愚痴と黒猫

ミクリヤミナミ

文字の大きさ
3 / 17

勇者 林

しおりを挟む
「おかえり」

「ああ、ただいま」

「今日は何がもらえるのかな?」

「要求するようになったか。マグロ缶だ」

「大変結構」

「偉そうだな」

「ん、なんだその匂いは。嗅ぎ馴れん匂いだな」

「ああ、フィリピンのお菓子だそうだ。やたらと甘かった」

「定期的に、海外のお菓子を持って帰ってくるな。なんで?」

「林さんが定期的に海外旅行に行くからね。まめな人だから全員に土産を買ってくるんだよ。」

「いい人だな、年上じゃなかったか?お前より、なんでいまだに店長になってないんだ?

 気が利くし、仕事もそれなりにこなすんだろ?」


「まあ、な、」

「なんだよ。歯切れが悪いな」

「ああ、仕事は慣れてるから一通りできるし、気配りもできて、パートのおばさんからの信頼は厚いんだよね」



「ならいいじゃないか。むしろお前より店長向いてるんじゃないか?


 じゃあ、アルバイトからは?」


「JK連中からは、土産をくれる気のいいおじさんって感じかな。仕事の良し悪しはあいつらには関係ないからね」

「男連中は?」

「・・・・まあ、裏事情を知ってるやつも居るからな。海外土産の」

「なに? 裏事情って」


「基本、林さんは貯金しないんだよね。」


「・・・何の話だよ。

 別に貯金しなくても店長にはなれるだろうよ。なんだ、そんなに海外で豪遊するのか?」

「海外だけじゃないんだよね。豪遊」

「金遣いが荒くても別に問題ないだろ。むしろ店長が金遣い荒いほうが経済が回っていいんじゃないか?独身なんだろ?」


「回す経済が偏ってんだよね」


「なにに?」


「・・・風俗」

「へ?」

「風俗」

「いや、聞こえてるよ、そんなに使うのか?」


「月曜日は日勤の後 デリヘル」


「『月曜日は?』ってなんだよ、他があるのか?」


「そ、火曜は日中ソープ行ってからの夜勤」

「水曜は午前中店舗型ヘルスからの夜勤」

「木曜日はロングシフト(朝から夜まで仕事)」

「金曜は朝ソープからの午後から夜勤」

「土曜・日曜 朝から夕方まで働いて夜に店舗型ヘルス」

「風呂に入るついでと言っていい、というか、風呂代わりに、だな」

「いやいや、まず曜日で決めるなよ。それに金続かんだろ」

「続くように計算されつくしてるからね」

「どんだけだよ」

「だから、徹底してるんだって。
 で、たまに禁欲生活に入るのよ。」

「何のために?」

「そりゃ、海外旅行のために」

「まさか」

「そのまさかだね。だいたい2週間この生活をして、翌週から禁欲生活。
 それを5週間。そして、6週間目に海外ではじけるのさ」

「救いようがないな。その裏事情はパートのおばさん連中にはばれてないのか?」

「武士の情けさ」

「なにを言ってるんだ、何を」

「もともと、俺たちにも話してもらってないんだよ。昔俺がバイトだったころの先輩が林さんと同じ店で働いたことがあって、

 仲良いいんだよね。今もたまに飲みに行くことあるらしいんだけど、飲むと陽気に話すみたいでさ」

「高校生は何で知ってるんだよ?お前が言いふらしたのか?」

「いや、そんなことしないさ。林さんこの辺の出身だから、親が知り合いってやつがいたみたいなんだよね。

 事務所で賄い食べてるときに、斎藤が小声でさ、

『店長知ってます?林さん海外行ってる理由・・・・風俗らしいっすよ』

 って。わかってるけど、答えらんないしなぁ。

『へえ、ほんとにぃ?』としか返せなかったよ。」

斎藤が結構言いふらしていて、男子高校生の中では周知の事実となっているようだ。

「だから、黙ってるのは結構大変なんだよ。

 おばさん連中が聞くんだよ林さんに
 
 『フィリピンだったらセブ島あたり?あそこ奇麗よね。あそこに何とかっていうスイーツが有名なお店があるんだけど、行った?』

 的な会話を振るわけよ。そしたら林さん、そつなく答えるんだよね

 『●●うまいっすよねぇ。結構通っちゃいましたよ』

 ってな感じで、

 ぜってー違う。朝から晩まで臨戦態勢だったはずだ!

 なにしれっと話合わせてるんだ!!

 と、俺たちは思ってるんだけど、口には出さない。触れない」

「まあ、全員同類のクズだってことか。」

「一緒にするな。

 ってぇか、林さんはある意味勇者だよ。なかなかできないぞ、あそこまで徹底」

「病気だな。

 でも、いずれもらってくるぞ。

 ホントの病気を」


「いや、すでにもらってたと思うよ。

 こないだはちょっと淋しくなってたっぽい」


「シャレにならんじゃないか、お前んとこ飲食業だろ」

「別に股間丸出しで飯作ってるわけじゃないし」

「そういう問題じゃない!!!

 衛生観念はどうなってんだ。いずれ大問題になりそうだな。

 

 ・・・そういやぁ 帰ってきてから、手、洗ったんだろうな?」


ジトっとした目で、食べ終わったキャットフードをにらんでいた。


「もらった馬の口の中は見るなってことわざがあるらしいぞ」


「変なとこ博識だな、


 ・・・

 うつされないうちに帰るよ。じゃあな」


そそくさと黒猫は帰っていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...