燃えよ、想いを乗せ

ゆりえる

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22.

暴走後の依頼

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 急に手の平返したような千加子に、身じろぎせずに構えた颯天はやて

(浅谷さんが、僕に何か頼みが有るって、聞く前から、何だか気が進まないな……)

「お願いっていうのは、僕に出来そうな事で?」

「もちろんよ~! 矢野川君の、頼める事なの!」

 有無を言わせない強引そうな口調の千加子。
 透子は、口出しせずに2人の会話に耳を傾けていた。

「えっ、雅人が関係しているのか?」

(浅谷さん、勝手に雅人に運命を感じているみたいだから、接近する事を企んでそうだな……)

「ええ、同期の訓練生とはいえ、有能過ぎる矢野川君は、もう引き抜かれて大和隊に加わるのも時間の問題だから、今やこの私でも手の届かない存在となってしまっているわ! 分かるでしょう?」

「雅人は、一早く訓練生の立場を卒業したようなもんだから……」

 だからといって、諦める様子などは見せない千加子。

「せっかく、私と釣り合いの取れる男性と出逢えたのに、このまま距離が開くのを私は芳しく思えないのよ」

「はぁ?」

 ここで相槌を打っていいものか、対応に困る颯天。

「だから、宇佐田君には、私達の仲を取り持って欲しいわけ!」

「あっ、だから、さっきも言った通り、雅人は淡島さんが好きなんだけど……」

(なんでまた、この堂々巡りを繰り返すのかな? 浅谷さんは、諦めが悪いな……まあ、僕も人の事は言えないけど……でも、透子さんと荒田さんの仲が終わったという事は、僕には、まだ見込みが全く無いわけではない。浅谷さんも、取り敢えず今は、雅人がフリーだから、誰か恋人が出来る前に手を打とうとして、躍起やっきになっているのかも知れないな……)

「さっきも言ったのは、私のセリフよ! 憧れの対象と魂の片割れとは、そもそも比較するにも値しないものなの! どちらの相手の方が尊い存在か、宇佐田君だって分かるでしょう?」

「そんな勝手に、自分を雅人の魂の相手と思い込むのも……」

 千加子の思い込みと語気の強さに押され気味で、つい蚊の鳴くような声音になる颯天。

「この私の女の勘が、それを認めているのだから、そうに決まっているじゃない! 宇佐田君は、まだそういう相手に出会った事が無いから、分からないだけよ! そんな人の言う事などは、私は聴く耳を持ちません!」

「でも、そういうのって、片方だけが感じ取っている段階なら、その人の錯覚かも知れないし……僕としては、雅人の意見も尊重したい」

「それは、もっともだわね! 矢野川君本人の気持ちは大事に決まっているわ! でも、まあ、矢野川君もツインレイに会った経験は、今まで無くても当然だから、まだどういったものか、認識出来てないかも知れないわね。だからこそ、宇佐田君には、私と矢野川君が打ち解けるシチュエーション作りに協力してもらいたいわけよ!」

 やっと、颯天に自分の願望を伝えた千加子。

「僕が、雅人と浅谷さんが打ち解けるシチュエーション作りに協力……?」

 思わずオウム返ししていた颯天。

(そんな事を雅人が望むわけが無い! そういう迷惑そうな話を雅人に持ち掛けるのは、とてもじゃないけど引き受けたくないな……)

「そうよ! だって、他に誰も適任者がいないでしょう? 矢野川君と仲が良い宇佐田君なら、そう仕向けてくれる事くらい容易いでしょう?」

「いや、でも……」

 颯天が躊躇っていると、だんだんと機嫌を損ね出して来た千加子。

「断らないわよね? 私達が上手く行ったら、宇佐田君には、特別に私の女の勘で、魂の片割れを見付けてあげるわ! どう、いい取り引きでしょう?」

(僕の魂の片割れったって、浅谷さんの女の勘っていうの、あてにならなそうだしな……透子さんが、そういう存在だったら、どんなにかいいんだけどな~)

 そんな事を考えながら、隣の透子の方をチラッと見た颯天。
 すると、透子の笑いをこらえてそうな顔が目に入った。

(透子さん、すごく楽しそうな表情をしている。さっきまで、浅谷さんに一方的に暴言を向けられて、打ちひしがれていそうな感じだったから、回復していて良かった~! 確かに、浅谷さんの妄想というか暴走というか、優等生にしては意外過ぎて、聞いている分には面白いかも知れない。でも、雅人にしてみれば、人ごとのように面白いでは済まされない感じだよな……)

「取り敢えず、雅人にまず相談してみるよ。浅谷さんの申し出は、その後になるけど」

「宇佐田君が的を射た説明をしてくれたなら、矢野川君はOKするはずよ! これは、宇佐田君にかかっているの! だから、くれぐれもよろしくね!」

 去り際まで、自信たっぷりの後ろ姿を颯天と透子に見せていた千加子。

 千加子の姿が暗闇に消えるのを待ち、堪えていたものが我慢出来なくなり、ついに笑い出した透子。

「ごめんなさい。宇佐田君と浅谷さんのやり取りとか、浅谷さんの考えが面白過ぎて、堪えるのが大変で……」

「僕も、かなり驚かされました! まさか、浅谷さんの魂の片割れを雅人って思い込んでいたなんて! 浅谷さんの女の勘って、あてになるのかな?」

「浅谷さん、あんなに文武両道で男勝りな物言いをしていながら、突然、ツインレイなんて乙女チックな事を言い出すなんて思わなくて……」

 透子の口からツインレイという言葉が出て、ドキッとした颯天。

「あの……新見さんは、ツインレイとかって信じるんですか?」

 透子がそういう事に興味が有るのか、そして、そのツインレイの相手を荒田と思っていたのか、知りたかった。

「そうね、高校生の時くらいに雑誌の特集で、その言葉を知ったの。それからは、出逢ったり仲良くなった男性に、その言葉を重ねてみたりしていたわ。あっ、私にも、乙女チックな感じって似合わないかな?」

「いえ、そんな事、全然無いです!」

 透子の返答から、荒田にもツインレイという存在を意識していたのを感じ取った颯天。

「宇佐田君、さっき、浅谷さんから色々言われている時に、かばってくれてありがとう! 嬉しかった!」

「だって、あれは、浅谷さんがあまりに聞き捨てならない言い方を新見さんに対してしていたから……けど、そんな風に言われて、僕の方こそ嬉しいです!」

(こんな風に透子さんから、お礼言ってもらえて、それだけで、こんなに幸せな気持ちになれるなんて、なんか、生きてて良かった~!)

 結局その日も、想定外の浅谷の出現により、透子にはトレーニングさせる時間を与えないまま夜も更けてしまい、2人はそれぞれ運動場を後にする事になった。 
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