思いがけず、生き延びて

ゆりえる

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まだ気付かない人達に⑸

思いがけず、生き延びて

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「.....早苗が、わざわざくだらないトンデモ話する為に、何年も連絡してなかった私に、電話くれるわけないよね。だけど、6時間......?6時間って、何よ、それ?ふざけないでよ!」

「理佳、忙しいと思うけど、テレビつけて見て」

 私のいる場所のテレビ局は、どこも、縦か横帯で、残り時間がカウントダウンされている。
 理佳の住んでいる場所のテレビ局もきっと、そうしているだろう。

「今、うちの悪ガキどもがテレビ独占しているんだけど......」

 そういいながらも、理佳は、テレビの画面を見てくれたのだろう。
 急に声の調子が変わった。

「えっ、5時間57分って、何よ、このカウントダウン!」

「本当に、それが正確かどうかは分からない、多分、多少誤差は有ると思う」

「ウソでしょう......こんなのって......」

 悲観的な声になる理佳。

「私は、直接、異星人からのメッセージ聴いたんだけど、その私ですら、まだ信じられないけど、でも、冗談とかで、そんなメッセージを送って来たようには感じられなかった」

「どうして、聴いたって、何?異星人って何なの?そんな事、どうやったら信じられる?」

 動揺が収まらない様子の理佳。
 電話の向こうの理佳の様子を想像し、知らなかった彼女に知らせて本当に良かったのか、疑問に感じられて来た。

「私にもよく分からないけど、私のお母さんにも、こんなに距離が離れていたのに、異星人からのメッセージが聴こえていたらしいの。聴こえる人と聴こえない人の差は何なのか分からないけど、ツイッターのフォロワーさんにも、聴こえた人がいるようで、その人にも拡散お願いしているの」

「それが、本当なのだとしたら、私は、残された時間、何をしたらいいと思う?」

「理佳、こんな話なのに、信じてくれてありがとう。私は、理佳と立場違うから、理佳の場合、何を優先するのか分からないけど、理佳の大切な人と連絡して欲しい。両親や兄弟とか、あと離れて働いているご主人にも、子供達の声とか聴かせてあげて欲しい」

「あっ、うん、そうだよね。こんなパニクってる場合じゃないよね。分かった、まず実家に電話してから、旦那に連絡してみる。ありがとう、早苗。おかげで、最期を迎える覚悟が前もって出来た。早苗も、残された時間、大切にして!」

 声に少し落ち着きを取り戻した理佳。
 良かった。

「こんな大騒ぎして、結局何も起こりませんでした。なんて事も有るかも知れないけど、そんなだったら、今度里帰りした時、久しぶりにゆっくり会って話そうね!」

「そうだね!お互い、変わっているかな?分からないくらいになってはいないつもりだけど」

 こんな話をして電話を終わらせたけど、結局、その約束は果たせずに終わってしまった。
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