魔術と異能が交差するこの世界で

ヌン

文字の大きさ
7 / 81
第1章 鉄と少年

第1章 第2話

しおりを挟む
 街の中をいろいろ歩き回っているうちに日が落ちてしまったので、宿代わりになっている貨物船に戻ってきた。
「それにしてもどうしたもんかなぁ」
 貨物船の食堂で缶詰をつまみながら独り言ちた。
 結局、手に入った情報は、あのプリン頭から聞き出した妙な二人組のことくらいなもので、追加の情報は街の形がなんとなくわかったくらいだった。
 どうにもこの街は路地裏が多く、複雑な道筋が多い。おかげで人を探す何度もかなり高いように感じた。土地勘のある人間に協力してもらえれば、そのあたりは楽になりそうなのだが、あまり歓迎されていないこの状態では厳しいだろう。……まさかあのプリン頭が一番友好的だなんて思いもしなかった。
 手がかりになりそうなのは、鉄を集めているということ。今日のところは手下であろうガキどもを見なかったが、まだ一日目だ。もうすこし様子を見よう。最悪、貨物船のコンテナを一つか二つぶっ壊して、罠を作ってもいいし。
 なんてことを考えていたら、机の上に置いてあった端末がプルプルっと震えた。ピカピカと端末の上部についたライトが点滅しているあたり、なにかメッセージが届いたのだろう。今回の依頼についての連絡用に持たされた端末なので、仕事関係なのは間違いない。……なんとなく、嫌な予感がする。

『アル、ご苦労様。
 報告は見ました。異能者が二人以上いる可能性があると書いてあったので、追加の人員をそちらに派遣します。
 ただまだ新人さんなので扱いには気を付けてね(笑)到着は明後日の予定なので、ちゃんと新人教育もお願いね(笑)
 あなたの師匠より』

「……見なきゃよかった」
 あまりにも頭の痛くなるような文面に、思わず端末の画面を伏せて机に置いた。
 文面からわかるように師匠は完全にふざけていた。となれば、追加で来る新人も絶対にロクな奴じゃない。————というか、うちの新人って言ったら、あいつだよな。

「はぁあああああ」
 長い溜息が人のいない食堂内で響いた。



「へあっ?!」
 朝、とりあえず街へ繰り出してみると、見たことのあるプリン頭はじめ三色の頭と出会った。三人とも俺を見るなり、変な声をあげて硬直してしまった。
 ここであったのも何かの縁だ。今回限りの協力者にしようか。一回恐怖を刻んでるからいうことは聞くだろうし。
「おい、そこの三人組!ちょっと待て!」
 声をかけると、三人とも恐怖に顔を引きつらせて全速力で逃げ出した。

 一分後、色とりどりの頭が地面にへたり込んでいた。
「なっ、なんで追いかけてくるんだよぉ。昨日知ってることは全部話したじゃないですか」
 汗一つかかずに目の前に立っている俺に向けて、情けない声を出した。
「お前ら暇だろ。昨日のことでちょっと手伝ってほしくってさ」
 できるだけ優しく、笑顔で誘ったつもりだったのだが、聞いた瞬間に三人とも顔を見合わせると、
「ヤバくない?」
「ヤバいよな!?」
「絶対ヤバいよ」
 会議にもなっていない頭の悪い会話をすると
「「「嫌です!」」」
 三人できれいに声をそろえて拒否された。
 そのまま素直に手伝ってくれたなら多少の謝礼くらいは出そうと考えていたのだが、今の反応でその気も失せた。もう一度わからせた方がよさそうだ。
 指の関節をボキボキと鳴らして、それっぽい動きをして見せると、三人の顔がどんどん青ざめていく。
「待って!待って待って!」
 誰かが制止の声を出しても、両手を前に出してストップのポーズをしようが、そんな程度で止めはしない。と、思っていたのだが、なにかが引っ掛かった。三人とも同じ体勢で、両手を前に出しているだけなのに、なにか小さな違和感があった。
 そうだ、指。昨日、勢い余って折ってしまった指に包帯が巻かれてないんだ。確実に骨折していたはずだから、見ればわかるくらいに腫れていてもおかしくないのに、あいつの指にはそんな様子は全くなかったから気になったんだ。
「おい、プリン、その指……」
「————えっ?ああ、これ、あの後直してもらったんっすよ。通りすがりの女の子に」
「治してもらったぁ!?」
 そんな物を修理するみたいな感覚で骨折が治るなんて、それこそ魔法じゃあるまいし。いや、思い当たることもないこともないが、それにしてもだ。
「昨日、お兄さんと別れた後、いてぇいてぇって言いながら歩いていたら、この辺じゃ見ないようなフリフリの格好した女の子が近寄ってきて、ほわぁってなんかやって治してくれたんすよ。……ほんとっすよ!」
 ほかの二人も頷きながら聞いているあたり、本当のことらしい。ということは、俺の想像した通りなのかもしれない。————おそらくその女の子は、治癒の異能を持った異能者だ。
 治癒の異能、他人の傷を癒すことのできる希少な異能だ。いろいろな異能者を見てきた俺でも、治癒の異能者に関しては過去に一人きりしか見たことがない。
 魔術の中にも治癒の魔術は存在する。だが、自分の回復にしか使えず、かつ自然回復力を高める程度の効力しかない使い勝手の悪い魔術だ。それに比べて、他人に使える上に回復力も段違いな治癒の異能の価値は非常に高い。価値を知るものからすれば、喉から手が出るほどのものだ。本当にそうなら、いろいろな優先度を変えなければならない。
 異能から考えて、俺が探している異能者とは別人だろう。治癒の異能者に人を傷つける力はないからだ。だが、かなり面倒なことになりそうだ。
 ただでさえ狙われやすい治癒の異能者のことが、別の異能者に露見するのはかなり危険だ。場合によっては力づくで無理やり力を使わされたり、他人に利用されないために殺害される恐れだってある。————その前に保護しなければ。
「おい、その娘、どこにいたんだ?会った場所へ連れていけ!」
「「「えぇー!!??」」」
「いいから!」
 逃げ疲れて地面でへたっている三人を引きづるように連れて、その少女と出会った場所へ急いだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。 ※2026年半ば過ぎ完結予定→七月に完結(決定)

魔法至上主義の世界で『筋力』だけカンストした男が拳一つで全てを覆す

ポポリーナ
ファンタジー
魔法こそが至高——この世界では呼吸も移動も戦闘も、あらゆる営みが魔力で成り立っている。 筋力は「野蛮人の遺物」と蔑まれ、身体を鍛える者は最底辺の存在とされていた。 そんな世界に転生した元・体育教師の剛田鉄心は、魔力適性ゼロ、しかし筋力だけが測定不能のカンスト値。 魔法障壁を素手でぶち抜き、転移魔法より速く走り、最上位魔法を腹筋で弾く—— 「なぜ魔法を使わないんだ!?」と問われるたびに「だって使えないし」と笑う男の、 常識を腕力でねじ伏せる痛快・逆転無双が今始まる!

無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。  不定期投稿作品です。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

処理中です...