26 / 44
26.
失意
しおりを挟む
ここ数日、運動場で透子とばったり遭遇する事が続き、トレーニングメニューをこなせてなかった 颯天だったが、今日は久しぶりに、本腰入れるつもりで運動場へ向かった。
運動場へと続いている最後の廊下を歩いている時、遠目に荒田を見かけた。
(荒田さんだ! 遠くからでも、存在感がスゴイ有るから、すぐ分かる! 僕もあんな風格が備わってくといいんだけどな~)
荒田の横には、女性が1人、共に歩いていた。
透子かと思ったが、スレンダーな透子に比べ、もっとメリハリの目立つグラマラスなボディラインをしていた。
(あれは……淡島さん? 荒田さんとは違うグループのはずなのに……違うグループ間で、対戦訓練のようなのも有るのかな?)
荒田の横には、同じグループの透子がいるのが当然と言う感覚でいた颯天は、その2人の組み合わせに違和感を覚えた。
立ち止まって、その様子を見続けようとしていたが、そんな颯天の視界を遮って来た存在がいた。
「宇佐田君、昨日の件だけど、どうだったの? もちろん、ちゃんと矢野川君に話してくれたわよね?」
得意の上から目線で尋ねて来た千加子。
(わ~っ、浅谷さんだ~! そうか、まだ雅人は、浅谷さんと話す機会が無かったんだな……)
千加子を見ると、苦手意識が先行してしまい、狼狽えた颯天。
「ああ、その話なんだけど……」
「まさか、矢野川君にまだ話してないなんて事はないわよね?」
「いや、も、もちろん、話したよ!」
疑いの眼差しを向けて来る千加子に、慌てて返答した。
「で、矢野川君、なんて言っていたの?」
颯天の言葉が待ち切れず、鼻息を荒くしている千加子。
「あの……それについては、雅人の方から直接話すって」
「え~っ! 矢野川君が、じきじきにお返事下さるの~?」
(雅人の名前を出しただけなのに、なんか言葉遣いまで、僕に対するのと随分違っている……)
「やっぱり……彼も、私の事がすごく気になっていたから、宇佐田君を通してではなく、私と直接、会いたかったのね~!」
「いや、そういう事とは違うと思うけど……」
あまり千加子を期待させるのも、雅人が後から大変な目に遭いそうで気の毒に感じ、自分の思った通りに伝えた颯天。
「何言ってるのよ~! そんなわけないじゃない! 芹田先生だって、おっしゃっていたじゃない! 私の解釈通りだって!」
(解釈通りとまでは言ってなかったような……まあ、近い線はいってそうな感じだったけど……)
「こんなお馬鹿さんを相手にしていても、仕方ないわ! さあ、寮に戻って、顔面パックして、お肌と髪の手入れしなきゃ!」
雅人と会う時に備えて、美しくあろうとしている千加子。
(僕は、お馬鹿さん扱いか……それにしても、浅谷さんと、おめかしって、あまり合わない感じだけど。そんな風に感じるのは、僕だけなのかな? おめかしという言葉が似合うのは、やっぱり、なんと言っても透子さんを除いて他にいない! あ~、透子さんと、また、ここで逢えないかな~?)
思いがけず連日、運動場で透子と会えていた颯天は、また次なる偶然を期待しながら、昨日と一昨日のロス分を取り戻すつもりでトレーニングをしていた。
しばらくすると、ランニングをしている颯天の足音とは、違う足音が運動場に響き出した。
(この足音は……もしかして……?)
颯天が期待して振り返ると、期待通り、透子が走っていた。
(透子さんだ! だけど……)
透子の様子がおかしく感じられ、足を止めた颯天。
走っている姿や速度からも、透子が本気で走っていない雰囲気が伝わっていたが、その顔は、上向き加減で涙を溢れ返させ、頬を幾筋も伝わらせていた。
「新見さん、どうしたんですか?」
声を掛けずにはいられなかった颯天。
「宇佐田君……」
立ち止まり、首にかけていたタオルで、慌てて涙を拭《ぬぐ》った透子。
(透子さん……もしかして、荒田さんが淡島さんと一緒にいる事で、相当ショックを受けたのかな?)
「あの……僕で良かったら、話してもらえませんか?」
傷付いた透子の支えになりたい颯天。
「哀しい事が起きたの。荒田さんのプロポーズを断った時から、覚悟はしていたつもりだったけど……」
(やっぱり、荒田さんの事か……もしかして、淡島さんといたのは、荒田さんのプロポーズを断った事への腹いせ……?)
「さっき、荒田さんが淡島さんと一緒にいるのを見ました……」
透子のか細い肩がビクッと動いた。
「あの2人、結婚を前提に交際するらしいわ……私への指輪をそのまま使い回したのね。彼女の指に、少しきつそうな状態だったのを見たわ」
その様子を思い出したかのように、笑っていた透子。
(あの2人が結婚を前提に……? それなのに、透子さん、そんな風に笑って……)
衝撃が大き過ぎて、透子の気が触れたのではと心配になる颯天。
(どうしたら、透子さんが正気を取り戻せる……?)
「新見さん……新見さんより、他の女性を選ぶような男の人は、そもそも女性を見る目が全然無いんです!」
颯天が透子の正気を取り戻すつもりで熱弁すると、透子が吹き出した。
(えっ、僕はまた、何か見当違いな発言をしてしまったのか……?)
「この前も、そんな感じで慰めてくれたよね、宇佐田君。優しいね……」
透子が正気を失ったわけでは無かった事にホッとした颯天。
「良かった……哀しそうな話題なのに、新見さんが笑ったりしていたから、心配でした!」
「心配って……? もしかして、私の頭がおかしくなったのかと思っていたの? 宇佐田君って、心配性なのね! 私、本当に指輪を使い回ししていた荒田さんと、淡島さんのきつそうな指が面白過ぎて、思い出したら笑わずにいられなかっただけなのに……」
あれほど涙を流していたわりに、思ったよりも堪えてない透子に安堵した颯天。
運動場へと続いている最後の廊下を歩いている時、遠目に荒田を見かけた。
(荒田さんだ! 遠くからでも、存在感がスゴイ有るから、すぐ分かる! 僕もあんな風格が備わってくといいんだけどな~)
荒田の横には、女性が1人、共に歩いていた。
透子かと思ったが、スレンダーな透子に比べ、もっとメリハリの目立つグラマラスなボディラインをしていた。
(あれは……淡島さん? 荒田さんとは違うグループのはずなのに……違うグループ間で、対戦訓練のようなのも有るのかな?)
荒田の横には、同じグループの透子がいるのが当然と言う感覚でいた颯天は、その2人の組み合わせに違和感を覚えた。
立ち止まって、その様子を見続けようとしていたが、そんな颯天の視界を遮って来た存在がいた。
「宇佐田君、昨日の件だけど、どうだったの? もちろん、ちゃんと矢野川君に話してくれたわよね?」
得意の上から目線で尋ねて来た千加子。
(わ~っ、浅谷さんだ~! そうか、まだ雅人は、浅谷さんと話す機会が無かったんだな……)
千加子を見ると、苦手意識が先行してしまい、狼狽えた颯天。
「ああ、その話なんだけど……」
「まさか、矢野川君にまだ話してないなんて事はないわよね?」
「いや、も、もちろん、話したよ!」
疑いの眼差しを向けて来る千加子に、慌てて返答した。
「で、矢野川君、なんて言っていたの?」
颯天の言葉が待ち切れず、鼻息を荒くしている千加子。
「あの……それについては、雅人の方から直接話すって」
「え~っ! 矢野川君が、じきじきにお返事下さるの~?」
(雅人の名前を出しただけなのに、なんか言葉遣いまで、僕に対するのと随分違っている……)
「やっぱり……彼も、私の事がすごく気になっていたから、宇佐田君を通してではなく、私と直接、会いたかったのね~!」
「いや、そういう事とは違うと思うけど……」
あまり千加子を期待させるのも、雅人が後から大変な目に遭いそうで気の毒に感じ、自分の思った通りに伝えた颯天。
「何言ってるのよ~! そんなわけないじゃない! 芹田先生だって、おっしゃっていたじゃない! 私の解釈通りだって!」
(解釈通りとまでは言ってなかったような……まあ、近い線はいってそうな感じだったけど……)
「こんなお馬鹿さんを相手にしていても、仕方ないわ! さあ、寮に戻って、顔面パックして、お肌と髪の手入れしなきゃ!」
雅人と会う時に備えて、美しくあろうとしている千加子。
(僕は、お馬鹿さん扱いか……それにしても、浅谷さんと、おめかしって、あまり合わない感じだけど。そんな風に感じるのは、僕だけなのかな? おめかしという言葉が似合うのは、やっぱり、なんと言っても透子さんを除いて他にいない! あ~、透子さんと、また、ここで逢えないかな~?)
思いがけず連日、運動場で透子と会えていた颯天は、また次なる偶然を期待しながら、昨日と一昨日のロス分を取り戻すつもりでトレーニングをしていた。
しばらくすると、ランニングをしている颯天の足音とは、違う足音が運動場に響き出した。
(この足音は……もしかして……?)
颯天が期待して振り返ると、期待通り、透子が走っていた。
(透子さんだ! だけど……)
透子の様子がおかしく感じられ、足を止めた颯天。
走っている姿や速度からも、透子が本気で走っていない雰囲気が伝わっていたが、その顔は、上向き加減で涙を溢れ返させ、頬を幾筋も伝わらせていた。
「新見さん、どうしたんですか?」
声を掛けずにはいられなかった颯天。
「宇佐田君……」
立ち止まり、首にかけていたタオルで、慌てて涙を拭《ぬぐ》った透子。
(透子さん……もしかして、荒田さんが淡島さんと一緒にいる事で、相当ショックを受けたのかな?)
「あの……僕で良かったら、話してもらえませんか?」
傷付いた透子の支えになりたい颯天。
「哀しい事が起きたの。荒田さんのプロポーズを断った時から、覚悟はしていたつもりだったけど……」
(やっぱり、荒田さんの事か……もしかして、淡島さんといたのは、荒田さんのプロポーズを断った事への腹いせ……?)
「さっき、荒田さんが淡島さんと一緒にいるのを見ました……」
透子のか細い肩がビクッと動いた。
「あの2人、結婚を前提に交際するらしいわ……私への指輪をそのまま使い回したのね。彼女の指に、少しきつそうな状態だったのを見たわ」
その様子を思い出したかのように、笑っていた透子。
(あの2人が結婚を前提に……? それなのに、透子さん、そんな風に笑って……)
衝撃が大き過ぎて、透子の気が触れたのではと心配になる颯天。
(どうしたら、透子さんが正気を取り戻せる……?)
「新見さん……新見さんより、他の女性を選ぶような男の人は、そもそも女性を見る目が全然無いんです!」
颯天が透子の正気を取り戻すつもりで熱弁すると、透子が吹き出した。
(えっ、僕はまた、何か見当違いな発言をしてしまったのか……?)
「この前も、そんな感じで慰めてくれたよね、宇佐田君。優しいね……」
透子が正気を失ったわけでは無かった事にホッとした颯天。
「良かった……哀しそうな話題なのに、新見さんが笑ったりしていたから、心配でした!」
「心配って……? もしかして、私の頭がおかしくなったのかと思っていたの? 宇佐田君って、心配性なのね! 私、本当に指輪を使い回ししていた荒田さんと、淡島さんのきつそうな指が面白過ぎて、思い出したら笑わずにいられなかっただけなのに……」
あれほど涙を流していたわりに、思ったよりも堪えてない透子に安堵した颯天。
0
あなたにおすすめの小説
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
大人のためのファンタジア
深水 酉
ファンタジー
第1部
泉原 雪(いずはら ゆき)22歳。会社員。仕事は大変だけれど、充実した毎日を送っていました。だけど、ある日突然、会社をクビになり、ショックのあまりに見知らぬ世界へ送られてしまった。
何でこんなことに?!
元の世界に未練や後悔、思い出や大事なものとか一切合切捨ててきた人を「影付き」と呼ぶのだとか。
私は、未練や後悔の塊なのにどうして送られて来てしまったのだろう?
運命を受け入れられずに、もがいてもがいて行き着いた先は…!?
----------------------------------------------------------
第2部
記憶を奪われた雪。
目が覚めた場所は森の中。宿屋の主人に保護され、宿屋に住み込みで働くことになった。名前はキアと名付けられる。
湖の中で森の主の大蛇の贄と番になり、日々を過ごす。
記憶が思い出せないことに苛立ちや不安を抱きつつも、周りの人達の優しさに感謝し、自分らしく生きる道を探している。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる