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生方蒼甫の譚
喪失
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「ええからアイはこっちおいで」
「嫌ぁぁ!!!」
「アイ!!」
ウルサン自由連合の連中がアイの腕をつかんで連れ去ろうとしている。サトシも俺もカルロスたちの攻撃を躱すのに精いっぱいで手出しできない。
「さ、おイタはそのくらいにしときや。ええ加減、俺も怒るでしかし。さてと」
カルロスはサトシの相手をしながらも余裕の様子でアイの方を眺めている。が、その表情が険しくなった。
「おい。これどういうこっちゃ?誰やこんな事したん……これは」
今までにない殺気が俺の方に向かってきた。全身の毛が逆立つ。
「ルーークゥース!いや、生方か!お前か!お前がやったんか!?」
何の事かはさっぱりわからないが、その怒りが俺に向かっている事だけは判る。
「お前一体何もんや!何が目的や!!」
さっきまでの余裕のある口調から一転して明らかに怒気を含んだ物となった。
が、その隙をサトシは見逃さなかった。
カルロスの足元めがけてクナイを投げる。カルロスはそれを躱そうと後ろに下がる。しかし辛うじてクナイが太ももをかすめる。その一瞬だけスキルが無効化されオズワルド達の動きに迷いが出た。今だ!
俺はオズワルド達から大きく距離を取りカルロスの背後から高出力LASERを放つ。当然カルロスはそれを躱すが、その間にサトシがアイの救出に向かえば……
その時。カルロスが叫ぶ。
「人格改変!!」
「「「「「グハァ!」」」」」」
俺達だけでなく、その場にいたオズワルドやウルサン自由連合の面々もその場に崩れ落ちる。しかし、オズワルド達はすぐに何事もなかったように立ち上がり、今度は怒りに満ちた表情で俺たちに殺意を向けてきた。俺は締め付けられるように痛む頭を抱えながら必死の思いでカルロスの元へと向かう。サトシは胸を掻きむしるように苦しんでいる。
アイは……
その場に呆然と立ち尽くしていた。
その無防備なアイをウルサン自由連合の男たちがそのまま抱き上げる。そして、カルロスの方へと運んで行った。
カルロスは運ばれてきたアイを抱きかかえると太刀を鞘に仕舞い、愛おしそうにアイの頬を撫でる。
「アイ?どないしたんや?君素直な子やったやないか……ユリアが泣くで。にしてもユリアに似てきたな。別嬪さんになった。あ~。さて」
そう言うと、カルロスは俺の方に向き直す。
俺は杖でかろうじて体勢を維持しているが、焦点すら定まらない状態だ。まずい。
「で、もう一遍聞こうか。君何もんや?アイに一体何をした?」
言葉遣いだけは元に戻ったが、その怒気は相変わらずだ。俺が一体何をした?それこそ訳が分からん。
「何の……事だ……」
「しらばっくれてんのか……それとも無意識か……」
俺とカルロス。しばらくの沈黙が続くが、カルロスが口を開く。
「君、研究者や言(ゆ)うてたな……何の研究や?で、この世界に来たんはお前の意思か?なんでこの世界にやって来た?なんか理由があるんか?」
確信を突いてきやがる。が、今度は黙っていた。さっきまでの「錯乱」状態ならぺらぺら喋ってるところだろう。
「そうか、もう喋らんか。ならしゃあ無い」
カルロスは、先ほどまでの怒気が嘘のように静かな面持ちとなる。そのまま言葉を続ける。
「アイの方は残念やけどなぁ」
そう言うと、カルロスはそっとアイを地面に下ろし。カルロスに背を向けるように目の前に座らせる。
茫然自失のアイはサトシの方を向いて、そのまま地面にへたり込んでいた。
「ほな。さいなら」
カルロスはいつもの口調でそう言うと、背中の太刀を抜き躊躇いなくアイの背中から胸を貫いた。
俺たちは、それをただ茫然と見ている事しかできなかった……
「嫌ぁぁ!!!」
「アイ!!」
ウルサン自由連合の連中がアイの腕をつかんで連れ去ろうとしている。サトシも俺もカルロスたちの攻撃を躱すのに精いっぱいで手出しできない。
「さ、おイタはそのくらいにしときや。ええ加減、俺も怒るでしかし。さてと」
カルロスはサトシの相手をしながらも余裕の様子でアイの方を眺めている。が、その表情が険しくなった。
「おい。これどういうこっちゃ?誰やこんな事したん……これは」
今までにない殺気が俺の方に向かってきた。全身の毛が逆立つ。
「ルーークゥース!いや、生方か!お前か!お前がやったんか!?」
何の事かはさっぱりわからないが、その怒りが俺に向かっている事だけは判る。
「お前一体何もんや!何が目的や!!」
さっきまでの余裕のある口調から一転して明らかに怒気を含んだ物となった。
が、その隙をサトシは見逃さなかった。
カルロスの足元めがけてクナイを投げる。カルロスはそれを躱そうと後ろに下がる。しかし辛うじてクナイが太ももをかすめる。その一瞬だけスキルが無効化されオズワルド達の動きに迷いが出た。今だ!
俺はオズワルド達から大きく距離を取りカルロスの背後から高出力LASERを放つ。当然カルロスはそれを躱すが、その間にサトシがアイの救出に向かえば……
その時。カルロスが叫ぶ。
「人格改変!!」
「「「「「グハァ!」」」」」」
俺達だけでなく、その場にいたオズワルドやウルサン自由連合の面々もその場に崩れ落ちる。しかし、オズワルド達はすぐに何事もなかったように立ち上がり、今度は怒りに満ちた表情で俺たちに殺意を向けてきた。俺は締め付けられるように痛む頭を抱えながら必死の思いでカルロスの元へと向かう。サトシは胸を掻きむしるように苦しんでいる。
アイは……
その場に呆然と立ち尽くしていた。
その無防備なアイをウルサン自由連合の男たちがそのまま抱き上げる。そして、カルロスの方へと運んで行った。
カルロスは運ばれてきたアイを抱きかかえると太刀を鞘に仕舞い、愛おしそうにアイの頬を撫でる。
「アイ?どないしたんや?君素直な子やったやないか……ユリアが泣くで。にしてもユリアに似てきたな。別嬪さんになった。あ~。さて」
そう言うと、カルロスは俺の方に向き直す。
俺は杖でかろうじて体勢を維持しているが、焦点すら定まらない状態だ。まずい。
「で、もう一遍聞こうか。君何もんや?アイに一体何をした?」
言葉遣いだけは元に戻ったが、その怒気は相変わらずだ。俺が一体何をした?それこそ訳が分からん。
「何の……事だ……」
「しらばっくれてんのか……それとも無意識か……」
俺とカルロス。しばらくの沈黙が続くが、カルロスが口を開く。
「君、研究者や言(ゆ)うてたな……何の研究や?で、この世界に来たんはお前の意思か?なんでこの世界にやって来た?なんか理由があるんか?」
確信を突いてきやがる。が、今度は黙っていた。さっきまでの「錯乱」状態ならぺらぺら喋ってるところだろう。
「そうか、もう喋らんか。ならしゃあ無い」
カルロスは、先ほどまでの怒気が嘘のように静かな面持ちとなる。そのまま言葉を続ける。
「アイの方は残念やけどなぁ」
そう言うと、カルロスはそっとアイを地面に下ろし。カルロスに背を向けるように目の前に座らせる。
茫然自失のアイはサトシの方を向いて、そのまま地面にへたり込んでいた。
「ほな。さいなら」
カルロスはいつもの口調でそう言うと、背中の太刀を抜き躊躇いなくアイの背中から胸を貫いた。
俺たちは、それをただ茫然と見ている事しかできなかった……
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