星の記憶

第３証【イブの断片】

【イブの断片編】ep.23『森林の少女』(前)

  お互いの衣服を互いに交換した、ビスマルクとジャンヌはゲイボルグの待つアカデミーに向け
再び歩きはじめる

しばらく歩くと、辺りに生えている草木は、しだいに茂みを増して行き
今までの林を森と呼ぶに等しい程
深い森の奥へと歩を進めていた

辺りは鳥の囀りと、小動物のなき声
小川の流れる音
それのみで、静まりかえっていた

そんな時…

『ねぇ…お姉ちゃん達？ 外国の人？』

ビスマルク『！だ、誰？』
声の主『違う、違う、上だよ！上！』
ビスマルクとジャンヌが、言われた通り声のする木の上に目を運ぶ
声の主『あっ！…ごめんね…今、降りるよ！』
その小柄な少女が、木から飛び降りる
ビスマルク『！危ない！！』
少女『大丈夫だよぉ！…』
シュ！…ピタッ！
『…よっと！』
ジャンヌ『はぁ…良かった…』

ジャンヌ『で？…貴女は？…何処から来たの？』
少女『ん？…私はメア この森に住んでいるんだ』
ビスマルク『そうなんだ…あっ、ごめんね…私はジャンヌ、そしてこっちが 私のお姉さん』
ジャンヌ『はじめまして…ビ、ビスマルクよ…』
ビスマルクが口に手を当て笑い 
軽く親指を立ててビスマルクに扮したジャンヌにそれを見せる 
『いい感じよ…ジャンヌ、その調子』
メア『お姉ちゃん達、何処かの国の御姫様？…アカデミーに行くの？』
ジャンヌ『ん？…何で？…』
メア『ん？だってお姉ちゃん達、凄く綺麗だし、アカデミーの人ではないでしょ？…』
メアは、森の木々の間から見えるアカデミー大聖堂を指さし
『木の上で、あちらの様子を見ていたんだけど、何だか今日はいつもと様子が違うかな？って…』
『あっ！…お姉ちゃん達が、来る 少し前に、別のお姉ちゃん達３人組が、あそこに入って行くのを見たよ』
ビスマルク『！…人足遅かったか！…』
ジャンヌ『…ねぇ…メアの事 もう少し教えて貰ってもいい？』
メア『うん、勿論！…私、お姉ちゃん達と居ると 何だか落ち着く』
『…う～ん、でも、誰かに似てるんだよなぁ？お姉ちゃん達…』
ジャンヌ『ところで、メアは、この森に誰と住んでいるの？…あなた以外に森の人は？』
メア『…』
ビスマルク『いつから、この森に？…』
メア『覚えてない…』
ジャンヌ『え？…ご両親は？…』
メア『ご両親って…親の事？…』
『物心ついた時から、私の親…』
ガサ…ガサ… 
『メア！森の者以外に森の事を語ってはならん！』
茂みから、一匹の虎が出てきてメアに近づく
メア『…お、お父さん！…ごめんなさい…』
ビスマルク『ん？…』
ジャンヌ『お父さん？…』

メア『う、うん…だから、私…』
虎1『メア！もうよい！…黙って居なさい！』
ビスマルク『しゃ！しゃべった！…？』
ジャンヌ『え？…あなたがメアのお父さん？！どういう事？…』
奥からもう一匹の虎がこちらに話かける
虎2『あなた！…この方達は、大丈夫です』

虎1『それはわかっている！…がしかし！森の謎を他の者に知られては…』


虎2『驚かせてしまって申し訳ありません、私は、その子、メアの母です』
『森の奥なら、私達は人間の姿を保てるのですが…森から離れれば離れる程、獣化し、理性を失い行動が制限されてしまうのです』
虎1『喋り過ぎだ！…人間等、私は信じない！…』
ビスマルク『…何がおありか、今の話では、すべての把握は出来ないが、…これだけは言える！…あなたは人間です！』
虎1『…』
ジャンヌ『…でも、メアは？獣化している形跡はなかったけど…』
虎2『えぇ、メアも当然、獣化体質の保持者です！』
『ですが…あの子だけは、他の獣化体質の人間と違って、干渉を受けない』
『ご覧の通り、森から離れたこの地に来ても、人間の意思と理性、そして姿を保っていられるのです！』