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火の重要性

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「火の当番のやる事は分かる?」

 交代の時点でも、まだ目が冴えている様子のアーロンが尋ねてきた。

「なんとなく、隊長の時に見ていたので。薪をたまに火に放り込んで、火が消えないようにするんですね?」

「そう、後は、火事にならないように、物や人が近付かないように気を付けて。まあ、寝相悪いのは、ウェイドくらいだろうけど......」

 寝相悪い組から、私は外された......?
 私は、見張り番だから、除外されたんだよね、きっと。
 ......と思っていた矢先、

「さっきのハプニング、わざとだった?」

 ニヤリと笑って、私の反応を見ているアーロン。

 見透かされている、さすがだ!

 ......という事は、私の気持ちも察している?
 油断ならない男だ、気を付けなきゃ!

「いえ、まさか!」

「そうなのかな? 早く、あの2人の薬の効力が抜けるといいね~」

 私が否定しているのに、全く耳に入って無かったように意味深に言ったアーロン。

「はあ、そうですね」
 
 なるべく動揺しないように返した。

「居住地に着くまでの間、ずっと退屈だな~と思っていたけど、今回は、楽しみが出来て良かったよ。じゃあ、火の見張り番よろしく」

「はい」

 隊長より、要注意人物は明らかにアーロンだった!!

 さすがは、頭脳班だけあって、人の気持ち見抜くという能力に長けていそうな感じ!
 嘘は通じないタイプで、私は苦手だな~。
 涼しい顔して、人の気持ちを弄ぶような感じだよね。
 メガネの奥で何考えているか分からないというか......

 まさか......この事を隊長に、報告するつもりなのかな?
 そしたら、ウェイドに接近するどころか、あの2人に詮索されたり、ひたすらからかわれまくる運命になりそうで怖い!

 私のこんな困っている気持ちも気付かずに、2人とも、相変わらず、グースカ寝息まで聴こえるくらいに爆睡しているし......

 早く、ウェイドとリゼットが覚醒してくれないと、私1人で、いつまでも、あの 曲者くせもの2人の相手するなんて、荷が重いよ!

 それに火の当番だって、この2人も入ってくれたら、私は1回っきりで済んだはずなのに......
 入植者の中で私だけ2回も回って来る事になるなんて、面倒臭いな~。

 一体いつまで、あの2人は、能天気に寝続けるつもりなんだろう!
 本来、同期って支え合う仲間のはずだよね?
 その同期の私1人だけが、ずっと覚醒し続けて大変な目に遭わされているというのに、お構いなしで寝続けているって、不公平だよ!


「ハックション」

 う~、寒~っ!

 えっ、火が消えてる!
 私、寝てしまっていた......

 どうしよう!!

 隊長に知らせなくちゃ!

 でも、火が無いと、暗くて、どこにいるのか分からない.....
 私の横は、ウェイドで、確か、その向こう側に寝ていたんじゃなかった?

「隊長~!」

 ウェイドを踏まないように気を付けなきゃ。
 多分、ここら辺って、隊長が寝ていた場所辺りのはずなのに、それと思しき気配が無い。

「俺はここだ! 初めての任務中だというのに、うかつに居眠りして、火が消えた事に気付かないとは、見上げた根性だ!」

 隊長は、寝てなかった!
 火が有った付近から声がしている。

 隊長は、一早く火が消えている事に気付いき、急いで火起こしをしようとしていたんだ......
 私のクシャミより先に起きていたとは、さすがだ!
 
「隊長、風向きが変わったせいか、妙に獣臭がして来ます」

 隊長だけでなく、アーロンも起きていたんだ。
 野宿し慣れているだけあって、少しの気配でも敏感になっているんだな~。

 んっ?
 獣臭......って?

 大変だ、火が無かったら、野獣達に襲われてしまう!

「隊長、早くして下さいっ! 私達、獣達に殺されてしまいます~!」

「急かすな、これでもかなり急いでいる! 全く、誰のせいだと思ってるんだ!」

「ガルルルル」
「ガルルルル」

 空耳ではない!

 獣の声が聴こえている!
 1匹どころじゃない!

「隊長、何か獣が沢山います! 近付いて来てます! 早く、火を~!」

「多分、オオカミかコヨーテだ。あいつらは、夜目が効くからな。アーロン、銃の用意をしろ!」

 隊長は、火起こしをしながらも、特に焦っている様子は無く、アーロンに命じた。

「ティアナは、銃の使い方が分かる?」

 暗い中でも、少し目が慣れたのと、衛星の明かりのおかげで、アーロンらしき人影は分かった。

「私が、そんな物騒なの使えるわけないです!」

 首をブンブン横に振ったが、アーロンには通用しない。

「子供の頃とか、友達とおもちゃの鉄砲で遊ばなかった? あれと同じ要領だから」

 こんな物騒な物を扱い慣れてない私に、ポンと手渡したアーロン。
 私が、本当に、これ使っていいの?
 いつオオカミの襲われるか分からない危険な状況なのに、銃を手渡されてしまった途端、なぜか、私、妙にときめくのだけど!

「弾は貴重だからな、無駄撃ちするなよ、ティアナ」

 私の興奮を感じ取ったように、忠告してくる隊長。

 そんなの、私だって、分かってる!
 オオカミだって、実際に何頭いるのか分からないし、外しまくったら、威嚇にすらならない。
 こんな生活がまだまだ続くとしたら、弾は1発も無駄に出来ない! 
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