オカマに生まれて良かったなぁ

尼利糖社

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そして

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そして日曜日、ヤクルトスワローズ対広島カープの試合はデイゲーム日和とも言うべきか天気がよく夏本番と言った所。

待ち合わせの11時に正面7入口で待っている真澄も日焼け止めを塗ってきたが、心配になるほどの日射しと暑さで帽子の下はもう汗だくだった。

そんな中大きなクーラーボックスを抱えたのぶ子と、真っ赤な地にウーパールーパー柄のTシャツを着てこれまた大きなバッグを抱えた義美が次々と来た。

それぞれ持ち物や服装など言いたいことはあったが暑さで少し疲れていた真澄は挨拶だけしていろいろと気にしないことにした。

更に少し後に日傘にサングラスで小綺麗にしたきららが到着しメンバーが揃った。

「皆ごきげんよー。」
「こんにちはー、もう暑すぎます。早く行きましょ。」
「ママー、特等席ってどこなんです?」
「一塁側よ。さっ行きましょ、義美相変わらずひっどいセンスね。」
「そう?カープ戦だから赤にしたんだけど、やっぱ広島生まれ広島育ちの血が騒ぐのよ。」

少し異彩を放った四人組は一塁側に向かって外周を歩いて行った。

少し歩いてきららが立ち止り荷物を漁っている所は、ゲートがなく警備員の立っていて【関係者のみ出入り!】と張り紙がある扉の前だった。


「ママ?何か忘れ物?」 
「違うわよ、あったあった。はいこれお願い。」


鞄からネームホルダーを人数分出して警備員に見せると警備員は「どうぞ。」と言ってその扉を開いた。


「え?ここって関係者しか入れないんでしょ?ママどういうこと?」
「いろんな人脈あるって言ったでしょ?はい、これあんた達も首から下げといて。」

渡されたのは【1DAYPASS】と書かれたネームホルダーで下に赤字で特別関係者と書かれていた。

それだけでもすごいと思っていたのだが、関係者通路を抜けた時に改めてきららが凄いと他のメンバーは思った。


「ママ特等席って、」
「こっちよ、早く来なさい。」


辿り着いたところはカメラマン席で、左端がパネルで少し区切られていて椅子が四つ用意されていた。

「うっそーん!ママ凄すぎ!」
「これってほんとにいいんです?!」
「ベンチ真横とか最高、ちょっと新井さんいるじゃない?!何今日解説?やー格好いいー!」
「騒ぐ前に早く食料調達してきて頂戴。その為にクーラーボックス持ってきたんだから、急がないと選手入ってくるわよ。」

驚くメンバーを軽くあしらい日焼け止めを塗っているきらら、真澄はすごいと感心すると同時に謎が深まっていった。

のぶ子の持ってきたクーラーボックスにも大量の缶ビールが用意されていて、普通持ち込みが出来ない物まで持ちこめるなんてどんな権力なんだろうと疑問が増えていくだけだった。

食料調達も終わり皆で乾杯をしカメラマン席で宴と言うとんでもない状態もあって、皆のテンションは高かった。

いよいよヤクルトの選手たちがグラウンドに入ってきた。

義美はいつの間にか準備してあった隣のカメラマン達に負けないほどのカメラを構えていて、のぶ子はビール片手に選手名鑑を出して選手のチェックを始めてそれはきららも同じだった。

真澄はと言うと、きららから渡されたコンパクトデジカメを構えて選手のお尻を狙っていた。

「なんで私が選手のお尻撮らなきゃいけないんですか?ママ撮ればいいじゃないですかー。」
「誰のお陰でこんないい席で見れると思ってるのよ、黙って撮っておきなさい。」
「だとしてもなんでお尻?」
「お向かいのサプライズのママが野球選手のお尻フェチなのよ、今年から自治会長さんだからゴマすっておかないと。ほら塩見と西浦来たわよ、しっかり撮りなさい。」

変な仕事を頼まれつつもきららの言う通り本当に目の前を行く選手達に真澄もテンションは上がってい
る。

一方そんな異例のカメラマン席を見た選手達は「え?」と驚く表情の人も居たが、大半は気にせず他の観客席と変わらぬ対応だ。


選手達に混じってコーチ達も入って来る中で、一人だけ目ざとくきらら気付いて手をあげて挨拶する人がいた。

のぶ子と義美は選手に釘付けで気付いておらず真澄だけがその人物になんとなく気付いていた。

その後もベンチ前でのアップを大迫力で楽しんで皆試合前からハイテンションだった。


その雰囲気をじっと見ていたのがヤクルトのマスコットキャラクターのつば九郎。スケッチブックを取り出しおもむろに何か書くとこちらに見せて来た。

「ばけものがいる」

と書かれて見せられた4人のうち真澄は苦笑いをして他の3人は涼やかな笑顔でいた。
すると続けざまに、

「きょうはかそうぱーてぃーのよていはありません」

といつも通りの鬼畜な発言が向けられた。

すると化け物呼ばわりされた3人は涼やかな笑顔のまま手招きしてつば九郎を呼ぶと・・・。


「何言ってんだペンギン。」
「焼き鳥にして食ってやろうか。」
「そのビール腹直さんかい。」

と笑顔ではあるが立ちあがってどすの利いた野太い声で威圧していた、特にきららはガタイがいいのでかなり威圧感がある。

すると慌てた感じでおどけた様に身振り手振りしてつば九郎は足早に離れて行った。おそらく身の危険を感じて慌てて逃げたのだろう。

それから少しするとパトリック・ユウの声が球場に響き試合の開始が近づいてきた、スターティングメンバーが発表され場内が湧く中始球式の人がコールされる。

「始球式誰かしら?こないだは氷川きよし投げたわよね?」
「氷川きよしのあの美脚凄かったわよね。」
「ホント!スキンケアなに使ってるのかしらね。」


同性として美の討論をしてる3人に呆れと感心が混ざっていた真澄。

そんな中「本日の始球式は東京ヤクルトスワローズ名誉会員の出川哲郎さんに投げてもらいまーす!」と声高らかに言われた。

それでも討論を辞めずに話し続ける3人に思わず真澄は話しを遮った。明らかに興味がないのが丸わかりで真澄はツッコマずにはいられなかった。

「皆さん始球式ですよ?見ないんですか?」
「なんで出川の始球式わざわざ見るのよ、柳沢慎吾なら喜んで見たわよ。」
「出川の始球式より子供の始球式の方が心温まるでしょ?」
「わっかるわー、市長が投げるのと変わんないもんねー。」

正直な意見に「えー。」と思いつつも始球式が終われば「さぁ、ライアン頑張って応援しなきゃ。」と前のめりになって見ていたのでいいかと流した。

試合が始まり最初は投手戦で0が続いていたが四回に打者一巡の一挙七得点を取ったかと思えば広島も野間・鈴木・松山の三者連続ホームランなど巻き返しがあり白熱した試合が続いていた。

「あー、晃大朗惜しいなー。」
「ママあの二番目のトランペット?」
「そうそう、桐谷健太似のイケメンって聞いたわ。」
「あー。確かにあれはいい男だわ。笑顔も素敵ねー。」
「皆さんどこ見てるんですか?」
「あんたの男、かっこいいじゃない。」

打席に集中していた真澄はその言葉で三人の方を見るとカメラや双眼鏡で外野方面を見ていて何してるんだと慌てた。

「いや!川田さんの顔とか知らないですよね?試合見てくださいよ。」
「あら川田さんって言うのねー、下の名前は?」
「それはいいですから、ほら!てっとフォアボールで出ましたよ!」
「川田さんってこの人じゃないの?」

義美の撮った写真を見ると確かに真澄の気になっている川田優介でトランペットを吹いて応援しているところだ。

「な、なんで川田さんのこと知ってるんです?」
「健夫が店の子から桐谷健太似のイケメンだったって聞いたって言うから探したらすんなり。あんたもいい男見つけたわね。」

真澄に話しをしつつも3人は外野から目を話す事はなくしばらく川田の観察の時間になり、真澄も止めようとしたが元は男の力に到底敵わずに諦めて試合に気を戻すことにした。



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