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物憂げなリゼット

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 気になるな~!
 リゼット、隊長とはどうなったのかな?
 自分から言い出そうとしないし......

「聞いていいのかな......? リゼット、隊長とは......?」

 リゼットは、もしかしたら、秘密にしておきたかったかも知れない。
 でも、抜き打ちの見回りとか有るかも知れないし、ルームメイトの私が協力するには、状況を知っておかないとね。

「隊長は、私の事、とても大切に想ってくれているの......」

 早速、お惚気から始まるとは!
 そりゃあ、そんなことくらい、言われなくても一目瞭然だったけど......

「うん、私から見ても、それはよく分かる分かる~!」

「私、似ているんだって、向こうの居住区にいる隊長の妹さんに」

「えっ!」

 隊長の妹が、リゼットに似ているなんて、全く想像つかな過ぎて、笑えるくらいなんだけど!

「それでね、私の事は大切に想っていて守ってあげたいけど、妹のようにしか思えないって......」

「えっ、何それ! 思わせぶりな事しておきながら、なんていう言い逃れ!」

 これじゃあ、リゼットが可哀想!

「そんな、怒らないで、ティアナ! 私、妹として大切にされているだけでも嬉しく感じているから」

 リゼット、なんて健気な!
 こんな可愛くて性格の良いリゼットを振るなんて、隊長って奴は!

「隊長のせいで、昨日はずっと、リゼット眠れなかったんでしょう? 私、仕事前に、隊長に抗議しに行く!」

「ティアナ、止めて! ホントにいいのよ!」

 リゼットはそう言ったけど、もう私の衝動は止まらない!

 男性棟の3棟の方へ向かうと、ジョギングの朝トレ中のエリックとアーロンにバッタリ遭遇した。

「おはよう、ティアナ! 怖い顔して、どうしたんだ?」

 私の前まで来ると、足を止めた2人。

「隊長に話が有るので!」

「リゼットの件か?」

 アーロンは、私の気持ちをすぐ察してしまう。

「そうですけど!」

 リゼットの名誉にかけて、この2人には、隊長のあのふざけた断り文句は話さないでおこう!

「ティアナの言わんとしている事は分かるけど、待ってもらえないか」

 そう言って、いきなり、アーロンは、私のおでこに右手の平を当てて来た!
 何の真似よ、アーロン?
 恋愛に興味無いって言いながら、スキンシップは別なの?

「そんな興奮状態じゃあ難しいな。深呼吸して、目を閉じて、心を落ち着けてみて」

 リゼットの件も有るのに、アーロンがこんな事して来るから、余計気持ちが昂ってしまっているんじゃない!

 深呼吸ったって.......
 えっ.......?

 表面上には見えてなくても、誰しも第三の目というものが有るらしい事は知っていたけど......

 目を閉じた時に、暗闇の中に浮かんで来たのは、可愛い少女
 誰......?
 気持ちを集中させると、だんだん輪郭がハッキリして来たから、リゼットだと分かった。

「隊長の妹さんのエミリアだよ」

「隊長に、本当に、こんなリゼットに似た妹がいたなんて......」

 それも驚いたけど......!
 何より、アーロンの能力!!

「だから、隊長に突っかかるのは止めときなよ。隊長も隊長なりに、色々考えているんだ。また、ティアナの射撃も失敗しないようにとか」

「そんな、私、隊長とリゼットが絡んでいたって、動じないようにするし......」

 でも、その私の気持ちと能力は必ずしもイコールにならないかも知れないけど。
 
「その保証は君にはまだ出来ないと思うよ。取り敢えず、まずは、自分の能力がブレないように気を付けな」

 アーロンにそう言われると、言い返せない。

「ティアナ、女性棟まで、一緒に走らないか?」

 そんな仕事前から、汗だくになって疲れるような事を私は出来ない。

「遠慮しておきます」

「相変わらず、つれないな~!」

 そういうエリックが走っている事で、昨日のかすり傷を思い出した。

「あっ、エリック、もう大丈夫なんですね! 良かった!」

「だからって、また僕をまたターゲットにして外すのは止めてくれよ!」

「外さなかったら、いいんですね?」

 隊長が、リゼットの告白を断ったという事は、仕事中も少しの間、2人は気まずくなってしまうのかな?
 そんな2人の様子をまた気にしてヘマしないように気を付けないとね!


 女性棟の部屋に戻ると、リゼットが物憂げな表情で見つめて来た。
 こういう表情も可愛過ぎて、罪なくらいなのに、このリゼットに似ている美少女がもう1人存在しているなんて。
 それも、あの隊長の妹として!
 隊長とは似て無過ぎて、信じられないし、笑える......

「ティアナ、隊長の所に行って来たの?」

「ううん、アーロンとエリックに引き留められた。アーロンに隊長の妹を映像で見せてもらったんだけど、ホントにリゼットかと思うくらいソックリで驚いた! 確かに、あんなに激似だったら、隊長もリゼット見ていると、妹を重ねてしまうのかもって分かる気がした」

「そうなの? ただの言い逃れではなかったのね! 良かった~」

 私が教えた隊長の妹情報で、リゼットの顔にいつものこっちまで心和ませてくれるような微笑が戻って来た!
 そうか、リゼットもやっぱり妹なんて言われて、似ているのか確かめる術も無くかなり堪えていたんだね。
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