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サトシの譚
膠着状態
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「で、どうしよう。」
「どうしましょうかね。」
長い沈黙が流れる。アイはすでに暇なようで腰袋の携帯食料をいじっていた。
「扉を開けると襲ってきますよね。たぶん。」
「やってみるか?」
二人は扉の前で、呼吸を整えてから、息を合わせて扉を開ける。
わずかに扉が開いたとき、中の骸骨騎士が動き出したのがわかった。
「閉めろ!閉めろ!」
ルークスが慌てて扉を閉める。サトシもそれに合わせて閉める。
「やっぱり開けると動き出すんですね。」
「開けないで攻撃する方法かぁ」
「サトシ、おまえ壁越しにライトボール打てる?」
「やったことないっすね。やってみましょうか?」
サトシは壁に手を付き、目を瞑って中の様子をイメージしながら魔力を流してみる。手応えと言えるほどのものは無いが、どうやら当たってはいるようだった。
「当たってはいますね。でも随分弱いです。これだけで倒すのは随分かかると思いますね。」
「そうかぁ。厳しいかぁ」
サトシもルークスも、ぶつぶつと独り言を言いながら、その場をうろうろする。
「鬱陶しい。」
そんな二人にアイは容赦ない。ジト目で二人はアイを睨む。
「何よ。」
サトシは気持ちを切り替えようと、鉱山の方に目をやると、先ほどの坑道の情景が思い出された。
「あの部屋の中で燃やし尽くすって言うのはどうでしょう?」
「壁越しにか?火力がでんだろ?」
「坑道のいたるところに「発破」があった気がするんですよね。しっかり見てないんでよくわからないんですけど、あそこにある筒状の物ってそれしか思いつかなくって。」
「ダイナマイトか。」
「この世界でそう呼ばれてるかどうかはわかりませんけどね。でも、あの規模の鉱山を手掘りってことは無いでしょ?」
「まあ、そう思うな。」
「え~っと。どうしましょう。俺とアイが鉱山に戻りましょうか?」
「いや、ここにマークして三人で転移しよう。で、鉱山中のダイナマイトをここに持ってこよう。」
「鉱山中ですか?」
サトシは言外に「サイクロプスやミノタウロス、デュラハンのところに戻るのか?」と尋ねた。
「ああ、あれはやめよう。できるだけ安全なところで集めようぜ。どのみち、有るとすれば坑道の奥に集中してるだろ?」
「まあ、そうでしょうね。掘り進めるために最奥に近いところまで持ってきてたと信じたいですね。」
そうと決まれば行動は早かった。ルークスが扉の前に転移用のマーキングをすると、三人は急ぎ足で鉱山へと戻る。
……
坑道は静まり返っていた。中央の広い坑道から左右に伸びる分岐路を二手に分かれてダイナマイトを探す。ルークスは左側の分岐路を探し、アイとサトシは右側の分岐路を探す。アイはダイナマイトがどのようなものかを知らないため、最初はサトシと一緒に探すことにした。
「アイ、これだ。これがダイナマイトだ。同じような形をしたものがあると思うから、坑道の分岐路から探してきてくれ。」
「これね。わかった。」
「手荒に扱うと爆発するかもしれないから、衝撃や熱を与えないように注意してね。」
「うん。大丈夫。」
素直だと可愛いな。とサトシは思った。
三人は分岐した坑道内を探しつくして、中央の坑道には30本余りのダイナマイトが集まっていた。
「どうだろう。これで十分と言えるかなぁ。」
「心許ないけどな。贅沢は言えんだろうな。まあ、やってみよう。」
三人は転移で大扉前に移動する。手元にあるダイナマイトは32本。サトシとルークスは使い方に頭を悩ませていた。
「どうする?一気に全部使うか?」
「少ない本数で試したい気もしますけどね。でも、小出しにできるほど本数も無いですしね。」
「そうなんだよな。本数が減ってから、火力が欲しいって言っても後の祭りだし……
ところで、これ、どうやって中に入れる?」
「あ!」
ネコの鈴問題である。誰がこのダイナマイトを中に入れるのか。それが問題だった。
「やっぱり、物理・魔法無効のルークスさんじゃないですか?」
「バカ野郎。俺をなんだと思ってんだ!物理・魔法無効でも、酸素がなきゃ死ぬんだよ。あんな密閉空間で爆発なんかさせてみろ、中の装飾品が燃えて一酸化炭素中毒で死んじまうよ。無敵じゃねぇんだよ。」
「そうですかぁ」
「そうですかぁ。じゃねぇよ!人をなんだと思ってんだ。」
「じゃあ、転移してダイナマイトだけおいてくれば?」
アイが提案する。珍しいアイの提案に、二人は驚きの表情で固まる。
「何よ!何か問題ある?」
「いや、無いな。」
「ああ、大丈夫だと思うよ。良い提案だ。ありがとう。アイ。」
アイは得意げな表情で二人を見ると、ヌーと戯れ始める。サトシとルークスはアイの提案を実現すべく行動に移す。
「じゃあ、とりあえず、ルークスさんの周りにダイナマイト置いておきましょう。」
「そうだな。で、転移して。俺だけが帰ってくると。そして、壁越しにファイアストームで点火しよう。火力が弱くても問題ないだろう。」
「扉の前は危なそうですね。」
「だな。壁や天井は、頑丈そうだから崩れることは無いだろうけど、扉は吹き飛ぶかもしれんな。」
二人はダイナマイトをすべて移動させると、転移の準備に取り掛かる。
「じゃあ、行くぞ!」
「お願いします!」
ルークスの足元に転移の魔法陣が広がり始める。
「どうしましょうかね。」
長い沈黙が流れる。アイはすでに暇なようで腰袋の携帯食料をいじっていた。
「扉を開けると襲ってきますよね。たぶん。」
「やってみるか?」
二人は扉の前で、呼吸を整えてから、息を合わせて扉を開ける。
わずかに扉が開いたとき、中の骸骨騎士が動き出したのがわかった。
「閉めろ!閉めろ!」
ルークスが慌てて扉を閉める。サトシもそれに合わせて閉める。
「やっぱり開けると動き出すんですね。」
「開けないで攻撃する方法かぁ」
「サトシ、おまえ壁越しにライトボール打てる?」
「やったことないっすね。やってみましょうか?」
サトシは壁に手を付き、目を瞑って中の様子をイメージしながら魔力を流してみる。手応えと言えるほどのものは無いが、どうやら当たってはいるようだった。
「当たってはいますね。でも随分弱いです。これだけで倒すのは随分かかると思いますね。」
「そうかぁ。厳しいかぁ」
サトシもルークスも、ぶつぶつと独り言を言いながら、その場をうろうろする。
「鬱陶しい。」
そんな二人にアイは容赦ない。ジト目で二人はアイを睨む。
「何よ。」
サトシは気持ちを切り替えようと、鉱山の方に目をやると、先ほどの坑道の情景が思い出された。
「あの部屋の中で燃やし尽くすって言うのはどうでしょう?」
「壁越しにか?火力がでんだろ?」
「坑道のいたるところに「発破」があった気がするんですよね。しっかり見てないんでよくわからないんですけど、あそこにある筒状の物ってそれしか思いつかなくって。」
「ダイナマイトか。」
「この世界でそう呼ばれてるかどうかはわかりませんけどね。でも、あの規模の鉱山を手掘りってことは無いでしょ?」
「まあ、そう思うな。」
「え~っと。どうしましょう。俺とアイが鉱山に戻りましょうか?」
「いや、ここにマークして三人で転移しよう。で、鉱山中のダイナマイトをここに持ってこよう。」
「鉱山中ですか?」
サトシは言外に「サイクロプスやミノタウロス、デュラハンのところに戻るのか?」と尋ねた。
「ああ、あれはやめよう。できるだけ安全なところで集めようぜ。どのみち、有るとすれば坑道の奥に集中してるだろ?」
「まあ、そうでしょうね。掘り進めるために最奥に近いところまで持ってきてたと信じたいですね。」
そうと決まれば行動は早かった。ルークスが扉の前に転移用のマーキングをすると、三人は急ぎ足で鉱山へと戻る。
……
坑道は静まり返っていた。中央の広い坑道から左右に伸びる分岐路を二手に分かれてダイナマイトを探す。ルークスは左側の分岐路を探し、アイとサトシは右側の分岐路を探す。アイはダイナマイトがどのようなものかを知らないため、最初はサトシと一緒に探すことにした。
「アイ、これだ。これがダイナマイトだ。同じような形をしたものがあると思うから、坑道の分岐路から探してきてくれ。」
「これね。わかった。」
「手荒に扱うと爆発するかもしれないから、衝撃や熱を与えないように注意してね。」
「うん。大丈夫。」
素直だと可愛いな。とサトシは思った。
三人は分岐した坑道内を探しつくして、中央の坑道には30本余りのダイナマイトが集まっていた。
「どうだろう。これで十分と言えるかなぁ。」
「心許ないけどな。贅沢は言えんだろうな。まあ、やってみよう。」
三人は転移で大扉前に移動する。手元にあるダイナマイトは32本。サトシとルークスは使い方に頭を悩ませていた。
「どうする?一気に全部使うか?」
「少ない本数で試したい気もしますけどね。でも、小出しにできるほど本数も無いですしね。」
「そうなんだよな。本数が減ってから、火力が欲しいって言っても後の祭りだし……
ところで、これ、どうやって中に入れる?」
「あ!」
ネコの鈴問題である。誰がこのダイナマイトを中に入れるのか。それが問題だった。
「やっぱり、物理・魔法無効のルークスさんじゃないですか?」
「バカ野郎。俺をなんだと思ってんだ!物理・魔法無効でも、酸素がなきゃ死ぬんだよ。あんな密閉空間で爆発なんかさせてみろ、中の装飾品が燃えて一酸化炭素中毒で死んじまうよ。無敵じゃねぇんだよ。」
「そうですかぁ」
「そうですかぁ。じゃねぇよ!人をなんだと思ってんだ。」
「じゃあ、転移してダイナマイトだけおいてくれば?」
アイが提案する。珍しいアイの提案に、二人は驚きの表情で固まる。
「何よ!何か問題ある?」
「いや、無いな。」
「ああ、大丈夫だと思うよ。良い提案だ。ありがとう。アイ。」
アイは得意げな表情で二人を見ると、ヌーと戯れ始める。サトシとルークスはアイの提案を実現すべく行動に移す。
「じゃあ、とりあえず、ルークスさんの周りにダイナマイト置いておきましょう。」
「そうだな。で、転移して。俺だけが帰ってくると。そして、壁越しにファイアストームで点火しよう。火力が弱くても問題ないだろう。」
「扉の前は危なそうですね。」
「だな。壁や天井は、頑丈そうだから崩れることは無いだろうけど、扉は吹き飛ぶかもしれんな。」
二人はダイナマイトをすべて移動させると、転移の準備に取り掛かる。
「じゃあ、行くぞ!」
「お願いします!」
ルークスの足元に転移の魔法陣が広がり始める。
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