燃えよ、想いを乗せ

ゆりえる

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説得

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「諦めなければ、きっと報われるから、わしの言う事を信じなされ! さて……と、新見君と宇佐田君は、このシェルターでしばらく待機しているが良い。わしは、ちょいとばかり厄介な事になっているようだから、特殊フィールドに戻るとしようか!」

 敵が増えているのを気に病みながら、芹田は特殊フィールド内へと戻ろうとした。

(芹田先生が戻ったところで、どうにかなるってわけでも無さそうなのに……もしかして、芹田先生も以前は龍体に変身出来て、かなり活躍していた時代も有ったって事なのかな? その名残りで、窮地に陥ると、つい構えて主導権を握るような行動に出てしまいがちなのかも知れないな、芹田先生って)

 その後ろ姿を見ていた颯天はやての目には、一瞬、芹田が龍体化しているようなビジョンが見えた気がした。
 見間違いかと思い、手の甲で目を擦った。

(あれっ、今のは、一体何だったのだろう……? 気のせい……? あの芹田先生が龍体に見えるなんて、僕の目は、どこかおかしくなってしまったのだろうか?)

「芹田先生、行ってしまいました……」

 もしかすると、透子も、芹田が龍体のようになっていた姿を目撃していたのかも知れないと思い、その事について、透子が話し出すのを待ってみた颯天。
 少しの間、期待して待っていたが、透子の口から出た言葉は、予想と違っていた。

「芹田先生は、優しくて暖かい……」

 独り言のように、透子が言った。

----------------

 このエイリアン達の襲撃が発生する少し前に、芹田と遭遇した時の事を胸の中で何度も反芻はんすうしていた透子。

『深刻そうな面持ちをしておるな、新見君?』

 芹田は、透子の顔を覗き込むなり、心配そうに尋ねて来た。
 訓練生時代から、何度となく芹田を頼り、アドバイスを受けていた透子。

『芹田先生、実は……私、大和撫子でいる事が出来なくなりました。間もなく地球防衛隊本部に転属される事に決まったのです』

『なんと! 君のような、誰よりも努力し続けた貴重な人材を大和撫子隊から排除するとは! 一体、何たる事態だ!』

 訓練生時代から透子を誰よりも目にかけて来た芹田は、その報告に憤った。

『でも、これは……私が、いつまで経っても超sup遺伝子を覚醒させる事無く、隊員達の足を引っ張ってばかりなので、もう仕方ないんです』

『タイムリミットまで、まだ時間が残されているじゃろう! 何ゆえ、そのような早急な判断が下されたのじゃ?』

『荒田隊長の決定なので、逆らえません!』

 透子と荒田が破局した事は、芹田も噂で耳にしていた。

『荒田君が、そのような私情を仕事に持ち出すような低俗な器だったとは! 彼ほどの有能な実力者が、優先順位を見誤るとは、大変遺憾なる事だ!』

『私もですが、荒田隊長の同じ部署に居辛い気持ちは分かるので……これも、自分の蒔いた種ですし、実力も伴わない状態で彼に逆らったのですから、自業自得なんです……』

『そんな事など決してないぞ! 新見君は、自分をそんなに卑下する必要などない! 君はまだ目覚めていないだけなのじゃよ! 君は、決して、荒田君と比べても劣るような人材ではない!』

 芹田の激励の言葉は、透子の心に響いたが、それを鵜吞みに出来るほど、その時の透子は楽観的では無かった。

『芹田先生にそう言って頂けただけで、今まで努力して来た分は、十分報われたような気持ちでいます。ありがとうございます』

『いやいや、それだけで終わらせようとするでない! 君には、まだ大事な使命が残っているのじゃから!』

『ですが、自分には、これが精一杯なんです! 今まで頑張って来て、それでも覚醒しなかったのですから。もう引く以外の選択肢は無いんです……いつまでも有りもしない望みにしがみついている私って、何だか無様ぶざまですよね。引き際というのも、大切というじゃないですか?』

 志半ばで退くのは、不本意だったが、それでも状況を呑む以外無いと実感している透子は苦笑いした。

『まて、わしの話をしっかり聴くのじゃ! 教え子達には言ってなかったが、わしもかつては、今の新見君と同じじゃったんだ!』

『同じ……って? どういう事ですか?』

 意外な発言に、思わず透子は顔を上げ、芹田の瞳を見つめて尋ねた。

『その言葉の通りじゃよ。つまり、わしも、遅咲きだったんだ、同期の誰よりも。いや、同期どころか、後輩にもどんどん抜かれて行ったよ』

『芹田先生が……? そんな事は、信じられません! 私が耳にしていたのは……こんな事を言っていいのか、分からないですが……伝説の偉大な黒龍が、芹田先生だったかも知れないという事だけです……』

 本人を前に、その噂話を躊躇ためらいながら伝えた透子。

『そうか……君らにも、そんな噂が飛び交っていたのじゃな。もう随分と昔に現役を引退して、わしの事を知る者は、この施設内に数えるほどしかいないから、知られてないと思っていたのじゃが……』

『真実だったのですか? 本当に、芹田先生が……黒龍だったのですか?』

 実際に本人からその話を聴いても、まだ疑わずにいられないまま、畏敬の念を示した透子。

『そんな事は、かつての栄光じゃ! これから迎えるのは、君らの時代だからな!』

『いくら類稀たぐいまれなる実力を持っていたという黒龍だった芹田先生の言葉でも、これからの時代の一員に、私が入っているとは思えないです……』

『そんな弱気な事を言うでない! 言ったじゃろう? わしもまた、誰よりも遅咲きだったと! 他よりも強い力を宿す者こそが、覚醒するまでに誰よりもより大きな試練を課せられるのじゃ! 新見君は、まさに今その試練の渦中なのじゃよ!』

 透子の両肩に両手をあて、力強く言った芹田。

『私が……他よりも、強い力を宿す者……?』

 にわかには信じられない思いで、見開かれた瞳を芹田に向けた透子。
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