星の記憶

第３証【イブの断片】

【イブの断片編】ep.6『覚悟』

その幼子の誕生を見守るかのように、空には、月の側で 一際輝きを増す星があった 

ドックン！…ドックン！… 
その幼子の鼓動に呼応するかのように
激しい瞬きを2、3回繰り返し、その輝きを落ち着かせる

わずかではあるが、月の輝きが増したのか 月は赤みを増していた 


ところ変わり   ジャンヌ達は
城内天文宮にて
    
ウィザード1『…つ、…月の側に新たなる球体を確認…』 
『わずかではありますが、月は輝きを増し、一回り膨張したように見受けられます…』
ジャンヌ『…過去の観測で、その星の確認は？…』
ウィザード1『…いえ、この星が月に接近していたという軌道観測は、これまでの観測上、見受けられませんでした…』
ウィザード2『…いましがた、そこに現れた…と、説明する以外…言葉が見つかりません！…』
ジャンヌ『…サイラム様！…我々の頭上で、一体何が起こっているのですか？！』
サイラム『……』
ジャンヌの問いかけにサイラムも難しい顔立ちで深く何かを考え込む

その様子を静かに見守るジャンヌ、ファング、ウィザード衆 
その場は一時、沈黙に包まれる

しばらくの沈黙を破りサイラムが口を開く
サイラム『…ファング！』
ファング『…は、はい』
サイラム『御主、今のビスマルクに逢う覚悟はあるかの？…』
ファング『…』
サイラム『…そうか…難しいのぉ…』
ジャンヌ『…父さん！…』
サイラム『ジャンヌ！…感じるかの？』
ジャンヌ『はい！…私はそこに行かねばならない…何か強い意志が私を力強く引っ張っている！…だから、私はそこに行かねば！』
サイラム『…やはり、感の鋭い子じゃの…』
ファング『…ラ、サラなのか？…』
ジャンヌ『…父さん？…』
サイラム『やはり…御主も感じてはおるのぉ…』
ファング『…行きます！…行かせてください！…私は、私だけは！…逃げてはいけない、逃げれない！』
サイラム『ならば、罪の重荷を置いて行け！…御主の荷物は、現実を受け止める器と覚悟だけじゃ！』