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1.進化に取り残された劣等感
思いがけず、生き延びて
しおりを挟む道行く人々を見ると、皆、体形を生かした着こなしが、なんて上手なんだろうと羨ましく思えてくる。
洋服屋で試着した時には、マネキンが着ている美しい姿と、試着室で鏡に映った同じ衣服の自分とのギャップがあまりに大き過ぎて、サイズ的にはピッタリだとしても、買うのを躊躇ってしまう。
一昔前なら、私のように顔が大きくて胴長短足体形でも、それほどまでに見劣りしなかったかも知れないけど、今の人達は、欧米人に近付きつつある長い手足で、7-8頭身の小顔が多い。
そんな人達を引き立てる為に存在しているようにさえ思わされてしまう、こんな自分がイヤだ!
イヤなのは、人から見えている、分かりやすい外観だけじゃない。
大きな顔も、短い手足はもちろんの事、他にも、多分、私、 富原早苗は「進化」という言葉から取り残されている、かなり少数派なのだと思う。
ダーウィン結節......
私の耳には、猿にはほぼ有り、人間には4人に1人が留めているという、進化しきれてないあの名残の部分が存在している。
さわると、他の耳の部分に比べ、その部分だけが妙にコリコリして違和感が有る。
私の頸椎......
頚椎は、普通は7本と言われる。
重い荷物などでかなり負荷がかかって、首が痛くて全く動かなくなった時に、整形外科へ行きレントゲンを撮ると、なんと頚椎が1本多かった!
ごく稀に存在していて、そういう人は極端に弱い首らしい。
外科医から、そういう人達用の首の強化のエクササイズを伝授してもらった。
特に付かれた時に、わざわざエクササイズをするのは面倒だったが、これを欠かすと、再びあの痛さと不便さを体験すると思うと怖くて、毎晩実践し続けている。
この1本分余分なせいで、私の首は長く見え「首長族」とか「ろくろ首」というあだ名が付いていた。
遠目から見ても、他の人と間違えられそうになる事などまず無いに等しい大きな顔と長い首のせいで、私は、5頭身くらいにしか見えてないだろう。
そして嗅覚......
約2割というアスパラガスや大根などの食後の尿の臭いをかぎ分ける事が出来る能力。
役に立つどころか、臭いに敏感過ぎて人工香料の臭いなどが鼻について頭痛によく悩まされる。
煙草の臭いも、すごく離れた位置からも感知出来て、息を止めて歩く距離が他の人より長くなっている。
こんな敏感といえば聞こえが良いが、進化に置いてきぼりにされた私の身体。
今時、不利にはなっても、有利になるなど有り得無そうな旧人類のような特徴を維持している身体の私は、不格好な事を際立たせてくれるような現代に、なぜ、こうして存在しているのだろう?
神様が、配置させる時代を間違えてしまったのだろうか?
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