神様のミッションやってます~~やらないとチート没収~~

いれだん

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第十三話 量の確保は必要である

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 ダンジョン地下十一階。
 十階までは変わり映えしない光景であったが、此処からはガラリと光景が変わる。
 まるで地上に戻ったような錯覚にさえ陥るだろう。なにせそこは広い草原であるのだから。

 海翔達にとっては有難いフィールドだ。此処は迷路に一々気を付けて進まないといけない場所に比べて進みやすい。タウがケモ耳で音を拾いスキルで罠を避けて走る、彼らの走るは他の冒険者と比べ物にならない。タウもその事を分かっているので、人の居ない場所を先行して爆走している。

 走りながらでも魔物を斃して先へ進む。このステージは四足歩行の魔物が多く生息している。罠よりも魔物の量で対抗してくるステージだ。
 虎のような魔物であったり、ライオンのような魔物等をなで斬りにしながら進む一行。
 出来るだけ最短距離で進むので、直ぐに階段へとたどり着いた。
 そのうち魔物にも目をくれず、人がいないステージなら走って逃げ切り、人がいるステージなら直ぐに斃すを繰り返して行く。

 海翔は剣と魔法を交互に体に慣らしながら先へ進む。



 地下二十五階。
 そこがこのダンジョンの最下層だった。難易度はそこまで高くないダンジョンなので既に何回もクリアされてはいる。それでもクリアしている人物が多いという訳でもない。

 ボスはグリフォンである。広い草原を飛び回って突っ込んできたり、風の魔法を使って攻撃してくるボスだ。機動力も攻撃力もある厄介な敵で、レベルは約五十と言ったところだろう。
 
 グリフォンは新たな挑戦者を見て先ずは上空へと上がった。遠距離の攻撃方法が無い者共ならグリフォンが上から風魔法を撃ち続ければ勝ちだ。しかし今回の敵はそう簡単に行かない。
 海翔が地、水、火、風、雷、光、闇の順で魔法の槍を相手に放っていく。それを避けるグリフォンだが、途中一つだけ被弾してしまった。
 逃げてばかりではこの敵には勝てないとグリフォンは海翔に突っ込む。そしてグリフォンは斃れた。
 
 海翔はレベルが上がってからという物、集中すると時間がゆっくりと感じる事がある。今回もグリフォンが突っ込んで来た時、やけに相手の行動がゆっくりに見えたのである。そして最小限の動きで相手に素早く近づき頭を切り離した。

 グリフォンが光の粒となって消えると、ポンとフィールドの真ん中に宝箱が現れた。タウによると罠はかかっていないようで、開けてみると宝石が幾つか入っていた。それを有難く貰った海翔は、アルファへと預ける。一応宝物庫的な所に入れておけばいいんじゃないかなと海翔はアルファに伝え、例の物を探し始める。
 
 それは直ぐに見つかった。しかし海翔以外は見えていない。
 ダンジョンの壁に突き刺さる様にして生えている黒い杭に近づく海翔。これが封印の楔かと色々と観察してみるも、それが一体どういった物なのか全く分からなかったので、少し触るのに抵抗のある物だが思い切って引き抜いた。
 
 一陣の風が海翔を通り過ぎ、杭も消えた。

 これで良かったのだろうかと不安になった海翔は、神様の一言を見る事に。
 そこにはしっかり完了しているという事が書かれていたので、ほっと安心して家に帰る事になった。



 クウェドの城に転移した海翔は、ベータに迎え入れられた。外は月の位置から見て後数時間で夜が明けそうな時間。かなりの強行軍であったにも関わらず、時間もそこそこ掛かってしまったようだ。次はもう少し早く攻略できたらいいなと海翔は緊張を解きながらンベータにお風呂へ案内してもらう。……彼は既に城の道を覚えていなかったのである。

 翌日からはまた今後についての会議である。
 
 議題はやはり帝国との戦争についてであった。
 特に一番最初に上がったのは戦力についてだ。この街の戦力をどの程度戦争に投入するのか。海翔は最初8割投入を提案した。戦力を投入すればするほど傷を負う者は減るのだ。
 だがこれには反対意見が多かった。この街にも非戦闘員は多い。そのため、8割出してしまった時もしこの街が攻められたら万が一にでも死者が出るかもしれないからだ。

「でも帝国の兵士の数を考えればこちらもそれなりの人数を出す事になるだろう?」
「マスター、それでは冒険者を使いましょう」

 戦争が起きた際、各王都の冒険者ギルドで戦争に参加する者達を募集することが出来る。

「だけど普通に考えると帝国に付く冒険者が大半だろう、こっちに付く人はいるの?」
「それなら問題ないんじゃないすかね、今いる有名冒険者の7割が仲間ですし」
「それはアタシも同意かなぁ。その子達が参加表明すれば冒険者たちも結構来ると思うし」
「はい、そのまとめ役としてこの街の騎士を約5割派遣するというのでいかがでしょかマスター」
「そうだね……でも数がなぁ」
「マスター、アルルと、ルーニャを、召喚することを提案します」

 不意にガンマから提案された案。その案に他の面々もそれもそうだなと頷き返す。しかし海翔だけはその二人が一体どういった人物なのか分からず皆に尋ねる。

「アルルは魔物使い、ルーニャは死霊術師の管轄を任せている者です。両方とも適正のある人数は少ないですが、その分数の補填には長けています」

 両者とも名の通りのスキルである。魔物の求める物を提示して仲間に引き入れるか、力を見せつけて仲間を手に入れるかして従わせるのが魔物使い。死んだ者に疑似的な魂を生成して従えるのが死霊術師である。

「成る程、それじゃあ両者とも強い魔物を作って対抗するか」

 アルルとルーニャはいきなりの勅令に動揺した。それまで個の強さがアルトリヴンの強さであり、また適正の人が多くないことからそこまで脚光の浴びていなかった部署にいきなりの勅令だ。
 二人とも緊張しながら登城した。勿論洋服はどうしようとかそのあたりの葛藤はあったが、アルファから可及的速やかにというお達しが下っていたので適当に綺麗な服装をひったくったアルル、アーニャの方は少しばかりおしゃれをしてお城へと走る。

 海翔の前には新たに用意された椅子に二人の人物が座っていた。
 アルルと名乗った青髪エルフの男性と、ルーニャと呟いた紫髪の魔族である。

「初めまして海翔です、よろしく」
「は、はいぃす」
「……お願いします」

 アルルの方はがちがちに緊張しており、海翔は苦笑いを漏らす。まさか自分がこうやって緊張される側になるとは、そんな事を思いながらも話を進めていく。

「魔物の量だけど、何匹くらい確保してる? それと、魔物使いと死霊術師は何人くらい?」
「……死霊の子達は、全部で百くらい。術師は三十人くらい、です」
「ま、魔物は二百くらいでっす、あと、術師は五十人くらいっす」
「思ったよりも少ないなぁ、魔物はダンジョンの魔物でも大丈夫?」
「魔物は大丈夫っす」
「……死霊は無理です、死体残んないから」

 成る程と海翔は頷いた。確かにダンジョンで魔物を斃しても光の粒になって消えてしまうから死体は残らない。

「じゃあ魔物使い達は俺の家にあるダンジョンに挑んで出来るだけ魔物集めか、これは俺も手伝えそうだな。死霊の方は、他の人が斃した魔物でも使えるのか?」
「……状態が良ければ使えます」
「じゃあ各地に転移を使える者を派遣して人目に付かないようにそこそこの魔物を死体と共に転移してきてもらうか」
「それが宜しいかと思いますマスター」
「うん、じゃあ早速行動開始だな」

 こうして、海翔達は戦争が始まるまでの準備を本格的に始めるのであった。







 アムフォス獣王国。此処は多くの自然が残り、また背後にはアムフォス大森林を抱えている。大森林には世俗と関わりになりたくないと思っている獣人やエルフが多数生息している。そんな獣王国の王都フォスにある王城で、立派な鬣を携えている獣王と国の重鎮たちは真面目な顔で話し合いを繰り広げていた。

「しかし、その報告は本当なのですか王よ、にわかには信じられぬのですがね」
「我とて信じられるかこんなバカげた報告! しかし全ての密偵が同じ報告をしているというのだから信じるほかあるまいよ」
「しかし声明のその日に王都に居る帝国派全てを処すなど可能な事なのでしょうか?」
「起きたんだから可能なんだろうが、それを事実として話し合ってんだろうが」
「そうなのですが、疑いたくもなりましょう」

 はぁと重鎮の一人がため息を零す。
 それを咎めるものはいない。なにせ皆同じ思いなのだ。
 帝国とは停戦しているが、魔族の国マーガルスの王が死んだとなれば停戦が何時開戦に変わってもおかしくないのだ。
 そんな緊張状態の中で、既に帝国にいいように扱われていたスリオの反撃。しかも一日にしてそれを成したなど、報告を聞いても信じらる事では無かった。そのスリオ側に着いたという戦力が帝国から派遣された者達であったという方がまだ信じられる。

「アルトリヴン、聞いた事が無い名だが、いったい何者であるか」
「分かっているのは、異常なほど手際のいい戦力を持つという事だけですな」
「好戦的という事を忘れなさんな、奴さん達は帝国とも軍事的対立を望んどる」
「そこまでの戦力か」
「間の悪い事に獣人もいたという報告がある、真偽は分からんがもしアルトリヴンとやらが負けたら我が国とも開戦になりましょう、我らも戦闘の準備をしなければなりませんぞ」
「然り、アルトリヴンが勝ったとしても、その勢いのままこの国に来ることもありましょう、わが国は帝国とは隣接しておりますからな」
「全く困ったものだ、いっそのこと共闘の使者でも送って出方を見るか」
「ふむ、それも良い案ですな」

 こうして、獣王国はアルトリヴンへと使者を出す事にした。

(にしても、本当に敵か味方か分からん奴らだ、マーガラスの倅にも何か知らないか使者を出してみるか)

 獣王は面倒くさそうに頬杖をついてため息を漏らす。

「取り合えず戦力分析だ、ルーリィとユーセルに居る密偵を回せるだけスリオに流し込め」



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