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生方蒼甫の譚

大漁と懇願

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「いやはや、随分素材が手に入ったな。それにオズワルド!良い感じだったじゃないか。あれだけ動ければAランクどころかSランク名乗っても問題ないんじゃないか?」
 知らんけど。

「いや……なぁ。あれは何だ?あんたの魔術か?」
「だからお前の実力だって。お前鑑定スキル持ってんだろ?」
「!?なんでそれを!」
 あ、やべ。ま。いいか。

「俺たちにはお見通しだよ。で、しっかり自分たちを確認してみろ。お前もジョンもロバートも十分な強者(つわもの)だよ」
「そうですよ。俺たちとパーティーを組んでゴーレム倒しまくりましたからね」
「いやだから、あの時俺たちはコアを拾ってただけで……」
「俺たちがモンスターを倒した分、お前も強くなるんだよ。そう言うまほ……魔術だ」
「そうなのか……本当だったのか。そうか、すまねぇ。何もかも頼りっぱなしで。助かったよ。次のサンドワームは俺たちにやらせてくれ。ルークスさん達の期待にこたえられるように頑張ってみるよ」
 うん。あ~。大丈夫だよ。そんなに期待してないから。とも言いづらい雰囲気だな。
 サトシも微妙な笑顔だ。

「おう。がんばってくれ」
 早々に話題を変えよう。

「そうだ。このサンドウルフ。毛皮結構高くで売れそうじゃない?肉はどう?旨い?」
「あ~。毛皮は結構な値で取引されてるな。群れで行動するんで下手にちょっかいかけるとこっちがやられるからな。なかなか市場に出回らない。それこそAやSランク冒険者が討伐しない限り売りに出ない希少品だよ」
「なるほど」
 横でサトシが商売人の顔になってきた。
「肉は?」
「旨いらしいな。俺も食ったことは無いが、野性味あふれる味らしい」
 それ旨いの?ジビエ的な?臭みが酷いって事じゃなくて?ちょっと心配だな。まあいいや。

「サトシ。取り敢えず全部確保するか。まとめて収納しとこう。そうすりゃ腐らんだろう」
「じゃあ、さっそく収納しましょうか。オズワルドさん、ジョンさんロバートさん。すいませんがサンドウルフの死骸を一か所に集めてもらえますか?」
「ああ、これから解体するのかい?この数だと結構長丁場になりそうだな。どうする?解体は俺たちがしようか?その間の見張りをあんたたちに頼んで良いか?」
「見張り?」
「ああ、血の匂いを嗅ぎつけて周囲から魔獣がやって来るからな」
「なるほど。そうするとなお大変ですね。大量討伐って」
「そうなんだよな。ランクは上げるもんじゃねぇぜ」
「そうかそうか。大変か。つーことで、集めてくれればいいよ。俺たち収納魔術使えるから。解体は王都でちまちまやるよ」
「……」
「あれ?聞いてた?集めるだけでいいから」
「収納魔術って言ったか?」
「ああ、そう言ったけど」
「……」
 心なしかオズワルドが呆れているように見えるが……

「マジか。あんたたちそんなレベルだったんだな。すまねぇ。俺たちが気安く声をかけていいレベルの人たちじゃなかったってことだな」
 おいおい、急にどうした?何かあったか?
「なんですか?急に」
「いや。何でもない……です。わかりました。サンドウルフを集めるのはここで良いか……ですか?」
 急に他人行儀になっちまったな。
「いや、そんなに急によそよそしくされても、なにか俺たち気に障ることしました?」
「そう言うわけじゃねぇ……んですよ。気になさらないでください。分をわきまえてませんでした。すいません」

 すげーやりにくい。まあいい。取り敢えず動いてくれるんならそれで良しとしよう。

 なんだか微妙な空気が流れる中、オズワルド達はサンドウルフの死骸を集めてくれる。本当は「反重力」を使って俺たちだけで集めたほうがよっぽど効率は良かったんだが、何か仕事を与えようと思ったサトシの気づかいが裏目に出た感じだ。この雰囲気の中、長々と作業するのは精神衛生上よろしくない。早く終わらせたいが、ここで「反重力」使ってチャチャっと終わらせたら一段と空気が悪くなりそうだ。

 重い空気の中で30分ほど作業しようやく一か所にサンドウルフの死骸が集まった。さて。とっとと次に行こう。

「格納」
 魔法陣をイメージしながらそう呟く。
 すると、目の前に魔法陣と次元の裂け目が現れた。
 今回は、いちいち持ち上げるのが面倒なので魔法陣を移動させてサンドウルフの死骸を通過させる。すると死骸は次々と光の粒になって次元の裂け目に吸い込まれてゆく。
 ん~。異世界って感じ。

 オズワルド達は呆気に取られてそれを眺めていたが、全ての死骸が次元の裂け目に吸い込まれ格納が終わると、急にその場にしゃがみ込み俺たちに懇願する。

「ルークスさん!サトシさん!頼む!俺たちを弟子にしてくれ!!」
 弟子!?
「弟子?ですか……」
 サトシも同じ感想だったらしい。
「ああ、あんたたちの強さを大きく見誤ってたよ。頼む。俺たちを弟子にしてくれ」
 ん~。「たち」って言ってもねぇ。
「ジョンとロバートにその気はないみたいだけど」
 後ろでは目を白黒させてジョンとロバートが突っ立っている。何が起こったのかよくわかってないんだろう。オズワルドの奴、いわゆる直情径行タイプだな。こりゃ色々と失敗するわけだ。
「まあ、落ち着け。な?俺たちは弟子を取るってタイプでもねぇんだ。すまねぇな。それにお前達は十分強くなったよ」
「そこを何とか!」
「何ともならねぇって。なによりお前は十分強いよ。俺たちに教えられることは無いよ。後は自分で強くなるしかねぇよ」
「せめて魔術だけでも」
 あ~。そう言うことね。なるほど。確かに収納魔術や転移・反重力なんかは魅力的な魔法だ。でもなぁ。
「残念ながら無理なんだよ」
「?」
「そうですね。オズワルドさんは無属性の適性がありませんからね」
「適性?」
「ああ、そうだ。お前「水系」と「風系」は使えるよな」
「!?なんでそれを」
「だから、俺たちにはわかるんだって。お前が欲しがってる「収納魔術」や「転移」は「無属性」だ。適性が無いと使えない。だから諦めろ。自分にできる事で努力したらいいよ」
「……」
 今一つ納得していないようだが一旦立ち上がらせる。
「な。取り敢えず次の依頼をこなしちまおうぜ」

 オズワルドは渋々ながら頷き俺たちの後に続く。

 教えられないことは無いんだろうけどな。正直素性の良くわからん奴にホイホイ教えていい内容じゃないからなぁ。ま、悪く思わんでくれ。
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