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変身
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ビーストの巨体を前にしても、今後の成り行きの知っているらしい芹田は、訓練生達とは違い、動じる様子はなかった。
(こんな圧倒的に不利そうに思える状況で、隊員達は、 怯む事無く、敵を相手にしていたんだ! 芹田先生は、古典教師なのに、こんなに現場の事を知っている人だったとは! ここで、その巨体をどうやって倒すのか、芹田先生は全てお見通しなんだ!)
「ビーストの姿が、君らにとっては、この上も無く大きく感じられるだろう? だが、実際には、この程度のビーストなどは取るに足らない存在なのじゃ!」
笑い飛ばしそうな態度の芹田を見て、目と耳を疑った颯天。
(この巨体で取るに足らない? 僕ら人間の何十倍も有りそうな姿で、まともに戦っても、握り潰されそうな体格差が有るのに。芹田先生、久しぶりにビーストを見て、あまりの恐ろしさに、まさか、気が触れてしまったのでは……?)
芹田の言葉の真意が分からず、ここで、隊員達の力が及ばない様を見せつけられそうな気配に、どうしていいのか戸惑った颯天。
その時だった!
ビーストの巨体をも凌駕しそうな巨大な何かが、瞬くほどの速度で訓練生達の前を通り過ぎた。
(今のは、もしかして、もう一体のビースト? ビーストは一体だけではなく、二体もいたのか? しかも、さっきのより二回りくらい大きい! これはもう、隊員達には 為す術が無さそう!)
「芹田先生、今のもビーストですか?」
益田が目を見張りながら尋ねた。
「はっはっは、今のも、ビーストとはな! さては、君らの動体視力は、今、通り過ぎた姿をきちんと捉えられていなかったのかな?」
余裕を感じさせる態度で言い放った芹田。
(どういう事なんだろう? 僕は動体視力だけは、悪くないつもりだけど、今、通り過ぎたのは、ビーストではないとしても、少なくとも隊員の姿には全く見えなかった……)
「という事は……もしかして、隊員達なのですか?」
それまでは貝のように口を閉ざしていた浅谷が、妙に目を輝かせて尋ねた。
「諸君らは、わしの授業の時に、あれほどまでに重要だと教えていた龍体文字で書かれた古典の内容を覚えているかね?」
(浅谷さんの質問に対し、否定をする事無く、急に何を言い出すんだ、芹田先生は……? 龍体文字の古典とさっきの存在とは、どう関係が……?)
芹田が重要と何度も強調していた授業内容について、記憶を辿り、思い出そうとした颯天。
(確か、最初は色が出て来たんだ。黒とか青とか……)
色がオリンピックと似たように5色有った事くらいしか、漠然として思い出せずにいた颯天の横で、この時とばかりに、スラスラと暗唱する浅谷。
「遠き昔、黒が奮闘し、あまたの青補佐せり。
その間長く続けどその後、緑うちいで、黒の座を緑引き継ぐ事となりき。
それよりとばかりの間、緑の統率する世となりき。
やがて、赤のうちいづるがひまとなり、白や黒のうちいづる事となる。
白と黒は対に、その力は一足す一を遥かに凌駕す。
緑ばかりに統率せる世は終はり告げ、
圧倒的なる白と黒と、次に赤、かくて緑、青にうつろひ行く」
千加子は暗唱後、訓練生達の称賛の視線を一身に浴び、満足気な笑みを浮かべていた。
(えっ、全部暗唱出来ているのか! 合っているか、どうかなんて、僕にはよく分からなかったけど、あの自信たっぷりな浅谷さんの表情は、多分、一字一句間違えず覚えていたからこそ出来るものだ! 浅谷さんは、やっぱりスゴイ! 重要だと言われていた箇所を時間が経過しても、ちゃんと暗唱出来てるのも驚きだけど、こんな緊急時でも、 怖気付かずにスラスラと言えるなんて!)
「その通りじゃ! 浅谷君、よく覚えておったな! いや~、そんな優秀な教え子が例え一人だけでもいるとは、感心感心! さて、皆のもの、よく見るのじゃ! 今こそ、その意味を解き明かさん!」
千加子と同様、水を得た魚のような状態となり、訓練生達の目からも、張り切っている様子が伺える芹田。
その時、先刻に比べ、スピードが遅く小柄に見える存在が数体、隊員達の視界を横切った。
(わっ、何だ? まただ! しかも、今度は三体もいた! 数は増えたけど、体は小さいし、スピードがさっきよりずっと遅いから、僕の目でも、しっかり捉えられていた……そのしっかりと見て取れた状態でも、隊員が、こんなジャンプスーツ程度を装着したような感じにも、何かメカ的な物に乗り込んだようにも見えていなかった。それは、まるで、あの生き物……)
「あっ、またです! これも、隊員なんですか?」
浅谷に良い所ばかり持って行かれた下川が、自分も怯んでいない事を誇示しながら芹田に尋ねた。
訓練生達にとって違和感なく感じられたのは、先刻の巨体やビーストと比べ、明らかに小柄なせいかも知れない。
「大事な事だからな、よく心に留めよ! 今、通り過ぎた三体は青じゃ! その前の巨体は緑だったのじゃ! さあ、これで分かったかな?」
芹田の言葉にキョトンとした一同だったが、即座に浅谷が理解した様子になり、周囲を一瞥して優越感を味わった。
「これが、いわゆる変身ですね!」
(へ、変身だって……?)
確かに、後々習う予定である訓練生の講義の一つに変身という項目が有り、ずっと疑問だったのを思い出した颯天。
「その通りじゃ!」
(緑が……あの巨体で、青がその後の小柄な三体! あれは、つまり隊員達が大型のメカか何かを操縦していたと思っていたのに……そうではなく、各々が変身していたのか!)
あたかも自身が変身したように得意気な芹田に、愕然となった颯天。
(こんな圧倒的に不利そうに思える状況で、隊員達は、 怯む事無く、敵を相手にしていたんだ! 芹田先生は、古典教師なのに、こんなに現場の事を知っている人だったとは! ここで、その巨体をどうやって倒すのか、芹田先生は全てお見通しなんだ!)
「ビーストの姿が、君らにとっては、この上も無く大きく感じられるだろう? だが、実際には、この程度のビーストなどは取るに足らない存在なのじゃ!」
笑い飛ばしそうな態度の芹田を見て、目と耳を疑った颯天。
(この巨体で取るに足らない? 僕ら人間の何十倍も有りそうな姿で、まともに戦っても、握り潰されそうな体格差が有るのに。芹田先生、久しぶりにビーストを見て、あまりの恐ろしさに、まさか、気が触れてしまったのでは……?)
芹田の言葉の真意が分からず、ここで、隊員達の力が及ばない様を見せつけられそうな気配に、どうしていいのか戸惑った颯天。
その時だった!
ビーストの巨体をも凌駕しそうな巨大な何かが、瞬くほどの速度で訓練生達の前を通り過ぎた。
(今のは、もしかして、もう一体のビースト? ビーストは一体だけではなく、二体もいたのか? しかも、さっきのより二回りくらい大きい! これはもう、隊員達には 為す術が無さそう!)
「芹田先生、今のもビーストですか?」
益田が目を見張りながら尋ねた。
「はっはっは、今のも、ビーストとはな! さては、君らの動体視力は、今、通り過ぎた姿をきちんと捉えられていなかったのかな?」
余裕を感じさせる態度で言い放った芹田。
(どういう事なんだろう? 僕は動体視力だけは、悪くないつもりだけど、今、通り過ぎたのは、ビーストではないとしても、少なくとも隊員の姿には全く見えなかった……)
「という事は……もしかして、隊員達なのですか?」
それまでは貝のように口を閉ざしていた浅谷が、妙に目を輝かせて尋ねた。
「諸君らは、わしの授業の時に、あれほどまでに重要だと教えていた龍体文字で書かれた古典の内容を覚えているかね?」
(浅谷さんの質問に対し、否定をする事無く、急に何を言い出すんだ、芹田先生は……? 龍体文字の古典とさっきの存在とは、どう関係が……?)
芹田が重要と何度も強調していた授業内容について、記憶を辿り、思い出そうとした颯天。
(確か、最初は色が出て来たんだ。黒とか青とか……)
色がオリンピックと似たように5色有った事くらいしか、漠然として思い出せずにいた颯天の横で、この時とばかりに、スラスラと暗唱する浅谷。
「遠き昔、黒が奮闘し、あまたの青補佐せり。
その間長く続けどその後、緑うちいで、黒の座を緑引き継ぐ事となりき。
それよりとばかりの間、緑の統率する世となりき。
やがて、赤のうちいづるがひまとなり、白や黒のうちいづる事となる。
白と黒は対に、その力は一足す一を遥かに凌駕す。
緑ばかりに統率せる世は終はり告げ、
圧倒的なる白と黒と、次に赤、かくて緑、青にうつろひ行く」
千加子は暗唱後、訓練生達の称賛の視線を一身に浴び、満足気な笑みを浮かべていた。
(えっ、全部暗唱出来ているのか! 合っているか、どうかなんて、僕にはよく分からなかったけど、あの自信たっぷりな浅谷さんの表情は、多分、一字一句間違えず覚えていたからこそ出来るものだ! 浅谷さんは、やっぱりスゴイ! 重要だと言われていた箇所を時間が経過しても、ちゃんと暗唱出来てるのも驚きだけど、こんな緊急時でも、 怖気付かずにスラスラと言えるなんて!)
「その通りじゃ! 浅谷君、よく覚えておったな! いや~、そんな優秀な教え子が例え一人だけでもいるとは、感心感心! さて、皆のもの、よく見るのじゃ! 今こそ、その意味を解き明かさん!」
千加子と同様、水を得た魚のような状態となり、訓練生達の目からも、張り切っている様子が伺える芹田。
その時、先刻に比べ、スピードが遅く小柄に見える存在が数体、隊員達の視界を横切った。
(わっ、何だ? まただ! しかも、今度は三体もいた! 数は増えたけど、体は小さいし、スピードがさっきよりずっと遅いから、僕の目でも、しっかり捉えられていた……そのしっかりと見て取れた状態でも、隊員が、こんなジャンプスーツ程度を装着したような感じにも、何かメカ的な物に乗り込んだようにも見えていなかった。それは、まるで、あの生き物……)
「あっ、またです! これも、隊員なんですか?」
浅谷に良い所ばかり持って行かれた下川が、自分も怯んでいない事を誇示しながら芹田に尋ねた。
訓練生達にとって違和感なく感じられたのは、先刻の巨体やビーストと比べ、明らかに小柄なせいかも知れない。
「大事な事だからな、よく心に留めよ! 今、通り過ぎた三体は青じゃ! その前の巨体は緑だったのじゃ! さあ、これで分かったかな?」
芹田の言葉にキョトンとした一同だったが、即座に浅谷が理解した様子になり、周囲を一瞥して優越感を味わった。
「これが、いわゆる変身ですね!」
(へ、変身だって……?)
確かに、後々習う予定である訓練生の講義の一つに変身という項目が有り、ずっと疑問だったのを思い出した颯天。
「その通りじゃ!」
(緑が……あの巨体で、青がその後の小柄な三体! あれは、つまり隊員達が大型のメカか何かを操縦していたと思っていたのに……そうではなく、各々が変身していたのか!)
あたかも自身が変身したように得意気な芹田に、愕然となった颯天。
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