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勇者 林
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「おかえり」
「ああ、ただいま」
「今日は何がもらえるのかな?」
「要求するようになったか。マグロ缶だ」
「大変結構」
「偉そうだな」
「ん、なんだその匂いは。嗅ぎ馴れん匂いだな」
「ああ、フィリピンのお菓子だそうだ。やたらと甘かった」
「定期的に、海外のお菓子を持って帰ってくるな。なんで?」
「林さんが定期的に海外旅行に行くからね。まめな人だから全員に土産を買ってくるんだよ。」
「いい人だな、年上じゃなかったか?お前より、なんでいまだに店長になってないんだ?
気が利くし、仕事もそれなりにこなすんだろ?」
「まあ、な、」
「なんだよ。歯切れが悪いな」
「ああ、仕事は慣れてるから一通りできるし、気配りもできて、パートのおばさんからの信頼は厚いんだよね」
「ならいいじゃないか。むしろお前より店長向いてるんじゃないか?
じゃあ、アルバイトからは?」
「JK連中からは、土産をくれる気のいいおじさんって感じかな。仕事の良し悪しはあいつらには関係ないからね」
「男連中は?」
「・・・・まあ、裏事情を知ってるやつも居るからな。海外土産の」
「なに? 裏事情って」
「基本、林さんは貯金しないんだよね。」
「・・・何の話だよ。
別に貯金しなくても店長にはなれるだろうよ。なんだ、そんなに海外で豪遊するのか?」
「海外だけじゃないんだよね。豪遊」
「金遣いが荒くても別に問題ないだろ。むしろ店長が金遣い荒いほうが経済が回っていいんじゃないか?独身なんだろ?」
「回す経済が偏ってんだよね」
「なにに?」
「・・・風俗」
「へ?」
「風俗」
「いや、聞こえてるよ、そんなに使うのか?」
「月曜日は日勤の後 デリヘル」
「『月曜日は?』ってなんだよ、他があるのか?」
「そ、火曜は日中ソープ行ってからの夜勤」
「水曜は午前中店舗型ヘルスからの夜勤」
「木曜日はロングシフト(朝から夜まで仕事)」
「金曜は朝ソープからの午後から夜勤」
「土曜・日曜 朝から夕方まで働いて夜に店舗型ヘルス」
「風呂に入るついでと言っていい、というか、風呂代わりに、だな」
「いやいや、まず曜日で決めるなよ。それに金続かんだろ」
「続くように計算されつくしてるからね」
「どんだけだよ」
「だから、徹底してるんだって。
で、たまに禁欲生活に入るのよ。」
「何のために?」
「そりゃ、海外旅行のために」
「まさか」
「そのまさかだね。だいたい2週間この生活をして、翌週から禁欲生活。
それを5週間。そして、6週間目に海外ではじけるのさ」
「救いようがないな。その裏事情はパートのおばさん連中にはばれてないのか?」
「武士の情けさ」
「なにを言ってるんだ、何を」
「もともと、俺たちにも話してもらってないんだよ。昔俺がバイトだったころの先輩が林さんと同じ店で働いたことがあって、
仲良いいんだよね。今もたまに飲みに行くことあるらしいんだけど、飲むと陽気に話すみたいでさ」
「高校生は何で知ってるんだよ?お前が言いふらしたのか?」
「いや、そんなことしないさ。林さんこの辺の出身だから、親が知り合いってやつがいたみたいなんだよね。
事務所で賄い食べてるときに、斎藤が小声でさ、
『店長知ってます?林さん海外行ってる理由・・・・風俗らしいっすよ』
って。わかってるけど、答えらんないしなぁ。
『へえ、ほんとにぃ?』としか返せなかったよ。」
斎藤が結構言いふらしていて、男子高校生の中では周知の事実となっているようだ。
「だから、黙ってるのは結構大変なんだよ。
おばさん連中が聞くんだよ林さんに
『フィリピンだったらセブ島あたり?あそこ奇麗よね。あそこに何とかっていうスイーツが有名なお店があるんだけど、行った?』
的な会話を振るわけよ。そしたら林さん、そつなく答えるんだよね
『●●うまいっすよねぇ。結構通っちゃいましたよ』
ってな感じで、
ぜってー違う。朝から晩まで臨戦態勢だったはずだ!
なにしれっと話合わせてるんだ!!
と、俺たちは思ってるんだけど、口には出さない。触れない」
「まあ、全員同類のクズだってことか。」
「一緒にするな。
ってぇか、林さんはある意味勇者だよ。なかなかできないぞ、あそこまで徹底」
「病気だな。
でも、いずれもらってくるぞ。
ホントの病気を」
「いや、すでにもらってたと思うよ。
こないだはちょっと淋しくなってたっぽい」
「シャレにならんじゃないか、お前んとこ飲食業だろ」
「別に股間丸出しで飯作ってるわけじゃないし」
「そういう問題じゃない!!!
衛生観念はどうなってんだ。いずれ大問題になりそうだな。
・・・そういやぁ 帰ってきてから、手、洗ったんだろうな?」
ジトっとした目で、食べ終わったキャットフードをにらんでいた。
「もらった馬の口の中は見るなってことわざがあるらしいぞ」
「変なとこ博識だな、
・・・
うつされないうちに帰るよ。じゃあな」
そそくさと黒猫は帰っていった。
「ああ、ただいま」
「今日は何がもらえるのかな?」
「要求するようになったか。マグロ缶だ」
「大変結構」
「偉そうだな」
「ん、なんだその匂いは。嗅ぎ馴れん匂いだな」
「ああ、フィリピンのお菓子だそうだ。やたらと甘かった」
「定期的に、海外のお菓子を持って帰ってくるな。なんで?」
「林さんが定期的に海外旅行に行くからね。まめな人だから全員に土産を買ってくるんだよ。」
「いい人だな、年上じゃなかったか?お前より、なんでいまだに店長になってないんだ?
気が利くし、仕事もそれなりにこなすんだろ?」
「まあ、な、」
「なんだよ。歯切れが悪いな」
「ああ、仕事は慣れてるから一通りできるし、気配りもできて、パートのおばさんからの信頼は厚いんだよね」
「ならいいじゃないか。むしろお前より店長向いてるんじゃないか?
じゃあ、アルバイトからは?」
「JK連中からは、土産をくれる気のいいおじさんって感じかな。仕事の良し悪しはあいつらには関係ないからね」
「男連中は?」
「・・・・まあ、裏事情を知ってるやつも居るからな。海外土産の」
「なに? 裏事情って」
「基本、林さんは貯金しないんだよね。」
「・・・何の話だよ。
別に貯金しなくても店長にはなれるだろうよ。なんだ、そんなに海外で豪遊するのか?」
「海外だけじゃないんだよね。豪遊」
「金遣いが荒くても別に問題ないだろ。むしろ店長が金遣い荒いほうが経済が回っていいんじゃないか?独身なんだろ?」
「回す経済が偏ってんだよね」
「なにに?」
「・・・風俗」
「へ?」
「風俗」
「いや、聞こえてるよ、そんなに使うのか?」
「月曜日は日勤の後 デリヘル」
「『月曜日は?』ってなんだよ、他があるのか?」
「そ、火曜は日中ソープ行ってからの夜勤」
「水曜は午前中店舗型ヘルスからの夜勤」
「木曜日はロングシフト(朝から夜まで仕事)」
「金曜は朝ソープからの午後から夜勤」
「土曜・日曜 朝から夕方まで働いて夜に店舗型ヘルス」
「風呂に入るついでと言っていい、というか、風呂代わりに、だな」
「いやいや、まず曜日で決めるなよ。それに金続かんだろ」
「続くように計算されつくしてるからね」
「どんだけだよ」
「だから、徹底してるんだって。
で、たまに禁欲生活に入るのよ。」
「何のために?」
「そりゃ、海外旅行のために」
「まさか」
「そのまさかだね。だいたい2週間この生活をして、翌週から禁欲生活。
それを5週間。そして、6週間目に海外ではじけるのさ」
「救いようがないな。その裏事情はパートのおばさん連中にはばれてないのか?」
「武士の情けさ」
「なにを言ってるんだ、何を」
「もともと、俺たちにも話してもらってないんだよ。昔俺がバイトだったころの先輩が林さんと同じ店で働いたことがあって、
仲良いいんだよね。今もたまに飲みに行くことあるらしいんだけど、飲むと陽気に話すみたいでさ」
「高校生は何で知ってるんだよ?お前が言いふらしたのか?」
「いや、そんなことしないさ。林さんこの辺の出身だから、親が知り合いってやつがいたみたいなんだよね。
事務所で賄い食べてるときに、斎藤が小声でさ、
『店長知ってます?林さん海外行ってる理由・・・・風俗らしいっすよ』
って。わかってるけど、答えらんないしなぁ。
『へえ、ほんとにぃ?』としか返せなかったよ。」
斎藤が結構言いふらしていて、男子高校生の中では周知の事実となっているようだ。
「だから、黙ってるのは結構大変なんだよ。
おばさん連中が聞くんだよ林さんに
『フィリピンだったらセブ島あたり?あそこ奇麗よね。あそこに何とかっていうスイーツが有名なお店があるんだけど、行った?』
的な会話を振るわけよ。そしたら林さん、そつなく答えるんだよね
『●●うまいっすよねぇ。結構通っちゃいましたよ』
ってな感じで、
ぜってー違う。朝から晩まで臨戦態勢だったはずだ!
なにしれっと話合わせてるんだ!!
と、俺たちは思ってるんだけど、口には出さない。触れない」
「まあ、全員同類のクズだってことか。」
「一緒にするな。
ってぇか、林さんはある意味勇者だよ。なかなかできないぞ、あそこまで徹底」
「病気だな。
でも、いずれもらってくるぞ。
ホントの病気を」
「いや、すでにもらってたと思うよ。
こないだはちょっと淋しくなってたっぽい」
「シャレにならんじゃないか、お前んとこ飲食業だろ」
「別に股間丸出しで飯作ってるわけじゃないし」
「そういう問題じゃない!!!
衛生観念はどうなってんだ。いずれ大問題になりそうだな。
・・・そういやぁ 帰ってきてから、手、洗ったんだろうな?」
ジトっとした目で、食べ終わったキャットフードをにらんでいた。
「もらった馬の口の中は見るなってことわざがあるらしいぞ」
「変なとこ博識だな、
・・・
うつされないうちに帰るよ。じゃあな」
そそくさと黒猫は帰っていった。
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