神様のミッションやってます~~やらないとチート没収~~

いれだん

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第十七話 帝国との戦 ファレの平原 上

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 いよいよ戦乱が近づいていた。
 帝国からもアルトリヴン王国に対し正式に戦争の言が伝えられ、両国は国境にあるファレの平原を最初の戦の地に選ぶ事になった。立地に関しては平地なのでどちらが有利という事も無い。ただ広くそれでいて見通しが良いので、別動隊や隠密隊は動きにくい場所である。

 その場所にドワーフ達が直ぐに拠点を建築し、今では王都にいた冒険者や騎士達もこの地へと続々集まっている。食料に関しては、ある程度国で賄い足りない分はクウェドの貯蔵から取り出してきていた。

 冒険者の数は帝国に比べるとやはり多くはない。だが質だけ見ればアルトリヴンの方が圧倒的に上回っている。
 また一時問題になった配布武器に関しても、冒険者の質を引き上げるのに一役買っていた。
 気軽にエータ達鍛冶師にある程度の品質の物を配りたいのでと話を通した海翔だったが、まさか商業ギルドとやらと話し合う羽目になるとは思ってもみなかったのだ。最終的には商業ギルド側がアルトリヴンを敵に回すのは絶対に避けなければ、利益を生み出すには絶対に味方にいた方がいいという判断で便宜を図ってもらえることになったのは僥倖であろう。

 また、有名冒険者……ちなみにこの場合は器たちであるが、彼らが王都に集まって来た時もかなりの騒ぎになったものだ。
 あちらこちらで、あれは! なんちゃらのだれだれだ! おいあっちを見ろ、あっちはなんちゃらの誰誰だ! なんて漫画やらで見たような光景があちこちで広がっていて、海翔は苦笑いしていた。

 そしてそんな彼らは海翔と謁見して更にやる気を出したのは言わなくても仲間であれば直ぐにわかる事であった。



 準備がほぼ整い、海翔も拠点へと足を運んだ。
 本来王がこのような場所に来ることは無いのだが、それはそれ、これが海翔のやり方なのである。それに、彼は見届けたかったのだ、自分の起こしたことを。
 それに加えて、自分が此処に居る事を示せば、絶対に死なずに自分を守ろうと気合が入るのではないかという思いもあった。相手方も総大将が此処に居るのだから士気が上がる可能性もあるが、それはでも到底仲間たちには遠く及ばないだろうと思っていた。

 魔物と死霊の軍団はかなりの規模になっていた。命令を下す時はその分の魔力がいるが海翔であれば問題なかった。普段はクウェド周辺で放し飼いをしているが、最近では哨戒の騎士と共に行動をしているという報告も見られていた。

「マスター、大規模転移開始いたします」
「うん」

 戦場の平原では既にいつ戦争が始まってもおかしくないという様子であった。実際相手側からの書状からは最終警告に加えて明日攻撃を行うことが書かれていたので、海翔も同じような事を書いて送った。

 平原のアルトリヴン側が一気に光り輝き始める。実際には草原の地面が光っているのだが。相手方もぼんやりと見える光景に興味が湧き眺める。勿論自軍の冒険者たちも同じく何が起きたのか興味津々である。

 そこから現れたのは海翔達の魔物軍団である。
 冒険者は腰を抜かし慌てて逃げようとするが、海翔から説明が入る。
 これはアルトリヴンが調教した魔物であり、魔物使いや死霊使いの使役している者であり、味方であるという事だ。
 実際、相手方にも同じような部隊は存在する。特に飛竜――と言ってもワイバーンのような少し知能の低い手合いだ――を調教して航空戦力として当てているのだが、どう考えてもこれは異様であった。

 転移が無事に済んだので、海翔は作戦室へと戻る。最終確認である。

「じゃあ確認だけど、真ん中は裏切ったスリオの騎士、その後ろに俺達の騎士団。左翼は魔物使いと魔物が三分の二。右翼は冒険者と特攻の魔物三分の一、右翼は全部俺の使役魔物達で間違い無いな」
「はい、冒険者たちにもそのように通達してあります」

 アルファは淡々と答える。

「相手の戦力はどう?」
「S級が、二人、護衛に居ます」
「そこはゼータとガンマとデルタが行くでいいんだね、絶対に死なないように」

 三人は各々海翔へ返事をする。

「イプシロンは俺の護衛役か、一応何があるか分からないし助かる。ミューたち回復部隊の施設も完成してるし大丈夫かな。タウは冒険者に紛れて援護か、一番大変そうだけど頑張って……それで例の守備は出来てる?」
「問題なしです! 例の魔石兵器にこっちの魔石爆弾仕掛けて来たんで、戦争始まって直ぐに爆発しますし」

 帝国が強国と呼ばれる所以は兵力の他にもある。それが魔石兵器という技術力だ。既に兵が持っている分はどうしようもないが、保管されている場所に此方の兵器を仕掛ける事は彼らにとっては容易い事なのだ。そして、一体誰がその兵器を所持しているのかを調べる事もまた容易いことであった。

「じゃあ隠密部隊はその兵器を持った者を暗殺ね」
「問題、ないです」

 うんうんと頷く海翔。その後も細かい事を話し合ってその日は普通に眠るのであった。

 

 だが眠れない事態に陥っていたのは帝国側である。
 戦力差で言うのであれば、やはり帝国有利であった。帝国の指揮官もそれは揺るがざる事実として考え、そして質としても負ける事はないと信じていた。

 だが、戦争前日となっていきなり多量の魔物が投入された。あれだけの数が居れば、戦力差は拮抗あるいは少し不利になってしまうかもしれない。
 何とかあちらの魔物使い共を早々に蹴散らさなければならない。それは自分の命よりも重い使命である。指揮官はSランクにその話を通すと、彼らは少し面白くなさそうだったがその役目を引き受けた。
 
 彼らにしてみればこの戦争は興味が無かった。
 Sランクとして帝国に雇われ、割と好き勝手出来る立場を与えられているのが、そのせいもあり最近強い相手との手合いが減ってしまったのだ。この戦争にも期待していなかったが、入った情報ではあちら側にもSランクも冒険者が付いたという。この指揮官を守っていればきっと誰かが来る。そう意気込んでいたところに、雑魚たちの掃除をしろという命令。テンションが下がるどころの話ではない。しかし、雇い主である皇帝からは指揮官のいう事を聞くように言われているので、彼らは渋々頷くのであった。

 その晩、指揮官は眠る事が出来なかった。




 お互いの口上が平原を飛び交う。
 アルトリヴンは、自国スリオを侵略した帝国を許されない物であるとして。そして帝国はアルトリヴンの侵略を防ぐための戦いであるとした。お互いそんな事は詭弁であることは分かっているが、表向きの理由と言うのはどちらとしても欲しいものだなのだ。そして勝った方がこの詭弁を事実に出来るのである。

 戦争開始の合図は、お互いの陣営で爆発系の魔法を自軍の上に上げる事。
 最初に爆発したのは帝国側、続いてアルトリヴンが爆発を上げ、戦争が開始された。
 直後更に帝国側から爆発音が響く。これは例の魔石兵器の破壊が上手くいった証拠である。

 だがそんな事を気にしている余裕は草原を走り相手とぶつかろうとしている彼らには関係ない事である。
 接敵する前、両者から魔法が放たれる。色とりどり、様々な形の魔法が飛び交う。アルトリヴン側はスリオ騎士の後ろに付いた騎士団が防御の魔法を展開して全て弾いている。だが相手側はそうもいかない。特に相手の先陣は冒険者たちである。冒険者たちの後ろに騎士が付く形だ。それを聞いて逃げ出した冒険者もいる。
 そして各々接敵しての戦闘が開始される。

 海翔はその様子を眺めながら報告を聞き眉をひそめた。
 スリオ騎士が冒険者に押されている。という報告であった。
 海翔は、言うても騎士なのだから冒険者相手にそこそこの働きをするだろうと思っていたのだが……予想を上回るほどに使えない者達であったのだ。

「主を忘れて帝国に尻尾を振った騎士の風上にも置けぬ者達でありますからな、当たり前でありましょう。そのうち逃げるでしょうからな、隠密の者を少し借りております。本来はその場で切られてもおかしくない事態。それをマスターがこの戦で武功を立てれば帳消しにすると温情を与えて下さったのにこのざまである。敵前逃亡は、そういったマスターの思いやりを踏みにじる行為でありますからな、彼らは躊躇わず切るでしょうな」

 イプシロンは軽く言うが、敵前逃亡なんてしたら即座に後ろの騎士に切られるのではと思わなくもない海翔であった。

 一番酷いというか、圧倒的な戦いをしているのは左翼の魔物使い達であった。魔物のレベルは当たり前だが高い。その魔物が徒党を組んで襲って来る。内包する魔力も、そもそもの身体的大きさも違う。人と戦うのとはわけが違う。冒険者ならば慣れてはいる……と言っても此処まで凶悪な魔物と戦った事がある者はどれほどいるというのか。結局此処が一番蹂躙という言葉がふさわしい暴れっぷりであった。

 右翼は魔物が特攻して混沌としていた。
 そして後ろに続くように器の冒険者たちがその混乱を利用して上手く対処している。一般の冒険者も、三人程冒険者内の指揮官を立てて、各々割り振られてその指揮官に従っている。勿論指揮官は器である。そして総じてランクが高いので異を面と向かって唱える者はいなかった。だが好きにしたい奴というのは何処にでもいるので、そういった人物たちは勝手に暴れていた。
 冒険者の死者も出来るだけ抑える様に、海翔にそう伝えられていた指揮官たちの動きは安定重視である。混乱している場所で此方が有利になる様に進めていく。飛んでくる魔法は高位冒険者が蹴散らし放った者へ魔物が向かう。
 蹂躙とは言えないが、かなり善戦している。

 そしてその様子に帝国の指揮官は歯噛みした。一体あのS級どもは何をしているのかと。一番被害が多いのは左翼である。その左翼の魔物使いさえ斃す事が出来ればこの形勢は長く続かない。早く、早くと思いながらも、中央の戦力を左翼に配置するように指示を出す。

「後退しつつ罠を張れ! 魔法で一気に押し返すのだ!」

 指揮官の怒号に伝令は直ぐに行動を開始する。 
 だが、後退したことに疑問を抱いた魔物使い達がそれに乗る事は無く、逆に広く相手を包むようにさらに左側に展開していく。

 因みに一番最初に撃破されたという意味では帝国の航空戦力は意味が無かったと言ってもいい。ワイバーン程度では押し切れる戦力では無いのだ。直ぐに魔物達の手によって墜ちた。




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