでいた。
「……炎竜王! ここで会ったが百年目! いざ尋常に勝負せい!」
「うん、そうだね……実際、百年くらい経ってるしね」
指差されたアサヒは遠い目をする。
美女の声はやや高いものの、男のものだった。
彼女、いや彼こそはアントリアの水竜王である。
「ちなみに勝負って何するの?」
「決まっているだろう!……どちらが世界で一番美しいか明確にするのだ!」
「やっぱり」
なぜか美しさにこだわる水竜王。
究極のナルシストの彼は美形ぞろいの他の竜王を勝手に敵視している。むさくるしい筋肉ムキムキの大男である土竜王は唯一の圏外で、それゆえに土竜王だけは普通に話ができるのだ。
「まあ、二人ともその辺にして、本題に入ろうか」
スタイラスがのんびり言ったので、その場の緊張がほぐれた。
「何の用だ、炎竜王。今回の貴様はちょっと可愛い系が入った容姿だな。侮りがたい……」
「いい加減、顔の話題から離れようぜ。俺はアサヒ。実はピクシスが今、光竜王に占領されててさ」
「知っている。私はピンインだ」
水竜王ピンインは不機嫌そうに返事をする。
彼は状況をある程度知っているらしい。
「斥候が様子を見ている。ピクシスから我が島に向けて竜騎士部隊が進軍準備をすすめているようだ」
「光竜王の奴……迷惑をかけて悪いけどピンイン、うちの島の竜騎士とは極力たたかわないでくれるかな。途中で俺が止めるから」
光竜王がピクシスの竜騎士を侵略に使おうとしていることを察したアサヒは、ピクシスの竜騎士を殺さないようピンインに頼む。
ピンインは嫌そうにしながらも了承してくれた。
「ふんっ、予め貴様が直接、頭を下げていなければ皆殺しにしていたところだ!」
「助かるよ」
その時、水竜王の部下と思われる竜騎士が飛んできて、ピンインに耳打ちする。
「……噂をすれば何とやら。ピクシスから竜騎士の部隊が発ったようだ」
「そうか、ありがとう」
ここで止めなければ、水の島との全面戦争になってしまう。
アサヒは気を引き締めると、ヤモリが変身した漆黒の竜を駆って竜王の会談の場から離れた。水竜王も土竜王も動かずにアサヒを見送る。彼らは基本的に自分の島から出たりしない。
「アサヒ!」
「お、カズオミ。どうしたんだ?」
ピクシスに向かって飛ぼうとしたところで、透明な虫の翅のような翼を持つ緑の鱗の竜が近づいてきた。竜の背にはリーブラにいるはずのカズオミと、ユエリの姿があった。
「どうしたもこうしたもないよ! 故郷の島が危機なのに、僕だけ安全なリーブラにいるなんて無理だ。アサヒ、僕が無事でいるように手配してくれたのかもしれないけど、余計な心配なんだからね!」
カズオミが顔を真っ赤にして怒鳴る。
後ろのユエリもすまし顔で続けた。
「一人になろうとするのは、あなたの悪い癖ね。もっと友達を頼ってもいいんじゃないかしら」
友人たちを一番安全なリーブラに残そうとしていたアサヒは、思わぬカズオミ達の行動に目を見開いた。素直に言うと、来てくれて嬉しい。ゆるむ口元を引き締めながら、アサヒは友人の竜と相棒を並走させた。
「じゃあ一緒に行こう、カズオミ、ユエリ。ピクシスを光竜王の手から取り戻すぞ!」
結局、諸々の事情により、三人の竜王は雲海の上で会合することになった。
方舟になったリーブラをアントリアの近くに停泊させて、アサヒと土竜王スタイラスは部下を連れて外に出る。
今回は竜王であることを隠す必要は無いため、ヤモリは漆黒の鱗と4枚のコウモリ型の翼を持つ竜の姿に変身している。
土竜王のカエルさんも今回は竜の姿だ。
濃い緑にオレンジや金の縁取りが入った鱗で、胴体は丸々と太っていて手足が短い。コウモリ型の一対の翼は小さくて、どう見ても物理的に胴体を浮かせるのは不可能だ。
とんでもない巨体でなければ、丸っこくてユーモラスな縫いぐるみのような姿には愛嬌があるのだが……。
ちなみに見た目通りに動きが鈍重である。
風船のようにプカプカ浮かぶ土竜王と一緒に、アサヒは空中で水竜王を待った。
水の島アントリアは、噴水のような機能を持つ島だ。
遠目にアントリアは白い球体に見える。
それというのもリンゴの芯のような形をした島の天辺から、常に水がカーテンのように降り注いで、島全体を包んでいるからだ。
『我は水の島に入りたくない……』
「シャワー被るみたいに、ずぶ濡れになるもんな」
ヤモリはアントリアに近付きたくない様子だ。
火竜にとって水の島アントリアは鬼門らしい。
「お、来た」
水のカーテンを抜けて、黒っぽい竜がこちらに飛んで来る。
竜の背には複数の人間の姿があった。
その中で一際目立つ、ピンク色の長い髪に空色の瞳をした美女がアサヒをにらむと仁王立ちする。裾の長い衣服を着た美女の肩の上には、なぜかフヨフヨと真っ赤な金魚が空中を泳いでいた。
「……炎竜王! ここで会ったが百年目! いざ尋常に勝負せい!」
「うん、そうだね……実際、百年くらい経ってるしね」
指差されたアサヒは遠い目をする。
美女の声はやや高いものの、男のものだった。
彼女、いや彼こそはアントリアの水竜王である。
「ちなみに勝負って何するの?」
「決まっているだろう!……どちらが世界で一番美しいか明確にするのだ!」
「やっぱり」
なぜか美しさにこだわる水竜王。
究極のナルシストの彼は美形ぞろいの他の竜王を勝手に敵視している。むさくるしい筋肉ムキムキの大男である土竜王は唯一の圏外で、それゆえに土竜王だけは普通に話ができるのだ。
「まあ、二人ともその辺にして、本題に入ろうか」
スタイラスがのんびり言ったので、その場の緊張がほぐれた。
「何の用だ、炎竜王。今回の貴様はちょっと可愛い系が入った容姿だな。侮りがたい……」
「いい加減、顔の話題から離れようぜ。俺はアサヒ。実はピクシスが今、光竜王に占領されててさ」
「知っている。私はピンインだ」
水竜王ピンインは不機嫌そうに返事をする。
彼は状況をある程度知っているらしい。
「斥候が様子を見ている。ピクシスから我が島に向けて竜騎士部隊が進軍準備をすすめているようだ」
「光竜王の奴……迷惑をかけて悪いけどピンイン、うちの島の竜騎士とは極力たたかわないでくれるかな。途中で俺が止めるから」
光竜王がピクシスの竜騎士を侵略に使おうとしていることを察したアサヒは、ピクシスの竜騎士を殺さないようピンインに頼む。
ピンインは嫌そうにしながらも了承してくれた。
「ふんっ、予め貴様が直接、頭を下げていなければ皆殺しにしていたところだ!」
「助かるよ」
その時、水竜王の部下と思われる竜騎士が飛んできて、ピンインに耳打ちする。
「……噂をすれば何とやら。ピクシスから竜騎士の部隊が発ったようだ」
「そうか、ありがとう」
ここで止めなければ、水の島との全面戦争になってしまう。
アサヒは気を引き締めると、ヤモリが変身した漆黒の竜を駆って竜王の会談の場から離れた。水竜王も土竜王も動かずにアサヒを見送る。彼らは基本的に自分の島から出たりしない。
「アサヒ!」
「お、カズオミ。どうしたんだ?」
ピクシスに向かって飛ぼうとしたところで、透明な虫の翅のような翼を持つ緑の鱗の竜が近づいてきた。竜の背にはリーブラにいるはずのカズオミと、ユエリの姿があった。
「どうしたもこうしたもないよ! 故郷の島が危機なのに、僕だけ安全なリーブラにいるなんて無理だ。アサヒ、僕が無事でいるように手配してくれたのかもしれないけど、余計な心配なんだからね!」
カズオミが顔を真っ赤にして怒鳴る。
後ろのユエリもすまし顔で続けた。
「一人になろうとするのは、あなたの悪い癖ね。もっと友達を頼ってもいいんじゃないかしら」
友人たちを一番安全なリーブラに残そうとしていたアサヒは、思わぬカズオミ達の行動に目を見開いた。素直に言うと、来てくれて嬉しい。ゆるむ口元を引き締めながら、アサヒは友人の竜と相棒を並走させた。
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