【R18】ギャルは聖女で世界を救う! -王子に婚約破棄されたけど、天才伯爵に溺愛されて幸せなのでおけまるです!-

沖果南

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2章 二人の前途は多難です!

聖女、呼ぶ (1) ※

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 首都からディルとエミが帰ってきたその夜、ガシュバイフェンの屋敷ではささやかな宴が催された。
 なんせあの冷血伯爵ことディル・K・ソーオンが、ついに聖女エミにプロポーズしたというのだ。屋敷はこの上ないほどのお祝いモードに包まれていた。召使いたちにも食事や酒が振る舞われ、屋敷中がお祭り騒ぎとなった。

「ハクシャク、まだちょっと顔が赤いね……」
「セバスチャンが次から次へと酒を勧めるから、……つい飲み過ぎてしまったようだ」

 夜遅くにようやく部屋に戻ったディルは、ベッドに身体を沈めてため息をついた。そんなディルを、エミは心配そうに見守っている。ろうそくの灯りに照らされたディルの頬や耳は、紅潮している。
 つい先刻まで、ディルはたくさんの酒を飲んでいた。なんせ、宴の席で振る舞われた酒で酔っ払ってしまい、たちの悪い絡み上戸と化したセバスチャンから、ディルはしこたま酒を飲まされたのだ。
 決して下戸ではないディルだが、さすがに今夜は飲みすぎたらしい。湯浴みをして、ガウン姿になった今でも、未だに酔いが残っているらしく、珍しくぼんやりした様子だ。
 ベッドの脇にちょこんと座り、おなじくガウン姿のエミは、手うちわでディルの顔にパタパタと風をおくる。

「今日はマジで楽しかったね~。首都であったこと、みんなにいっぱい話せたし、お土産も渡せたし! なにより、みんなにおめでとうっていわれてさ、あたしすごい幸せ感じちゃった♡」
「そうだな。……なにより、お前が楽しそうだったのがよかった」

 ディルは手を伸ばすと、エミの頬にかかった髪をそっと耳にかけた。少しだけ濡れているエミの長い髪が華奢な肩口をくすぐり、エミが口元に手をあててクスクスと笑う。そんなエミを、ディルは愛おしそうに見つめた。

「たまになら、ああいう騒々しい宴も悪くはない。セバスチャンが酒を飲み過ぎるのは考えものだが」
「やーん、セバスちも嬉しかったんだよ~。今日みたいな日くらいは許してあげて♡」

 優しく微笑むエミを、ディルがかすかな熱を秘めた瞳でじっと見つめた。

「おい、ずっとベッドの隅に座っているつもりか? こちらへ来てほしいのだが」
「う、うん……」
「もっと近くに寄れ。私はお前に触りたい」

 エミの華奢な腰に腕を回したディルは、強引にエミを近づけた。ふたりの距離が一気に近くなる。

「わわ、ハクシャクが珍しく強引だぁっ!? あっ、んっ……」

 驚いて眼をしばたかせたエミの無防備な唇に、まだ酔いの残る熱っぽい唇が触れる。
 肉厚な舌が、エミの柔らかな唇をこじ開け、腔内を蹂躙していく。エミもおずおずと舌を絡めると、ディルは口の端で少し笑い、きつくその舌を吸いあげた。
 深い口づけを交わしながら、ディルはエミに覆いかぶさる。

「はぁ、あっ……、んぁ……」

 強い刺激に耐えられなくなったエミが先に顔をそらして唇を離す。いまやエミのガウンは乱れ、細い肩や太ももがあらわになっていた。
 ディルはくつくつと低く笑いながら、人差し指の背でエミの頬を撫でた。

「どうした? お前も顔が赤いようだが」
「……ハクシャクのせいだもん」
「まったく、その反応といい、仕草といい、どこまでお前は可愛いのだ。首都にいるあいだ、お前の魅力に他の男たちが気づきはじめたことに、私はかなり嫉妬していたんだぞ。お前が国王や他の男たちと楽しそうに喋っているのを見るたびに、なんだかこう、ムカムカしてしかたなかった」
「ええっ、そーだったの!?」
「当たり前だろう。ガシュバイフェンに帰れば、お前を独り占めすることができるだろうと、私は日々必死で大量の仕事をこなした。私は思ったより、独占欲が強い男だったらしい」

 まだ少し酔いがまわっているらしいディルは、いつもより素直で饒舌だった。いつものポーカーフェイスもいくぶんか柔和になっている。
 エミはディルを包みこむように優しくそっと抱きしめた。

「ふふ、今日のハクシャクは酔っ払いさんで素直だね。きゃわぴくて最高~」
「別に、そこまで酔ってはいない。少しふわふわする程度だ。心拍数が上昇しているが、これはお前が側にいるからだろう」
「私もいつもドキドキしてるよ?」
「端から見ても分からんな。本当かどうか、確かめさせてくれ」

 そう言いながら、ディルの手がエミの心臓のあたりを探りはじめる。

「ああ、本当だ。ドキドキしているな……」
「あっ、……んっ……」
「それに、ここも興奮しているようだ」
「……あ」

 肌の上に直接ガウンを羽織っているだけのエミの胸の頂は、布ごしでもわかるほどにぷっくらと尖っている。エミは真っ赤になって両手で隠そうとしたが、もう遅い。
 ディルは恥ずかしそうに目をそらすエミの額にキスをおとした。

「お前の身体はわかりやすくて、可愛らしい」
「は、ハクシャクのせいだもん……」

 赤い顔のまま、エミはぷくっと頬を膨らます。
 首都でプロポーズしたあと、宣言した通りディルは夜な夜なエミの部屋に通った。それまでディルは散々我慢していたのだ。反動はすさまじく、それまで押さえこんでいた欲望を一気に解放するかのごとく、エミの身体に徹底的に快感を刻みこんだ。
 その結果、いまやディルの長い指が触れるだけで、エミの腹部の奥底がじわりと疼き、恥部に蜜を湛えてしまう身体に作り替えられてしまった。
 エミはもじもじと太ももを擦りあわせ、むずがるように首を振る。

「やだ、……あんまりしちゃ、やだぁ……」
「その割には、ずいぶん悦んでいるように見えるが?」

 そう言って、ディルはやわやわとエミの胸を揉む。甘くもどかしい快感にエミは身もだえし、身体を震わせた。

「ふぁ……、ん……」

 ディルの手が、エミの敏感な場所を少しずつ辿っていく。
 ついに布越しでは満足できなくなったエミが、ディルの手をぎゅっと掴む。

「あの……、ハクシャク、直接触ってほしい」
「……ッ!」

 何かをこらえるような押し黙ったディルは、急に愛撫をやめ、拗ねたような顔をする。

「おい、先ほどから何度も私のことをハクシャクなどと連呼しているが、いつまで私のことをハクシャクなどと他人行儀に呼ぶつもりだ」
「えっ」
「私たちは夫婦になるのだ。いつまでも『ハクシャク』で呼ぶなんて、おかしいだろう」

 エミはポカンとしたあと、大きな目をパチパチとしばたかせた。

「ホントに名前で呼んでいいの? ……名前呼びとか、ハクシャクは好きじゃないかなって思ってたんだけど」
「お前に呼ばれるなら、どんな呼び名でも構わない。しかし、お前は私の妻になる。できれば名前で呼んでほしい」
「じゃあ、でぃ、ディル……って、呼んでいい?」
「……っ!」

 エミが上目遣いで名前を呼ぶと、ディルの胸の鼓動が大きく脈打った。これ以上、我慢できそうもない。ディルは荒々しい手つきでエミのガウンを脱がし、自らの服も脱ぎ捨てた。腹に向かってそそり立つ欲望の証が現れる。
 
「ああ、そうだ。それでいい……。しかし、名前を呼ばれただけで、ここまでクるとは……。想像以上だ、エミ」
「わわーっ、ハクシャク、あたしの名前……っ」
「ハクシャクではないだろう?」

 一糸まとわぬ姿になったエミを抱えなおしながら、ディルはエミの耳元でささやく。

「さあ、私の名前を呼べ」
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