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ブルースプリング
ブルースプリング 10ページ目
しおりを挟むそんな事を考えているうちに4限目終了のチャイムが鳴り、1時間の昼休みの時間となった。
「よー、月島。購買行こうぜ」
前席の爽やかイケメンこと石上が昼食に誘ってきたが、俺は首を横に振って断る。
「悪い石上。今日はちょっと忙しい」
と、それだけ返答すると俺はすぐに北側別棟にある技術化室へと移動し教師が留守なのを確認すると動力ケーブル修理に必要な工具と部品を拝借し、こことは反対の位置にあるロボット用体育館へと走った。
種島学園、というよりこの時代の学校には体育館が2つある。人間用とロボット競技用だ。
俺がナイツを隠したのはもちろんロボット用の方の体育館だ。中の広さは人間用の役2倍で床には金属の足で激しく動いても傷つかない特殊マットが敷かれ、壁もかなり分厚いものとなっている。
1限目に清掃が入っていたと星川が言っていたが、そのせいか窓はピカピカでマットの上には埃一つ見当たらない程内装は綺麗だった。
俺は早速周りに人がいないことを確認するとナイツを隠した体育用具室の扉を開ける。
中にはバスケットボールやバレーネットなど人間が室内競技に使うのとほぼ同じ用具の他に、それぞれの部活が使うアスリートロボット達30体以上が部屋の隅で綺麗に整列していた。
木を隠すなら森の中。ロボット隠すならロボット達の中。
午前中に壊れて動かなくなったナイツを隠すにはこの整列の中に紛れ込ませておくのがベストだったのだ。
「さーてナイツちゃん。修理のお時間ですよー」
もう少しすると技術運動部員達がやってきてしまう。とりあえず修理を終わらせて動かせる状態にしたらまた違う場所に隠そう。
そして今日は成宮が早退してしまったので明日にでも自分の家へ持って帰るように説得するつもりだった。
それでこの件は終わり。明日からまた普通で退屈で憂鬱な日常に戻れる。そのはずだったのだが。
「ナイツくーん。ナイツさーん。ナイツの兄貴? あれ、どこだ?」
見当たらない。確かにこのロボ集団に紛れ込ませておいたはずのシルバーナイツの姿がどこにもないのである。
他のものと違って西洋のヘルムや鎧を身に着けた派手な外見だ。本来ならば一瞬で見つけられるはずなのだが、やはり影も形も見つからない。
俺の額から嫌な汗がじとりと一滴流れた。
「まさか……誰かにバレた……!?」
学園内での無断バトルにはかなり重い罰が与えられる。下手をすると退学もあり得ると語っていた今朝の石上の言葉が頭の中で何度もリピートされたが、すぐに顔を左右に振って冷静さを取り戻す。
「落ち着け。そもそも学校や教師にバレたならもうとっくに校内放送やら各教室での犯人探しが始まってるはずだ」
何者かが動かないナイツをこの用具室から持ち去ったのはほぼ確定。しかし問題にはなっていない。
つまり犯人は教師ではないことだけは確かだ。
「でも、それなら一体誰が……何のために」
体育館裏での無断バトル後、成宮は確かに自分のロボットの所有権を捨てた。つまり、今現在シルバーナイツは誰の物でもない。
なので仮に誰かが回収していたとしてもそれは2077年の法律上罪には問われないのだが、それにしたって妙である。
壊れたロボットをわざわざ持ち去っていくような奇特な人間が果たしているだろうか。そもそもあの重量を運搬するにはそれなりの人数が必要だ。
「普通なら所有権放棄したロボットはリサイクルショップかジャンク屋、もしくは廃棄場に持ってくよな……」
廃棄。その単語を口にした瞬間、俺の頭の中でもう一つの可能性が提示された。
機能を停止し動けなくなったナイツは他の清掃ロボから見ればただの『ゴミ』として映るのではないだろうか。
慌てて体育館の外に飛び出して辺りを見渡すと丁度近くで箒を掃いでいるマスターSを発見したので急ぎ駆け寄った。
「ようマスター。少し聞きたいことがあるんだけど」
「コンニチハ。何でしょう生徒様?」
「今日さ、何かデカいロボ……じゃなくてゴミを見つけて回収しなかったか?」
「回収データ確認中。本日の清掃記録の中で最もサイズの大きなゴミは……11時21分、女子生徒様の依頼で運搬した人型ロボットが最大の回収物となります」
思った通り壊れたナイツを移動させたのはマスターだ。人間の腕力じゃ大変な運搬もこの清掃ロボットのパワーなら軽々運べてしまうだろう。
それにしても気になるワードが出て来たな。
「女子生徒に運搬を頼まれたって、一体誰にだ? それに何のために?」
「申し訳アリマセン。プライバシー保護の為、私には生徒様一人一人の名前インプットは行ってオリマセン」
「名前は解らないか。それで、お前はナイツはゴミ置き場まで運搬したのか」
「イイエ。廃棄ロボをリサイクルしたいと言う女子生徒様からの申告を受けた為、別の場所へと運搬致シマシタ」
リサイクルか。その女子生徒が誰だかは解らないがどうやらその子はナイツのパーツ、もしくはナイツ本体が欲しいのだろう。
コントローラーは成宮が地面に叩きつけて何度も踏みつけていた為ボロボロになって使えないが、パーツを外して他の事に転用するのは可能だろう。
だとするならば、これ以上の詮索は止めておこう。
「運搬場所マデ案内致しまショウカ?」
「いや、いいよ。変なこと聞いてすまなかったな、それじゃ」
どこの誰だか知らないがこっちが困っていたナイツの処分を引き受けてくれるという奇特な人間がいるのだ。わざわざ話をややこしくする必要はない。
肩の荷が下りると同時に腹の虫が鳴る。そう言えばまだ昼食を済ましていなかった。
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