121 / 159
第四部 星巡再会
121 侵略者の最期
しおりを挟む
このままでは、密封空間で毒に冒された人々が生きたまま溶けて、阿鼻叫喚の地獄絵図になるぞ。
承知の上で黒崎に合わせたとは言え、グロいのは見たくない。
魔法で細工して、中の佐々木さんたちを逃がそうか、と杖を持ち上げたところで、黒崎からストップがかかった。
「近藤、あれを見ろ」
「!」
宇宙船の一部、黒崎の槍が刺さっている部分が、ごっそり滑り落ちる。
同時に、佐々木の声がした。
「……汚染部分を強制分離、空気感染を防ぐために密閉区域を作りました。そして――」
ガシャンガシャンと宇宙船が変形した。
鋼鉄の腕と足が生え、人型ロボットの形状に。
「うお、男のロマン、飛行形態と人型の間で変形する兵器……!」
「感動している場合か、近藤枢!」
俺が見上げている間に、宇宙船ロボットは、内側から結界をこじあけた。
結界は中からの力に弱いからな。強度を上げるために圧縮したのだが、それでも足りなかったようだ。
黒崎が舌打ちすると、神器が手元に戻ってくる。
「遊びはここまでです。これが何だか分かりますか?」
佐々木の声と共に、宇宙船ロボットは黄色の地に赤い三つ葉マークが描かれたボックスを俺たちに見せてきた。
「これは現地住民が降伏を受け入れなかった場合の、最終手段です……」
どこかで見たことのあるマークだな。
首をかしげていた俺の背中を、夜鳥がどつく。
「枢! あれは放射線マークだよ! 核爆弾だ!」
なんだって?!
大変なものを持ち出してきたな、佐々木さん。
「地球生まれの君たちなら、これの危険性をよく知っているでしょう……大人しく」
「ほいほいっと」
俺は杖の先を爆弾に向けた。
ヒュンと風を切る音と共に、ボックスが消失する。
「え……?」
「遠い海に魔法で転送して、圧縮で始末したよ。一件落着っと」
絶句する佐々木。
ちなみに転送先は、海神マナーンと会った海の遺跡の上だ。念のため、転送用の魔法陣を設置しておいたのが役に立った。
俺は杖を小脇に挟んで、小指で耳をかいた。
「佐々木さーん。あのさ、異世界の魔法と比べれば、核なんて遅れてると思うよ? だって魔法は一瞬で物理法則を無視して、世界を問答無用で作り変えるんだから」
黒崎が、神器オエングスを宇宙船ロボットに向けながら言う。
「いつでも決着を付けられた。俺も近藤も、手加減をしていただけだ」
「くっ……!」
はじめて、佐々木の声に焦りが混じった。
「戦線離脱します! 予備エンジン点火、全力発進――」
「逃がさない」
俺は一瞬で防御魔法をタンザナイト上空に展開した。
宇宙船ロボットは見えない天井にぶつかって、地面に落ちてくる。
今が絶好のチャンスだ。
「黒崎、今度は俺に合わせてもらうぜ」
「さっさとしろ」
魔法攻撃で一気に宇宙船の外殻を吹き飛ばす。
「晴天千落雷!」
「黒毒槍×100」
黒崎がタイミングをあわせて黒毒槍を天空に発生させる。
俺の起こした雷撃が黒く染まった。
千の黒雷が地に降る。
それは、姿勢を立て直そうとした宇宙船ロボットを直撃した。
白と黒の光が炸裂して目がくらむ。
爆風と共に、ロボットの手足が胴体から離れ、粉々になって吹き飛んだ。頑丈な胴体にも亀裂が入る。俺の全力を注ぎこみ、黒崎が神器で威力を倍増させた攻撃魔法は、計算通り宇宙船ロボットの膨大なHPを一撃で削りきった。
最後に、一番丈夫な制御室の残骸が、爆心地のクレーターに残る。
「こんな……馬鹿な」
もはや元が何であったか分からない瓦礫の中から、煤に汚れた佐々木さんが、這うように出てきた。
「侮っていたのは、私たちの方だったのですね……」
佐々木と部下たちは、消耗しているものの、命に別状はなさそうだ。
そのことに俺は心密かに安心する。
「佐々木さん、あんたには地球に案内してもらう」
俺は厳しい表情を装って、佐々木に歩み寄って杖の先をつきつけた。
「近藤くん、君は……」
佐々木は割れた眼鏡の奥から、なぜか眩しそうに俺を見た。
降参するという言葉が、もう少しで聞ける。
そう感じたのだが、異変が起きた。
佐々木と部下の全身スーツの男たちの体が、光の粒子になって分解し始める。
「これは……まさか過去が変わったのか」
「佐々木さん?!」
消えていく自分の体を見下ろし、佐々木は何かを納得したように呟いた。
そして俺の腕をがっしりつかんだ。
「近藤くん、未来を変えてください。私たちが異世界を侵略しなくても良い、地球の誰も死ぬことのない未来を、どうか……!」
「どういう意味だ? 佐々木さん!」
頼みます、と俺の腕をつかんで言い、佐々木の姿は光になって消えうせた。
「いったい……」
呆然と立ち尽くす俺に、黒崎が声を掛ける。
「ダンジョンの最深部へ向かうぞ、近藤枢。その先に答えがある」
「……ああ」
俺は頷くと、仲間を振り返った。
心菜、真、夜鳥、椿、サナトリス、黒崎の仲間の華美が、俺を見つめ返してくる。
「行こう、皆」
嫌な予感の正体は、きっとダンジョンの狭間の扉の向こう側にある。
承知の上で黒崎に合わせたとは言え、グロいのは見たくない。
魔法で細工して、中の佐々木さんたちを逃がそうか、と杖を持ち上げたところで、黒崎からストップがかかった。
「近藤、あれを見ろ」
「!」
宇宙船の一部、黒崎の槍が刺さっている部分が、ごっそり滑り落ちる。
同時に、佐々木の声がした。
「……汚染部分を強制分離、空気感染を防ぐために密閉区域を作りました。そして――」
ガシャンガシャンと宇宙船が変形した。
鋼鉄の腕と足が生え、人型ロボットの形状に。
「うお、男のロマン、飛行形態と人型の間で変形する兵器……!」
「感動している場合か、近藤枢!」
俺が見上げている間に、宇宙船ロボットは、内側から結界をこじあけた。
結界は中からの力に弱いからな。強度を上げるために圧縮したのだが、それでも足りなかったようだ。
黒崎が舌打ちすると、神器が手元に戻ってくる。
「遊びはここまでです。これが何だか分かりますか?」
佐々木の声と共に、宇宙船ロボットは黄色の地に赤い三つ葉マークが描かれたボックスを俺たちに見せてきた。
「これは現地住民が降伏を受け入れなかった場合の、最終手段です……」
どこかで見たことのあるマークだな。
首をかしげていた俺の背中を、夜鳥がどつく。
「枢! あれは放射線マークだよ! 核爆弾だ!」
なんだって?!
大変なものを持ち出してきたな、佐々木さん。
「地球生まれの君たちなら、これの危険性をよく知っているでしょう……大人しく」
「ほいほいっと」
俺は杖の先を爆弾に向けた。
ヒュンと風を切る音と共に、ボックスが消失する。
「え……?」
「遠い海に魔法で転送して、圧縮で始末したよ。一件落着っと」
絶句する佐々木。
ちなみに転送先は、海神マナーンと会った海の遺跡の上だ。念のため、転送用の魔法陣を設置しておいたのが役に立った。
俺は杖を小脇に挟んで、小指で耳をかいた。
「佐々木さーん。あのさ、異世界の魔法と比べれば、核なんて遅れてると思うよ? だって魔法は一瞬で物理法則を無視して、世界を問答無用で作り変えるんだから」
黒崎が、神器オエングスを宇宙船ロボットに向けながら言う。
「いつでも決着を付けられた。俺も近藤も、手加減をしていただけだ」
「くっ……!」
はじめて、佐々木の声に焦りが混じった。
「戦線離脱します! 予備エンジン点火、全力発進――」
「逃がさない」
俺は一瞬で防御魔法をタンザナイト上空に展開した。
宇宙船ロボットは見えない天井にぶつかって、地面に落ちてくる。
今が絶好のチャンスだ。
「黒崎、今度は俺に合わせてもらうぜ」
「さっさとしろ」
魔法攻撃で一気に宇宙船の外殻を吹き飛ばす。
「晴天千落雷!」
「黒毒槍×100」
黒崎がタイミングをあわせて黒毒槍を天空に発生させる。
俺の起こした雷撃が黒く染まった。
千の黒雷が地に降る。
それは、姿勢を立て直そうとした宇宙船ロボットを直撃した。
白と黒の光が炸裂して目がくらむ。
爆風と共に、ロボットの手足が胴体から離れ、粉々になって吹き飛んだ。頑丈な胴体にも亀裂が入る。俺の全力を注ぎこみ、黒崎が神器で威力を倍増させた攻撃魔法は、計算通り宇宙船ロボットの膨大なHPを一撃で削りきった。
最後に、一番丈夫な制御室の残骸が、爆心地のクレーターに残る。
「こんな……馬鹿な」
もはや元が何であったか分からない瓦礫の中から、煤に汚れた佐々木さんが、這うように出てきた。
「侮っていたのは、私たちの方だったのですね……」
佐々木と部下たちは、消耗しているものの、命に別状はなさそうだ。
そのことに俺は心密かに安心する。
「佐々木さん、あんたには地球に案内してもらう」
俺は厳しい表情を装って、佐々木に歩み寄って杖の先をつきつけた。
「近藤くん、君は……」
佐々木は割れた眼鏡の奥から、なぜか眩しそうに俺を見た。
降参するという言葉が、もう少しで聞ける。
そう感じたのだが、異変が起きた。
佐々木と部下の全身スーツの男たちの体が、光の粒子になって分解し始める。
「これは……まさか過去が変わったのか」
「佐々木さん?!」
消えていく自分の体を見下ろし、佐々木は何かを納得したように呟いた。
そして俺の腕をがっしりつかんだ。
「近藤くん、未来を変えてください。私たちが異世界を侵略しなくても良い、地球の誰も死ぬことのない未来を、どうか……!」
「どういう意味だ? 佐々木さん!」
頼みます、と俺の腕をつかんで言い、佐々木の姿は光になって消えうせた。
「いったい……」
呆然と立ち尽くす俺に、黒崎が声を掛ける。
「ダンジョンの最深部へ向かうぞ、近藤枢。その先に答えがある」
「……ああ」
俺は頷くと、仲間を振り返った。
心菜、真、夜鳥、椿、サナトリス、黒崎の仲間の華美が、俺を見つめ返してくる。
「行こう、皆」
嫌な予感の正体は、きっとダンジョンの狭間の扉の向こう側にある。
66
あなたにおすすめの小説
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~
松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。
なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。
生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。
しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。
二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。
婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。
異世界で世界樹の精霊と呼ばれてます
空色蜻蛉
ファンタジー
普通の高校生の樹(いつき)は、勇者召喚された友人達に巻き込まれ、異世界へ。
勇者ではない一般人の樹は元の世界に返してくれと訴えるが。
事態は段々怪しい雲行きとなっていく。
実は、樹には自分自身も知らない秘密があった。
異世界の中心である世界樹、その世界樹を守護する、最高位の八枚の翅を持つ精霊だという秘密が。
【重要なお知らせ】
※書籍2018/6/25発売。書籍化記念に第三部<過去編>を掲載しました。
※本編第一部・第二部、2017年10月8日に完結済み。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる