38 / 44
38.
説得
しおりを挟む
「諦めなければ、きっと報われるから、わしの言う事を信じなされ! さて……と、新見君と宇佐田君は、このシェルターでしばらく待機しているが良い。わしは、ちょいとばかり厄介な事になっているようだから、特殊フィールドに戻るとしようか!」
敵が増えているのを気に病みながら、芹田は特殊フィールド内へと戻ろうとした。
(芹田先生が戻ったところで、どうにかなるってわけでも無さそうなのに……もしかして、芹田先生も以前は龍体に変身出来て、かなり活躍していた時代も有ったって事なのかな? その名残りで、窮地に陥ると、つい構えて主導権を握るような行動に出てしまいがちなのかも知れないな、芹田先生って)
その後ろ姿を見ていた颯天の目には、一瞬、芹田が龍体化しているようなビジョンが見えた気がした。
見間違いかと思い、手の甲で目を擦った。
(あれっ、今のは、一体何だったのだろう……? 気のせい……? あの芹田先生が龍体に見えるなんて、僕の目は、どこかおかしくなってしまったのだろうか?)
「芹田先生、行ってしまいました……」
もしかすると、透子も、芹田が龍体のようになっていた姿を目撃していたのかも知れないと思い、その事について、透子が話し出すのを待ってみた颯天。
少しの間、期待して待っていたが、透子の口から出た言葉は、予想と違っていた。
「芹田先生は、優しくて暖かい……」
独り言のように、透子が言った。
----------------
このエイリアン達の襲撃が発生する少し前に、芹田と遭遇した時の事を胸の中で何度も反芻していた透子。
『深刻そうな面持ちをしておるな、新見君?』
芹田は、透子の顔を覗き込むなり、心配そうに尋ねて来た。
訓練生時代から、何度となく芹田を頼り、アドバイスを受けていた透子。
『芹田先生、実は……私、大和撫子でいる事が出来なくなりました。間もなく地球防衛隊本部に転属される事に決まったのです』
『なんと! 君のような、誰よりも努力し続けた貴重な人材を大和撫子隊から排除するとは! 一体、何たる事態だ!』
訓練生時代から透子を誰よりも目にかけて来た芹田は、その報告に憤った。
『でも、これは……私が、いつまで経っても超sup遺伝子を覚醒させる事無く、隊員達の足を引っ張ってばかりなので、もう仕方ないんです』
『タイムリミットまで、まだ時間が残されているじゃろう! 何ゆえ、そのような早急な判断が下されたのじゃ?』
『荒田隊長の決定なので、逆らえません!』
透子と荒田が破局した事は、芹田も噂で耳にしていた。
『荒田君が、そのような私情を仕事に持ち出すような低俗な器だったとは! 彼ほどの有能な実力者が、優先順位を見誤るとは、大変遺憾なる事だ!』
『私もですが、荒田隊長の同じ部署に居辛い気持ちは分かるので……これも、自分の蒔いた種ですし、実力も伴わない状態で彼に逆らったのですから、自業自得なんです……』
『そんな事など決してないぞ! 新見君は、自分をそんなに卑下する必要などない! 君はまだ目覚めていないだけなのじゃよ! 君は、決して、荒田君と比べても劣るような人材ではない!』
芹田の激励の言葉は、透子の心に響いたが、それを鵜吞みに出来るほど、その時の透子は楽観的では無かった。
『芹田先生にそう言って頂けただけで、今まで努力して来た分は、十分報われたような気持ちでいます。ありがとうございます』
『いやいや、それだけで終わらせようとするでない! 君には、まだ大事な使命が残っているのじゃから!』
『ですが、自分には、これが精一杯なんです! 今まで頑張って来て、それでも覚醒しなかったのですから。もう引く以外の選択肢は無いんです……いつまでも有りもしない望みにしがみついている私って、何だか無様ですよね。引き際というのも、大切というじゃないですか?』
志半ばで退くのは、不本意だったが、それでも状況を呑む以外無いと実感している透子は苦笑いした。
『まて、わしの話をしっかり聴くのじゃ! 教え子達には言ってなかったが、わしもかつては、今の新見君と同じじゃったんだ!』
『同じ……って? どういう事ですか?』
意外な発言に、思わず透子は顔を上げ、芹田の瞳を見つめて尋ねた。
『その言葉の通りじゃよ。つまり、わしも、遅咲きだったんだ、同期の誰よりも。いや、同期どころか、後輩にもどんどん抜かれて行ったよ』
『芹田先生が……? そんな事は、信じられません! 私が耳にしていたのは……こんな事を言っていいのか、分からないですが……伝説の偉大な黒龍が、芹田先生だったかも知れないという事だけです……』
本人を前に、その噂話を躊躇いながら伝えた透子。
『そうか……君らにも、そんな噂が飛び交っていたのじゃな。もう随分と昔に現役を引退して、わしの事を知る者は、この施設内に数えるほどしかいないから、知られてないと思っていたのじゃが……』
『真実だったのですか? 本当に、芹田先生が……黒龍だったのですか?』
実際に本人からその話を聴いても、まだ疑わずにいられないまま、畏敬の念を示した透子。
『そんな事は、かつての栄光じゃ! これから迎えるのは、君らの時代だからな!』
『いくら類稀なる実力を持っていたという黒龍だった芹田先生の言葉でも、これからの時代の一員に、私が入っているとは思えないです……』
『そんな弱気な事を言うでない! 言ったじゃろう? わしもまた、誰よりも遅咲きだったと! 他よりも強い力を宿す者こそが、覚醒するまでに誰よりもより大きな試練を課せられるのじゃ! 新見君は、まさに今その試練の渦中なのじゃよ!』
透子の両肩に両手をあて、力強く言った芹田。
『私が……他よりも、強い力を宿す者……?』
俄かには信じられない思いで、見開かれた瞳を芹田に向けた透子。
敵が増えているのを気に病みながら、芹田は特殊フィールド内へと戻ろうとした。
(芹田先生が戻ったところで、どうにかなるってわけでも無さそうなのに……もしかして、芹田先生も以前は龍体に変身出来て、かなり活躍していた時代も有ったって事なのかな? その名残りで、窮地に陥ると、つい構えて主導権を握るような行動に出てしまいがちなのかも知れないな、芹田先生って)
その後ろ姿を見ていた颯天の目には、一瞬、芹田が龍体化しているようなビジョンが見えた気がした。
見間違いかと思い、手の甲で目を擦った。
(あれっ、今のは、一体何だったのだろう……? 気のせい……? あの芹田先生が龍体に見えるなんて、僕の目は、どこかおかしくなってしまったのだろうか?)
「芹田先生、行ってしまいました……」
もしかすると、透子も、芹田が龍体のようになっていた姿を目撃していたのかも知れないと思い、その事について、透子が話し出すのを待ってみた颯天。
少しの間、期待して待っていたが、透子の口から出た言葉は、予想と違っていた。
「芹田先生は、優しくて暖かい……」
独り言のように、透子が言った。
----------------
このエイリアン達の襲撃が発生する少し前に、芹田と遭遇した時の事を胸の中で何度も反芻していた透子。
『深刻そうな面持ちをしておるな、新見君?』
芹田は、透子の顔を覗き込むなり、心配そうに尋ねて来た。
訓練生時代から、何度となく芹田を頼り、アドバイスを受けていた透子。
『芹田先生、実は……私、大和撫子でいる事が出来なくなりました。間もなく地球防衛隊本部に転属される事に決まったのです』
『なんと! 君のような、誰よりも努力し続けた貴重な人材を大和撫子隊から排除するとは! 一体、何たる事態だ!』
訓練生時代から透子を誰よりも目にかけて来た芹田は、その報告に憤った。
『でも、これは……私が、いつまで経っても超sup遺伝子を覚醒させる事無く、隊員達の足を引っ張ってばかりなので、もう仕方ないんです』
『タイムリミットまで、まだ時間が残されているじゃろう! 何ゆえ、そのような早急な判断が下されたのじゃ?』
『荒田隊長の決定なので、逆らえません!』
透子と荒田が破局した事は、芹田も噂で耳にしていた。
『荒田君が、そのような私情を仕事に持ち出すような低俗な器だったとは! 彼ほどの有能な実力者が、優先順位を見誤るとは、大変遺憾なる事だ!』
『私もですが、荒田隊長の同じ部署に居辛い気持ちは分かるので……これも、自分の蒔いた種ですし、実力も伴わない状態で彼に逆らったのですから、自業自得なんです……』
『そんな事など決してないぞ! 新見君は、自分をそんなに卑下する必要などない! 君はまだ目覚めていないだけなのじゃよ! 君は、決して、荒田君と比べても劣るような人材ではない!』
芹田の激励の言葉は、透子の心に響いたが、それを鵜吞みに出来るほど、その時の透子は楽観的では無かった。
『芹田先生にそう言って頂けただけで、今まで努力して来た分は、十分報われたような気持ちでいます。ありがとうございます』
『いやいや、それだけで終わらせようとするでない! 君には、まだ大事な使命が残っているのじゃから!』
『ですが、自分には、これが精一杯なんです! 今まで頑張って来て、それでも覚醒しなかったのですから。もう引く以外の選択肢は無いんです……いつまでも有りもしない望みにしがみついている私って、何だか無様ですよね。引き際というのも、大切というじゃないですか?』
志半ばで退くのは、不本意だったが、それでも状況を呑む以外無いと実感している透子は苦笑いした。
『まて、わしの話をしっかり聴くのじゃ! 教え子達には言ってなかったが、わしもかつては、今の新見君と同じじゃったんだ!』
『同じ……って? どういう事ですか?』
意外な発言に、思わず透子は顔を上げ、芹田の瞳を見つめて尋ねた。
『その言葉の通りじゃよ。つまり、わしも、遅咲きだったんだ、同期の誰よりも。いや、同期どころか、後輩にもどんどん抜かれて行ったよ』
『芹田先生が……? そんな事は、信じられません! 私が耳にしていたのは……こんな事を言っていいのか、分からないですが……伝説の偉大な黒龍が、芹田先生だったかも知れないという事だけです……』
本人を前に、その噂話を躊躇いながら伝えた透子。
『そうか……君らにも、そんな噂が飛び交っていたのじゃな。もう随分と昔に現役を引退して、わしの事を知る者は、この施設内に数えるほどしかいないから、知られてないと思っていたのじゃが……』
『真実だったのですか? 本当に、芹田先生が……黒龍だったのですか?』
実際に本人からその話を聴いても、まだ疑わずにいられないまま、畏敬の念を示した透子。
『そんな事は、かつての栄光じゃ! これから迎えるのは、君らの時代だからな!』
『いくら類稀なる実力を持っていたという黒龍だった芹田先生の言葉でも、これからの時代の一員に、私が入っているとは思えないです……』
『そんな弱気な事を言うでない! 言ったじゃろう? わしもまた、誰よりも遅咲きだったと! 他よりも強い力を宿す者こそが、覚醒するまでに誰よりもより大きな試練を課せられるのじゃ! 新見君は、まさに今その試練の渦中なのじゃよ!』
透子の両肩に両手をあて、力強く言った芹田。
『私が……他よりも、強い力を宿す者……?』
俄かには信じられない思いで、見開かれた瞳を芹田に向けた透子。
0
あなたにおすすめの小説
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない
七星点灯
青春
雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。
彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。
しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。
彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる