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第1章 鉄と少年
第1章 第2話
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街の中をいろいろ歩き回っているうちに日が落ちてしまったので、宿代わりになっている貨物船に戻ってきた。
「それにしてもどうしたもんかなぁ」
貨物船の食堂で缶詰をつまみながら独り言ちた。
結局、手に入った情報は、あのプリン頭から聞き出した妙な二人組のことくらいなもので、追加の情報は街の形がなんとなくわかったくらいだった。
どうにもこの街は路地裏が多く、複雑な道筋が多い。おかげで人を探す何度もかなり高いように感じた。土地勘のある人間に協力してもらえれば、そのあたりは楽になりそうなのだが、あまり歓迎されていないこの状態では厳しいだろう。……まさかあのプリン頭が一番友好的だなんて思いもしなかった。
手がかりになりそうなのは、鉄を集めているということ。今日のところは手下であろうガキどもを見なかったが、まだ一日目だ。もうすこし様子を見よう。最悪、貨物船のコンテナを一つか二つぶっ壊して、罠を作ってもいいし。
なんてことを考えていたら、机の上に置いてあった端末がプルプルっと震えた。ピカピカと端末の上部についたライトが点滅しているあたり、なにかメッセージが届いたのだろう。今回の依頼についての連絡用に持たされた端末なので、仕事関係なのは間違いない。……なんとなく、嫌な予感がする。
『アル、ご苦労様。
報告は見ました。異能者が二人以上いる可能性があると書いてあったので、追加の人員をそちらに派遣します。
ただまだ新人さんなので扱いには気を付けてね(笑)到着は明後日の予定なので、ちゃんと新人教育もお願いね(笑)
あなたの師匠より』
「……見なきゃよかった」
あまりにも頭の痛くなるような文面に、思わず端末の画面を伏せて机に置いた。
文面からわかるように師匠は完全にふざけていた。となれば、追加で来る新人も絶対にロクな奴じゃない。————というか、うちの新人って言ったら、あいつだよな。
「はぁあああああ」
長い溜息が人のいない食堂内で響いた。
「へあっ?!」
朝、とりあえず街へ繰り出してみると、見たことのあるプリン頭はじめ三色の頭と出会った。三人とも俺を見るなり、変な声をあげて硬直してしまった。
ここであったのも何かの縁だ。今回限りの協力者にしようか。一回恐怖を刻んでるからいうことは聞くだろうし。
「おい、そこの三人組!ちょっと待て!」
声をかけると、三人とも恐怖に顔を引きつらせて全速力で逃げ出した。
一分後、色とりどりの頭が地面にへたり込んでいた。
「なっ、なんで追いかけてくるんだよぉ。昨日知ってることは全部話したじゃないですか」
汗一つかかずに目の前に立っている俺に向けて、情けない声を出した。
「お前ら暇だろ。昨日のことでちょっと手伝ってほしくってさ」
できるだけ優しく、笑顔で誘ったつもりだったのだが、聞いた瞬間に三人とも顔を見合わせると、
「ヤバくない?」
「ヤバいよな!?」
「絶対ヤバいよ」
会議にもなっていない頭の悪い会話をすると
「「「嫌です!」」」
三人できれいに声をそろえて拒否された。
そのまま素直に手伝ってくれたなら多少の謝礼くらいは出そうと考えていたのだが、今の反応でその気も失せた。もう一度わからせた方がよさそうだ。
指の関節をボキボキと鳴らして、それっぽい動きをして見せると、三人の顔がどんどん青ざめていく。
「待って!待って待って!」
誰かが制止の声を出しても、両手を前に出してストップのポーズをしようが、そんな程度で止めはしない。と、思っていたのだが、なにかが引っ掛かった。三人とも同じ体勢で、両手を前に出しているだけなのに、なにか小さな違和感があった。
そうだ、指。昨日、勢い余って折ってしまった指に包帯が巻かれてないんだ。確実に骨折していたはずだから、見ればわかるくらいに腫れていてもおかしくないのに、あいつの指にはそんな様子は全くなかったから気になったんだ。
「おい、プリン、その指……」
「————えっ?ああ、これ、あの後直してもらったんっすよ。通りすがりの女の子に」
「治してもらったぁ!?」
そんな物を修理するみたいな感覚で骨折が治るなんて、それこそ魔法じゃあるまいし。いや、思い当たることもないこともないが、それにしてもだ。
「昨日、お兄さんと別れた後、いてぇいてぇって言いながら歩いていたら、この辺じゃ見ないようなフリフリの格好した女の子が近寄ってきて、ほわぁってなんかやって治してくれたんすよ。……ほんとっすよ!」
ほかの二人も頷きながら聞いているあたり、本当のことらしい。ということは、俺の想像した通りなのかもしれない。————おそらくその女の子は、治癒の異能を持った異能者だ。
治癒の異能、他人の傷を癒すことのできる希少な異能だ。いろいろな異能者を見てきた俺でも、治癒の異能者に関しては過去に一人きりしか見たことがない。
魔術の中にも治癒の魔術は存在する。だが、自分の回復にしか使えず、かつ自然回復力を高める程度の効力しかない使い勝手の悪い魔術だ。それに比べて、他人に使える上に回復力も段違いな治癒の異能の価値は非常に高い。価値を知るものからすれば、喉から手が出るほどのものだ。本当にそうなら、いろいろな優先度を変えなければならない。
異能から考えて、俺が探している異能者とは別人だろう。治癒の異能者に人を傷つける力はないからだ。だが、かなり面倒なことになりそうだ。
ただでさえ狙われやすい治癒の異能者のことが、別の異能者に露見するのはかなり危険だ。場合によっては力づくで無理やり力を使わされたり、他人に利用されないために殺害される恐れだってある。————その前に保護しなければ。
「おい、その娘、どこにいたんだ?会った場所へ連れていけ!」
「「「えぇー!!??」」」
「いいから!」
逃げ疲れて地面でへたっている三人を引きづるように連れて、その少女と出会った場所へ急いだ。
「それにしてもどうしたもんかなぁ」
貨物船の食堂で缶詰をつまみながら独り言ちた。
結局、手に入った情報は、あのプリン頭から聞き出した妙な二人組のことくらいなもので、追加の情報は街の形がなんとなくわかったくらいだった。
どうにもこの街は路地裏が多く、複雑な道筋が多い。おかげで人を探す何度もかなり高いように感じた。土地勘のある人間に協力してもらえれば、そのあたりは楽になりそうなのだが、あまり歓迎されていないこの状態では厳しいだろう。……まさかあのプリン頭が一番友好的だなんて思いもしなかった。
手がかりになりそうなのは、鉄を集めているということ。今日のところは手下であろうガキどもを見なかったが、まだ一日目だ。もうすこし様子を見よう。最悪、貨物船のコンテナを一つか二つぶっ壊して、罠を作ってもいいし。
なんてことを考えていたら、机の上に置いてあった端末がプルプルっと震えた。ピカピカと端末の上部についたライトが点滅しているあたり、なにかメッセージが届いたのだろう。今回の依頼についての連絡用に持たされた端末なので、仕事関係なのは間違いない。……なんとなく、嫌な予感がする。
『アル、ご苦労様。
報告は見ました。異能者が二人以上いる可能性があると書いてあったので、追加の人員をそちらに派遣します。
ただまだ新人さんなので扱いには気を付けてね(笑)到着は明後日の予定なので、ちゃんと新人教育もお願いね(笑)
あなたの師匠より』
「……見なきゃよかった」
あまりにも頭の痛くなるような文面に、思わず端末の画面を伏せて机に置いた。
文面からわかるように師匠は完全にふざけていた。となれば、追加で来る新人も絶対にロクな奴じゃない。————というか、うちの新人って言ったら、あいつだよな。
「はぁあああああ」
長い溜息が人のいない食堂内で響いた。
「へあっ?!」
朝、とりあえず街へ繰り出してみると、見たことのあるプリン頭はじめ三色の頭と出会った。三人とも俺を見るなり、変な声をあげて硬直してしまった。
ここであったのも何かの縁だ。今回限りの協力者にしようか。一回恐怖を刻んでるからいうことは聞くだろうし。
「おい、そこの三人組!ちょっと待て!」
声をかけると、三人とも恐怖に顔を引きつらせて全速力で逃げ出した。
一分後、色とりどりの頭が地面にへたり込んでいた。
「なっ、なんで追いかけてくるんだよぉ。昨日知ってることは全部話したじゃないですか」
汗一つかかずに目の前に立っている俺に向けて、情けない声を出した。
「お前ら暇だろ。昨日のことでちょっと手伝ってほしくってさ」
できるだけ優しく、笑顔で誘ったつもりだったのだが、聞いた瞬間に三人とも顔を見合わせると、
「ヤバくない?」
「ヤバいよな!?」
「絶対ヤバいよ」
会議にもなっていない頭の悪い会話をすると
「「「嫌です!」」」
三人できれいに声をそろえて拒否された。
そのまま素直に手伝ってくれたなら多少の謝礼くらいは出そうと考えていたのだが、今の反応でその気も失せた。もう一度わからせた方がよさそうだ。
指の関節をボキボキと鳴らして、それっぽい動きをして見せると、三人の顔がどんどん青ざめていく。
「待って!待って待って!」
誰かが制止の声を出しても、両手を前に出してストップのポーズをしようが、そんな程度で止めはしない。と、思っていたのだが、なにかが引っ掛かった。三人とも同じ体勢で、両手を前に出しているだけなのに、なにか小さな違和感があった。
そうだ、指。昨日、勢い余って折ってしまった指に包帯が巻かれてないんだ。確実に骨折していたはずだから、見ればわかるくらいに腫れていてもおかしくないのに、あいつの指にはそんな様子は全くなかったから気になったんだ。
「おい、プリン、その指……」
「————えっ?ああ、これ、あの後直してもらったんっすよ。通りすがりの女の子に」
「治してもらったぁ!?」
そんな物を修理するみたいな感覚で骨折が治るなんて、それこそ魔法じゃあるまいし。いや、思い当たることもないこともないが、それにしてもだ。
「昨日、お兄さんと別れた後、いてぇいてぇって言いながら歩いていたら、この辺じゃ見ないようなフリフリの格好した女の子が近寄ってきて、ほわぁってなんかやって治してくれたんすよ。……ほんとっすよ!」
ほかの二人も頷きながら聞いているあたり、本当のことらしい。ということは、俺の想像した通りなのかもしれない。————おそらくその女の子は、治癒の異能を持った異能者だ。
治癒の異能、他人の傷を癒すことのできる希少な異能だ。いろいろな異能者を見てきた俺でも、治癒の異能者に関しては過去に一人きりしか見たことがない。
魔術の中にも治癒の魔術は存在する。だが、自分の回復にしか使えず、かつ自然回復力を高める程度の効力しかない使い勝手の悪い魔術だ。それに比べて、他人に使える上に回復力も段違いな治癒の異能の価値は非常に高い。価値を知るものからすれば、喉から手が出るほどのものだ。本当にそうなら、いろいろな優先度を変えなければならない。
異能から考えて、俺が探している異能者とは別人だろう。治癒の異能者に人を傷つける力はないからだ。だが、かなり面倒なことになりそうだ。
ただでさえ狙われやすい治癒の異能者のことが、別の異能者に露見するのはかなり危険だ。場合によっては力づくで無理やり力を使わされたり、他人に利用されないために殺害される恐れだってある。————その前に保護しなければ。
「おい、その娘、どこにいたんだ?会った場所へ連れていけ!」
「「「えぇー!!??」」」
「いいから!」
逃げ疲れて地面でへたっている三人を引きづるように連れて、その少女と出会った場所へ急いだ。
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